積載率とは?
積載率とは、トラックやコンテナなどの輸送手段において、積載可能な容量に対して実際に積み込まれた貨物の割合を示す指標です。一般的に、積載率が高いほど輸送効率が向上し、コスト削減や環境負荷の軽減につながります。特に物流業界では、燃料費の高騰やドライバー不足などの課題を抱えているため、積載率の向上は重要な施策のひとつとされています。
積載率の計算方法
積載率は以下の計算式で求められます。
積載率(%)=(実際の積載重量または積載容積 ÷ 最大積載可能重量または容積)×100
積載率向上の重要性
積載率が低いまま輸送を続けると、空気を運ぶのと同じ状態になり、利益を圧迫するだけでなく、無駄な燃料消費やCO₂排出の増加を招きます。ここでは、積載率向上の経済的メリットと、不完全積載によるリスクについて解説します。
積載率向上が企業にもたらす経済的メリット
1.輸送コストの削減
1台のトラックでより多くの貨物を運べるようになると、輸送回数が減少し、燃料費や人件費の削減につながります。特に長距離輸送では、積載率を数%上げるだけで大きなコスト削減効果が期待できます。
2.利益率の向上
積載率が高いと、輸送効率が最大化され、1回の輸送でより多くの売上を確保できます。また、同じコストでより多くの荷物を運ぶことができるため、物流全体の収益性が向上します。
3.環境負荷の低減
積載率を向上させることで、トラックの稼働台数や走行距離が減少し、CO₂排出量の削減に貢献でき、企業の環境対策としても重要なポイントとなります。
不完全積載による機会損失とコスト増加
1.輸送効率の低下
積載率が低いと、トラックの空きスペースを有効活用できず、1回の輸送で運べる貨物量が減少します。その結果、追加の輸送が必要となり、無駄なコストが発生します。
2.ドライバー不足の深刻化
労働力不足が進む中で、効率的な輸送を行わなければ、ドライバーの負担が増加し、業務の持続性が危ぶまれます。積載率を向上させることで、限られたドライバーでの運行を最適化できます。
3.環境規制対応の遅れ
政府や自治体が進めるCO₂排出削減政策に対応するためにも、積載率の向上は避けられません。不完全積載が続くと、環境基準を満たせず、将来的な規制強化に適応できなくなる可能性があります。
積載率改善のために必要なテクノロジーとツール
物流業界では、積載率を向上させることが大切ですが、従来の手法では積載スペースを最大限に活用するのが難しく、無駄な輸送が発生することも少なくありません。
近年、AIやIoT、運行管理システム(TMS)を活用することで、より精度の高い積載率の最適化が可能になっています。本記事では、積載率改善に役立つテクノロジーについて解説します。
AIやIoTを活用した積載率の最適化
1.AIによる積載プランの自動最適化
AIを活用した積載率最適化システムでは、貨物の形状や重量、配送先を考慮し、最も効率的な積み方を自動で提案します。これにより、人手では難しい細かい調整が可能となり、積載率の向上につながります。
2.IoTセンサーによるリアルタイム管理
トラックの荷室やパレットにIoTセンサーを設置し、貨物の配置や積載状況をリアルタイムで監視することで、積載の無駄を即座に把握できます。センサーのデータをAIと連携させることで、次回の積載時にさらに最適化されたプランを提案できるようになります。
3.ビッグデータ解析による積載パターンの最適化
過去の輸送データをAIが分析することで、最適な貨物の組み合わせや配送ルートを導き出せるためトラック1台あたりの輸送効率を向上させ、不要な輸送コストを削減できます。
運行管理システム(TMS)の重要性
1.配送ルートの最適化
運行管理システム(TMS:Transport Management System)は、AIを活用し、配送ルートの最適化を行うことで、無駄な空車移動を減らします。積載率の向上だけでなく、輸送時間の短縮や燃料コストの削減にも貢献します。
2.積載状況の可視化
TMSを導入することで、どのトラックがどれだけの荷物を積んでいるのかをリアルタイムで把握できるため、積載効率の悪いルートを見直し、必要に応じて他の便と統合することで、積載率を向上させることが可能です。
3.ドライバーの負担軽減と業務効率化
積載率の向上は、ドライバーの業務負担を減らすことにもつながります。TMSを活用することで、適切な積載計画を事前に立てることができ、無駄な待機時間や過剰な積み込み作業を防ぐことができます。
積載率向上への取り組み
積載率向上は、物流業界全体の効率化に大きく貢献します。共同配送やモーダルシフト、AIを活用した最適化など、さまざまな取り組みを組み合わせることで、コスト削減と環境負荷低減を実現できます。具体的な取り組みを紹介します。
1. 共同配送の推進
異なる企業が協力し、同じ地域やルートに向かう荷物をまとめて輸送することで、トラックの積載効率を最大化できます。特に、同業種やサプライチェーン内での共同配送を進めることで、トラックの空車率を減らし、輸送コスト削減にもつながります。
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2. モーダルシフトの活用
鉄道や海運を利用するモーダルシフトを進めることで、大量輸送が可能になり、積載率の向上が期待できます。長距離輸送を鉄道や船舶に切り替え、ラストワンマイル配送をトラックで行うことで、効率的な物流網を構築できます。
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3. AI・データ活用による積載率の最適化
AIを活用した積載率最適化システムを導入することで、貨物のサイズや形状に応じた最適な積み方を瞬時に計算できます。また、データ分析を基に、過去の配送履歴から積載率の低いルートを特定し、改善策を講じることも可能です。
4. 配送ルートの最適化
積載率向上には、無駄な移動を減らすことも重要です。運行管理システム(TMS)を活用し、最適な配送ルートを計算することで、効率的な積載が可能になります。また、帰り便での積載を考慮した「往復輸送」も有効な手法です。
5.パレット・モジュールの標準化
パレット・モジュールの標準化とは、物流パレットの形状やサイズ、運用方法を統一することです。荷役作業や労働負担を軽減させ、物流の効率化やコスト削減に寄与します。
積み替え・手荷役作業がなくなった場合の年間効果は、コストが削減され、作業時間も削減される効果がでています。
実践的な積載率向上のための取り組み事例
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社、株式会社湖池屋と共同幹線輸送
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社は、株式会社湖池屋と関西から九州に向けた製品輸送において、共同幹線輸送を2024年10月より開始しました。
本取り組みは、重量貨物である飲料製品と軽量貨物である菓子製品を混載し、トラックの荷台に生じた空きスペースを有効活用することで、積載率を向上させ、両社の物流効率を推進するもので、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社の物流パートナー社が、当社倉庫で飲料製品を積載した後、近接する株式会社湖池屋の委託先の倉庫に立ち寄り、荷台の空きスペースに菓子製品を積載し、関西から九州に向けて混載輸送を行います。
共同輸送を行うことにより、容積・重量とも積載率を100%に近づけることを可能にし、各社が関西から九州に輸送手配を行う場合と比べ、トラックの使用台数は33%の削減につながる見込みです。
出典)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000222.000053655.html
オーシャントランス株式会社のモーダルシフトとDX化
オーシャントランス株式会社は、2016年にカーフェリー4隻を大型化し、トラックの積載台数を従来の1.7倍に増強。輸送需要の増加に対応するため、業務効率化の必要性から社内システムのDXを推進しました。
主な取り組み
- WEB予約システム
大口利用者のWEB予約をクラウド上で管理し、「車番認識システム」と連携させることで、乗下船時間の可視化を実現。それにより、従来のFAXによる連絡が不要になり、顧客と取引先双方の業務効率が向上。また、乗船後の積込位置や下船時間の目安も把握できる仕組みを整備している。 - 積込管理システム
タブレットを使って船内の積載状況を可視化。作業員と事務所で情報をリアルタイム共有し、業務を効率化。 - 車番認識システム
「車番認識システム」によるカメラと人の目によるダブルチェックを導入。予約内容と異なる車両が確認された場合には、事務所と現場にアラームが鳴る仕組みでヒューマンエラーを防止。WEB予約システムと連携させ、乗下船時間の把握にも活用している。 - GPS活用によるシャーシ探索時間の短縮
各シャーシにGPS機器を設置することで、集配ドライバーが目当てのシャーシを探す時間を1台あたり平均10分以上から数分に短縮。これにより、東京港の約10名のドライバーで月間約100時間の作業時間を削減。また、広範囲での位置情報確認が可能となり、運行管理の効率化にも貢献している。
出典)
https://www.mlit.go.jp/maritime/content/001758347.pdf
王子ネピア株式会社、カミ商事株式会社、大王製紙株式会社、日本製紙クレシア株式会社、 ユーピーアール株式会社、「家庭紙パレット共同利用研究会」を設立
家庭紙に分類されるティッシュペーパーやトイレットロールは、製品荷姿が嵩高く軽量で単価も安いことから、車両積載率を上げるためにバラ荷役を続けてきました。
しかし、主流と言われているT11 型ではパレットへの積載効率が 20%以上落ちる、各事業者が独自に専用パレットを開発するとイニシャルコストが高額となる、 各事業者が独自にパレットを運用した場合、回収や管理が複雑となるといった課題から、バラ荷役からパレット荷役への転換を図ることを目的に、ティッシュペーパーやトイレットロールの現在の外装の大きさに応じたパレットを開発して、パレットへの積載率の低下を最小限に抑えました。
これにより、バラ積み込み時間90 分〜120 分かかっていたものが、パレット化したことで、15分〜20 分に短縮(75%短縮)された効果が出ています。
出典)
https://www.mlit.go.jp/common/001347068.pdf
積載率向上が環境に与える影響
物流業界では、積載率の向上が企業のコスト削減だけでなく、環境負荷の軽減にも直結すると注目されています。トラック1台あたりの積載効率を高めることで、輸送回数の削減につながり、結果としてCO₂排出量の低減が期待できます。ここでは、積載率改善が環境へ与える影響について詳しく解説します。
積載率改善とCO₂削減の関係
積載率が向上すると、同じ量の荷物を運ぶのに必要な車両の台数が減少し、走行距離の短縮が可能になります。その結果、燃料消費量が抑えられ、CO₂排出量の削減に貢献します。例えば、積載率を50%から80%に向上させた場合、輸送回数を大幅に削減でき、トラックの排出ガス量を抑えることができます。これは、物流業界における脱炭素化の重要な一歩となります。
環境負荷軽減のための取り組み
積載率向上を実現するためには、企業がさまざまな対策を講じる必要があります。例えば、共同配送では、異なる荷主同士がトラックのスペースを共有し、無駄な空間を減らすことで積載効率を最大化します。また、AIを活用した配車最適化により、より効率的なルートを選定し、トラックの走行距離を短縮することも可能です。さらに、パレットやコンテナの標準化を進めることで、より多くの荷物を効率よく積載できる環境を整えることが求められます。
まとめ
積載率の向上は、物流業界の効率化を図るうえで極めて重要な取り組みです。ただ単に「荷物を多く積む」ことにとどまらず、輸送コストの削減、ドライバーの負担軽減、さらにはCO₂排出の削減といった多方面にわたるメリットをもたらします。
本記事では、積載率の基本から、向上のために活用されているテクノロジーやツール、実際の企業事例までをご紹介しました。今後は、共同配送やモーダルシフト、AIを活用した配車最適化など、業界横断的な取り組みとデジタル技術の融合が鍵となります。
持続可能で競争力のある物流体制を実現するために、積載率向上はもはや「選択肢」ではなく「必須の施策」です。物流業界のみならず、荷主企業や消費者を巻き込んだ全体最適の視点が、これからの物流を支えていくことでしょう。
この記事の執筆・監修者

「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。