近年、コンサルティングファームにおけるデータサイエンス分野の求人が増えています。一般的な企業(事業会社)ではなく、データサイエンスに特化したコンサルティングファームでの仕事には、どのような特徴があるのでしょうか?
この記事では、コンサルタント業務とデータサイエンス業務の結びつきや、それぞれに必要なスキルを紹介し、データサイエンティストが必要な理由、データサイエンスのコンサルタントとして働くメリットについても解説します。
データサイエンスとは?
データサイエンスの定義は、個人や企業によって異なりますが、データサイエンティストを専門とする人のビジネス状の役割は主に、統計学や機械学習をツールとして用いた問題解決になります。そこから考えると、机上の計算を行うだけでなく、社会や企業、ビジネスの問題に着目して、手段としてデータ分析手法を活用することがデータサイエンスといえます。
データサイエンスに必要なスキルとは?
データサイエンスに必要なスキルは主に、
・機械学習や分析スキル
・プログラミングやインフラに関するスキル
・ビジネススキル
の3つに分類できます。データサイエンティストには「データアナリスト」と「機械学習エンジニア」の2つの側面がありますが、それらに特化した専門職としては、それぞれにおいて必要なスキルが異なります。「機械学習」に関するスキルはその両者に求められます。一方、「プログラミングやインフラに関するスキル」は機械学習エンジニアに求められ、「ビジネススキル」はデータアナリストにそれぞれ求められるスキルとなっております。それらをすべてのスキルをバランスよく兼ね備えているのが「データサイエンティスト」です。
ピボットテーブルでのクロス集計やBIツールを活用したユーザー行動解析もデータアナリティクス必須能力ですが、コンサルティングファームで働くうえでは当然有しているスキルであるという前提で、ここでは割愛しております。
また、これらのスキルに加えて「案件ごとに必要なスキルを吸収するスキル」も必要になります。日々進化するIT関係のサービスやシステムに関する知識は、あらかじめ予測していても対応しきれません。そこで、案件に対して必要になる最新のサービスやシステムに関して素早く理解し、自分の手足として使えるように取り入れる学習能力が必要になります。
機械学習や分析のスキル
機械学習や分析のスキルは、主に基本的な数学、統計学、機械学習に関する知識ですが、それだけでなく、最新動向をリサーチする能力も必要のことも含みます。さらに、それらを駆使して、データを適切に解釈し、問題解決に結びつくものを取捨選択する能力が必要になります。
特に近年では、機械学習に関して高いスキルを持っていたとしても解決できない問題などもあるため、それだけではデータサイエンティストとして必要とされにくい傾向にあります。
プログラミングなどインフラに関するスキル
大学などの情報工学で学ぶような基本的なITの知識(プログラミング、サーバー、データベース)に加え、実務的に関係するwebフレームワークやAWS・GCPなどのクラウドサービスや、ビックデータを取り扱うツールに関する知識も必要になります。特に、コンサルティングファームの就職を考えている方にとっては、すぐにプロジェクトにアサインされてもいいように、
・Pythonによるデータ処理
・Linuxコマンド
・SQL
に関する知識や経験は持っておくべきです。
ビジネススキル
社会や企業、ビジネス全体の流れや目標を理解しつつも、関係部門とコミニュケーションを取って情報を整合するといった、基本的なビジネススキルも重要になってきます。特に、データ分析や機械学習の知識に精通していないような方にも、分かりやすく情報を伝えて納得させるような説明力が必要です。
コンサルティングファームにおいては、課題解決に直結させる提案を行う必要があるため、機械学習やプログラミングに関するハードスキルよりも、こういった高いビジネススキルが要求される傾向にあります。
コンサルでデータサイエンティストが求められる理由
データサイエンスに必要な様々なスキルはお判りいただけたと思いますが、ではなぜ、コンサルティングファームにおけるデータサイエンティストが今求められているのでしょうか?
その背景としては、コンサル業界の売上が、経営戦略事業からデジタルやIT事業に移っていることに関連します。クライアントの事業における専門的な視点においては、クライアントの経営層に肩を並べるのは困難ですが、客観的なデータ分析に基づいた数値的な視点であれば、これまでにクライアントが考えつかなかったようなソリューションが提案できることがあります。こういったことが各所で実績として蓄積され、それによって昨今はデータサイエンスに関する事業の売り上げが急増しています。
また、Pythonを使ったデータ分析や、高度な機械学習やアルゴリズムモデルによって構築された自動化ソリューションは、これまでexcelなどで行っていた分析に比べてはるかに効率的なため、そのような高度な分析ができるデータサイエンティストがコンサルティングファームにおいて求められています。
データサイエンスのコンサルタントとして働くメリットとは?
データサイエンスを一般的な会社(事業会社)ではなく、コンサルタントファームで取り扱うことのメリットのひとつは、「様々な事業に携われる」という点です。事業会社であれば、目標となる事業が決められていて、そこに手段としてデータサイエンスを活用するような流れになるかと思います。
しかし、データサイエンスのコンサルタントは、そういったデータサイエンスに関係する様々な事業者から相談を受け、数多くの問題解決にデータサイエンスを活かしていくことができます。事業会社に比べて、データサイエンスを活用する機会が多いことは、データサイエンティストにとってはキャリアやスキルを積む意味ではメリットになります。
ただし、コンサルティングファームでは、データ分析までを担当して、課題解決や手法の実装までは到達しないこともあります。実際に検討した手法を活用していくフェーズになると、事業会社が主導していくことが多いため、課題解決自体はコンサルティングファームでは経験しにくくなるかもしれません。
また、機械学習のスキルを活かしてキャリア形成を検討している方は、コンサルティングファームの就職はミスマッチになる可能性もあります。その場合はエンジニアリングスキルを活用できるwebサービス系のメガベンチャーなどへの進路がおすすめです。
まとめ
データサイエンスの基本的な役割から、データサイエンティストに必要なスキル、データサイエンティストが求められている理由、コンサルティングファームで働くメリットについて解説してきました。
これからの時代を生き抜く企業や事業の問題解決の手法として、注目が集まるデータサイエンスですが、実際にデータサイエンティストとして活躍するためには多岐にわたるスキルの習得や、実績の積み上げが必要になります。メリットや必要な知識について理解し、将来のキャリア形成に役立てたいですね。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。