CRMといえば、企業における営業・経営・マーケティングに関する業務の効果を最大化するために導入が進んでいるツールですが、医療分野においても徐々に導入されています。
この記事では、医療分野においてCRMの導入が必要な理由やCRMの基礎知識、活用事例などについて説明します。
医療業界が抱える課題
医療業務は一見ビジネスとは遠い存在のように感じますが、決済や納税などの業務が発生したり、顧客がいることを考えると、紛れもなくビジネスです。こういった中で、業務の効率化を含めて医療業界には様々な課題があります。ここでは、医療業界の抱えている現代の課題について説明します。
社会の高齢化による患者数の増加
日本は超高齢化社会に突入しつつあり、このままの構造では、患者の疾病や症状の多様化が進んでいきます。いまのままのオペレーションでは、スタッフ数や施設の数が不足することが予想され、対応が逼迫します。
医師不足
少子化に伴い、個人病院の後継者不足が発生しているため、医師が都市部に集中しています。地方によっては病院が不足しており、受けられる医療の質に差が生じています。
未成熟な地域医療連携
病院を利用する際には、「かかりつけ医」や「急性期病院」などがあり、症状や状況に合わせて使い分けるのが一般的です。しかし、最近はかかりつけ医を持たない人が多く、急性期病院との情報伝達がなく、症状が突発的なものなのか、もともと疑いのあったものなのかの区別がつきにくくなってしまっています。
院内での横断的な情報共有不足
医療行為もサービス業のように、対応の良し悪しで患者数が増減してしまいます。窓口や予約業務の対応によっては、経営に影響することがあるため、有効な情報は院内で共有したほうがよいのですが、そういった対応が進んでいない病院がまだまだ多くあります。
CRM(顧客管理システム)とは?
全く馴染みのない方にとっては、「CRM」という言葉さえ初耳かと思います。ここでは、CRMの言葉の意味からツールの基本機能といった基礎知識について説明します。
CRM(顧客管理システム)の意味
CRMは「Customer Relationship Management」の略称で、日本語では「顧客管理システム」という意味があります。また、CRMを実施するシステムやツールのことを「CRMツール」と呼びますが、ビジネスにおいては「CRM ≒ CRMツール」として話題に出ることが多いので、「CRM」と聞いたら、ツールのことだと思っておくといいかと思います。
CRMツールは、企業の顧客情報の中でも、既存顧客と見込み顧客の関係性を統合するのに活用できます。こういったツールができる前は、営業担当者が個々に顧客情報をかんりしており、「Aさんのお客さん」「Bさんの案件」などといった、属人化が常態化していました。
しかし、営業効率をさらに飛躍させるためには、「X社のお客様」「Yプロジェクトの案件」など、顧客情報をチーム内で共有化しているほうがはるかに有利です。
そのため、CRMツールを使って顧客情報を統合し、セールス・マーケティング全体の施策に役立てる活動が近年活発に勧められています。
CRMツールの基本機能
CRMツールにはさまざまな機能がありますが、ここでは基本的な機能である「顧客管理」、「メール配信」、「キャンペーン管理」、「ソーシャルメディア連携」、「顧客サポート機能」、「データ分析レポート」について説明します。
顧客管理
顧客ごとの情報を管理しておく機能で、これによって名刺を保管しておく必要もなくなり、これまでの関係性などの情報も共有でき、企業間の関係性が維持しやすくなります。
メール配信
顧客にメール配信する機能です。製品導入後のフォローやクロスセル、新商品情報など、複数の顧客に一括メールを送信できます。
従来であれば、メールの宛先をひとつひとつ選ぶような作業があったため、送信先を間違えてしまったり、抜けてしまっていたりしてミスが発生する作業であり、手間もかかっていましたが、CRMの導入により、ツール上で取捨選択してミスなく送信できるようになりました。
キャンペーン管理
セミナーやクロスセルなどのキャンペーン情報を管理する機能です。キャンペーンの実施情報だけでなく、参加者の情報やキャンペーン効果も可視化できるようになるため、それをつかった振り返りや改善を行いやすくなります。
それまでは、キャンペーンはやりっぱなしか、記憶力頼りでしたが、これによって飛躍的に顧客との接点の維持がスムーズになりますね。
ソーシャルメディア連携
最近ではBtoBの企業であってもSNSでのやりとりやマーケティングが行われるようになってきましたが、SNSを活用した営業・マーケティングの際の影響情報を可視化しておくことで、SNS伝いで接点を獲得したお客様ともより深い関係構築ができるようになります。
顧客サポート機能
CRMで最も重要と言える機能です。受信したメールを自動振り分けしたり、お問い合わせ内容を管理できます。どの顧客からどのような質問を受け、どのような対応をして、現在はどんな状態であるかなどを記録しておくことで、チーム内での情報共有が効率化でき、緊急時の対応などでも役立てることができます。
データ分析レポート
顧客情報を管理するだけではなく、与えられた情報から顧客を分析することができます。例えば、購買傾向を分析し、顧客ニーズをダイレクトに把握することも可能になります。
また、メール配信機能との連携により、特定の顧客に向けたメール配信ができるなど、マーケティングや営業の幅を広げることができます。
医療におけるCRM(顧客管理システム)の活用方法
CRMを導入すれば問題が解決すると思われがちですが、実際には有効な活用方法があります。ここでは、医療において有効なCRMの活用方法を説明します。
連携先との関係強化と新規連携先の開拓
紹介件数が減っている連携先に絞って営業活動を促進したり、紹介しやすい関係作りや新規連携先を開拓するのにも役立てられます。
内部連携の強化
内部連携が強化され、横断的に情報がシェアできれば、患者に合ったより質の高い治療プランの構築と実行など、さらなるサービス向上が実現します。同時にカルテ記入や事務作業の省力化、デバイス活用によるペーパレス化が大幅に進められます。
経営上の弱点強化
院内の弱点や改良点が浮き彫りになるため、診療時のコミュニケーションの仕方を変えたり、接客サービスの向上をはかるなど、運営手法の改善・強化に役立ちます。
コンサル機能の活用
CRMで取得したデータをプロ目線で分析し、経営戦略として落とし込むことで、目に見えて業績改善できます。
医療におけるCRM(顧客管理システム)の導入事例
医療分野でも多くのCRMが導入されており、成果を出しています。ここでは、代表的な医療分野におけるCRMの導入実例を紹介します。
熊本病院:提携先開拓の効率化
済生会熊本病院は病院向け地域連携強化サービス「foro CRM」をIT企業のメタップ社と共同開発しました。実際にシステムを導入すると、紹介データの分析が自動化され、リアルタイムで他医療機関の変化が察知できるようになりました。
それを踏まえた会話、提案を行うことにより連携先の医療機関開拓を効率的に行えるようになったとのことです。
小林製薬:コールセンターの業務効率化
小林製薬ではFasthelpというコンタクトセンターCRMシステムを導入し、業務を効率化しています。
新システムの稼働によって、顧客の相談内容を可視化できるようになり、コールセンター内の役割分担見直しにつながったこと、問い合わせやクレーム対応にかかっていた時間が簡単にレポーティングできるようになり、顧客の声が直接経営に活かされるようになったりと、さまざまなメリットが発生しています。
中江病院:ペーパーレス化
医療法人敬愛会中江病院は「kintone」をベースとした株式会社プレアデスセブンが提供する病院向けプラットフォーム「ここりんく」を導入しました。電子カルテ化によりカルテだけでは拾えない業務を支援する機能により大幅に業務の効率が改善されました。
情報の一元化のみならず病床稼働率などの見える化で職員全体の意識改革にも大きく貢献されました。
まとめ
医療業界においても、業務効率化が急務となっていますが、CRMの導入により目的が達成できる可能性があります。
正しく情報を理解して、効果を最大化させましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。