地域を支える新たな交通手段!自治体ライドシェアの可能性と未来

地域を支える新たな交通手段!自治体ライドシェアの可能性と未来

自治体ライドシェアとは?

自治体ライドシェアとは、地方公共団体が主導または支援する配車サービスのことを指します。このシステムは、特に公共交通の利用が難しい地域や時間帯で、住民の移動手段を提供することを目的としています。

 

2024年4月から解禁された、日本版ライドシェアサービスとは少々異なり、住民のニーズに応じた柔軟なサービス提供が可能で、地域経済の活性化や観光客の利便性向上にも寄与します。

多くの地域で導入がされており、自治体が運営するライドシェアは、公共交通の不足を補完し、持続可能な交通手段を促進するための重要なツールとなっています。

 

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日本版ライドシェアとの違いとは?

運営主体

自治体ライドシェアは地方自治体が主体となって運営しますが、日本版ライドシェアは民間企業が運営しています。

サービスの目的

自治体ライドシェアは公共交通の補完や、過疎地域の交通手段提供を目的としています。一方、日本版ライドシェアは都市部での効率的な移動手段の提供を目的としています。

運営の枠組み

自治体ライドシェアは地域密着型であり、自治体や住民が積極的に関与するのに対し、日本版ライドシェアは企業主導で、商業的利益を追求します。

日本版ライドシェアは、基本的に利用者が全額自己負担しますが、自治体ライドシェアは自治体が一部を補助することが多く、利用者の経済的負担を軽減します。

自治体ライドシェアは地域社会の課題解決を目的とした公共サービスの一環であり、日本版ライドシェアは都市部での利便性向上を目指す商業サービスです。両者は運営主体や目的、サービスの提供方法において異なり、それぞれのニーズに応じた形で展開されています。

自治体ライドシェアの特徴とそのメリットとは

地域密着型の運営

各自治体の地理的、人口学的特性に基づいて、サービスはカスタマイズされます。これにより、地域住民の具体的なニーズに対応した移動手段を提供することができます。

例えば、過疎地域や高齢化が進む地域では、バスやタクシーの運行が難しいため、ライドシェアが重要な交通手段となります。自治体は、地域の実情に基づいて柔軟にサービスを設計し、運営しています。

地域経済の活性化とコミュニティ強化

地域の高齢者や移動が困難な住民にとって、ライドシェアは生活の質を向上させる重要なサービスです。自治体ライドシェアでは、地域住民が自家用車を使って運転手として参加するケースがあります。

これにより、地域内での雇用が創出されるだけでなく、コミュニティの結束も強化されます。住民同士が顔見知りであるため、安心して利用できるという利点もあります。

また、地域外からの観光客にも利用されることで、観光収入の増加も期待されます。

公共交通の補完

公共交通が減便された地域や、高齢者や子供など特定の利用者が安全かつ便利に利用できるようにすることを目的に、既存の公共交通機関がカバーしきれない地域や時間帯に対応するために運営されています。これにより、地域住民は必要な移動手段を確保でき、生活の質が向上します。

移動弱者への支援

高齢者や障がい者などの移動弱者に対して、自治体ライドシェアは重要な交通手段を提供します。

特に、高齢化が進む地域では、運転免許を返納した高齢者が増加しており、彼らにとって自治体ライドシェアは必要不可欠な移動手段となります。これにより、彼らが地域社会に参加する機会を確保し、孤立を防止する効果があります。

運賃の低価格化

自治体が関与することで、通常のタクシー料金よりも低価格でサービスを提供することが可能になります。自治体が一部コストを補助することで実現しているケースもあります。また、利用者の負担を軽減するため、定額制や距離に応じた料金体系を採用していることが多い傾向にあります。

持続可能な交通手段の提供

複数の住民が車両を共有することで、車両数が減少し、CO2排出量の削減につながります。特に電動車両やハイブリッド車を使用することで、さらに環境負荷を低減することが可能です。

例えば、一台の車両に複数人が相乗りすることで、道路の混雑が減り、個別に車を使用する場合よりも全体的な燃料消費が減少します。さらに、再生可能エネルギーを利用した電動車両を使用する自治体では、カーボンフットプリントの削減も期待できます。

 

自治体ライドシェアの導入は、公共交通が十分に提供されていない地域において、移動手段の確保、地域経済の活性化、環境負荷の低減、コミュニティの強化など、多岐にわたるメリットがあります。

これらのメリットにより、自治体ライドシェアは地域社会にとって重要なインフラとなり、住民の生活の質を向上させるだけでなく、地域全体の持続可能な発展にも寄与します。

自治体ライドシェアの課題とは

自治体ライドシェアは、多くのメリットがある一方で、実装に際していくつかの課題に直面しています。以下は、自治体ライドシェアが抱える主要な課題です。

法規制の問題

一般的なライドシェアサービスは、無許可でのタクシー営業(いわゆる「白タク」行為)が禁止されているため、特定の許可や地域限定のモデルでしか運営できません。これにより、サービス提供の範囲や運用方法が制限されることがあります。

自治体がライドシェアを導入する際には、特例措置や法改正が必要となる場合があり、導入のハードルが高くなります。

資金調達の難しさ

ライドシェアプログラムの開始と継続には、相当な初期投資と運営コストが必要です。自治体の予算は限られており、持続可能な資金調達方法を見つけることが大きな課題となっています。

過疎地域でのライドシェアは、利用者が少ないため、収益が上がらず赤字運営になるリスクがあります。

そのため、自治体の財政が厳しい場合、サービスの提供を続けることが難しくなることがあります。

運営人材の確保

ライドシェアサービスの運営には、地域住民が運転手として参加することが多いですが、特に過疎地や高齢化が進む地域では、運転手としての人材確保が難しいことがあります。

特に、高齢化が進む地域では、そもそも運転できる人が少なく、ライドシェアの運転手を見つけるのが難しいという問題があります。

また、運転手としてのスキルや資格が求められるため、適切な人材を確保するのに困難が伴います。

利用者の安全性確保

ライドシェアでは、乗客と運転手の間で信頼関係が重要です。初めての利用者や高齢者の場合、知らない人の車に乗ることに対する不安が残ることがあります。

利用者が安心してサービスを利用できるよう、運転手の身元確認や運転記録の管理、さらには、GPSによる運行管理システムを導入することが求められます。しかし、これらのシステムを導入するには、コストや運営の複雑化といった課題が伴います。

テクノロジーとの整合性

ライドシェアサービスは、予約システムや運行管理に高度なテクノロジーを必要とします。特に地方自治体では、必要な技術力やインフラが整っていない場合が多く、これらの技術を導入・運用するための課題が存在します。

スマートフォンアプリやウェブシステムを活用したライドシェアサービスは、システムの保守やアップデートが定期的に必要です。しかし、これを担う技術者が自治体内にいない場合、外部に委託する必要があり、コストが増加します。

地域内での公平性の確保

地域によっては、サービスが均等に提供されないことで、一部の住民が不利益を被る可能性があります。全ての住民が公平にサービスを受けられるよう、配慮深い計画と実装が求められます。

 

自治体ライドシェアの導入には、法規制の対応、運営資金の確保、人材・安全性の確保、システムの維持などといった複数の課題が存在します。

これらの課題を克服するためには、自治体、地域住民、そして技術パートナーの協力が不可欠です。地域のニーズに応じた柔軟な運営と、持続可能な仕組みを構築することが、自治体ライドシェアの成功の鍵となるでしょう。

自治体ライドシェアの具体的な事例

神奈川県三浦市

三浦市は、地域のニーズや課題を把握した上で本格的な導入を目指すため、実証実験を開始しました。

三浦市はマグロの水揚げで有名な三崎港がある人気の観光地ですが、採算がとれないなどやむにやまれぬ事情から、地元のタクシー会社のうち1社が夜間の営業から撤退した背景があります。ドライバーを担うのは“地元民”で、バス運行本数やタクシー稼働台数が減少する夜間(19時~25時)において、市民の皆さまが安心して移動できる手段を確保する目的で行います。

石川県 加賀市

2024年3月12日、一般ドライバーと自家用車を活用した新たな移動サービス「加賀市版ライドシェア」がスタート。

加賀市では、2024年3月16日の北陸新幹線延伸で新幹線の「加賀温泉駅」が開業し、観光客の増加が見込まれていますが、バス・タクシー事業者のドライバー不足のため、公共交通だけで十分な移動サービスを提供することが難しいという課題がありました。

加賀市とライドシェア大手米Uber Technologiesの日本法人Uber Japanとの間に締結された包括連携協定に基づくもので、事業主体は加賀市観光交流機構、運行およびドライバーや車両の安全管理は加賀第一交通が担当します。

運行エリアは、7時から19時までは加賀温泉駅と山中・山代・片山津の3温泉地などの主要観光地・レジャー施設・文教施設の間、温泉地などの宿泊施設と繁華街や主要観光地との間、19時から23時までは加賀市全域が運行エリアとなります。

石川県 小松市

日常的に移動に不便さを感じている住民や観光客、新しく開通する北陸新幹線で本市を訪れた方々の移動の利便性向上に加え、能登半島地震で被災された二次避難者の方々の移動を確保するために、タクシーが不足している夜間の時間帯に自家用車を活用し、ライドシェアを実施しています。

富山県 南砺市

 南砺市では、「南砺市版自治体ライドシェア」が運行されており、平日の9時から15時30分までサービスが提供されています。このサービスは、市内の誰もが利用可能で、観光客も含めて全ての市民が対象です。料金は非常に手頃で、1人1乗車につき500円です。

兵庫県 養父市 「やぶくる」

養父市では特区を活用してライドシェアを先行導入しています。地域の住民がドライバーとなり、自家用車で市民や観光客に移動サービスを提供しています。この地域では、タクシーが不足している場所や時間帯に限定して、タクシー事業者の管理下でライドシェアサービスが提供されています。

大阪府

2025年の大阪・関西万博に向けてライドシェアの導入が計画されています。万博期間中における来阪者、府民・市民の移動ニーズへの対応はもちろんのこと、持続可能な公共交通の維持を目的として、タクシードライバーの確保に向けた規制緩和とともに、自家用車という地域資源を活用した新たな移動手段であるライドシェアの導入を検討しています。

これにより、イベント時のタクシー不足に対応し、地域住民や訪問客のための移動手段が増えることが期待されています。

京都府舞鶴市「meemo(ミーモ)」

2024年4月1日、京都府舞鶴市で自治体主導型ライドシェアサービス「meemo(ミーモ)」が開始されました。マッチングアプリ「meemo」や電話予約による住民同士の送迎サービスを実施することで、高野地域住民の外出機会を創出するとともに、タクシー不足等の課題に直面する既存の公共交通の役割の補完を目的をしています。

徳島県神山町の「神山ライドシェア」

公共交通機関の運行が不十分であり、住民の移動に大きな課題があり、徳島県神山町では、山間部の交通不便地域を対象にした「神山ライドシェア」を導入。

運転手は地域住民や移住者が担当し、住民の移動を支援します。若者や移住者が運転手として参加することで、地域の活性化が進み、住民同士の結びつきが強化されました。

自治体ライドシェアが持つ新たな可能性

自治体ライドシェアが持つ新たな可能性は、地域社会の変革や持続可能な交通システムの実現に向けて多岐にわたります。以下に、自治体ライドシェアがもたらす主な可能性について詳しく解説します。

持続可能な地域交通の実現

自治体ライドシェアは、公共交通が十分に整備されていない地域において、環境に優しい移動手段としての役割を果たします。

また、電動車両を再生可能エネルギーで充電するインフラを整えることで、完全なカーボンニュートラルな交通手段が実現可能です。これにより、地域全体の環境負荷を大幅に軽減することが期待されます。

スマートシティとの連携

自治体ライドシェアは、スマートシティの一部として、都市部や地方のインフラに統合される可能性があります。IoTセンサーやAI技術を利用して、ピーク時の需要を予測して車両を最適に配備したり、乗客の乗り降りを自動化することで、サービスの利便性が向上し、需要に応じた柔軟なサービス提供が可能になります。

また、ライドシェアから得られるデータを活用して、地域の交通量や移動パターンを分析し、公共交通全体の最適化を図ることができます。

地域活性化とコミュニティ強化

高齢者や主婦など、従来の労働市場での雇用が難しい層にも仕事の機会を提供し、また、観光地でのライドシェアサービスを展開することで、観光客が地域の隠れた魅力を発見しやすくなり、地域の観光産業が促進されます。

緊急時の対応力向上

災害時や緊急時においても、自治体ライドシェアは重要な役割を果たすことができます。

災害時には、通常の公共交通が利用できないことが多いため、ライドシェアを活用して住民の避難や物資輸送を迅速に行うことが可能になり、災害時にお互いに助け合うことで、地域住民間の信頼と結束が強化され、平時の地域社会の活力にもつながります。

自治体ライドシェアは、持続可能な交通手段の提供、スマートシティとの連携、地域経済の活性化、そして緊急時の対応力強化など、さまざまな新たな可能性を持っています。これらの可能性を活かすことで、自治体ライドシェアは地域社会の発展と住民の生活向上に大きく貢献できる存在となり、未来の地域づくりにおいて重要な役割を果たすでしょう。

まとめ

自治体ライドシェアの取り組みは、地域特有の課題を解決しながら、持続可能な交通システムを実現するための有効な手段です。今後も多くの地域で新たな導入が進むことが期待されるでしょう。 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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