医療・ヘルスケア領域の課題とは?
医療・ヘルスケア領域は、さまざまな課題を抱えています。それは高齢化・医療費の拡大・病院経営の圧迫といったどれも深刻な課題ばかりです。医療・ヘルスケア領域で新規事業を立ち上げるなら、まずこれらの課題について把握しておきましょう。
高齢化
日本の少子高齢化は一向に歯止めがきかない状態で、医療・ヘルスケア領域の大きな課題です。1950年から1985年頃までは若い世代や働く世代が多かったのですが、その後高齢者の人数と比率がともに増加していきました。今後の人口予測でも高齢化は進むため、高齢者をどう社会で支えていくのかがポイントです。
支えられる人の数が支える人の数を上回っているので、支える人の負担が非常に大きいのは間違いありません。高齢化社会にどう対応していくのかが、医療・ヘルスケア領域の直面している課題です。
医療費の拡大
人の命や健康は何よりも重視されるため、医療費を含めた社会保障給付費は年々右肩上がりで増加しています。2017年には120兆円を超えるなど、国にとって看過できない負担額になっています。しかもこの傾向は今後も続く見込みなので、医療費の拡大にどう対処していくのかが医療・ヘルスケア領域の課題です。
少子高齢化で支える人は年々減っているため、どうしても1人あたりの負担額が大きくなります。医療費の拡大が重荷になっている状態なので、早急に何かしらの手を打つ必要があります。
病院経営の圧迫
最新の設備を定期的に導入したり固定でスタッフの人件費がかかるなど、従来から病院経営は利益を出しにくい側面がありました。もともと厳しい病院経営に追い打ちをかけたのが、2020年以降のコロナ禍です。コロナ患者の受け入れには国からさまざまな補助がなされているものの、外来・入院・手術に大きな影響を与えました。誰もができる限り病院へ行くことを控えるようになったため、病院経営が圧迫されています。
コロナ禍以降継続的に赤字を出している病院が少なくありません。最悪のケースでは、倒産を余儀なくされた病院もあります。病院がなくなることは医療インフラの崩壊を招きかねませんので、病院経営が圧迫されないようにどう変えていくのかが課題です。
医療領域の3つの新規事業タイプ
医療領域で新規事業を始める場合、大まかに分けて3つのタイプがあります。診療利用・
医療現場のシステム利用・患者が利用するサービスの3つです。同じ医療領域でもそれぞれ性質が異なるため、特徴をきちんと理解しておきましょう。
診療利用
診療利用とは、医師がおこなう診断や治療などの診療を指します。診療に対し、新規事業のサービスを提供します。たとえば医療機器・医薬品・再生医療製品などが該当します。医療領域の新規事業と聞いて真っ先にイメージするのが、診療利用だと言えるでしょう。
ですが、診療利用の新規事業を立ち上げるのは、決して簡単ではありません。なぜならこの分野は薬機法による規制があるため、思いついたアイデアを容易には実現させられないからです。法律は絶対ですので、抵触するのはもちろん許されません。
医療製品は有効性と安全性を両方とも示す必要があるため、長期にわたって治験や臨床を繰り返す必要があります。簡単には参入できない領域です。ただ、社会的意義は非常に大きいですし、ロングスパンで成功を見据えるのであれば取り組むだけの価値はあります。
医療現場のシステム利用
医療現場のシステムに着目した新規事業です。イメージしやすいのは、電子カルテ・オンライン診療・レセプトなどのプラットフォーム構築です。これらは医療機器ではないため、前項の診療利用とは異なり厳しい制約はありません。画期的なプラットフォームさえ構築できれば、すぐにでも医療機関で導入される可能性を秘めています。
ただし、すべての医療機関が新しい医療システムを歓迎しているとは限りません。なぜなら新しい医療システムを導入しても、利益に直結するわけではないからです。また、維持費や切り替えの際の手間を負担に感じ、二の足を踏む医療機関の経営者が少なくないのも理由です。新しい医療システムの導入に積極的な医療機関さえみつかれば、チャンスは十分あります。
患者が利用するサービス
患者視点から見て便利なサービスも、新規事業で着目すべき領域です。たとえば予約・決済・健康情報管理などの各システムが該当します。これらは患者に対するサービスなので、導入すれば患者の満足度向上に直結します。昔と違って病院経営はサービス業の一面があるため、患者が満足するサービスを提供するメリットは小さくありません。
また、健康情報管理は、治療効果を目的としていなければ医療機器には該当しません。血圧手帳など単に記録するだけなら医療機器とは言えないため、参入しやすくなります。医療機関のサービス向上のために新規事業を開発するのは理に適っています。
ヘルスケア
ヘルスケアとは、患者などの利用者が医師をはじめとした医療関係者の指示を受けることなく、個人の判断で利用する製品やサービスのことです。医療領域と混同されやすいですが、明確に違いがあります。どんなサービスがあるのかを確認しましょう。
健康経営に関するサービス
従業員の健康を管理するのも会社の義務という考え方が広まり、健康経営は注目を浴びるようになりました。従業員のストレスチェック・健康診断の管理・健康課題の可視化など、
健康経営に関するサービスが次々とリリースされています。
今注目されている分野だけに新規事業による争いは激化しているものの、高品質のサービスを開発すれば次々と導入される可能性を秘めています。
デジタルヘルス
AI・ウェアラブルデバイス・ビッグデータ解析など、デジタル技術と健康を結び付けたサービスのことです。現代は健康への注目度が高いため、自分の健康を管理するのにデジタルを活用したい方が増えています。今はスマホアプリなどで簡単に管理できる時代なので、デジタルヘルスへの需要は高いです。
また、デジタルヘルスの活用次第では病気の発症や重症化を未然に防げるとあり、老若男女を問わず大きな期待を寄せられているのは間違いありません。AIが生体情報をもとに病気の予兆をキャッチし、医療機関を早めに受診するように知らせてくれます。今はどのサービスにもAIが広まっていますが、ヘルスケア領域も例外ではありません。新規事業に取り組む価値は十分あると言えるでしょう。
健康課題を解決するサービス
人は何かしらの健康課題を抱えているものなので、それを解決するサービスを提供すれば受け入れられる可能性が高いです。たとえば最近は、睡眠の課題解決をサポートするサービスが人気を集めています。睡眠時間・睡眠の深さ・いびき・呼吸・寝返りなど、睡眠に関するあらゆる情報を収集してアドバイスしてくれます。睡眠の質が良くなれば健康な状態に近付けるので、サービスの利用者は少なくありません。
また、食事管理サービスなども同様です。食事管理サービスを利用することで、食事内容・栄養・カロリー・体重などを記録できます。継続的に記録すれば、健康的な体作りに役立ちます。食事は健康に直結する重要な要素なので、注目している方は多いです。
睡眠や食事などで健康課題を抱えている方はたくさんいるので、それを解決するサービスを新規事業で開発すればヒットする可能性があります。
まとめ
今話題を集めている、医療・ヘルスケア領域での新規事業について紹介しました。冒頭で紹介した通り、高齢化・医療費の拡大・病院経営の圧迫など、医療・ヘルスケア領域はいくつもの深刻な課題を抱えています。それらの課題を解決に導く新規事業を立ち上げられれば、成功する可能性は十分あります。
また、個人でおこなうヘルスケア領域も同様で、健康課題を解決するサービスが求められています。まずは紹介した課題について深く理解し、新規事業開発に取り組みましょう。
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・トヨタ自動車株式会社
・阪急阪神ホールディングス
・株式会社エイチ・アイ・エス
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。