新規事業において市場調査を実施するのは、欠かすことができない大切なプロセスです。なぜならアイデアを出したり実際に企画を立案する際は、現状を表した正確な情報や根拠が絶対的に必要だからです。
「とりあえず始めてしまえばいい」と考えて新規事業を見切り発車させるのは、失敗する原因になりかねません。一見ポジティブな判断に思えますが、正確な情報や根拠が一切ないため失敗しやすいです。
絶対的にスピードを優先させたい場合や十分過ぎるぐらい余剰資金がある場合などは、市場調査は必須ではありません。ただ、それはごく稀な例外的ケースです。新規事業を成功させたいなら、事前にしっかりと市場調査を実施しましょう。
新規事業における市場調査とは?
市場調査とは、消費者に対してアンケートやインタビューなどを実施し、マーケットに関するいろいろなデータの収集・分析・活用をすることです。もしも市場調査をしなかったら、マーケットの動向が何もわかりません。新規事業が一か八かの運任せになってしまいます。成功を確実にたぐり寄せるために、市場調査は必要不可欠です。
市場調査には定量的市場調査と定性的市場調査の主に2種類がありますので、それぞれの調査について説明します。また、市場調査とリサーチの違いについても解説しますので、事前に確認しておきましょう。
定量的市場調査
定量的市場調査とは、結果が数値化可能な調査のことです。結果を人数やパーセンテージなど明確に数値化できる調査は、定量的市場調査に該当します。たとえばインターネット・電話・郵送・会場・街頭などで実施するアンケート調査が代表的です。例からもわかるように、アンケートの手段は問いません。
定量的市場調査の魅力は、マーケットを俯瞰的に見られる点です。わかりやすく数値が出るので、客観的にとらえられます。しかも他の指標と比較することが容易にできるなど、データを活用しやすいのも特徴です。
ただ、万能に思える定量的市場調査も、決して完璧ではありません。結果を正しく読み取るには、統計学の基礎や応用が必要不可欠です。
調査によってわかったデータは、あくまでも抽出されたものです。抽出されていないデータはカウントしてないので、統計学の基礎や応用ができないと現実を見誤る恐れがあります。目の前のデータを正しく読み取る統計学の基礎や応用ができないと的外れな解釈をしかねないので、調査を実施する際は十分注意が必要です。
定性的市場調査
定性的市場調査とは、具体的に数値化するのは難しい、人の意見や行動をもとにデータを収集する調査のことです。定量的市場調査とは違い、明確な数字では表せないのがこの調査の特徴です。たとえば質問を繰り返して回答を得るさまざまなインタビューが代表的で、デプスインタビューや電話インタビューなどの方法があります。
定性的市場調査の魅力は、消費者の本音がわかる点です。消費者の本音は、定量的市場調査だとなかなかわかりません。その結果消費者も自覚していない無意識のニーズを、発現させられる場合があります。
ただし、定性的市場調査は消費者の主観が反映されやすいので注意しないといけません。一個人の特徴的な意見を重視した場合、あまりにもニッチな方向を目指してしまうリスクがあります。もしも実施する場合は、インタビューとマーケティングの両方のノウハウが必須です。
市場調査とリサーチの違いは?
市場調査は現在なのに対し、リサーチは将来を見すえるのが決定的な違いです。現在を数値によって正確につかもうとするのが市場調査で、将来まで見通そうとするのがリサーチです。
このような性質があるため、リサーチは願望的になりやすいです。消費者がどんな将来を期待しているのかの願望を予測しないといけません。
同じ調査でも、市場調査とリサーチでは活用する目的がそれぞれ異なります。
新規事業における市場調査方法
新規事業の市場調査方法は、主にアンケート調査・文献分析・自社データ分析の3つに分類できます。それぞれどんな方法なのかを簡単に紹介します。
アンケート調査
質問を作成し、多くの人に回答してもらってデータを収集するのがアンケート調査です。インターネットが生活の隅々まで浸透したことにより、以前と比べて格段に実施しやすくなりました。対象者すべてからアンケートを取る全数調査と決められた人数だけを選んでアンケートを取るサンプル調査の2種類があります。新規事業ごとに上手く使い分ける必要があります。
文献分析
一般的に広く公開されている情報をひたすら収集する調査方法です。公的機関が出した統計データ・資料・新聞などが文献分析のリソースに該当します。調査するのに多少時間はかかりますが、一方でコストを抑えられるのが魅力です。
自社データ分析
販売店に記録されているPOSの履歴、ECサイトのアナリティクス、売上データなど、自社に蓄積されているデータを分析する調査方法です。自社に特化したデータを分析できるのが特徴です。消費者ごとにパーソナライズした新規事業を立ち上げたい時に有効的です。
新規事業で市場調査を行う際の注意点
新規事業で市場調査を実施する際は、3つの注意点に気をつける必要があります。それぞれの注意点は以下の通りです。
仮説をしっかり立てる
新規事業の市場調査のスタートは仮説なので、仮説をしっかり立てられないと先へは進みません。マーケットは常に変動する性質があるため、変化を的確にとらえて価値ある仮説を立てることが重要です。仮説が適当だと無駄な検証が増えてしまうので、仮説を立てる際は真剣に取り組まなければいけません。
まず仮説をしっかり立てる意識を持ちましょう。
市場調査の目的を明確にする
市場調査ではさまざまなデータに触れるため、いつの間にか目的を見失ってしまうケースが珍しくありません。特に突出していたり大量のデータが出てきたら、どうしても注目してしまいます。それはしかたないですが、特徴的なデータに引っ張られて目的を見失っていては本末転倒です。
たとえそのようなデータに触れても、市場調査の目的が明確なら本筋から外れることはありません。いったい何を知りたくて市場調査するのか、目的を明確にしておけば安心です。目的が曖昧なまま市場調査を実施するのは控えましょう。
市場調査におけるコスパを確認
新規事業を進める上で市場調査は必要なプロセスですが、コストをいくらかけても構わないわけではありません。コストを惜しむ必要はないものの、無駄にコストをかけるのはもちろんマイナスです。
文献分析のように公表済みのデータを調査するのは比較的安上がりですが、文献分析以外の調査は規模や方法ごとに相応のコストがかかります。たとえば会場調査のアンケートを実施する場合は、場所とスタッフに対するコストを支払う必要があります。長時間に及べばそれだけコストがかさむのは言うまでもありません。それで新規事業にプラスになるデータを収集できれば問題ないですが、大してプラスにならなければコスパが非常に悪いです。
市場調査に対し、湯水のごとく好きなだけお金を使って良いわけではありません。冷静にコスパを確認してから、どの市場調査を実施するのが最適なのかを判断しましょう。
まとめ
新規事業を進める上で避けては通れない、市場調査の概要・調査方法・注意点についてそれぞれ紹介しました。新規事業を行う際は、市場調査が非常に重要です。定量的市場調査のアンケートや定性的市場調査のインタビューなど、いくつかある調査方法の中からどれを選ぶかよく検討しないといけません。
また、しっかり仮説を立てる、目的を明確にする、コスパを確認するといった3つの注意点についても忘れないでおく必要があります。
価値ある市場調査を実施し、新規事業の開発に役立てましょう。
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この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。