新規事業というのはある人には夢のある言葉で、ある人には大きなリスクを抱える大変なことに感じます。何事もゼロからスタートするのが新規事業ですが、残念ながら「これをやれば成功する」というマニュアルはないものの、多くの新規事業に共通する失敗の法則は存在しています。
この記事では新規事業を考えている方が避けるべき「失敗事例」について、その回避方法を含めて解説していきます。
新規事業のほとんどが失敗!?
新規事業を立ち上げた場合その成功率の定義には様々な意見と定義があるのですが、ある定義として「10年後に会社が存続しているか」という指標で見た場合、日経webが発表したデータでは6.3%となっています。
中小企業庁のデータでは甘目の数字が示されていますが、現実的には新規事業を立ち上げて10年後には90%以上が廃業しているという数字の方が真実味は高いでしょう。
そこで注目したいのが「失敗した原因」です。成功者の話は脚色も多いので簡単に信じられませんが、失敗談はストレートな反省が含まれており、それを知り同じ轍を踏まないことが、ある意味成功への近道なのかもしれません。
新規事業で失敗する共通項
新規事業だけではありませんが、世の中の失敗の多くは共通点が潜んでいます。それは当事者でなければ分かりやすいものばかりです。ところが厄介なことに、新規事業を始めた本人には余裕がないためか気が付きにくいものばかりなのです。
ここからは新規事業が失敗するときに起こりがちな共通点について一つずつ見ていくことにしましょう。
当事者意識が低い
新規事業を始める場合、必ず最初にやりだす旗振り役は必要不可欠です。そしてその旗振り役のもとに人が集まってくるものなのですが、問題は「やろうという意思」の本気度です。さらに言えば、集まってくる人たちの決意はどうでしょうか。
新規事業でもっとも失敗に直結するのが、必ずやり抜こうという決意と当事者意識の欠如です。もちろん全ての人に守るべきものや生活があるのは当然ですが、最初に逃げ道を考えるくらいなら新規事業に手を染めるべきではないのです。
ゼロから何かを生み出そうと思ったら、新規事業に対し自ら創り出し、志し高くリーダーシップを発揮することが求められます。
関係者が多すぎる
新規事業とは何も独立開業ばかりとは限りません。社内ベンチャーのような新規事業もあるなかで、疎外すべき要素の第一位は「余計な口出しをさせない」環境づくりです。
新規事業というのはリスクがあるものですが、上手く行ったときのリターンも大きいことが多く、無責任に口を挟んでくる人が多くなりがちです。
新規事業の要諦は「既存の常識に囚われない発想の自由さ」なので、旧態然とした考えをもった関係者と言うのは邪魔以外何物でもありません。失敗しないためには出来るだけ独立した意思決定をできる環境が必要なので、そのための下準備は怠らないようにしましょう。
権限の明確化がされていない
新規事業の方向性を決めスタートしたとしても必ず修正点が出てくるもので、軌道修正に関してリーダーに権限が与えられていないと、その瞬間動きが止まってしまいます。
ここで新規事業と別の上長へお伺いを立てなければいけないような権限しか与えられないようなら、その新規事業はほとんど成功の可能性はないと言えます。そもそも新規事業を始める動機は、そのほとんどが既定の価値観の外へ成功を求める行為なのですから、既定の価値観に後ろ盾を求める行為は本末転倒と言えます。
スピードが遅い
大企業病と言われる組織にありがちなことですが、上から下まで各階層の(一応の)責任者が責任回避のために無駄な報連相を繰り返す光景はよく見られます。
これがどのような結果をもたらすかは明らかで、組織内で無駄なキャッチボールを繰り返しているうちに機会を失うことになってしまいます。
近年の事業では特にスピードが求められるので、それを阻害する要素は極力排除しなければなりません。
事前の仮説検証が不十分
新規事業を始めるにあたって、最初のアイディアがそのまま成功することは非常にまれなケースです。ほとんどの場合大なり小なり軌道修正が必要なもので、そのために仮説検証を行うことは重要以前に当り前のことです。
想定したことと結果が違う場合、計画のどこかに実勢と合っていない部分があるものなので、計画と現実のズレを早い段階で把握する必要があります。
動きだした船の軌道修正もせず、その先にある岩礁を無視していたら結果はどうなるでしょうか?考えずとも明らかです。
リーダーがいない
大組織の社内ベンチャーや共同出資の新規事業で見られるのですが、リーダー不在で迷走することがあります。この大きな原因は「リーダー=責任を取らされる存在」という当事者側のネガティブな姿勢と、そもそも新規事業を命ずる側の覚悟不足が考えられます。
これが独立開業の場合だと覚悟も違い、否が応でもリーダーシップを発揮せざるを得なくなるものですが、一時的な新規事業の場合そこまでの覚悟が出来なくなりがちです。
専門分野の人が誰もいない
社内ベンチャーのような新規事業では本業から多くのリソースを割けないことから、本当に必要な人材がいないことが見られがちです。たとえいたとしても人材不足からマルチタスクを求められることから不得意な業務をこなす必要にせまられ。結果的にチームとしての強みを失いがちです。
これを防ぐためには、新規事業に必要な人的リソースをよく考えた上で、見切り発車ではない新規事業のスタートを考えなくてはなりません。
長期にモチベーションが続かない
冒頭でも触れたとおり、新規事業が軌道に乗るのは簡単なことではありません。成果が見えないまま続けていると事業開始時のような高いモチベーションを維持することが難しくなってきます。
そのまま放置していると事業が動かなくなってしまう悪循環です。モチベーション維持のために、小さな軌道修正のたびに通過地点にゴールを設定するなど、工夫をしてモチベーションアップに努めましょう。
投資資金が足りない
新規事業が行き詰まる直接の要因は「資金不足」であることがほとんどです。ごく当たり前のことですが新規事業は収益化まで時間を要することが多く、それを見越した資金計画を立てなければ継続が困難になります。
立ち上げ当初に用意した資金のほか、場合によっては他の収益事業から資金を投入しなければならなくなるので、全体に悪影響を与えないような計画作成が重要になります。
事業企画(決済者の稟議)がゴールになっている
社内の無駄と言われることですが「会議のための会議」という言葉があります。考えている新規事業はそのようなことになっていないでしょうか。
多くの経営者は本業がそのまま順調に継続できるとは考えていないので、常に新規事業を考えているものです。その社内的欲求を満たすだけの事業計画では役に立たないでしょう。
決裁を受けたところはスタート地点に過ぎないのです。
新規事業で失敗の確率を下げる方法
新規事業を成功に導くのは容易ではありません。しかし逆説的に考えるなら失敗しない選択を積み重ねることがポイントになってきます。
また新規事業は短いサイクルで方向性が正しいのか検討することが重要で、惰性で流されないことが失敗の確立を下げることに結びつきます。
仮説を見直し続ける
新規事業は新しい挑戦であり、仮説に基づいてスタートするものです。しかし考えていた仮説がすぐに市場のニーズと合致することは稀で、必ず見直しが必要になってきます。
市場ニーズの変化は速く、仮説の検証と事業計画に最適化は常に継続しなければなりません。これは新規事業に限った話ではなく、すでに実績がある事業でも仮説検証をしながら、アップデートを繰り返さないと、すぐに陳腐化するのが今の市場なのです。
周辺領域の情報を徹底的に調べる
仮説検証を行う上で新規事業の主変領域の情報収集とその分析は、何より大切になってきます。新規事業とは言いかえれば「新しいニーズを掴む試み」なので、想定する顧客層の課題を常に検討し続けなければなりません。
そのために重要なのは周辺領域の情報です。それも古い情報は役に立たないので、常に情報を収集し、それを徹底的に調べていく必要があるのです。
ビジネスプラン、P/Lを何度も磨く
新規事業のビジネスプランは当初思い描いたように進むものではありません。むしろプランを変化させていく作業が新規事業の本質です。
先へ進むためのビジネスプランとともに見直す必要があるのがP/L(損益計算書)です。今までの結果がそこには記載されていて、収益や経費などプランの乖離がないのか検証します。最終的に新規事業が成功したかどうかはP/Lによって判断されます。
ビジネスプランとP/Lの両方を何度も磨き上げる作業は避けて通れません。
まとめ
新規事業には典型的な失敗パターンがあり、多くの場で指摘されているのですが、当事者はいつしかそれを忘れがちになってしまいます。
それを避けるためにはビジネスプランの見直しだけではなく、新規事業のチームや取り組み方など、根源的な部分の見直しも常に意識することが、新規事業失敗の確立を下げる大事なポイントであることを忘れないようにしましょう。
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この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。