世界的に有名な起業であっても、その最初はほとんどゼロからのスタートを切っているわけで、最初期の苦労話は成功企業だからこそ伝説的な扱いになっています。
これから新規事業を開始するにあたり考えるべきことは多くありますが、どんなに崇高な理念を掲げようが「お金」がなければ事業をスタートすることは出来ません。事業の失敗とはそのほとんどが資金の枯渇の結果です。
この記事では新規事業開始にあたり避けては通れないお金の問題について、IT事業の立ち上げを例にとり解説していきます。
新規事業を立ち上げるのにいくらかかる?
IT事業に限らず新規事業にはお金が必要なものです。必要資金を大別すると、事業体として体をなすまでに要する「開業資金」と、事業をスタートさせてから軌道に乗るまでに要する「運転資金」の2つを考えなければなりません。
ここからは最初に必要になってくる開業資金について、システムインテグレータ事業やITコンサルの立ち上げを例にとり考えていきましょう。
新規事業スタートまでにかかるお金
システムインテグレータ事業やITコンサルの立ち上げを考えている人のほとんどは、それに関する知見やあるいはそのような事業に従業員として携わっていた人でしょう。
中には社会経験もないまま在学中に事業を立ち上げる経営者もいますが、今回はIT事業会社からの独立を前提に開業資金について考えてみます。さらに具体的な検討のために、ある程度の受注見込みが立っている前提で解説します。
人(メンバー)
新規事業の一番の肝は「事業内容」と「携わる人」だけといっても過言ではありません。あなたがどのように才能があっても、システム開発を一人でこなしながら事業の方向性をマネジメントしていくことは、よほどのスモールビジネスでもない限り不可能と言えます。
ソフトウェア開発を例にとれば経験者であれば、受注案件の納品までに必要なSEのスキルや人数は予測が出来るはずです。そして完成までのスケジューリングも考え、それまでに必要な給料や社会保険料などの法定福利費も見積もり可能です。
人にはコストがかかり、特に日本であれば雇用を簡単に破棄できないので、場合によって利益率は下がる可能性があっても業務のアウトソーシングを考える必要があります。
いずれにしても業務開始まで人に掛かるコストは、出しっぱなしの開業資金だと思って見積もっておきましょう。
サイト制作費
ITビジネスの開業にあたって自社サイトの構築無しでは成り立たない重要なものです。ある程度受注が決まっているB to Bのビジネスであれば重要度が下がりますが、B to Cのようなビジネスであれば武器を持たずに戦に挑むようなものです。
自社サイトの構築について本業の人的リソースをそこに割くべきかどうか悩むところです。特にIT事業に従事する人であれば自分で出来る作業なので、なおさら悩むところです。
しかしIT新規事業では多くの場合「一番の目的」をスピーディーに進めた方が、結果的に軌道に乗るのが早く、サブ業務にリソースを割くのは極力控えた方が好結果を生みます。
つまりコストが掛ったにしても、サイト制作費などはアウトソーシングの活用を前提に、必要資金を見積もっておきましょう。
システム開発費
いよいよ新規事業の心臓部ともいえるシステム開発費です。一概に言えませんが、一般的に考えるなら大手企業から大規模システムを新規事業者が請け負うことは考えられないので、開発工程はアジャイル型システム開発になるでしょう。
システム系の新規事業では収益化を急ぎたいという欲求があるので、アジャイル型システム開発と新規事業は相性が良いと言えます。もともと重厚長大型のシステム開発で主流だったウォーターフォール型と対極にあるアジャイル型は、出来るだけ短い期間でシステム開発するための発想なので、リリースまでの期間短縮とサイクルの循環に齟齬をきたさないようなマネジメントに集中し、そのコストを見積もりましょう。
顧客獲得コスト(サプライヤー獲得)
ここまでスタート時の顧客がいる前提で解説していますが、最初の案件があったにしてもその顧客が永遠に業務を発注してくれる保証はありません。
安定的に業務を受注するためには顧客獲得コストも考えなければならず、多くの新規事業者の場合は起業した本人のリソースを割くことになります。ここで考えなければならないのは、起業者たる自分がサプライヤー向けの営業を行うことの効果と、それによるシステム開発などに及ぼすマイナス効果とのバランスです。
もし営業効果が見込めないと予測できるのなら、そこへ人をあてがうなどコストを割いた方が全体としてプラス面が大きくなることを計算しておきましょう。
マーケティングコスト(ユーザー獲得)
B to Cビジネスではマーケティングコストは絶対的な必要コストです。ITビジネスの場合はネットでの広告活動がメインになってきますが、反響があればあるほどユーザーへのレスポンス良い情報発信が必要になってくるので、収益化前のコストは必ず必要なものです。
ここが疎かになってしまうと、目に見えない逸失利益は計り知れないほど大きくなるので、目に見えない部分もしっかりと計数化して管理しなければなりません。
新規事業スタート後にかかるお金
ここまでは新規事業の土台部分に関するお金の話でしたが、ここからは収入が発生し始めてから軌道に乗るまでの運転資金について、陥りやすいミスも含めて考えていくことにしましょう。
人(メンバー)
新規事業を計画し、立ち上げのためのメンバーを集めて進んで行くと、スタート時に必要でもそこから先に必要がない人材がいてしまうことが往々にしてあります。
これの原因はいくつか考えられるのですが、アジャイル型のシステム開発と同じで事業の必要性を考え、修正を重ねているうちに「不必要」が見つかってくるものなのです。しかし事業の継続性を考えると、不必要だからといって人は簡単には切り捨てられません。
また人を雇用するためには給与以外にもコストが掛り続け、事業を行う上で一番大きな固定費となります。本来であれば起業時にここまで計算に入れなければならないのですが、無駄に気付いたときに取りうる手段は、リストラを考えるかそれ以上に稼ぐか、そのどちらかしか解決策はありません。
システム開発費
後発のシステム開発ではつねに開発を続けなければ事業が継続できないという現実があります。問題はスタート時に考えていた方向性のままシステム開発を続けていけるかどうかで、サプライヤーの変化によっては方向性の転換とともに、開発者の編成についても考え直さなければなりません。
リスクを減らすためには、その時々のよって発注先を変えられる外注に頼るのも一つの手ですが、利益率を考えるとそればかりに頼っていられませんし、それが行き過ぎるとシステム開発ではなく単なる仲介業者になってしまいます。
メンバーの話と同様ですが、起業する段階でシステム開発のメインフレームを変えないで済むような方針をしっかりと立てることで、このような悩みを抱えるリスクを減らすことが出来ます。
マーケティングコスト
B to Bのシステム開発は新規事業スタートから軌道修正するのは大きな手間と労力がかかるのですが、B to Cがメインのビジネスの場合は方向性を変えるにしても、それほどランニングコストの増加は考えられません。
もしあるとするなら、最初に考えたビジネスモデルを捨て去るぐらいの変化をもたらす場合で、そのときは変化というより別の新規事業ととらえるのが正解です。
ただB to Cビジネスは変化が速い傾向が強いので、大きな変化が必要になる前に常に最適化し続ける意識が重要になります。
まとめ
IT系の新規事業とお金(コスト)のアウトラインについて解説してきました。具体的な金額については手掛けるシステムや事業規模によりますが、スタートを切るまでの開業資金と、軌道に乗るまでの運転資金が必要なことに変わりはありません。
新規事業のリスクを減らすためには固定費の圧縮は必要不可欠です。一方で機会損失を逃さないためには「コストを惜しまない」ことも重要で、このバランスが新規事業の難しさなのです。新規事業を始めるのなら成功を収めるために、コストとスピーディーさをよく考え、同時にリスクとリターンの両面を考慮して取り組んで成功をつかみ取るようにしましょう。
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この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。