【2025年最新版】荷役時間短縮の課題と解決策|現場の実態から学ぶ改善ポイント

【2025年最新版】荷役時間短縮の課題と解決策|現場の実態から学ぶ改善ポイント

物流業界では今、「荷役時間の短縮」がかつてないほど重要な課題となっています。
特に2024年問題(ドライバーの労働時間制限)以降、長時間の荷待ちや非効率な荷役作業は、業務効率だけでなく、ドライバー不足やコスト増大にも直結する深刻な要因となっています。

本記事では、荷役時間が長くなる根本原因や、現場で実際に起きている課題を整理し、2025年時点で有効とされる具体的な改善策や成功事例を徹底解説します。

「荷役時間をどう短縮すればいいのか?」
「どんな仕組みや工夫が効果的なのか?」

とお悩みの物流担当者や経営層の方に向けて、すぐに実務で使える視点とヒントをお届けします。

 

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目次

荷役とは?

荷役(にやく)作業とは、物流の現場において「貨物の積み込み・積み下ろし・仕分け・運搬などの物理的な取り扱い作業全般」を指します。これらの作業は、トラック輸送・倉庫管理・流通加工など、あらゆる物流プロセスで不可欠な要素です。

荷役作業の定義と主な種類

積み下ろし(積込・荷下ろし)

トラックに商品を積み込む、または降ろす作業です。フォークリフトや台車を用いることもありますが、現場によっては人力作業も多く、重量物や多品種の対応が求められることから時間がかかるケースも少なくありません。

検品・照合

届いた荷物が「正しいかどうか」を確認するプロセスです。伝票と実物の照合やバーコードスキャン、数量チェックなどが含まれます。ここでミスがあると後工程に大きな影響が出るため、慎重さが求められますが、それだけ時間もかかりやすくなります。

仕分け作業

荷物の行き先や種類別に分類し直す工程です。大量・多品種の物流を扱う現場では特に重要で、作業者の判断力や情報の正確性が問われます。仕分け作業が煩雑だと、誤出荷や配送遅延のリスクも増えます。

搬送(庫内移動)

受け取った荷物を適切な保管場所や出荷場所まで運ぶ作業です。倉庫レイアウトや設備の整備状況に左右されやすく、動線が非効率だったり、人手不足だったりすると時間がかかってしまいます。

拘束時間・作業時間との違い

物流現場でよく使われる「荷役時間」「拘束時間」「作業時間」は、それぞれ意味が異なります。下記にわかりやすく整理します。

拘束時間

ドライバーが会社に出勤してから退勤するまでのすべての時間を指します。休憩・待機・運転・荷役などを含めた勤務時間全体です。労働基準法の改正(いわゆる「2024年問題」)では、この時間の上限が設けられています。

作業時間

拘束時間のうち、実際に労働(運転・荷役など)をしていた時間。休憩やアイドリング中の待機時間は除きます。給与の支払いに関わる「労働時間」とも近い概念です。

荷待ち時間と混同されやすいポイントも解説

現場では「荷役時間」と「荷待ち時間」が混同されることも少なくありません。荷待ち時間とは、トラックドライバーが荷物の積み下ろしを待っている時間であり、しばしば長時間に及びます。

たとえば、納品先の受け入れ態勢が整っておらず、現場でドライバーが順番待ちしている場合、これは荷待ち時間です。

荷役時間が長くなる主な原因とは?

荷役時間の短縮は、物流現場の効率化に直結する課題のひとつです。ところが現場では、さまざまな要因が絡み合って荷役に無駄な時間がかかってしまうケースが少なくありません。ここでは、実際に現場でよく見られる代表的な要因を整理してみましょう。

オペレーション バラ積み・手作業・荷姿バラバラ

バラ積みとは、パレットやケースにまとまっていない状態で荷物を車両に直接積む方法を指します。この状態では、荷物一つ一つを手作業で積み下ろしする必要があり、時間と労力がかかるのが実情です。さらに、段ボールのサイズや形状、積み方に統一性がないと、作業員がその場で積み替えや位置調整を強いられ、効率が大幅に落ちます。標準化された荷姿やパレット輸送が導入されていない企業では、この非効率が常態化しており、結果としてドライバーの拘束時間も延びています。

情報共有不足 事前連絡なし/積載内容の不明瞭さ

トラックが現場に到着してから初めて「何が届くのか」「どの順番で下ろすべきか」を確認するケースがいまだに存在します。事前に配送指示書や納品リストが共有されていない、あるいは曖昧で誤記があると、検品や仕分け作業に予想以上の時間がかかります。

さらには、積載されている順番と納品先のオーダーが一致していないことで、トラック内での荷物移動が発生し、時間のロスが拡大します。こうした「情報の断絶」は、些細なようで物流現場全体の生産性に深刻な影響を及ぼします。

受入体制の課題 荷受けバースの不足/人員不足

都市部や中小規模の物流センターでは、荷下ろしを行うバースが少なく、複数のトラックが到着するピーク時間帯には「順番待ち」が発生することも珍しくありません。また、配送先の工場や店舗側に荷役を担うスタッフがいない、または人員が限られている場合には、ドライバーが自ら荷下ろし作業を行わざるを得ないケースも。これではドライバーの作業負担が増し、待機時間も長くなるため、物流全体の効率低下につながります。

作業環境の課題 設備が古い・狭い・機械化されていない

物流現場において、効率的な荷役を実現するには、設備の充実が不可欠です。ところが一部の倉庫や店舗では、狭小スペースでの手作業が今なお中心で、フォークリフトやハンドリフトの導線が確保されていなかったり、機械化・自動化された仕組みが整っていなかったりします。

また、設備そのものが老朽化している場合、故障や操作ミスのリスクも増え、安全面からも問題があります。最新の設備投資が後回しにされている現場ほど、荷役作業の非効率が常態化している傾向にあります。

なぜ今「荷役時間の短縮」が重要なのか?

近年、物流業界では「荷待ち」「荷役」などの非効率な時間が深刻な課題として浮上しています。特に2024年の労働時間規制強化以降、ドライバーの拘束時間削減が喫緊のテーマとなっており、荷役時間の短縮は、企業の物流戦略において避けて通れない要素となっています。ここでは、その背景と影響を整理し、なぜ今「荷役時間の見直し」が求められているのかを掘り下げていきます。

2024年問題とドライバー不足への対応

時間外労働の上限規制(年960時間)により、トラックドライバーの稼働時間が大幅に制限されました。限られた労働時間の中で効率的に配送をこなすには、積み下ろしなどの「荷役」にかかる時間を削減することが不可欠です。荷役時間が長引けば、その分だけ次の配送が遅れ、結果的に全体の輸送力低下を招きかねません。

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サプライチェーン全体のボトルネック解消

荷役時間の長さは、単に現場だけの問題ではありません。工場や倉庫、店舗間を結ぶサプライチェーン全体の流れにおいて、荷役の遅延がひとつの「詰まり」となり、他の工程にも影響を及ぼします。短縮によって、在庫の回転率が上がり、全体最適化が実現できます。

コスト増加のリスク

作業時間が長ければ、その分人件費や車両コストも増加し、「積んでいるだけ」「待っているだけ」という時間はまったく利益を生んでいないことになります。

また、荷役時間が不確定だと、配送計画や在庫管理にも影響が出てきてしまいます。

ドライバーの働き方改革・離職防止につながる

長時間の荷待ち・荷役が常態化している現場では、ドライバーのストレスや負担が大きく、離職率の上昇を招く要因にもなります。荷役の効率化は、働きやすい環境づくりや人材定着にも直結するため、企業の持続的な物流運営において欠かせない改善ポイントです。

荷役時間短縮に向けた具体的な対策

荷役時間を短縮するためには、単なる「効率化」ではなく、現場の実情に根ざした地道な改善が欠かせません。特にドライバーの働き方改革が急がれる今、荷主・物流会社が連携して荷役作業の無駄を省くことは、持続可能な物流体制づくりの要となります。ここでは、実践的な改善策を4つの視点から紹介します。

事前予約・受付システムによる混雑緩和

「何が」「いつ」「どれだけ」届くのかが現場に正確に伝わっていないと、作業準備に無駄が生じます。配送車両の到着時間を事前に「予約」することで、荷受け場での集中・渋滞・荷待ち時間を削減する仕組みで、積み下ろしの順番待ちやトラックの長時間待機による拘束時間増などの課題が解決できます。

荷役作業の標準化・マニュアル整備

荷役作業のやり方が人によってバラバラだと、作業時間も品質も安定しません。工程を標準化し、手順をマニュアルとして明文化することで、誰が作業しても一定のスピードと精度が保てるようになります。新人の早期戦力化や、属人化の解消にもつながります。

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自動搬送機器(AGV)やパレット活用の自動化

荷物の積み下ろしを一つずつ手作業で行っていては、どうしても時間がかかります。そこで効果的なのが、パレットやカゴ台車の利用です。荷姿の統一と合わせて導入することで、一括搬送が可能となり、荷役時間の大幅な短縮が実現します。

フォークリフト・人員の最適配置と可視化

フォークリフトや作業員を、荷役作業のピークタイムや荷物の動線に合わせて計画的・柔軟に配置し、どこに・誰が・何をしているかを可視化する取り組みで、特定エリアに人や機械が集中し、他が手薄になったり、作業効率のバラツキといった課題を解決できます。

フォークリフトの稼働状況をモニタリングしたり、物流KPI(作業時間、処理件数)を見える化し、改善サイクルを回すなどの取り組みが効率的です。

荷役効率化の成功事例

パナソニック コネクト株式会社×トヨタモビリティパーツ株式会社

2022年6月パナソニック コネクト株式会社が「配送見える化ソリューション」をトヨタモビリティパーツ株式会社に納入しました。

今回の『配送見える化ソリューション』では、現場で使用するラベルが異なっていたりと、業務の煩雑化がミスを招くという課題解決のためにトヨタ、ダイハツ、スバル3社のラベルを統一することから進めました。これにより、異なるメーカーの部品管理を一つの配送管理システムで運用できるようになりました。

トヨタ方式に準拠したラベルの採用により、異なるメーカーの部品であっても、ひとつの配送管理システム上で一元的に運用することが可能となりました。これにより、作業効率の向上や物流品質の改善が実現しております。

さらに、ドライバー端末からクラウド上へ配送実績をリアルタイムで送信できる仕組みが導入され、管理者側は3社分の配送状況をまとめて把握できるようになりました。配送先においても、QRコードによって位置情報を確認できるため、誤配の防止や荷物の追跡が容易となっております。このシステムの導入は、ドライバーの平準化(ドライバーの業務時間を均一に調整すること)にも大きく寄与しているとのことです。

出典)

https://response.jp/article/2022/06/15/358660.html

株式会社 日立製作所の「計画最適化ソリューション」

国際物流の増加を背景に、空港や港湾、鉄道などの貨物ターミナルでは、コンテナの搬出入や荷役作業の効率化が急務となっています。従来は人手中心で進められていた業務に限界が見え始めており、デジタル技術の導入が求められています。

今回導入された計画最適化ソリューションでは、AIによってコンテナの搬出時期を予測し、最適な配置や移動計画を立案します。複数の最適化モデルを連携させることで、作業の効率化を実現しました。さらに、最適化結果をシミュレーターで再現・可視化することで、事前の作業検討や設備評価にも活用されています。

その結果、コンテナ搬出作業の所要時間を大幅に短縮でき、物流従事者の労働負担の軽減や、荷役機器の稼働効率向上、燃料コストの削減といった成果が得られました。

出典)

https://www.hitachi.co.jp/products/infrastructure/portal/industry/optimization/casestudies/lv3015.html

現場が動くためのポイントと注意点

荷役時間を短縮するための対策は数多くありますが、机上の理論だけでは現場は動きません。実際の業務フローや人の動きにフィットしなければ、定着せずに元に戻ってしまうことも。ここでは、現場目線で「改善が定着するためのポイント」と「つまずきやすい注意点」を整理します。

1. 「なぜ変えるのか」を共有する

現場が一番気にするのは「何のためにやるのか」です。

単なる“上からの指示”ではなく、荷役時間短縮が自分たちの負担軽減や安全確保につながることを伝えることが大切です。

2. 属人化を防ぐマニュアルと教育

改善策を機能させ続けるには、誰がやっても一定の品質で作業できる状態が理想です。そのためには、標準化された手順書の整備と、現場スタッフへの継続的な教育が必要です。特に人の入れ替わりが多い現場では不可欠です。

3. できる範囲から始めてスモールスタートを意識

設備投資やシステム導入に踏み切る前に、まずは現行の仕組みの中で改善できる点から着手するのも有効です。荷姿の統一、動線整理、作業区分の見直しといった取り組みでも効果が出るケースは多くあります。

4. 成果が見える仕組みを作る

現場は「やった効果」が見えなければやる気を維持しづらいです。

KPI(例:平均荷役時間、荷待ち時間)を月次レポートで共有するなど、荷役時間の平均・滞在時間の減少・事故件数の推移などを定期的に“見える化”することが重要です。

まとめ

本記事では、荷役とは何かという基本から、長時間化の背景にある課題、そして短縮に向けた具体的な対策までを幅広く解説しました。

荷役時間は、単なる作業時間ではなく、ドライバーの拘束時間や物流全体の効率に直結する重要な指標です。パレットの活用や機器導入、情報共有の徹底など、改善の手段は多岐にわたりますが、現場で本当に機能する仕組みにするには、現実的で段階的なアプローチが求められます。

効率化は、ドライバーの負担軽減、コスト削減、さらには持続可能な物流体制の実現にもつながります。今こそ見えていなかった時間に目を向け、現場起点で変革を進めていくことが求められています。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

 

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