止まる物流、届かない荷物〜ドライバー不足の本質と企業がとるべき打ち手とは〜

止まる物流、届かない荷物〜ドライバー不足の本質と企業がとるべき打ち手とは〜

ドライバー不足はなぜ起きているのか?

物流業界では「人手が足りない」という声が多いですが、近年はその深刻度が一段と増しています。特に2024年の働き方改革関連法の施行以降、現場の人員確保はより困難になっています。現在ここまで深刻なドライバー不足が起きているのは何故なのでしょうか。その要因をひとつひとつ紐解いてみましょう。

 

物流のDX支援についてはコチラから物流のDX支援についてはコチラ

高齢化と若年層の減少

ドライバーの年齢構成を見ると、40代後半〜50代が中心で、60代も少なくありません。若年層がこの職を選ばなくなっている背景には、「体力的にきつい」「将来性が見えにくい」といったネガティブなイメージが根強く残っています。結果として、新陳代謝が進まず、高齢化が加速しています。

長時間労働・低賃金・厳しい労働環境

多くのドライバーが「労働時間が長いわりに給与が見合っていない」と感じています。荷待ち時間や渋滞、再配達など、時間を奪われる業務が多いにもかかわらず、それらが正当に評価されにくい現実があり新たな人材の確保も難しくなっています。

「2024年問題」による時間外労働規制の影響

2024年4月から施行された働き方改革関連法案により、ドライバーの時間外労働に上限(年間960時間)が設けられました。これは労働環境の改善を目指すものですが、その分稼働時間が減る=収入減につながる懸念もあり、業界内での混乱が広がっています。加えて、全体としての「輸送力」も落ち込むことが予想されます。

▼あわせて読みたい!

2024年問題とは何だったのか?物流現場でいま何が起きているのか?企業の対応と新たな論点

地方部の人口減少と採用難

特に地方では、若年労働人口の流出により、そもそも「応募が来ない」という企業も少なくありません。小規模の物流会社ほど採用活動が難しく、結果としてドライバー1人あたりの負担が増すという悪循環に陥っています。

ドライバー不足が引き起こす物流への影響とは?

ドライバー不足は、単に“人がいない”という問題にとどまりません。物流の最前線が機能不全に陥れば、企業活動にも消費者の暮らしにも深刻な影響を与えます。では実際に、どのような現象が起きているのでしょうか。現場で起きている変化を整理してみましょう。

納期遅延や配送不能による企業の損失

輸送力の不足は、納期の遅延やそもそも配送ができないという事態を招きます。これにより製造ラインが止まる、店舗での欠品が発生するなど、企業にとっての直接的な損失につながります。取引先からの信頼低下やビジネスチャンスを逃してしまう可能性も心配されています。

荷主の取引条件変更や受発注制限

物流が安定しないことで、荷主側が取引条件を見直す動きも出ています。たとえば「まとめ発注」「納品回数削減」「納品時間の変更」といった形で、物流に合わせた条件変更が求められる場面が増えてきました。結果として柔軟な対応ができない企業は、商機を逃す恐れもあります。

配送コストの上昇とサプライチェーンへの波及

ドライバーの確保が困難になると、輸送の単価も上がります。これは物流会社だけでなく、荷主企業や最終消費者にまで影響が及びます。とくに中長期的には、コストの上昇が調達戦略やサプライチェーン全体の見直しを迫る要因にもなります。

消費者側の価格上昇やサービス低下

物流の逼迫は、最終的には私たち消費者にも跳ね返ってきます。商品の価格が上昇したり、当日配送や日時指定といった利便性の高いサービスが縮小されるなど、生活の利便性が損なわれるケースも増えています。

企業ができる改善策とは?

ドライバー不足という構造的課題に対して、制度改正や社会全体の取り組みを待っているだけでは間に合いません。企業自身が取り組める即効性のある改善策も多く存在します。現場の視点と物流全体の流れを踏まえて、今すぐ始められる対策を見ていきましょう。

荷待ち・荷役時間の削減と予約システムの導入

荷待ちとは、ドライバーがトラックから荷物の積み降ろしの順番を待つ時間のことを指します。物流業界では、この荷待ち時間が長くなることで、輸送効率の低下やドライバーの労働環境の悪化が深刻な問題となっています。

AGV(無人搬送ロボット)やAMR(自律走行搬送ロボット)を導入し、荷役作業を自動化したり、パレット・コンテナの統一規格化により、積み替え作業の時間を短縮できます。

また、「トラックバース予約システム」 を導入し、事前に納品時間を指定したり、受付、入庫のデジタル化 により、到着から荷役作業までをスムーズに行うことができます。

▼あわせて読みたい!

物流の効率化を阻む「荷待ち」問題とは?現状と取り組みを考える

テクノロジーの活用

配送ルートをAIで最適化することで、時間・距離・燃料のムダを削減し、少ない台数・人員でも効率的な配送が可能になります。

また、まだ実用化は限定的ですが、 自動運転・ドローン配送の検討し、将来的な代替手段としての研究・準備も重要です。

▼あわせて読みたい!

配送ルート最適化とは?物流クライシスの解消へ導く配送ルートの最適化の取り組み方法を大解剖!

共同配送や幹線輸送など効率的な配送体制の構築

企業ごとの個別配送から、複数企業が連携した共同配送が注目されています。類似エリア・同一ルートでの輸送をまとめることで、トラックの稼働台数と走行距離を大幅に削減できます。

幹線輸送は、周辺エリアの大量の荷物を一箇所に集めて荷物をまとめて大型トラックなどで輸送することを指します。

トラックの積載率を高めて輸送効率を上げること、ドライバー不足やコスト増への対応、CO₂削減などの環境への配慮が見込めます。

▼あわせて読みたい!

知りたい!共同配送のメリット・デメリット〜企業の事例も紹介〜

モーダルシフトや鉄道貨物の活用

モーダルシフトとは、貨物輸送をトラックから環境負荷の少ない鉄道や船舶へ転換する取り組みを指します。鉄道輸送、船舶輸送共に長距離輸送、大量輸送、低環境負荷の実現ができると期待されています。

▼あわせて読みたい!

CO₂削減と効率化を実現!モーダルシフトの基本と企業の導入事例

外国人材や女性ドライバーの活用促進

慢性的な人手不足を解消するためには、労働力の裾野を広げる必要があります。技能実習制度や特定技能制度を活用し、外国人ドライバーの受け入れ体制を整える企業も増加傾向にあります。

また、車両の自動化・小型化により、女性ドライバーの就業も現実的になってきています。トイレ・更衣室・休憩環境の整備といった職場改善が、採用・定着のカギを握ります。

注目されるテクノロジー活用による「物流DX」

ドライバー不足や2024年問題への対応として、物流業界ではDXの活用が加速しています。人手だけでは支えきれない物流の現場に、テクノロジーの力をどう活かすか。すでに各地で始まっている取り組みを紹介いたします。

物流デジタルツイン

現実の物流ネットワークや倉庫・車両の動きを仮想空間に再現し、最適なオペレーションをシミュレーションできます。これにより、ボトルネックの可視化・改善策の事前検証・災害対応の強化に役立ちます。

お問い合わせはこちらまで

AI配車システムで無駄のない配送設計

従来は熟練の配車担当者の経験に頼っていた配送ルートの設計も、AIの活用により大きく変わり始めています。配送先、荷量、交通状況などの膨大な情報をAIが自動で解析し、最適なルートと人員配置を瞬時に導き出します。結果、無駄な走行や空車率を削減し、ドライバーの負担軽減・燃料費削減・配送効率向上になります。

自動運転・無人搬送車の実証と展望

人手不足を根本から解決する切り札として注目されているのが、自動運転トラックや無人搬送車(AGV)の導入です。すでに高速道路での限定的な実証実験や、工場構内・倉庫内での運用が進んでおり、将来的には中距離〜幹線輸送の自動化も視野に入っています。ドライバーの負担軽減だけでなく、安全性や定時性の向上にも期待が集まっています。

動態管理・積載率分析による業務最適化

車両の現在地、走行ルート、積載状況などをリアルタイムに可視化できる動態管理システムも、今や標準装備となりつつあります。さらに、実績データをもとに積載率の傾向や無駄を分析することで、車両運用の最適化につなげる企業も増えています。こうした分析と改善の積み重ねが、限られたリソースを最大限に活かす鍵となります。

まとめ

本記事では、深刻化するドライバー不足の背景と、それが物流や企業活動に与える影響、そして企業が今すぐ取り組むべき改善策、テクノロジー活用による物流DXなどについて解説しました。単に人手を補うだけでなく、荷待ち時間の削減や納品時間の柔軟化、共同配送やモーダルシフトといった仕組みの見直しが求められています。物流現場の効率化と働き方改革は、企業のサステナビリティにも直結するテーマです。今こそ、物流を止めないための一歩を踏み出す時でしょう。

 

サプライチェーンのDXをAI・デジタルツインなどの新技術で支援。カーボンニュートラルの実現に向けたCO2排出量の可視化・削減シミュレーションにも対応する物流特化のサービス。先ずは無料の資料請求から。
この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

物流・サプライチェーンカテゴリの最新記事