物流総合効率化法とは?仕組みから主な対象事業、メリット・事例まで徹底解説!

物流総合効率化法とは?仕組みから主な対象事業、メリット・事例まで徹底解説!

物流総合効率化法とは?仕組みから主な対象事業、メリット・事例まで徹底解説!

物流総合効率化法とは?注目される背景と目的

物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)は、日本において物流業務の効率化と環境負荷の軽減を目的とした法律です。この法律は、物流プロセス全体を見直し、企業間の連携やデジタル技術の活用を促進することで、物流業界全体の効率化を実現しようとするものです。

 

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注目される背景

・物流業界を取り巻く課題

高齢化や労働人口の減少により、特にドライバーや倉庫作業員が不足しており、個人消費の増加やECの拡大で再配達が増加し、効率を低下させています。また、トラック輸送におけるCO₂排出量が増加し、カーボンニュートラル達成の障壁となっており、燃料費や人件費の上昇により、物流コストが企業の負担になっているのが現状です。

・物流の重要性の高まり

新型コロナウイルスの影響で物流の重要性が再認識され、サプライチェーンの強化が求められており、災害時の物資供給や地域間連携の観点からも効率的な物流の構築が急務です。

・技術革新の進展

AI(人工知能)やIoT、デジタルツインなどの技術が進化し、物流業務の効率化や可視化が可能になりました。

物流総合効率化法の目的

・物流プロセスの効率化

複数企業が連携して物流ネットワークを共有し、共同配送やモーダルシフト(トラック輸送から鉄道・船舶輸送への切り替え)を推進し、トラック積載率の向上や無駄な輸送ルートの削減を実現します。

・環境負荷の軽減

CO₂排出量の削減を目指し、カーボンニュートラルな物流モデルを構築し、電動車両や燃料電池トラックなど環境に優しい車両の導入を促進します。

・情報共有とデジタル化の推進

物流データの可視化やデジタルプラットフォームを活用し、情報のリアルタイム共有を可能にし、サプライチェーン全体の効率化を促進します。

・再配達問題の解消

配送方法の多様化や受け取り場所の指定を推進し、再配達率を低下させ、ラストワンマイル配送の効率化を実現します。

・中小企業支援

中小物流企業が新しい技術やシステムを導入するための支援策を整備し、コスト負担を軽減し、業界全体の底上げを図ります。

 

物流総合効率化法は、物流業界の長期的な課題解決と、環境保護を両立させる政策的な枠組みです。この法律により、以下のような成果が期待されています。

1、持続可能な物流の実現

環境に配慮しながら、効率的で柔軟な物流体制を構築。

2、経済成長の支援

効率化によりコスト削減が実現し、企業競争力が向上。

3、地域活性化

過疎地や地方でも持続可能な物流ネットワークが整備され、地域経済の活性化に寄与。

2024年5月法改正の内容

物流総合効率化法は2024年5月に国会で改正案が可決されています。主な改正点は以下の通りです。

支援対象に物流DX・GX設備が追加

ピッキングロボット等の物流施設の自動化に必要な設備の導入や、EV車両、太陽光発電設備など再生可能エネルギー関連の施設の導入費用など、物流のDX・GXによる効率化、生産性向上および環境負荷の低減を図る事業についても支援対象となりました。

努力義務の追加と特定事業者の設定

荷主や物流事業者に対し、物流効率化のための取り組みを促進するための努力義務が課され、国が判断基準を策定することとなりました。また、取組状況に応じて指導・助言、調査・公表が行われます。一定規模以上の事業者は「特定事業者」として指定され、中長期計画の作成や定期報告が義務付けられます。さらに、特定事業者の荷主には「物流統括管理者」の選任が義務付けられました。

罰則の追加

物流総合効率化法の認定を受ける企業は、計画書を提出しなければ罰則50万円(最大)が科されます。また、達成までの行動が不十分で勧告や命令を行っても違反を繰り返す場合には100万円(最大)が科されます。

物流総合効率化法の仕組み

概要として、国土交通省は以下の通りとしています。

二以上の者が連携して、流通業務の総合化(輸送、保管、荷さばき及び流通加工を一体的に行うこと。)及び効率化(輸送の合理化)を図る事業であって、環境負荷の低減及び省力化に資するもの(流通業務総合効率化事業)を認定し、認定された事業に対して支援を行う。

物流総合効率化法の認定基準を満たす主な事業

輸送網の集約

配送網の集約とは、複数の拠点やルートを効率的に整理・統合し、輸送効率を高める取り組みです。

全国に分散していた物流拠点を統一し、地域ごとに大型物流センターを設置し、集約された拠点から直接店舗へ配送することで、輸送ルートを簡略化したり、EC事業者が地方に小型配送センターを新設し、都市部からの長距離輸送を削減し、配送リードタイムを短縮することができます。

これにより、トラックの走行距離削減によるCO₂排出量の低減や配送時間短縮による顧客満足度の向上、在庫管理や輸送コストを一元化できるなどのメリットがあります。

輸配送の共同化

輸配送の共同化とは、複数の企業が物流ネットワークを共有し、トラックや倉庫を共同で利用することで、物流効率を高める取り組みです。

例えば、複数の食品メーカーが配送ルートを統合し、同じエリアに向けて共同配送を実施。トラック1台当たりの積載率を向上させ、配送回数を削減したり、中小企業が物流プラットフォームを利用し、共同配送や倉庫スペースのシェアを実現し、繁忙期の輸送需要にも柔軟に対応が可能になりました。

これにより、トラックの積載効率を最大化し、稼働台数の削減、配送コストの分担によるコスト削減、複数企業間の協力で環境負荷を低減できるなどのメリットがあります。

モーダルシフト

モーダルシフトとは、トラック輸送を鉄道や船舶などの大量輸送手段に切り替えることで、長距離輸送の効率化を図る取り組みです。

例えば、製紙メーカーが製品の長距離輸送をトラックから鉄道コンテナ輸送に切り替えたことで、年間で数万トンのCO₂排出量を削減できたり、食品業界が北海道~関東間の輸送にフェリーを導入し、トラックの稼働時間を削減し、輸送効率を向上しつつ、ドライバーの労働負荷を軽減することができました。

これにより、大量輸送が可能になり輸送コストの削減、長距離輸送時のCO₂排出量を大幅に削減、トラックドライバー不足への対応策として有効などのメリットがあります。

これらの取り組みを組み合わせることで、さらに大きな効果が期待できます。

物流総合効率化法の認定を受けるメリット

物流総合効率化法では、効率的で環境負荷の少ない物流プロジェクトを「総合効率化計画」として認定します。この認定を受けることで、企業は以下のような具体的なメリットを得られます。

補助金・税制優遇を受けられる

認定プロジェクトに使用する設備や施設に対して、固定資産税が軽減されたり、設備投資にかかった費用を早期償却できる特別償却制度や、一定額を税額控除できる制度が適用されたりします。また、国や自治体から、低利融資や補助金を受けられる場合があります。

初期投資負担を軽減し、資金繰りを改善でき、物流効率化プロジェクトの実現をスムーズに進めることができ、また、資金調達コストを抑えられ、中小企業でも物流効率化プロジェクトを進めやすくなります。

物流業務の効率化によるコスト削減

認定プロジェクトを実施することで、物流業務そのものが効率化されます。配送ルートの統合やモーダルシフトにより、輸送コストが削減され、自動化設備の導入で作業効率が向上し、人件費を抑制します。これにより、長期的な視点で、運営費用全体の大幅な削減が可能になります。

環境に配慮した物流が実現できる

物流総合効率化法は、環境負荷の低減を目的の一つとしています。モーダルシフトや輸配送の効率化で、CO₂排出量削減し、環境負荷を大幅に軽減します。認定プロジェクトを実施することで、環境に配慮した企業としてのブランド価値が向上し、投資家や取引先、消費者からの信頼が高まります。

労働環境の改善

物流業務の効率化は、働きやすい環境の整備にもつながります。効率的な配送計画やモーダルシフトで、長時間労働を削減し、ドライバーの負担軽減します。また、倉庫内での自動化設備の導入により、従業員の負担を軽減し、作業効率の向上にも繋がります。

 

物流総合効率化法の認定を受けることで、税制優遇や資金支援、規制緩和などの直接的なメリットを享受できます。また、物流業務の効率化や環境負荷の軽減により、企業としての競争力や社会的信用も向上します。この認定を活用し、持続可能で効率的な物流モデルを構築することは、企業の成長における重要な戦略といえるでしょう。

総合効率化計画の認定事例

事例①滋賀県大津市 大津営業所A号倉庫の新設に伴う輸送網集約事業

株式会社中央倉庫は、繊維素材を滋賀県内の物流拠点に保管し、各納品先に輸送していましたが、複数の物流拠点が存在し、非効率な物流体制となっていました。株式会社中央倉庫は輸送を担う中倉陸運株式会社と連携して、「大津営業所A号倉庫」を新設し、物流拠点及び輸送網を集約しました。これにより、以下を実現しました。

・トラック走行距離及びトラック台数を削減し、CO2排出量を削減(約39%)

・敷地内にトラック営業所を併設し、効率的な荷受け作業を実施することで、手待ち時間を削減(約85%)

国土交通省は、令和5年4月21日付けで改正物流総合効率化法の規定により総合効率化計画として認定しました。

事例②大阪府大阪市 咲洲物流センターの新設に伴う輸送網集約事業

株式会社フリゴは、寄託貨物(冷凍野菜、冷凍食品)の増大により北港物流センターや南港物流センターのスペース不足が慢性化しており、他社倉庫への再寄託及び横持ち輸送が常態化するなど非効率な輸送体制となっていました。株式会社フリゴは輸送を担う株式会社三和貨物と連携して、「咲洲物流センター」を新設し、物流拠点及び輸送網を集約しました。これにより、以下を実現しました。

・トラック走行距離及びトラック台数を削減し、CO2排出量を削減(約30%)

・トラック予約受付システムを導入し、効率的な荷受け作業を実施することで、手待ち時間を削減(約82%)

国土交通省は、令和5年4月28日付けで改正物流総合効率化法の規定により総合効率化計画として認定しました。

事例③佐川急便株式会社、西濃運輸株式会社 青森県下北地域のトラック共同輸配送

佐川急便株式会社と西濃運輸株式会社は、青森県下北地域に配送する一般貨物、宅配貨物について、両社で扱う貨物を一者の営業所に集約して共同輸配送を開始しました。これにより、輸送網の集約によるトラック利用台数の削減と総輸送距離の短縮を実現しました。

・トラックドライバー運転時間:約41.8%削減(▲約8,083時間/年)

・CO₂の排出:約54.0%削減(▲約89.5t/年)

事例④鈴与株式会社、鈴与カーゴネット株式会社、碧南運送株式会社、ASブレーキシステムズ株式会社 関西から九州への自動車部品輸送における船舶モーダルシフト

兵庫県内の生産工場から納品先である福岡県内2カ所までの自動車部品及び帰り荷の空容器・空パレットの輸送について、神戸港~新門司港間を内航船輸送にモーダルシフトすることにより、物流の効率化を図ります。

13mウィングシャーシを使用し、陸上輸送から無人航走での海上輸送へモーダルシフトを実施し、以下を実現しました。

・ CO2排出削減量:142.6tーCO2 (44.8%)

・ ドライバー運転時間省力化 3,080時間(75.3%削減)

参照)https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001716589.pdf

まとめ

物流総合効率化法は、物流業界が直面する課題に対応し、効率化と環境負荷の低減を同時に実現するために制定された重要な法律です。この法律の仕組みを活用することで、企業はコスト削減や業務効率化を進めるとともに、持続可能な物流モデルを構築することが可能になります。特に、配送網の集約やモーダルシフト、輸配送の共同化といった具体的な取り組みが、企業間連携や環境保護の面でも大きな効果を生んでいます。

一方で、中小企業の参入ハードルやインフラ整備の遅れといった課題も依然として存在します。これらの課題を乗り越えるためには、政府や自治体のさらなる支援と技術革新の加速が求められます。

物流総合効率化法をうまく活用し、業界全体で効率化を進めることは、経済の活性化だけでなく、持続可能な社会の実現にもつながります。未来の物流のあり方を形作るこの法律の意義を再認識し、より良い物流の実現に向けた取り組みを広げていくことが重要です。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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