物流効率化のカギを握る「CLO」制度の全貌と実務対応ポイントを徹底解説

物流効率化のカギを握る「CLO」制度の全貌と実務対応ポイントを徹底解説

物流業界が急速に変化し続ける現代、企業は効率的で持続可能な物流管理が求められています。こうした状況の中で注目されているのが、物流統括管理者、通称CLO(Chief Logistics Officer)です。CLOは、企業の物流全体を一元的に管理し、効率化やコスト削減を実現するためのリーダー的存在です。

本記事では、CLOとは何か、その設置が必要とされる背景、具体的な役割などについて、わかりやすく解説します。また、企業がCLOを導入することで得られるメリットもご紹介します。

物流効率化が重要視される今、CLOはどのような役割を果たし、どのように企業価値を高めるのでしょうか?その全貌を詳しく解説します。

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CLO(物流統括管理者)とは?

CLO(物流統括管理者)とは、Chief Logistics Officerの略称で、物流の適正化・生産性向上に向けた取り組みの責任者を指します。

2024年5月に改正された「物流効率化法」により、一定規模以上の荷主企業がCLOを選任することが義務付けられました。

対象となるのは、指定基準値「取扱貨物の重量9万トン以上(予定)」の荷主と連鎖化事業者(フランチャイズチェーンの本部)です。

CLOの資格要件

物流統括管理者の要件は、物流全体の持続可能な提供の確保に向けた業務全般を統括管理する者とされており、物流統括管理者の業務を遂行するためには、

運送(輸送)、荷役など物流の各機能を改善

調達、生産、販売等の物流の各分野を統合し、物資の流通全体の効率化の計画

関係部署間の調整や、取引先等の社外事業者等との水平連携や垂直連携の推進

などが求められ、これらの観点から事業運営上の決定に参画することになります。

このため、ロジスティクスを司る「CLO」としての経営管理の視点や役割も期待されていることから、基本として、重要な経営判断を行う役員等の経営幹部から選任されることが必要です。

CLO設置が注目される背景とは?

CLOの設置が注目される背景には、物流業界を取り巻く構造的な課題と急速な環境変化があります。以下では、その背景をわかりやすく解説します。

ドライバー不足の加速

2024年問題(労働時間規制強化)により、長時間労働が制限され、ドライバー確保がさらに困難になっているのが現状です。

また、日本のトラックドライバーは高齢化が進んでおり、新規就業者の減少に加え、若年層の物流業界への参入も少なく、人手不足が常態化しています。

物流コストの増加

燃料費の高騰や、ドライバーの人件費増加により、物流コストが年々上昇しています。また、荷待ち時間や荷役時間が長く、無駄なコストが発生しています。
企業はコスト削減のために効率化が求められています。

多重下請け構造の非効率

物流業界では、多重下請け構造が一般的で、指示系統が複雑になっていることもあり、中間業者の関与が多く、現場の声が経営層に届きにくいのが現状です。

CLOのような統括管理者がいないと、現場の効率化が進みにくいと考えられています。

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物流効率化法(2026年施行)の影響

2026年に施行される「物流効率化法」により、企業は効率的な物流運営が義務付けられ、ドライバーの待機時間削減、荷役作業効率化が求められることになります。

また、物流業務を統括する責任者である、CLOの設置が義務化され、企業は、物流統括管理者を明確にし、効率化計画を策定する必要があります。

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CLOに求められる主な役割とは

2024年5月に改正された「物流効率化法」では、CLOの役割を次のように定める方針です。

・中長期計画の作成

・トラックドライバーの負荷低減と輸送される物資のトラックへの過度の集中を是正するための事業運営方針の作成と事業管理体制の整備

・その他トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務

中長期計画の作成

特定事業者は、定期に判断基準を踏まえた措置の実施に関する中長期的な計画を作成することとされており、その作成期間は、毎年度提出することを基本としつつ、中長期的に実施する措置を記載することを踏まえ、計画内容に変更がない限りは、5年に1度提出することとなっております。

記載内容は、判断基準で示す取組事項を踏まえ、

「運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加」

「運転者の荷待ち時間の短縮」

「運転者の荷役等時間の短縮」

に関し、実施する措置、具体的な措置の内容・目標等、実施時期等を記載することとなっています。

その他トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務

その他トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のために必要な業務としては、以下の内容が取りまとめられています。

・定期報告の作成

・貨物運送の委託・受渡しの状況に関する国からの報告徴収に対する当該報告の作成

・事業運営上の重要な決定に参画する立場から、リードタイムの確保、発注・発送量の適正化等のための社内の関係部門(開発・調達・生産・物流・販売等)間の連携体制の構築

・トラックドライバーの運送・荷役等の効率化のための設備投資、デジタル化、物流標準化に向けた事業計画の作成、実施及び評価

・トラックドライバーの運送・荷役等の効率化に関する職員の意識向上に向けた社内研修等の実施

・物資の保管・輸送の最適化に向けた物流効率化のため、調達先及び納品先等の物流統括管理者や物流事業者等の関係者との連携・調整

出典)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/distribution/pdf/004_02_00.pdf

CLO設置により期待される効果とは?

企業間連携の促進

CLOを設置することで、企業間連携が強化され、物流の効率化やサービス品質の向上が実現します。

例えば、複数の企業と連携し、共同で配送や倉庫を運用することで、物流コストを削減できたり、在庫情報のリアルタイム共有や配送進捗の可視化など、企業間で物流データを共有し、効率的な運営を実現します。

物流DXの促進

CLOは、企業の物流業務におけるDXを強力に推進し、以下の効果を実現します。

・物流データの可視化と一元管理による迅速な意思決定
・AIによる需要予測と最適化で在庫・輸送の効率化
・デジタルツインや自動化機器で業務負担の軽減
・サプライチェーン全体でのデジタル連携強化
・データ分析による継続的な業務改善

CLOのリーダーシップにより、企業は競争力を高め、持続可能で効率的な物流運営を実現できます。

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物流標準化の促進

CLOの設置は、企業全体の物流業務を「標準化」することで、業務の効率化や品質向上を実現します。

倉庫内の作業手順、輸送業務、荷役作業など、物流現場の業務手順を統一し、作業ミスを減らし、効率を向上させ、また、物流に関する規格や仕様(パレットサイズ、ラベル表示、梱包方法など)を標準化し、取引のスムーズ化と効率化を実現します。

また、物流に関連するITシステム(WMS、TMS、ERPなど)を標準化し、データ連携をスムーズにします。

CLOは、物流の「ばらつき」を排除し、安定した高品質の物流運営を実現します。

この先、企業に求められるアクション

CLOの設置義務化は、物流業界に大きな変革をもたらします。企業は単なる法令遵守に留まらず、CLOの設置を契機に物流戦略を強化し、競争力を向上させることが求められます。CLOの設置義務化を受け、企業は以下のアクションを早急に実施する必要があります。

CLO設置と体制整備

経営陣の一員として物流統括管理者を設置し、権限を明確化させます。中長期の物流戦略立案、現場管理、企業間連携の推進など、業務範囲を明確化し、物流DX担当、データ分析担当、業務改善担当を配置するなど、CLO支援チームを構築します。

日本の大手企業でも、SUBARU、日野自動車、三菱食品、YKK APなどでは、すでにCLOの設置をしています。

物流データの可視化と一元管理

WMS(倉庫管理システム)、TMS(輸送管理システム)、AI需要予測ツールなどのデジタルツールの導入を促進します。

また、IoTセンサーで輸送中の温度・位置を監視し、品質をリアルタイムで管理し、配送時間、荷待ち時間、在庫回転率などをリアルタイムで監視できるKPIダッシュボードの構築も検討します。

物流業務の標準化

倉庫内作業、配送業務、荷役作業の標準化や、取引をスムーズにするためにパレットサイズ、ラベル表示、梱包方法を統一し、規格の標準化を図ります。

納品条件、料金体系、納期などの取引条件を明確化し、取引トラブルを削減することも重要です。

企業間連携の強化

共同配送の推進や、取引先企業と在庫データや配送データをリアルタイムで共有する、情報共有プラットフォームの構築を進めます。

また、災害時の代替ルート確保や緊急対応を企業間で共有し、CLOが災害時の輸送ルートを複数企業で共有し、迅速に対応できる体制を整えます。

DXの推進

AIによる需要予測の導入や、デジタルツインの活用を検討します。CLOがAI需要予測を導入し、在庫コストを削減したり、デジタルツインで倉庫作業をシミュレーションし、効率を向上させたりする必要があります。

また、無人搬送車(AGV)、ドローン、IoTセンサーなど、自動化機器の導入も検討します。

 

CLOの設置義務化により、企業は単なる法令遵守だけでなく、以下の効果を得られます。

物流の効率化:業務の標準化やDX推進で、コスト削減と品質向上を実現。

リスク管理の強化:BCP(事業継続計画)の策定で、災害時も安定供給を確保。

企業間連携の推進:共同配送、情報共有でサプライチェーン全体を最適化。

競争力の向上:効率的で持続可能な物流体制を構築し、他社との差別化を実現。

CLOは単なる管理者ではなく、企業の物流戦略をリードし、持続的成長を支える重要な役割を担います。

まとめ

CLOの設置は、物流業界の急速な変化に対応し、企業の競争力を高めるための重要な一手です。物流の効率化、標準化、企業間連携の強化を推進し、持続可能な物流運営を実現します。特に、2026年施行の「物流効率化法」により、CLOの役割は法的にも明確化され、多くの企業がその導入を急ぐことが予想されます。

CLOは単なる管理者に留まらず、物流の全体最適化をリードし、企業のサプライチェーン戦略を強化するリーダーです。AIやデジタルツインなど最新技術を活用し、物流データを一元管理し、効率化とコスト削減を実現し、企業はCLOの設置を通じて、変化する物流環境に柔軟に対応し、持続的な成長を目指すことが求められます。

CLOを効果的に活用し、企業の物流戦略を進化させましょう。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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