共同配送とは?
共同配送とは、複数の会社や業者が、各自の荷物をまとめて1台のトラックに積み、一緒に運んで同じ配送先に荷物を届ける仕組みのことです。
たとえば、A社とB社が同じ場所に荷物を届ける場合、これまでは別々のトラックを使って配達していましたが、共同配送なら、A社とB社の荷物を1台のトラックに一緒に積んで届けます。これによりトラックの数が減るため、ガソリンの使用量が少なくなり、CO2の排出も減り、また、配送効率を向上させることもできます。
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共同配送がもたらすメリット
コスト削減
共同配送では、複数の企業が1台のトラックを共有して荷物を運ぶため、燃料費や人件費などの運送コストを分担できます。これにより、各企業は個別に配送するよりも、経済的に運送を行えるため、中小企業にとって特に大きなメリットとなります。
環境負荷の軽減
トラックの台数が減ることで、CO2排出量が削減され、環境への負荷が軽くなります。共同配送は、企業の脱炭素化やサステナビリティの取り組みの一環としても注目されています。環境への負担を減らしつつ、持続可能な物流を実現します。
配送の効率化
トラックの積載率が向上することで、空荷で走ることが減り、効率的な運送が可能になります。さらに、配送ルートを最適化できるため、時間の短縮や迅速な配送も実現します。
業界全体の競争力強化
物流の効率化は、業界全体の競争力を高めます。配送時間の短縮やコスト削減により、企業は顧客により良いサービスを提供でき、顧客満足度の向上にもつながります。
ドライバー不足への対応
物流業界では、特にトラックドライバーの人手不足が深刻な問題となっています。共同配送を行うことで、一度に多くの荷物を効率よく運べるため、少ない人員で多くの配送を実現できます。
共同配送は、コスト削減と環境保護、そして業界の成長を支えるスマートな物流ソリューションです。
共同配送の実現に向けた課題
スケジュールと配送ルートの調整が難しい
共同配送では、複数の企業が協力して1台のトラックを使用しますが、それぞれの企業の配送スケジュールや荷物の扱い方が異なる場合、調整が複雑になることがあります。各企業のニーズをどのように一致させるかが大きな課題です。
また、荷物を一度にまとめて輸送するため、配送ルートが複雑になることもあり、遅延リスクが高まることがあります。
荷物の積載効率と種類の違い
共同配送を行う際には、トラックの積載効率を高めることが目的の一つですが、例えば、大きな家電製品と小さな雑貨を一緒に積む場合、空間がうまく使えず、積載効率が下がってしまうなど、荷物が異なるサイズや形状の場合、トラックの積載効率が悪くなる可能性があります。
また、冷凍食品や危険物など、特殊な管理が必要な商品は、他の荷物と一緒に運ぶことができない場合もあり、別々のトラックが必要になることがあります。
コストの分担方法
燃料費や人件費などの運送コストを企業間でどのように公平に分担するかは重要なポイントです。荷物の大きさや配送先の距離によっても負担が変わるため、適切な分担方法を見つけることが必要です。
距離や荷物の量に応じた適切な料金体系がないと、コストの負担が不公平になるリスクがあります。
技術導入のハードル
共同配送の効率を最大化するためには、AIを活用した配送ルートの最適化や、リアルタイムの追跡システムといった最新技術の導入が必要です。しかし、これには初期投資が伴い、特に中小企業にとっては大きな負担となることがあります。
サプライチェーン全体での連携が必要
共同配送を効果的に機能させるためには、荷主同士や運送業者の連携が不可欠です。
それぞれの荷主が異なる物流戦略や目標を持っているため、全員が同じ方向を目指すための合意形成が難しいことがあります。また、サプライチェーン全体の最適化を目指す場合には、荷主だけでなく、倉庫業者や運送業者とも緊密に協力する必要がありますが、これには時間とコストがかかることがあります。
荷物の追跡・管理が複雑になる
複数の荷主が同じ配送網を共有するため、配送中の荷物の状況をリアルタイムで正確に把握することが難しくなることがあります。
配送状況が複雑化することで、誤配や遅延が発生するリスクも高まるので、効果的な管理システムや荷物の追跡技術が求められますが、導入コストが高くなることも課題です。
共同配送は、物流業界における効率化やコスト削減、環境負荷の低減に大きなメリットをもたらす一方で、スケジュールやルートの調整、コスト配分の問題、荷物の管理の複雑さなど、いくつかの課題に直面しています。これらの課題を解決するためには、荷主間での事前調整や明確な責任分担、先進的な管理システムの導入が重要です。
物流業界がこれらの課題に対処し、適切に共同配送を活用することで、持続可能な物流の実現に近づくことが期待されています。
共同配送を支えるテクノロジー
共同配送を成功させるためには、以下のようなテクノロジーが活用されています。それぞれの技術が物流の効率化とコスト削減に大きく貢献しています。
共同配送に使用されるテクノロジーには、さまざまな最新技術が含まれています。以下はその代表的な例です。
AI(人工知能)による配送ルートの最適化
AIを使って交通状況や配送先の情報をリアルタイムで分析し、最適な配送ルートを選定する技術が使われています。これにより、燃料の節約や配送時間の短縮が可能になり、CO2排出量の削減にも貢献します。NECなどの企業は、このようなAI技術を共同配送プラットフォームに取り入れ、業界全体の効率化を目指しています。
IoT(モノのインターネット)を活用したリアルタイム追跡システム
IoTデバイスをトラックや荷物に装着することで、配送状況をリアルタイムで追跡できる仕組みが一般的になっています。これにより、物流業者や顧客が配送の進行状況を即座に確認でき、より柔軟な運用が可能です。
冷蔵食品や医薬品などの特定の商品では、温度管理や衝撃検知が重要です。IoTセンサーはこれらの条件を監視し、異常が発生した場合に即座に通知することで、品質を確保することができます。
クラウドベースのデータ共有システム
クラウド技術を使って、複数の企業が配送データを一元管理し、リアルタイムで共有するシステムも重要です。これにより、各企業が効率よく配送計画を立て、情報の透明性を保ちながら運営することができます。
荷主、運送業者、倉庫業者が同じプラットフォームでデータを共有することで、作業の遅延や重複を防ぎ、業務の効率化が図れます。さらに、クラウドを利用することで、どこからでもデータにアクセスできるため、迅速な対応が可能です。
データ分析とビッグデータ
過去の配送データ、天候情報、交通渋滞データなどをビッグデータとして解析し、今後の配送計画の最適化を行い、繁忙期や天候の悪化によるリスクを事前に予測し、対応策を立てることが可能です。
また、ビッグデータを活用して、どの地域でどれくらいの需要が発生するかを予測し、荷物の集約や配送ルートを最適化します。これにより、空車率の低下や無駄な走行を減らすことができます。
自動化とロボティクス
自動化技術やロボティクスも、共同配送を支える重要な技術です。
自動倉庫システムは、倉庫内での荷物の保管や取り出しを自動化するシステムで、ロボットが荷物を自動でピックアップし、適切な場所に保管・配送の準備を行います。これにより、人手を削減しつつ、効率的な作業が可能です。
将来的には、ドローンや自動運転トラックを利用した配送も一般化すると期待されており、これにより、配送の自動化と人手不足の解消が図れます。
これらのテクノロジーは、ヤマトホールディングスやNECなどの企業が積極的に活用しており、物流業界全体の効率化と持続可能な運送システムの実現を支えています。
成功事例から学ぶ共同配送の効果
大手コンビニ3社による共同配送実証実験
セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの3社は、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「スマート物流サービス」プロジェクトの一環で共同配送の実証実験を行いました。東京の湾岸エリアで2021年に実施され、結果としてトラックの回転率向上や積載率の改善、配送距離の短縮によるCO2排出量の削減が達成されました。
また、2022年には北海道・函館エリアでの実験も行われ、地方部の配送効率化にも貢献しました。今年の4月11日にローソンとファミリーマートで本格的に共同輸送が行われました。
参照:
https://www.meti.go.jp/press/2021/02/20220216003/20220216003.html
https://www.family.co.jp/company/news_releases/2024/20240408_01.html
https://www.lawson.co.jp/company/news/detail/1485922_2504.html
日本通運の食品共同配送
日本通運は、北海道や東北、新潟などの地域で食品や飲料の共同配送を行っています。各エリアで、複数の荷主の荷物を一括して配送し、物流コストの削減と配送効率の向上を実現しています。例えば、食品と飲料を一緒に積み合わせて配送することで、トラックの稼働台数を減らし、コスト削減を図っています。
参照:
ネスレ日本とJR貨物グループの連携
JR貨物との協力により、トラック輸送から貨物鉄道輸送への移行を進めている取り組みがあります。2024年には中距離輸送への拡大を実施し、島田工場(静岡県)から大阪への定期貨物鉄道輸送を開始しました。この取り組みで、年間約900トンのCO2排出削減を見込んでいます。
参照:
https://www.nestle.co.jp/sites/g/files/pydnoa331/files/2023-09/20230904_nestle.pdf
これらの事例は、環境負荷の低減やコスト削減に成功している点が共通しており、物流業界における共同配送の有効性を示しています。特に、効率化された配送ルートや情報共有システムの導入が、物流の最適化に大きく寄与しています。
共同配送の未来展望
共同配送の未来には、さらなる技術革新と業界の協力が求められています。AIやIoTを活用した配送ルートの最適化や、リアルタイムの情報共有による効率化が進み、より精度の高い配送が可能になるでしょう。
自動運転技術やドローンによる配送も普及し、ラストワンマイルの効率化が実現されると期待されています。
また、環境への配慮がますます重要視される中、CO2削減に向けた取り組みも強化されるでしょう。これにより、サステナブルな物流ネットワークの構築が進み、物流業界全体が持続可能な社会の一部として機能します。
さらに、企業間のデータ共有や協力が深化し、地域を超えた共同配送のネットワークが広がることで、物流のボトルネックを解消し、コスト削減と効率化を同時に実現する未来が見えてきます。
まとめ
将来的には自動運転やドローンの導入が期待されており、さらなる効率化と持続可能な物流ネットワークの構築が進むでしょう。共同配送は、物流業界の未来を切り開く鍵となる取り組みです。持続可能な物流の実現に向けた重要な手段となり、発展し続けることでしょう。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。