化学業界向けERP(企業資源計画)の基本知識・導入事例を紹介

化学業界向けERP(企業資源計画)の基本知識・導入事例を紹介

化学業界は、市場の競争優位性を確立するために業務の効率化が重要な業界です。ERPを導入することで情報の一元化が可能となり、業務効率の向上が見込めます。
今回は、化学業界向けERPの基本知識と実際の導入事例を紹介します。

ERP(企業資源計画)とは

ERPとは「エンタープライズ・リソース・プランニング」の略称で、業務の効率化・最適化を図る手法のことです。

企業の経営資源や情報を一元管理し、包括的な企業戦略を立てることが可能となります。ERPパッケージは、ERPの手法に基づき業務を効率化するための管理ソフトです。ERPパッケージは様々な業界や企業に対応できるように、製造・調達・購買・物流・在庫管理・販売・会計業務の機能が備わっています。近年では、化学業界向けのERPも多く開発されています。

ERPでできること

ERPを導入するとどんなことができるようになるのでしょうか。

主なものを5つ紹介していきます。

業務効率の向上

まず、ERPを導入すると業務効率の向上が可能です。今まで部署ごとに別々のシステムを利用して同じ情報を二重に登録していた、情報を後でまとめる作業が発生していた場合、ERP導入後は業務効率が大幅に向上します。

属人化を防ぐ

ERPは業務の属人化を防ぐ役割も持っています。属人化とは、ある業務を特定の担当者に頼っている状況のことです。業務の属人化は見過ごされがちですが、担当者が異動や退職などにより不在となった場合、問題が発生します。ERPを導入すると業務の標準化が可能となります。したがって、担当者が業務から離れた場合も、新しい担当者がスムーズに引き継ぐことができます。

リアルタイムで状況を把握

ERPを導入すると、企業情報をリアルタイムで把握することができます。ERPは製造・販売・会計などのデータがまとめて管理されるため、すべての社員がすべての情報をタイムラグなしに把握できます。ERPを導入すると、商品受注から発注、販売から在庫補充の時間を削減が可能です。

コスト削減

コスト削減も、ERP導入の大きなメリットです。ERPを導入すると業務効率化が叶うので、コストの削減になります。また、ERPパッケージを活用すると、スクラッチでERP開発する場合と比べて低コストでERPの導入が可能となります。

内部統制

内部統制の意味でも、ERPの導入は有効です。ERPパッケージは、システム利用状況や処理内容がログとして残ります。万が一不正が発生した場合も証拠を確保することができます。また、内部統制を行うために、1つの業務を複数の担当者が承認する場合もあるでしょう。ERPパッケージのワークフロー機能では、各書類の担当権限者を指定することができます。

化学業界にERPが向いている理由

化学業界にERPの導入が向いている理由は何でしょうか。

それは、化学業界は市場の変化に速く柔軟に対応する必要があるからです。
化学業界は石油への依存度が高く、世界情勢や原材料の価格に左右される業界です。化学物質・有害物質に関する規制も年々強化されています。化学業界特有の複雑な生産工程の管理を効率化するために、ERPの導入は非常に有効です。

プロセス製造業の業務特性に対応可能

化学業界の製造分野は、液体・ガス・粉体などを扱う「プロセス製造業」と固体を原材料とする「ディスクリート製造業」に分けられます。ERPの導入は、特にプロセス製造業に有効です。
プロセス製造業は、製造ラインが複雑で効率化が困難な分野です。1つの原料から複数の製品ができるので生産計画の管理が難しく、顧客や季節ごとに製品の企画・仕様が異なることもあります。プロセス製造業の業務効率化を叶えるためには、化学業界独自の機能が必要です。1から開発すると開発費用や工数がかさみ、コストがかかります。化学業界に特化したERPを選定して導入することが重要です。

化学業界のERP導入事例

ここからは、化学業界のERP導入の事例について解説していきます。

Dynamics365ERP

Dynamics365ERPは、Microsoft社が開発したERPパッケージです。
特有の業界領域に特化したテンプレートが用意されているので、別途開発を行わなくても化学業界の企業に合わせたERPが構築できます。また、Officeシステムと互換性があるので、生産性が向上します。日常業務を行っているシステムと一気通貫で利用できるからです。
Dynamics365ERPを導入した、ある企業の事例を紹介します。国内だけでなく世界中で多くの実績を持つERPであることから選定しました。Dynamics365ERPを導入して新しい基幹システムを稼働したことにより、原価と在庫の課題が解消されました。原価テンプレートを導入したことで実際原価と標準原価の差異が把握できるようになり、企業が必要としている原価管理が叶いました。発注量と在庫の最適化などの効果も期待されています。また、製品マスター情報を一元管理できるようになり、運用コストの低減も実現しました。

GRANDIT

GRANDITは、ユーザ目線でUIを構築しているERPです。ノートパソコンやタブレットでも利用できます。
外出先でも操作できるほか、テレワークにも対応しているERPです。また、多言語・他通貨に対応しており、海外拠点での利用も可能です。海外拠点を含めてリアルタイムで連携できるので、企業のグローバル化を支援できます。
GRANDITを導入した企業は、短期間導入が可能、拡張性と将来性が高いことから選定しました。各業務に精通したSEを専任で配置し、4ヶ月という短期間で導入が可能となりました。親会社が変更して新体制となった企業でしたが、自社(子会社側)で必要なのはパソコンだけで、コスト削減が実現。また、販売・会計データがリアルタイムに連携されたことで、従来は2週間かかっていた決算業務が10日に短縮できました。

オービック

オービックは、化学業界向けのERPを開発しています。製造・販売・会計・輸出入まですべての業務を一元管理できます。
化学品の商品特性に対応した在庫管理が可能なほか、chemSHERPAなど化学物質管理情報とも連携しています。
オービックを導入した事例では、化学業界特有の要件に適切・スピーディーな対応が実現しました。国内外の取引を一元管理し、業務の効率化が可能となりました。これは従来までの外貨管理の機能不備が改善したことが理由です。社内の情報を共有できたので、地域マネジメント支援が叶い経営体質の強化ができました。また、内部統制の強化により社内の信頼性が向上しました。

BizScenario

BizScenarioは、NTTデータグループが開発したERPです。業界ごとの業務特性に対応して、業務の最適化を実現できます。
BizScenarioを導入すると、基礎は必要な時に必要な情報を把握できます。マネジメント層は、整合性のある正しい情報の取得・共有ができます。また現場部門では、部門を超えた情報共有や業務連携が可能です。
BizScenarioの導入事例では、データの一元化、設備違い・手順違いごとの製品レシピの設定、生産計画の調整、画面からのExcelダウンロードなどを行いました。その結果、従来のシステムでできなかった業務を一元化でき、無駄な業務の削減が可能となりました。また情報共有による効率化も実現しました。

RossERP

RossERPは、化学業界・食品業界のプロセス製造業に特化したERPです。生産プロセスだけでなく購買、会計などの各乗務の機能も備えています。
RossERPの導入事例では、海外グループ会社の業務標準化が実現しました。化学品製造に特化していること、多言語対応が可能なこと、海外現地での導入サポートがあることから選定されました。導入後は、海外拠点に問い合わせすることなく、システムにアクセスして情報を取得できるようになりました。国内外の共通ITインフラを導入、従来はブラックボックス化されていた現地の業務効率も向上しています。

まとめ

今回は、化学業界向けのERPの基本知識、導入事例を紹介しました。

化学業界は、市場の競争優位性を確立するために業務の効率化が非常に重要となります。化学業界に特化したERPを選定し、情報の一元化やコスト削減、業務効率化を目指しましょう。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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