ERP(企業資源計画)とは?
ERPとは、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で企業にあるシステムを一元管理することで、業務の効率化や管理がしやすくなります。
ERPにはパッケージERPとクラウドERPがあり、自社の業務体系にあったシステムを運用することができます。
ERPの特徴
そんなERPにはどんな特徴があるのでしょうか。
紹介していきます。
マスターファイルの一元管理
一般的に、今までは人事、経理、生産などはそれぞれのシステムで行われてきました。
管理する情報によって、システムも1つ1つ分けていたということです。
しかし、それでは会社全体の生産性を上げたい時や売上規模の拡大を図る際などの総合的なデータを取りたいときには、それぞれのシステムからわざわざ必要なデータを取り出し、人の手で加工する必要がありました。
それを一元化することでデータ加工の工数を減らし、簡易的にデータの管理、抽出が可能になりました。
データのシステム間連携の自動化
一元化することで、システム間を連携することも可能です。
それぞれのシステムをアップロードする必要性はなく、アップロードするたびにそれぞれの分野のシステムも並行して、データのアップロードや修正することもでき、無駄な工数を省くことができます。
ERPでビジネス管理するメリット
続いては、ビジネスにおいてどのようなメリットがあるのかを紹介していきます。
企業のデータを一元化
上記でも記していますが、自社の経営基盤となる情報を一元管理することで、業務の効率化や正確な経営情報を算出することが可能になりました。
生産性が向上する
業務効率化が可能になれば、以前に比べて生産性の向上にもつながります。
人事や経理などのシステムとも連携して、業務を進めることができるので、どれくらいの人員で、どれくらいの予算で生産するべきかといった計算をリアルタイムの情報で改善を図ることができます。
リアルタイムかつ的確な経営判断
ERPの中にはシステムによっては、システム一元化だけではなく、経営分析機能までついているものもあります。
データを可視化することによって、現状把握やボトルネックになっている部分を抽出、分析しやすくなり、スピーディーな行動判断も可能になります。
セキュリティの一括管理
セキュリティ面の一括管理も可能です。
情報を扱う際に気をつけたいのが、情報の管理ではないでしょうか。
情報が漏洩されてしまっては、会社への信頼関係の崩壊にもつながります。
従来はシステムがそれぞれ違うこともありながら、セキュリティ対策もシステムによっては異なり、社内全体でセキュリティ対策を心がけても、浸透しにくいという現状がありました。
そうならないためにも、システムを一元化することで管理を簡易的にし、社員にもセキュリティ対策が浸透しやすくなりました。
とはいえ、ERPシステムを狙ったサイバー攻撃を完全に防げるわけではありません。
ERPを導入したからこそ、社内全体でのセキュリティ対策を全体でしていくことは意識しましょう。
情報システムの負担軽減
情報を一元化することで、本来のシステム管理の工数が減り、人為的なミスが少なくなります。
また、システム管理への手間も省くことができ、業務効率化につながります。
内部統制の徹底による企業の意識変革
一元化には集団を統制しやすくするというメリットもあります。
情報が社内でも可視化しやすく、管理も簡易的になったことから、他の部門の情報にも触れることで会社の問題を社内全体で把握することにつながります。
社内システムといった内部から統制をしていくことで、会社としての方向性や施策などを共有しやすくなります。
ERPの導入事例
ここでERPが実際に企業にどのように活用されているのかを紹介していきます。
株式会社アレースティ:レポート作成時間短縮
株式会社アレースティは自動車部品を中心として、事業展開するダイカストメーカーです。
原材料の調達から、金型生産、機械加工、技術開発など総合的に請け負っている企業です。
それぞれの問い合わせに対して、設計や部品の発注が異なるために見積書作成に1ヶ月以上かかることも少なくありませんでした。
それぞれの部署に必要書類を回覧し、署名が必要になるからです。
そこでアーレスティがERPを導入して、社内データを一元化することで業務の効率化を図りました。
その結果、レポート作成において大きな結果を発揮し、今まで全国の営業拠点からエクセル帳票を集めて、まとめていた作業に対して3〜4日かかっていたことに対して、レポートを瞬時に作成することが可能になりました。
NHKテコラス株式会社:顧客獲得プロセス改善
NHKテコラス株式会社はゲーム事業やコミックサービスを手掛けるNHKグループの傘下において、データセンタ事業を展開をしている会社です。
NHKテコラス株式会社が抱えた問題として顧客獲得のプロセスでした。
これまではセミナーなどで獲得していたリード情報(商品への「問い合わせ」「引き合い」「見込み客」「見込み客の情報」などをいう)は営業がフォローするという流れでしたが、業務が複雑化し、埋もれるケースが増えてくることで対応が遅れてしまうという問題が起きました。
この課題に対して、ERPを導入したところ、これまで1ヶ月以上かかっていたたフォローを1週間未満に短縮し、本来年間4回のセミナーを年間12回と増えすことで売上向上にもつながる導入効果を得ることができました
株式会社プロントコーポレーション:経営情報のリアルタイム可視化
株式会社プロントコーポレーションはカフェやバーといった飲食店を中心に企画・経営・フランチャイズ展開とコンサルティングサービスを提供している企業です。
株式会社プロントコーポレーションのSVは一人当たり、10店舗を担当するという負担の高い業務が課題でした。
店舗によって問題点が異なり、それぞれ作成されたレポートからどのように問題を解決していくかの経営判断をしていく必要がありました。
しかし、10店舗それぞれの経営戦略を練ることに1ヶ月以上かかるケースもあり、リアルタイムでの改善に欠けていました。
そこでERPを導入することで、これまで2週間以上かかっていた損益データの集計や発注履歴などSVがデータを入力した時点で、リアルタイムに可視化することが可能になり、サポートを迅速に行えるようになりました。
アキュウェザー:BIによるデータ分析の高速化
アキュウェザーは、世界有数の気象予測会社であり、マスコミ、企業、政府など17万5,000以上の顧客と取引を行っている会社です。
アキュウェザーでは、1日に170億件以上のAPIを処理しており、大量の情報処理を安定的に行う必要があります。
そのためにERPを導入しており、アナリストや販売チームは最新の顧客情報を利用できるようにしています。
BIと言われる、データ分析が数週間から数日になったことから、リアルタイムに近い速度での分析が可能になりました。
ハグラーシステムズ:重要データへのアクセス効率化
ハグラーシステムズは大規模な特注の採掘機器や浚渫機器を製造している会社です。
ハグラーシステムズでは全てのビジネスプロセスをERPによって最適化しています。
どこにいても管理者が重要データにアクセスすることを可能にし、販売機械やプロジェクト追跡を行えるようになり、会社と顧客との関係性が良好になりました。
ERPの導入のポイント
世界的な規模の会社では、扱うデータの量も多くなってくることからERPがもたらすメリットはその分大きなものになっていきます。
会社の規模に関係なく、データを一元化できるERPは今後のビジネスをより円滑に進めてくれるツールの1つなのではないでしょうか。
次はそんなERP導入の際のポイントを紹介していきます。
慎重な導入検討
ERPを導入する際には慎重に検討する必要があります。
導入した後の状況が当初の想定とあまりにも乖離していると、経営に大きな影響を与えてしまいます。
導入後の状況を慎重に想定し、想定に近い運用を開始できるように導入する際には慎重に検討しましょう。
目標設定
導入する際には、導入することで得られるメリットに対して、どのような目標をもつかが重要になります。
それによって、何を改善するべきか、どのように設定するかが変わってくるからです。
闇雲に導入するのではなく、目標を決めた上で導入を検討しましょう。
将来を見据えた拡張性
ERPはすぐにリプレイスできるほど簡単な製品ではありません。
将来性も鑑みて、拡張度の高い製品を導入していくことがいいでしょう。
実際に運用を進めていくと各事業部からのニーズや事業の方向性の変化に対応できるように柔軟性のある製品を選択しましょう。
まとめ
今回は、ERP(企業資源計画)の導入事例・解決可能な課題・導入メリットを紹介しました。
ERPを導入することで得られるメリットは、自社のビジネスをさらに飛躍させる可能性は十分にあります。
しかし、闇雲に導入すればいいというわけではありませんので、自社のビジネスにどのように当てはめていくのかを考慮した上で最大限に活用してみてください。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。