基幹システムの再構築の必要性
基幹システムとは、企業がビジネスを行うために必須な主要業務(基幹業務)をコンピューターで効率化したシステムのことです。
具体的には、会計管理、購買管理、生産・販売・在庫管理、人事・給与・勤務管理といったヒト・モノ・カネを扱っており、ERP(Enterprise Resource Planning)とも呼ばれます。
昨今、基幹システム再構築の必要性が多くの企業で重要視され、再構築を成功させるための方策が課題となっています。なぜ基幹システムの再構築が必要なのでしょうか。ここでは4つの理由を解説します。
既存システムの老朽化対応
老朽化した既存システムの扱いは多くの企業が抱える課題です。
「2025年の崖」という言葉をご存じでしょうか。経済産業省のDXレポートに含まれたキーワードで、複雑化・老朽化・ブラックボックス化している既存システムがこのまま残った場合、2025年にはこれに起因する諸問題が顕在化し、国際競争力の遅れと日本経済の停滞を引き起こすことを指した言葉です。老朽化した既存システムを維持できるエンジニアが不足すること、システム保守のコストが大きくかかること、リソース不足により新しい技術への対応ができないことが危惧されています。このような背景から、老朽化した既存システムの再構築は、多くの企業の喫緊の課題になっています。
業務の効率化や標準化対応
基幹システムの再構築により、業務プロセスの全自動化と標準化が可能です。現在残っている手動の作業を自動化することで、業務の効率化と人的ミスの削減を図ります。また、業務システムによって作業フローが異なる場合、その作業プロセスを統一して標準化できます。標準化によって作業者の知恵や経験によらず、誰でも作業できるようになります。
分断化されたシステムの統一
会社全体でシステムを統一し、各部門の持つデータを全社データとして活用してビジネスを加速するためには、基幹システムの再構築が必要です。
これまでは、企業の各部門が自部門の業務を最適化するためにシステムを導入することが主流でした。そのため部署間でシステム連携がされておらず、会社全体として分断されたシステムがいくつも存在する状態になっています。分断化されたシステムは、データの収集・加工に多くの工数を使い非効率ですが、システムの統一により改善が可能です。
経営情報の可視化
基幹システムの再構築によって、企業経営に必要な情報が一元管理され、リアルタイムで抽出できるようになります。
分断されたシステムで発生している部門ごと集計やデータまとめといった作業工程を省けるため、迅速な経営判断を可能にします。
基幹システムの再構築の際のポイント
企業が基幹システムの再構築を検討するうえで、気を付ける4つのポイントを解説します。
現状調査に基づく必要なシステムの選定
再構築を行うために必要な工程として、まず既存システムの現状について徹底的な調査・評価をします。
現状の基幹システムは、何の課題が起きているのか、その原因は何か、何をすればその課題は解決できるのかをしっかり整理します。時間がかかる工程ですが、課題と原因を明確にすると、その解決策と、本当に自社にとって必要なシステムは何かが見え、その後の再構築にスムーズにつながります。
システムの更新時期や更新までの期間の調整
自社ビジネスの状況を考慮し、システムの更新時期やリードタイムを調整することもポイントです。
基幹システムのような大きなシステムは、再構築にとても多くの時間を要します。基幹システムの更新によって、業務に多少影響が出たり、新システムは不具合が発生したりする可能性もあるため、ビジネスの繁忙期は避け、適切な更新時期と、余裕を持った日程を調整してください。
関連設備の調整
基幹システムの更新に伴い、システムに関連する什器や設備などの見直しも必要になります。
従来のシステムでは問題なくても、新システムに対してはスペックが追い付かない可能性もあります。サーバー、パソコン、プリンターなどのハードウェアを含めて新システムの業務に耐えうるものか確認をし、あわせて更新の調整をしましょう。
取引先やクライアントとの協力体制
新システムへの更新で、取引先やクライアントに提出している帳票やデータのフォーマットが変わる可能性があります。
取引先には、新システム移行についての連絡と協力を依頼し、新システム移行後は書類やデータを確認してもらいましょう。また、関連機器のメンテナンス会社にも、新システム対応を依頼するようにしてください。
基幹システムをクラウド化するメリット
基幹システムの再構築が検討される中で、クラウド化を有力な選択肢としている企業もあります。
クラウド化によってどんなメリットがあるのでしょうか。ここからは8つのメリットを紹介します。
管理コスト・運用負担の軽減
クラウドの場合、提供されるサービスの管理・運用はクラウド事業者が行います。利用料を支払うのみなので、管理コストや運用負担は大きく軽減されます。
システム再構築の手間削減
クラウドサービスでは、ハードウェアやOS、ソフトウェアの更新やサポート終了があっても対応は事業者が行い、サービスとして利用継続できます。従来のように自社でシステムを再構築する必要がなく手間が削減できます。
サーバー増強やシステム変更をオンデマンドで実現可能
クラウドを利用すると、サーバーの増設や縮小といった変更を、Web上で容易に行えます。従来のように自社でサーバーの設置やシステム構築する作業が不要です。
(災害など)イレギュラーの際の安全性
クラウドサービスでは、システムが稼働するサーバーは自社とは別の場所にあるデータセンターに設置されています。
大きな災害や火災で自社が被害を受けた場合でも、基幹システムは止まらないためビジネスの継続性は守られます。
いつでも、どこでも利用できる
基幹システムがクラウド化されれば、インターネットのつながる環境であればいつでもどこでも利用可能になります。
社内パソコンなどからしか利用できなかった従来の自社運用と異なり、外出の多い営業担当やテレワークも社外からシステムのアクセスできるため、大きく業務効率が向上します。
最新にアップデートされる
クラウドサービスでは、不具合修正やアップグレード等のソフトウェアの更新は事業者により自動で行われるため、自分で対応する必要なく常に最新の状態で利用可能です。
セキュリティの問題も解決
年々高まっている情報漏洩やサイバー攻撃などのリスクに対して、情報セキュリティ対策は必要不可欠です。
クラウドサービスでは事業者が強固な対策をしているため、自社で対策するよりも安全で最新なセキュリティ対策がコストをかけずに受けられます。
外部との共有も楽々
基幹システムのクラウド化によって、外部関係者との連携もスムーズになります。
税理士に送る仕訳データや社会保険労務士に提出する申請書類等は、従来のようにメールやFAXを使用せずにシステム上でデータ共有が可能です。作業の手間が省ける上に、システム上では常にデータが最新状態になるため、そのまま電子申請もできるようになります。
基幹システムをクラウド化するデメリット
メリットの多い基幹システムのクラウド化ですが、デメリットもあります。
自社開発に比べて、カスタマイズと他システムとの連携の自由度が低いことです。
クラウドシステムを検討する際は、自社に必要な機能を実現できるか、他システムとの連携が可能かを事前に確認することが大切です。
まとめ
基幹システムの再構築でクラウド化は企業にとって有力な選択肢になっています。メリット・デメリットをしっかり把握したうえで、クラウド化をぜひ検討してみてください。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。