カーボンニュートラルの取り組みに必要なスコープについて詳しく解説

カーボンニュートラルの取り組みに必要なスコープについて詳しく解説

カーボンニュートラル2050年宣言とは

カーボンニュートラルの2050年宣言とは、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体で実質ゼロにすることを指します。日本では2020年に、当時の菅首相によって宣言が出されました。

2050年と具体的な期限が示されたのは、2050年までに実現させないと地球の平均気温が加速度的に上昇してしまうからです。人類が今後も地球で健康的に暮らしていくためには、産業革命前と比べて平均気温の上昇を1.5℃までに抑えなければいけません。その目標を達成するためには、2050年までのカーボンニュートラル実現が必要不可欠です。温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしない限り、地球の平均気温は上昇し続ける可能性があります。そうなれば人類が健康的に暮らせなくなるため、各国がカーボンニュートラルの実現に向けて能動的に取り組んでいます。

 

サプライチェーン排出量とは

2050年までにカーボンニュートラルを実現するには、サプライチェーンの温室効果ガス排出量を抑制しなければなりません。サプライチェーンとは、企業単体ではなく商品・サービスの提供に関わるすべての企業を指します。カーボンニュートラルは地球規模の課題なので、一企業だけが取り組んでも解決しません。サプライチェーン全体で取り組むことが求められています。つまり、大企業だけでなく中小企業も、カーボンニュートラルの当事者です。

 

スコープ1・2・3の特徴

スコープはサプライチェーンの温室効果ガス排出量と向き合う上で重要な指標です。スコープはスコープ1・スコープ2・スコープ3と3種類に分類されます。スコープ1・2は自社、スコープ3は自社以外です。それぞれの特徴について解説します。

スコープ1

スコープ1は、自社で直接排出しているCO2が該当します。たとえば工場で工業炉を使用、製造設備での燃焼、焼却炉の使用などで排出されるCO2は、スコープ1に分類されます。

スコープ2

スコープ2は、自社で間接排出しているCO2が該当します。間接排出とは、主に自社以外で生産しているエネルギーを使った場合です。たとえば電気がわかりやすい例です。電気を社内で使用しても、電気自体は自社以外で発電していることが多いです。その電気がもしも火力発電だったら、そこでCO2が排出されてしまいます。このように間接的なCO2の排出は、スコープ2に分類されます。

あくまで自社以外の発電でなおかつCO2を排出する発電方法に限りますので、自家発電や再生可能エネルギーによって発電された場合はスコープ2に該当しません。そのため再生可能エネルギーを導入すれば、スコープ2の削減が可能です。

スコープ3

スコープ3は自社以外のいわゆるサプライチェーンによるCO2排出が該当します。スコープ3は上流と下流に分けられます。上流は原材料・通勤・輸送・配送で、下流は製品の使用・廃棄です。

また、スコープ3はカテゴリーが合計で15個に分かれています。カテゴリーの1から8までが上流、9から15までが下流です。それぞれどのように分類されているのかを、次の項目でそれぞれ紹介します。

 

スコープ3のカテゴリー

スコープ3のカテゴリーは、CO2を排出するシチュエーションによってそれぞれ分類が異なります。いったいどのような分類になっているのかを、いくつかピックアップして解説します。

カテゴリ1購入した製品・サービス

自社で製造する時や製品に使う原材料・部品・容器などは、カテゴリ1の購入した製品・サービスに該当します。スコープ3は自社以外のサプライチェーンが対象なので、外部委託しているケースも当然含まれます。

カテゴリ4輸送・配送

製品の物流や配送によって排出されたCO2は、カテゴリ4の輸送・配送に該当します。これは上流なので、製造した部品を自社に輸送する場合などが対象です。いかに環境に配慮した輸送方法に切り替えられるかが、カテゴリ4を削減するポイントです。

カテゴリ5事業から出る廃棄物

企業が事業をおこなえば、どうしても廃棄物が出ます。それを自社以外で処理する場合は、カテゴリ5の事業から出る廃棄物に該当します。ちなみにこの場合の輸送は、ガイドラインで任意の算定対象に定められています。

たとえば食品を扱う事業者なら、賞味期限切れなどで廃棄する商品などが該当します。廃棄物をバイオマス燃料として再利用することで削減が可能です。

カテゴリ11販売した製品の使用

販売した製品が使われた際に排出されるCO2です。たとえばアウトドア向けのガスバーナーが、消費者に使われた時に排出されるCO2が該当します。いかに商品のCO2排出量を抑えられるかが削減のカギを握ります。

カテゴリ14フランチャイズ

自社が主宰するフランチャイズの加盟店が排出する、スコープ1・スコープ2の排出量です。コンビニエンスストアをイメージするとわかりやすいかもしれません。再生可能エネルギーへの切り替えなどで削減するのが一般的です。

 

スコープ3の企業事例

スコープ3のカーボンニュートラルにどんな企業が取り組んでいるのか、イオン・カルビー・ユニチャームを事例に挙げて紹介します。

イオン株式会社

イオン株式会社は2018年にイオン脱炭素ビジョン2050を策定しました。サプライチェーン全体でカーボンニュートラルの達成を目指しています。たとえば2030年までに、国内全店舗の50%を再生可能エネルギーに切り替える方針です。さらに、森づくりプロジェクトを発足させ積極的に植林をおこなったり、資源循環型社会の実現を目指してさまざまな取り組みを実施しています。たとえば店頭での資源回収や、食品廃棄物の削減などです。

また、2006年には海のエコラベルといわれるMSC認証商品の販売を開始したり、フェアトレード認証・オーガニック認証の商品を取り扱うように推進しています。イオンがある地域の消費者が安心して生活できるように、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルに取り組んでいます。

カルビー株式会社

カルビー株式会社は日本を代表する菓子メーカーですが、スコープ3のカテゴリ1に該当するCO2排出量が多いことを問題視していました。原材料および包装容器などを製造する工程で、少なくないCO2を排出していたのです。この状態を一刻も早く改善するため、スコープ3の算定を活用してCO2排出量削減に精力的に取り組んでいます。また、配送にも目を向け、CO2排出量が少しでも削減できるように努力を重ねています。

カルビー株式会社のような大手企業がスコープ3のカーボンニュートラルに率先して取り組むことで、業界をしっかりとリードしています。

ユニ・チャーム株式会社

2022年5月、ユニ・チャーム株式会社はスコープ3の温室効果ガス可視化プロジェクトに関する告知をしています。ユニ・チャーム株式会社は2020年に環境目標2030を公表し、気候変動対策に前向きに取り組む姿勢を見せています。カーボンニュートラルの実現に向け、本格的に取り組む方針です。

まずは温室効果ガスの可視化から始め、排出量の削減に取り組みます。スコープ3の可視化なので、ユニ・チャーム株式会社だけが取り組むわけではありません。サプライヤー・ベンダーにも自助協力を求め、サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量の削減を目指す意向です。

こうした取り組みを大々的に広めることで、ユニ・チャーム株式会社は業界全体のモデルケースになろうとしています。また、業界を横断することも見越して、一翼を担っていくことを目標に掲げています。一部分だけに限らず全体のことも見据えている、スコープ3のカーボンニュートラル事例です。

 

まとめ

企業がカーボンニュートラルに取り組む上で必要なスコープ3について、詳しく解説しました。スコープ1・スコープ2とは異なり、スコープ3は自社以外で排出されるCO2の合計です。スコープ3はカテゴリーが全部で15個あり、それらの排出量を合計したものがスコープ3の数値です。イオン・カルビー・ユニチャームなどがスコープ3の改善に積極的に取り組んでいますし、3種類あるスコープの中でも特に重要な項目です。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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