デジタル化社会において欠かせないのがAI技術です。
近年、AIは目覚ましい成果を遂げながら開発が進められています。中でも注目を浴びているのが強化学習です。機械学習の1つである強化学習は、身近な生活の中でたくさん活用されています。しかし具体的にどんなところで使われているのか、どういった技術なのか知らない人も多いはずです。
この記事では、そんな強化学習について活用事例とともに詳しく解説していきます。またメリットとデメリットも紹介しているので、最後までご覧ください。
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強化学習とは
AIやコンピューターなどの「エージェント(学習者)」にデータを与えて学習させる「機械学習」の手法のひとつです。
人間でいうと、机に向かってじっと考えるのではなく、実際に走り続けながら考えることと同じです。
では強化学習とは具体的にどういうことなのか、もう少し詳しくみていきます。
強化学習の概要
強化学習はエージェント(学習主体)と環境の2つの要素からできています。
ある環境下でエージェントが行動することによって状態が変化していき、報酬を多く得るためにはどうしたら良いのかを学習していく仕組みです。またその行動を評価していき、より良い結果を導けるように方法を探していきます。ロボット自身が目的のために試行錯誤するため、人間のパフォーマンスを上回ることも可能でしょう。
この強化学習が話題になったのは2016年、囲碁AIがプロの囲碁棋士に勝利したというニュースです。この囲碁AIには強化学習の技術が使われています。ロボット自らが試行錯誤しながら、勝利という目的のためにどう打っていけば良いのかを学び続けてより価値のある行動を学習していくのが強化学習の技術です。
強化学習の期待
強化学習はビジネスにおいて、まだ完璧に活用されていません。しかし、現代における複雑な問題を解決へ導いてくれるのではないかと期待が高まっています。
私たちがより良い結果を出せたとしても、それまでのプロセスが正解だったのかを判断するのは難しいでしょう。しかし強化学習は1つの行動自体を見直していくので、基準をはかるのが難しい場面でも対応できます。
また、囲碁を含めてさまざまなゲーム、車の運転といった人間が行ってきたことの代わりができることから、脳の学習メカニズムと似ていることがわかります。そしてロボットは人間より情報処理が早いので、膨大なデータから高精度な分析ができるディープラーニングと相性抜群です。
そのため、問題解決に向けて状況に応じた対応が可能なのはもちろん、人間よりも精密に分析できます。
強化学習の活用事例
ここからは強化学習の活用事例をまとめました。実は、強化学習は身近なものにも活用されています。
ゲーム
ゲームは強化学習が得意な分野です。
2015年にはDeepMind社がAIにゲームを強化学習させて、人間と同じまたはそれを上回るスコアを叩き出しました。ゲームはいかに高いスコアを出すか、ゴールタイムを早めるかということが目的なので、AIが繰り返し行動することでどんどん上達していきます。
産業ロボット
産業においても、ロボットの強化学習が進められています。人間が作業する上で危険だったり効率化をはかったりするためにも、AIロボットは必要不可欠です。
しかし強化学習はデータを分析するまでに長い時間を要するため、産業ロボットに活用するのは少しハードルが高いといわれています。そんな中、群馬県高崎市にあるOKIデータLED統括工場では、双腕ロボットと強化学習を組み合わせて最適化を実現しました。
ロボットの行動結果をフィードバックし、より的確な動作を獲得することで、現場技術者の負担を減らしていけます。
AIロボット
AIロボットは人間が行う作業をシステム化して、コンピュータで実現することです。人間の形をしたものもあれば、ペットのようなものも存在しています。介護現場や農業、産業などあらゆる場面で活用され、強化学習することで複雑な動きも可能になるでしょう。
例えば動物の形をしたペットロボットは本物の動物の動きを何度も学習することで、四足歩行を習得できます。歩行制御においてより長く歩くためにはどうしたら良いのか、バランスのとり方や関節の動き方に活用されています。
掃除ロボット
便利家電として有名なロボット掃除機の「ルンバ」や床拭きロボットの「ブラーバ」は経路を最適化し、可能な限り多くのゴミが収集できるように強化学習が活用されています。掃除機をかけることが多い曜日や時間からパターンを学習したり、侵入しない経路を自動検知したりとユーザーの好みに合わせることが可能です。
ロボットとしての機能はもちろん、ユーザーのライフスタイルにそった提案をしてくれるでしょう。
機械学習のメリットとデメリット
機会学習は多くのデータを分析して、最適なパターンを見つける方法のことです。
「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つのカテゴリがあり、AIを支えていく重要な技術として活用されています。さまざまなことができる機械学習ですが、メリットもあればデメリットもあるので、それぞれ詳しくまとめました。
機械学習のメリット
機械学習は人件費削減やコストカットが可能です。ロボット自身が学習してくれるため、データを入力したり出力したりする作業がいりません。不良品の検査や文字を打たなくても済む音声認識など、より正確に判断できるようになります。
AIロボットを導入することで作業の効率化がはかれるのはもちろん、素早い情報処理が可能です。
機械学習のデメリット
機械学習はいろいろなことができる反面、学習に膨大な時間が必要です。人間では処理できないような数のデータを分析するため、それなりに時間を要します。
また、最適化された結果が人間にとって必ず合理的になるとは限りません。間違ったまま予測が進むと、原因の追究が難しくなるという点はデメリットといえるでしょう。
強化学習への課題
ロボット自身が学習する強化学習は先端技術ですが、ビジネスでは完璧に実用されていなかったり、産業へ導入するのが難しかったりと課題もあります。
では、なかなか実用化されない強化学習の課題とは一体何なのでしょうか。
複雑な環境への対応
行動を繰り返して最適化をはかる強化学習は、複雑な条件を必要とする環境が苦手です。例えば強化学習が適用されている自動運転は、標識や信号機といったさまざまなルールが存在しています。また歩行者や自転車など、状況が変化する要素が盛りだくさんです。
周囲の事態から判断の良し悪しを決定するためには実際のデータが必要ですが、その学習モデルに依存してしまう可能性があるでしょう。安全に運転を進めるためにも、精度を高める研究が行われています。
機械学習の不信感の払拭
機械学習は分析の過程がわかにくいブラックボックス化が課題です。
ブラックボックス化とは内部の構造がわかりにくいことをいいます。仮に正しい結果が出たとしてもプロセスが間違っている場合があるのです。結論に至った根拠が不明確だと不信感を抱く原因となります。
深層強化学習への期待
深層強化学習はディープラーニングと強化学習を組み合わせた技術です。
2016年に登場したAlphaGoという囲碁AIに活用されていました。現状を把握し行動、評価を繰り返して学習していきます。このときのロボットが試行錯誤する回数は人間と桁違いです。何度も学習しながら、最適な行動を見出していきます。
ディープラーニングとの融合による複雑な活用環境への対応
ポーカーや麻雀などの不完全情報ゲームにも対応できるように、研究が進んでいます。不完全情報ゲームは相手の情報が把握できないゲームのことで、AIにとって苦手な領域です。
しかし事実、囲碁AIはプロ棋士に勝利しています。また運の要素もあるポーカーでもAIが勝てるように、TuomasSandholm氏が率いる研究チームではポーカーAI「Libratus」を開発しました。トッププレイヤーたちを打ち破ることで、複雑な活用環境への対応が進んでいます。
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まとめ
強化学習はさまざまな分野において活用されていて、私たちの身近なところにも存在しています。まだ課題が多くあり、産業業界ではなかなか強化学習は進んでいません。しかし、今後上手く活用されることで業務の効率化が実現されていき、より豊かな生活が送れるでしょう。
またAIと人間がお互いに高め合って成果を出していくことで、さらなる発展が期待できます。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。