今さら聞けない、生成AIとは?ChatGPTとの違いや種類・活用事例について詳しく解説

今さら聞けない、生成AIとは?ChatGPTとの違いや種類・活用事例について詳しく解説

生成AI(ジェネレーティブAI)とは?従来のAIとの違いは?

 

生成AI(ジェネレーティブAI)は、新しいデータを自動生成する能力を持つ人工知能の一種です。この技術は、音楽、テキスト、画像、ビデオなど、人間が創造的に生み出すあらゆる種類のコンテンツを生成するために使われます。生成AIの最大の特徴は、既存のデータから学習し、そのデータセットには存在しない新しいデータを「創造」することです。

従来のAIとの明確な違いは、「反応的」から「創造的」へのシフトにあります。

つまり「オリジナルのコンテンツを作成できるか」どうかです。

従来のAIは主にデータの分析やパターン認識に用いられてきましたが、生成AIはこれに加えて、新しいデータやアイディアを生み出す能力を持っています。

生成AIも従来のAIも事前に情報を学習させる必要がある点や、指示された内容を分析して回答する点は同じですが、生成AIは、学習した情報から、オリジナルのコンテンツを作成して提示することができ、文章や画像を作るだけでなく、アイデアを考えて提示することもできます。

また、生成AIを使った代表的なツールであるChatGPTのように自然な会話ができるのも特徴のひとつです。

一方、従来のAIでは、指示の内容を分析し、適切だと思われる情報をピックアップして提示するのみで、オリジナルコンテンツの作成はできません。

生成AIの進化により、デザイン、作曲、記事執筆、プログラムコードの生成など、多岐にわたる分野での活用が進んでいます。この技術は、創造性を必要とする作業を自動化し、人間の可能性を拡大させる新たな道具として注目されています。

 

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生成AIの種類

生成AIには様々な種類があり、それぞれ異なるデータタイプやタスクに特化しています。下記に主な種類を列挙します。

コンテンツ生成AI

生成AIは、テキスト、画像、音楽、動画などの新しいコンテンツを生成する能力があります。従来のAIは主に分類や予測などのタスクに特化しているのに対し、生成AIは創造的なタスクを実行できます。

例:GPTシリーズ(OpenAIのGPT-3など)、BERT(自然言語理解にも使われるが、生成タスクにも適用可能)

 

画像生成AI

生成AIは、完全に新しい画像を生成したり、既存の画像を編集することができます。これは、特定の条件やプロンプトに基づいて実行されます。

例:Stable Diffusion

 

音楽生成AI

自己回帰モデルは、一連の音符や音を逐次生成することで音楽を作成します。

完全な音楽トラックや特定のスタイルに基づいたメロディを生成します。

例:Magenta(Googleが開発)、AIVA、Amper Musicなど

 

ビデオ生成AI

自己回帰モデルは、一連のフレームを逐次的に生成することで、連続したビデオを作成します。特定のアクションやシーンを含むビデオや、簡単なキャラクターアニメーションの生成ができます。

例:Synthesiaなど

 

テキスト生成AI

トランスフォーマーモデルは、自然な言語テキストを生成する能力があります。記事、物語、詩などのテキストの生成や、チャットボットや対話型エージェントによる自然な会話の生成ができます。

例:OpenAIのGPT-4

 

3Dモデル生成AI

3Dモデルを生成し、仮想環境やゲームで使用することができます。建物やインテリアの3Dモデルや、ゲームや映画のための3Dキャラクターの生成ができます。

例:NVIDIAのGANverse3D

 

生成AIは、これらの技術を駆使して、多種多様なコンテンツを生成し、クリエイティブなプロセスを自動化し、革新的なソリューションを提供します。

これらのAI技術は、深層学習モデルを基にしており、大量のデータからパターンを学習し、新しいデータを生成することができます。それぞれのAIは特定のタイプのデータに特化しており、実際の応用範囲は非常に広いです。

 

生成AIに用いられるモデルって?

生成AI技術は様々なモデルを用いて、テキスト、画像、音声、ビデオなどのデータを生成します。これらのモデルは、大量のデータを学習して新しいコンテンツを創出する能力を持ちそれぞれ異なるタイプのデータとタスクに適しており、用途に応じて選ばれます。

 

生成的敵対ネットワーク(GAN)

画像生成モデルの一種ですが、「Generator」と「Discriminator」という2つのネットワーク構造を利用して新たな画像を生成します。

GANは二つのネットワーク、生成器と識別器が競合しながら学習を進めるモデルです。生成器が新しいデータを作り出し、識別器がそのデータが本物か偽物かを判定します。このプロセスを通じて、GANを利用すると、解像度の低い画像から高解像度の画像を生成したり、テキストから全く新しい画像を生成したりすることが可能です。

 

変分オートエンコーダ(VAE)

ディープラーニングを活用した生成モデルです。AIの学習用データから特徴を学び取り、そのデータの特徴をもとに「学習用データと似ている新しいコンテンツ」を生成することができます。

VAEは、特定の傾向を持つ複数の作品を学習し、その作風に近い作品を生み出すことに向いているので、イラストレーターや画家の作品を学ばせて、作家の特徴を持った新しいイラストを生み出すことなどに活用できます。

また、VAEは複雑性の高い画像の特徴を捉えることにも適しているため、構造が複雑な工業製品の異常検知などにも利用されています。

 

GPT

GPT-3やGPT-4は、OpenAIが開発したLLM(大規模言語モデル)です。特にGPT-4は、GPT-3を大きく凌駕する性能を持ち、非常に高精度なテキスト生成が可能です。

GPTとは、Generative Pre-trained Transformerの略で、生成領域で利用される事前学習されたトランスフォーマー、という意味になります。トランスフォーマー(Transformer)モデルは、2017年にGoogleが発表したディープラーニングモデルで、多くのLLMの基盤となっています。

 

GPT-3を利用したテキスト生成系AIとして、OpenAIが開発した「ChatGPT」が挙げられます。長文の要約やリサーチ時間の短縮化、新たなアイデアの創出など、さまざまな場面で活躍が期待されています。

GPT-4は、GPT-3を開発したOpenAIが提供する大規模言語モデル(LLM)の1つで、指示(プロンプト)に対して非常に高精度なテキストを出力します。ユーザーはまるで人間と会話しているかのような体験ができます。

 

フロー型モデル

「データ変形関数」と呼ばれる数値を学習します。データ変形関数により、データがどのように生成されたかを逆算することで、複雑なデータをシンプルで理解しやすい形に変換し、これをもとに新しい画像や文章を生成することが可能となります。

VAEやGANと異なり、2つのモデルを学習せず、データ変形関数という数値だけを学習することで新しい画像や文章を生成できる点が特徴です。

 

拡散モデル

画像生成系AIの「Stable Diffusion」や「DALL-E2」などに採用されているモデルです。拡散モデルは、データにノイズを加え、ノイズを取り除くプロセスを学習して新しいデータを生成します。ノイズ除去プロセスにより、高品質なデータ生成が可能で、データ生成が多段階にわたるため、細かな調整が可能な点が特徴です。

 

拡散モデルを活用することで、GANよりもさらに高解像度な画像を生成することが可能になることから、拡散モデルは、GANの発展形ともいえます。

これらの生成AIモデルは、それぞれ異なる特性と強みを持ち、さまざまな生成タスクに応用されています。各モデルの具体的な特性と応用例を理解することで、生成AIの多様な可能性をより深く理解することができます。

 

生成AIでできることとできないこととは?

生成AIは多くの可能性を秘めていますが、その能力には明確な限界も存在します。ここでは、生成AIが何ができるか、そして何ができないかを簡潔に解説します。

できること

新規コンテンツの生成

AIはテキスト、画像、音楽、ビデオなど、既存のデータから新しいコンテンツを生成することができます。例えば、画像生成AIは新しいアート作品を創造し、テキスト生成AIは記事や物語を書き上げることが可能です。

 

データ拡張

既存のデータセットを拡張することで、機械学習モデルの訓練に多様なデータを提供し、その性能を向上させることができます。

 

クリエイティブなデザイン

自動車や家具などの製品デザインを最適化するために使用したり、合成アバターを使ったビデオ生成など短いビデオクリップを生成することができます。

パーソナライズ

個々のユーザーの好みや過去の行動に基づいて、パーソナライズされた推薦やコンテンツを生成します。

 

できないこと

完全な意思決定

生成AIはあくまでデータに基づいて学習し生成するツールであり、倫理的な判断や複雑な意思決定を自ら行うことはできません。

 

文脈の完全理解

特にテキスト生成において、生成AIは文脈を誤解することがあります。また、特定の専門知識やニュアンスを完全に理解し、適切に反映させることには限界があります。

 

創造的なイノベーション

AIは既存のデータや例から学習するため、根本的に新しいアイデアや革新的な発想を生み出す能力には限りがあります。

 

生成AIは多くの分野で革新的な可能性を提供しますが、依然として人間の創造性や倫理的判断、深い文脈理解には及ばない部分があります。これらの限界を理解した上で、生成AIを適切に活用することが重要です。

 

生成AIを活用したサービスの事例

画像生成

DeepArt

写真や画像からアートスタイルを適用し、新たなアート作品を生成するサービスです。ユーザーは自分の写真をアップロードし、有名な画家のスタイル(例:バン・ゴッホやピカソ)を適用して、オリジナルのアート作品を作成できます。

 

自動生成漫画プロジェクト

富士通は、テキストのシナリオから自動的に漫画のビジュアルを生成する技術で、漫画のコマを自動生成するプロジェクトを進めています。

 

ゲームキャラクターデザイン

スクウェア・エニックスは、生成AIを使ってゲームのキャラクターデザインを支援するツールを開発しています。この技術は、キャラクターの初期デザインから細部のディテールまでを自動的に生成します。

 

テキスト生成

ChatGPT

OpenAIによる対話型AIで、人間のようなテキストを生成することができます。顧客サポート、コンテンツ作成、教育目的など、幅広い用途で活用されています。

 

ニュース生成「AI記者」

株式会社ディープマインドは、ニュース記事を自動生成する「AI記者」を開発しました。ニュース分野では、重要な出来事に関する速報記事を迅速に提供したり、スポーツ分野では試合結果や選手のパフォーマンスに基づいた記事を自動生成したりできます。

 

音楽生成

Amper Music

ユーザーが指定したジャンル、気分、持続時間に基づいて、オリジナルの音楽トラックを生成します。映像制作者やゲーム開発者が背景音楽を容易に得るための手段として利用されています。

 

Amadeus Code

Amadeus Codeは、AIを利用して新しいメロディを生成するアプリケーションです。ユーザーは音楽のスタイルやテンポを指定し、AIがそれに基づいてオリジナルのメロディを生成します。

 

ヤマハのAI音楽プロジェクト

ヤマハは、AI技術を使って自動作曲や編曲を行うプロジェクトを進めています。AIが音楽理論や過去の作品データを学習し、新しい楽曲を生成します。

 

ビデオコンテンツ生成

Synthesia

テキスト入力からビデオスピーチを生成するサービスで、多言語に対応しています。企業がトレーニングビデオやマーケティングコンテンツを効率的に作成できるよう支援します。

 

プログラミングコード生成

GitHub Copilot

OpenAIのCodexモデルを基にして開発されたAIペアプログラマー。

プログラマーのコーディングを支援するAIツールで、コメントやコードの一部から関連するコードスニペットを提案します。プログラマーがコードを書く際に、次に書くべきコードを提案したり、自動で補完したりします。

 

Amazon CodeWhisperer

AWSが提供するAIコード生成ツールです。開発者がAWS環境で効率的に開発を行うための補助ツールとして機能します。

 

ファッションデザイン生成

Stitch Fix

AIを用いて顧客の好みや流行を分析し、パーソナライズされたファッションアイテムを提案します。顧客一人ひとりのスタイルに合わせた衣類選びをサポートします。

 

Heuritech

AIを使ってファッショントレンドの予測と分析を行うプラットフォームです。ブランドやデザイナーが次のシーズンのトレンドを予測し、新しいデザインを計画するために使用したり、消費者の好みや傾向を分析し、マーケティング戦略を最適化することもできます。

 

企業の生成AI活用事例

Adobe Photoshop
Adobe Senseiを利用した機能である「Content-Aware Fill」は、画像から不要なオブジェクトを自動的に削除し、削除した部分を自然に補完する技術です。この機能により、デザイナーやフォトグラファーは画像編集の時間を大幅に短縮できます。

 

Spotify
Spotifyは生成AIを活用して、ユーザーの過去の聴取履歴や好みに基づいてパーソナライズされたプレイリストを生成します。この技術により、ユーザー体験を向上させ、リスナーに新しい音楽を発見させる機会を提供しています。

 

Netflix
Netflixでは、視聴履歴や評価からユーザーの好みを学習し、個々のユーザーに合わせた映画やテレビ番組の推薦を行っています。このパーソナライズされた推薦システムは、ユーザーがコンテンツを探す手間を省き、エンゲージメントを高める効果があります。

 

Airbnb
Airbnbは機械学習を用いて物件の写真から自動的に魅力的なキャプションを生成する技術を開発しました。これにより、リスティングの魅力を向上させ、利用者により詳細な情報を提供しています。

 

Zalando
ヨーロッパの大手ファッションECサイトZalandoは、AIを用いてトレンドを分析し、消費者の好みに合わせたファッションアイテムを推薦するサービスを提供しています。また、顧客のフィードバックから学習し、よりパーソナライズされたショッピング体験を実現しています。

 

これらの事例は、生成AIが企業のオペレーションを効率化し、顧客体験を向上させるためにどのように利用されているかを示しています。

 

まとめ

生成AIはデータを基に新たなコンテンツを生み出す技術で、テキスト、画像、音楽、ビデオなど多岐にわたります。これにより、クリエイティブな産業だけでなく、ビジネスプロセスの自動化やパーソナライズされたユーザー体験の提供が可能になります。

AIの進化は止まることなく、その応用範囲は日々拡大しています。生成AIの理解は、現代のデジタル化された社会を生き抜く上で必要不可欠なスキルと言えるでしょう。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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