近年様々な課題に直面している物流業界では、大手企業を中心にDXへの取り組みが進められています。各企業によって取り組んでいる施策は異なるものの、デジタルツインを中核としているケースは少なくありません。
デジタルツインを初めて耳にした方も多いと思いますが、物流DXを推進する鍵になると考えられています。デジタル化が求められている物流業界においては、今後不可欠な要素と言えるでしょう。
デジタルツインとは?
様々な業界でデジタルツインに対する関心が高まっていますが、物流業界でも大きな期待が寄せられています。労働力不足や高齢化、ドライバーの労働環境悪化など、現在の物流業界は多くの課題に直面しています。こうした課題を解決するための手段としてDXがありますが、その一端を担うとされるのがデジタルツインです。
デジタルツインの概要
デジタルツインとは、現実の膨大なデータを活用し、仮想空間(デジタル)上に再現する手法を指します。ツインという文字どおり双子の意味で、リアルのコピーをデジタルで生み出すのが特徴です。デジタルツインはリアルタイム性があり、リアルのデータが常時デジタルへフィードバックされます。
このような仕組みによって高精度な運用が可能となり、システム全体の安全性や信頼性を高めることができます。膨大なデータも得られるため、業務の効率化や省力化にも寄与する可能性を秘めています。
デジタルツインの類語にデジタルトリプレットがあります。デジタルトリプレットは仮想・現実に知識(AI)を加えた概念ですが、デジタルツインでもAIが活用されており、両者に明確な違いはありません。
シミュレーションとの違い
デジタルツインはシミュレーションと似ていますが、大きな違いはリアルタイム性です。シミュレーションの場合、所定のデータを元にシミュレートしますが、基本的にデータは固定されています。そのため、データを変更しない限り結果が変わることはありません。
一方のデジタルツインは、データがリアルタイムにアップデートされています。データに応じて結果が変動する他、より現実に即した状況を再現することができます。
所定の状況に基づいた結果を求めるのであれば、従来のシミュレーションでも問題ありません。しかし、より多彩な結果や精度が求められる場合、デジタルツインが適しています。
デジタルツインはDX推進の鍵に
DXは物流業界が抱える課題の解決に寄与しますが、デジタルツインの活用があってこそです。デジタルツインを抜きにDXを推進しても、導入できる施策や取り組みは限られてしまうでしょう。これから物流DXを進めるのであれば、デジタルツインを中核に推進することをおすすめします。中核にすることでDXがよりスムーズに進むだけでなく、様々なメリットが生じます。
業務効率の向上
デジタルツインを導入することで、業務効率の改善や向上が期待できます。例えば、現実で人員配置やプロセスのルールを変更すると、業務に大きな支障を生じてしまう恐れがあります。そこでデジタル上に同様の状況を再現すれば、どのような結果になるのかを事前に把握できます。万が一失敗しても、デジタル上であれば業務に与える影響はほとんどありません。データはリアルタイムに更新できるため、より現実的な結果を得られるでしょう。
遠隔での監視
デジタルツインは遠隔による監視も可能にします。現場では、もしもの時に担当者がすぐ動けるように直接監視する体制を整えているのが一般的です。しかし、現場へ常駐しなければならないため、貴重な人員を監視業務に割かなくてはいけません。
デジタルツインを導入すれば、デジタル上でリアルタイムに現場を再現することができます。現場に担当者が常駐する必要がなくなるため、適正な人員配置も可能にします。場合によっては、一人の担当者が複数の現場を監視する体制も構築できるでしょう。
期間短縮
リードタイムを短縮できる点も、デジタルツインの強みです。例えば、倉庫現場などで作業指示を出した場合、スタッフ一人ひとりの経験によって業務効率に違いが生じます。経験の少ないスタッフは業務に慣れず、少なからずロスが発生するでしょう。
デジタルツインを導入すれば、リアルタイムに作業指示を出せる他、細かいデータも即時に反映させられます。スタッフが不慣れな場合でも指示内容やデータをすぐ参照できるため、作業スピードの向上が期待できます。逐一情報を参照できることから、経験豊富なスタッフの作業スピードもアップするでしょう。
安全性の保持
安全管理にもデジタルツインが寄与します。従来は担当者が現場を巡回し、機器や設備をひとつひとつチェックする必要がありました。しかし、デジタルツインで機器や設備のデータを連携すれば、異常を検出した際にアラートを発せられます。
予防保全ができるのはもちろん、速やかに現場へ駆けつけ、機器・設備の点検をすることも可能になります。現場の負担軽減だけでなく、人員の適正化やコスト削減も実現できるでしょう。
物流業界でもデジタルツインが続々導入
効率化から安全性の向上まで、デジタルツインには様々なメリットがあります。導入を検討中の方も多いと思いますが、物流業界ではすでにデジタルツインの導入が始まっています。
企業ごとに多彩な取り組みが実施されており、業務効率化などを達成したケースも少なくありません。業務効率の改善や労働力不足でお悩みなら、デジタルツインの導入を検討してみましょう。
物流業界でのデジタルツインの事例
実際のデジタルツインの事例をいくつか紹介します。物流業界におけるデジタルツインは、まだ浸透し始めたばかりです。しかし、今後は重要な技術になる可能性が高いため、前向きに導入を検討するべきです。自社の問題点を洗い出し、デジタルツインによる再現を進めてはいかがでしょうか。
日立物流
1950年創業の日立物流では、デジタルツインを活用して車両の輸送効率を検証するなど、積極的に活用しています。同社は、デジタルツイン上で利益やコストを検証できるサービスも提供しています。
利益やコストを検証できるサービスでは、調達や輸送をモデル化し、サプライ全体のシミュレーションを可能にしています。
アスクル
アスクルでは、DXをより一層進めるために独自のデータプラットフォームを構築しています。このプラットフォームでは物流のデジタルツインを実現しており、各種業務での実用化に向けて取り組んでいます。
最終目標はサプライチェーン全体の課題解決・最適化で、今後の取り組みに要注目です。
Datumix
AI開発企業のDatumixでは、デジタルツインとAIを組み合わせたシステムの構築に取り組んでいます。主に物流倉庫のシミュレーションに特化しており、様々なシミュレーションが可能です。
人員計画や導線、レイアウトなどをデジタル上で再現し、課題解決や効率化に寄与します。
デジタルツインの実現ならアイディオットが徹底サポート!
高精度なシミュレーションが可能なデジタルツインですが、実現する手段が問題になります。導入前に実現方法を検討しなくてはいけませんが、迷ったらアイディオットに相談しましょう。豊富な実績を元に、デジタルツインの導入をサポートします。
戦略立案から実行支援まで可能なAidiot
アイディオットでは、DX/デジタルツインの戦略立案から導入や実行まで、ワンストップで行っています。労働力不足やコスト増加など、多くの課題に対して最適な解決方法を提案可能です。デジタルツインの導入でお悩みなら、アイディオットを検討してはいかがでしょうか。
データから未来を予測するサービス「ADT」でデジタルツインを実現
アイディオットでは、ADTという独自のサービスを提供しています。ADTは豊富なデータを使って未来を予測するサービスで、車両情報の可視化や人材計画のシミュレーションが可能です。省力化やコスト削減はもちろん、脱炭素化に向けた取り組みも実現できるでしょう。
まとめ
DXが進められている物流業界ですが、その根幹を担っているのがデジタルツインです。リアルの膨大なデータを使用するため、通常のシミュレーションよりも高い再現性があります。労働力不足などの課題でお悩みなら、デジタルツインで解決に向けた取り組みを実施しましょう。
この記事の執筆・監修者

「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。