時代の変遷に乗り遅れないようにと新規事業を立ち上げることは重要ですが、その一方でさまざまなリスクがあることを忘れてはいけません。一筋縄ではないかないのが、新規事業の特徴です。
新規事業に悪影響を及ぼすリスクを回避したりダメージを軽減させるためには、事前のリスク分析が欠かせません。企業が新規事業を立ち上げる際は、検討すべきさまざなリスクが存在します。徹底してリスク分析をおこない、新規事業で損失を出さないようにしましょう。
新規事業におけるリスク分析のステップ
新規事業におけるリスク分析は、然るべきステップを踏んで実施することが大切です。どのようなステップを踏むのか、3つのステップに分けてそれぞれを紹介します。
リスクのリストアップ
リスク分析の最初のステップは、リスクのリストアップです。リストアップする際のポイントは、限定的には考えずにさまざまな視点で事業を見ることです。
そもそも法律に抵触していないか、ユーザーに健康や金銭の被害が出ないか、他人の権利を侵害しないかなど、あらゆる角度から見てリスクをリストアップしないといけません。
さらにハード面のリスクとして、デジタルリスクを必ずリストアップしましょう。たとえばサーバーがサイバー攻撃されるリスクはもちろんのこと、パソコンやスマホなどデジタル端末の紛失・破損のリスクもあります。
また、より視野を広げてリストアップするためには、取引先や提携企業などの声にも耳を傾けましょう。
リスクの評価・分析
リスクのリストアップが完了したら、次はリスクの評価・分析フェーズへと移行します。評価・分析は、リスクが生じる確率・リスクによる影響の大きさ・経営面への影響の主な3項目に分類できます。
それぞれのリスクを評価して分析することは、以下で説明する対処方法の検討や、新規事業について誰かに説明する時の材料になります。特に3項目のすべてにおいて無視できない重大なリスクは新規事業の命運を左右しかねませんので、リスク分析は慎重かつ丁寧におこなう必要があります。
損害発生時の対処方法
時間をかけてリスク分析する意味の1つに、損害発生時の対処方法の検討が挙げられます。損害発生時の金銭的リスクを検討する場合は、想定できる限りの最大被害額を算出しましょう。そして、最大被害額を自社だけでカバーできるかどうか、財務状況をつぶさにチェックします。
もしも自社だけでカバーできない時は、さまざまな保険を有効活用するか、それでも厳しい場合は新規事業の一部見直しを図りましょう。
リスク分析におすすめのフレームワーク『リスクマップ』
リスク分析をするのにとても便利なのが、リスクマップと呼ばれるフレームワークです。リスクマップの魅力は、先ほどの項目で紹介したリスクの頻度や影響度を、客観的な視点で確認できることです。
一言にリスクと言っても数多くあるので、可視化して対処の優先順位をつけなければいけません。リスクマップは、優先順位をつけたり絞り込むのに有効的です。リスクマップを上手く活用し、リスクとしっかり向き合いましょう。
新規事業におけるリスクマップの使い方
新規事業におけるリスク分析でリスクマップをどのように使うのか、使い方について解説します。
自社アセットとのカニバリ
リスクと聞くと対外的なイメージを抱きやすいですが、まず検討したいのは自社アセットとのカニバリです。新規事業の立ち上げが、既存事業に必ずしも好影響を及ぼすとは限りません。新規事業が既存事業を阻害してしまい、どちらも立ち行かなくなるケースがよく見受けられます。特に代理店などが絡んでいる場合は要注意です。
新規事業を立ち上げる前にリスクマップを使ってリスク分析をおこない、既存事業を阻害しないか確認しましょう。きちんとリスク分析をすれば、損失を出すことなく未然に防げます。
サービスの仕様決め
プロトタイプでサービスの仕様を決める場合も、リスクマップが効果を発揮します。ユーザーへの価値を提供可能な機能かどうかを、リスクマップを参考に判断します。リスクマップを使えば、ユーザーが満足するボーダーラインを探りやすくなります。新規事業に合ったプロトタイプ作りに役立ちます。
新規事業におけるリスクマップの作り方
ではいったいどのようにしてリスクマップを作るのか、リスクマップの作り方について紹介します。
リスクの細分化
リスクは多種多様なので、できる限り細分化する必要があります。まずリスクを性質に合わせてジャンルごとに大別し、それぞれを分けながら整理すると細分化しやすくなります。
たとえば商品・サービスの欠陥や開発の遅れなどは根幹が原因のリスクですし、労災やソフトウェアの障害などは、商品・サービスの周辺にあるリスクです。他にも世界情勢の影響による原材料の高騰などは外的要因のリスク、設備・事業戦略の失敗は経営リスクに分類できます。
このようにリスクを分類しながら細分化していきましょう。
リスクの数値化
細分化したリスクを、今度は数値化します。リスクが生じる確率と影響の大きさをもとに、まず算出する方法を決定しましょう。数値化することで、リスクを客観的に判断できます。また、数値なので、比較しやすいのが魅力です。
リスクの可視化
リスクを単に数値化しただけでは全体像を把握しにくいので、可視化してよりわかりやすくします。リスクをマッピングしてリスクマップを完成させます。
縦軸を損害規模の大小、横軸をリスクが生じる確率の高低とし、それぞれのリスクをマッピングします。
リスクの細分化の項目で、リスクをジャンルごとに大別する方法を紹介しました。リスクをわかりやすくするためには、ジャンルごとにカラーを分けてマッピングするのがおすすめです。そうすることで、どんなリスクがある新規事業なのかを正確に分析できます。
たとえばリスクマップの最も右上に位置するリスクは、リスクが生じる確率が高くて損害規模も大きい、決して看過できないリスクだとわかります。そのリスクが根幹の原因によるリスクで赤色にカラーリングし、周辺にも赤色のリスクが点在していたら、その新規事業は根幹が原因のリスクに最も気をつけなければいけないとわかります。
リスクを細分化して数値化しただけではピンとこないこともありますが、可視化すればリスクが鮮明になります。リスクマップは、リスクについて視覚的に把握できるとてもわかりやすい図表です。
各リスクへの対応方法
それぞれのリスクへの対応方法ですが、リスクマップを上下左右に4分割して対応の方向性を検討すると柔軟に対応できます。
先ほども例に挙げたリスクマップの右上に位置するエリアは、対応方法をしっかりと考えておく必要があります。そのリスクが回避できるように、事前に手を打っておくのが望ましいです。
一方左下に位置するエリアは、対応の優先順位が最も低いです。リスクの生じる確率が低くて損害規模も小さいので、仮にそのリスクが起こってもそれほど大きいダメージは受けません。
すべてのリスクに対して同じレベルで対応しようとすると大変ですし、コストもかかってしまいます。リスクマップによってリスクをそれぞれに分け、緊急度の高いリスクから順に対応していきましょう。リスクに合った対応策を講じれば、リスクを効率良く抑えられます。
まとめ
新規事業で欠かせない、リスク分析について詳しく紹介しました。新規事業にリスクは必ずついてまわるものなので、しっかりリスクマネジメントしなければいけません。リスクに対して何も手を打たなかったら、最悪の場合新規事業が頓挫してしまったり、撤退を余儀なくされます。
リスクをむやみに恐れると新規事業は前に進みませんが、リスクマネジメントを一切しないのも無謀です。おすすめのフレームワークのリスクマップについて紹介しましたので、有効活用してリスクにしっかり備えましょう。
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この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。