物流倉庫は物流全体の中で拠点のような存在です。倉庫業務は大きく分けて、
・倉庫に入荷した荷物の荷役・検品・移動などの「荷受け」
・ピッキング・検品・梱包・荷役などの「出荷」
の2つになり、それらに事務的な作業が付随します。
単純そうに見えますが小さな無駄がありがちで、それらの積み重ねが膨大なロスにつながります。しかしAIを活用することで倉庫業務を効率化できることをご存知でしょうか。
この記事では倉庫業務でAIを活用するメリットと、その実例を解説します。
拡大する世界の物流市場!2032年の物流市場規模を大予想!
物流市場は世界的に拡大を続けており、REPORTOCEANが発行したレポートによると、日本貨物及び物流市場は、2023年から2032年までに3091.9億米ドルから5109億米ドルまでの収益増加が見込まれ、2024年から2032年の予測期間にかけて年平均成長率(CAGR)が 5.74%で成長すると予測されています。
特に、最近では、新たな技術の導入により、物流市場がより効率的かつ持続可能なものに変わりつつあります。例えば、自動運転技術や人工知能の導入により、物流業界は大幅に効率化され、環境にも配慮した持続可能な取り組みが進んでいます。
また、日本Eコマース物流物流市場は、2023年から2032年までに213.1億米ドルから329億米ドルまでの収益増加が見込まれ、2024年から2032年の予測期間にかけて年平均成長率(CAGR)が 4.95%で成長すると予測されています。
Eコマースの急成長は、日本のEコマース物流市場のダイナミックな発展を推進する重要な要素となっており、消費者がますますオンラインショッピングを利用するようになるにつれ、信頼性が高く効率的な物流サービスに対する需要が急増しています。
より多くの個人や企業が、必要な買い物をデジタルプラットフォームで行うようになるにつれ、物流企業は、費用対効果に優れ、タイムリーな配送というますます高まる要求に応えるため、適応する必要に迫られています。これら全ての要因が国内市場の成長を促進しています。
出典)https://www.reportocean.co.jp/industry-reports/japan-ecommerce-logistics-market
サービスの品質も向上
新しい技術や革新的な取り組みにより、物流サービスの品質が向上することで、顧客満足度の向上やコスト削減、環境に配慮した持続可能な物流などのメリットが生まれます。
具体的には、物流企業がIoT(モノのインターネット)やセンサー技術を活用することで、物流プロセスの可視性や追跡能力が向上し、配達時間の短縮や配送品質の向上が期待されます。また、自動運転技術やロボット技術の導入により、作業の自動化や人的ミスの削減、効率化が進むことで、物流作業の品質向上につながると考えられます。
さらに、輸送手段の電動化や再生可能エネルギーの利用、物流センターの省エネルギー化など、グリーンロジスティクスへの取り組みも進むことで、環境に配慮した持続可能な物流サービスの提供が期待されます。
以上のことから、2032年の物流市場において、新しい技術や革新的な取り組みにより、物流サービスの品質が向上し、顧客や社会にとってメリットのある物流サービスが提供されることが期待されます。
まだまだ拡大中!?拡大する物流市場が抱える大きな課題を理解しよう!
物流市場の参入業者にとっては市場の拡大は歓迎すべきことです。しかし実際は拡大し続ける市場にキャパシティーが追い付かない現実があり、それに関して様々な課題が浮き彫りになっています。
ここからは物流の中で最後の部分を担う「配送」で起こっている悪循環について、その実態を見ていくことにします。
深刻な労働力不足
拡大する物流市場が抱える大きな課題の一つは、深刻な労働力不足です。 物流業界は、人手不足が深刻な問題となっており、特にドライバー不足が深刻な状況にあります。これは、高齢化や若者の物流業界への就職意欲の低下などによる人口減少によって、労働力不足が顕著になっていることが原因の一つです。
低賃金・長時間労働によるドライバーの負担急増
また、低賃金や長時間労働によるドライバーの負担急増も、物流業界が抱える課題の一つです。
トラックドライバーの平均年収は大型447万円、中小型399万円で、全産業平均の490万円を下回っています。特に現場で輸送に携わる20代から30代の収入が低く、人材不足の大きな原因になっています。
(出典:2016年度国土交通省発表資料)
社会全体が人手不足であれば、あえて重労働なイメージがあって低収入な仕事を選択するでしょうか。答えは明らかです。さらに悪循環と言えるのが、作業量に対して人手が足りないため、ドライバー1人当たりの負担が増えてしまい、平均的なドライバーの時間外労働は平均で年間400時間前後にもなります
(出典:厚労省・改善基準告示見直しについて)。
特に、物流業界ではドライバー不足が深刻なため、ドライバーの労働時間が長くなりがちです。そのため、過労による事故や健康被害のリスクが高まっています。
この問題に対して、物流業界は、労働環境の改善や働き方改革、新しい技術の導入などを検討しています。ドライバーの負担を軽減する、自動運転技術の導入や、ドライバーの福利厚生や待遇の改善、働き方の見直しなどを進めることで、ドライバー不足問題に取り組んでいます。
以上のことから、物流市場が抱える労働力不足やドライバーの負担増などの問題に対して、業界全体での対策が必要とされます。労働環境の改善や働き方改革、新しい技術の導入などが、問題解決に向けた解決策の一つとして期待されています。
倉庫業務はAI活用に向いている?AI導入で課題の解決が可能な課題とは?
労力・コストの削減
AIは、膨大なデータを分析し、予測分析を行うことができます。そのため、倉庫業務においては、在庫の管理や入出荷の予測、倉庫内の荷物の配置などの最適化に役立ちます。これにより、作業員が手作業で行っていた業務を自動化することが可能となり、労力とコストを削減することができます。
業務効率化により労働負担も軽減
倉庫業務においては、在庫の受入れや出荷、棚卸し作業など、多くの業務があります。これらの業務をAIによって自動化することで、作業員の負担を軽減することができます。また、作業員が集中して作業に取り組めるようになるため、作業のミスやトラブルのリスクも低減することができます。
ルートの最適化による配送効率化
配送の最適化には、倉庫内での作業だけでなく、ルートの最適化も重要です。AIによるルート最適化により、複数の配送先を効率的に回り、配送時間や燃料コストを削減するなど、配送の効率化が可能となります。これにより、配送のスピードアップや効率化を図ることができます。
以上のように、倉庫業務においてAIを活用することで、労力・コストの削減や業務効率化、ルートの最適化など、多くの課題の解決が可能となります。AIの導入によって、倉庫業務の生産性や精度が向上することが期待されます。
あの企業はもう導入しています!大手企業のAI × 倉庫業務の活用事例大解剖!
倉庫でも大規模なところではAIを活用し業務を効率化した事例が多く見られます。それらを見ると、物流における合理化の大きなヒントが見えてきます。
ここではAIを倉庫業務に活用した事例を見ていくことにしましょう。
アマゾンの倉庫でのロボット活用
アマゾンは、倉庫でのロボット活用に積極的に取り組んでいます。アマゾンの倉庫では、自動運転ロボットによる在庫管理が行われており、商品を自動的に運び、棚に戻すことができます。また、商品のピッキング作業にもロボットが活用され、作業効率を高めることができます。
フェデックスのAIによるルート最適化
フェデックスは、AIを活用したルート最適化により、配送業務の効率化を図っています。配送先や配送時間、道路の状況などの情報をAIが分析し、最適なルートを提案することで、配送の時間短縮やコスト削減を実現しています。
DHLのドローンによる在庫管理
DHLは、ドローンを活用して在庫管理を行っています。倉庫内での在庫チェックや棚卸し作業を、ドローンによって自動化することで、作業時間の短縮や作業精度の向上を図っています。
これらの大手企業によるAI × 倉庫業務の活用事例は、労力・コストの削減や業務効率化、ルート最適化など、様々な課題の解決に貢献しています。AIを活用することで、倉庫業務の生産性や精度が向上することが期待されます。
AI活用はハードルが高い… アイディオットにお任せください!
「AI(人工知能)」と聞くと「うちのように大手でもない物流倉庫には関係ない」と思いがちで、とかくハードルが高いことのように感じるものです。
しかし世の中には身の丈に合ったAI活用の用法があり、そんな悩みはアイディオットに相談することをお勧めします。ここではAI導入のハードルと、アイディオットの「ADT」について説明していきます。
AI導入には高いハードルがあります
かつては最先端技術であるAIは手に届かないものであったのですが、時とともに現実的な選択肢になってきました。とはいえ未だにハードルが高いことは事実です。
企業にとって考えられる問題点は「コスト・導入期間」「AIに対する理解不足・懸念」「セキュリティの心配」「運用できるかの懸念」など多岐にわたります。
いずれ取り組まなければならないと分かっていても、一歩前へ進めないハードルは多いものです。
アイディオットのプロダクト「ADT」ならデータを上手く活用して最適なオペレーションを実現!
アイディオットの「ADT (aidiot digital twin)」はデジタルツインの技術を駆使したシミュレーターで、様々な業種へ対応可能なデジタルプロダクトです。
倉庫システムに伴うハードルのクリアを考えるのなら、プロダクト導入は有力な選択肢といえます。また自社特有の問題をデータ化し、それを運用するまでの手厚いサポートも魅力です。デジタルツインで配送の悩みを解決するならADTを検討してみましょう。
まとめ
AIの導入により、倉庫業務は効率化だけでなく、精度と柔軟性の向上を実現しています。急成長する物流市場で競争力を高めるために、AI技術の活用は不可欠です。
課題を乗り越えつつ、持続可能で効率的な倉庫業務の構築を目指すことが重要であり、AIを活用した倉庫業務の未来は、よりスマートで持続可能な物流の実現に向かっています。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。