“見えるCLO”の時代 — 物流KPI可視化で実現する全体最適

“見えるCLO”の時代 — 物流KPI可視化で実現する全体最適

「物流は見えているか?」――2026年問題を目前に、CLO(Chief Logistics Officer)に突きつけられているのはこの問いです。ドライバー不足、輸送コスト高騰、脱炭素のプレッシャー。もはや勘や経験だけでは、複雑化したサプライチェーンをコントロールできません。

今、注目を集めているのが物流KPIの可視化。配送リードタイム、在庫回転率、納期遵守率、CO₂排出量といった指標を“見える化”し、リアルタイムで意思決定につなげることで、企業は初めて「部分最適」から「全体最適」へと舵を切ることができます。

本記事では、CLOがどのようにして“見えるCLO”へと進化し、物流危機をチャンスへ変えているのかを探っていきます。

▼CLOについてはこちらをチェック

物流危機2026に備えるCLOの責務〜今、企業が取るべき5つの構造改革アクション〜

 

物流のDX支援についてはコチラから物流のDX支援についてはコチラ

CLOが管理すべき物流KPIとは

物流現場には数多くのKPIが存在しますが、CLOが特に注目すべきは「全体最適」に直結する指標です。中でも積載率・荷待ち時間・荷役時間の3つは、サプライチェーン全体の効率化を測るうえで欠かせません。

1. 積載率

積載率は、トラックやコンテナといった輸送リソースをどれだけ有効活用できているかを示す指標です。積載率が低ければ、それだけ空気を運ぶことになり、コストとCO₂排出が増加します。逆に高積載を実現すれば、輸送効率の改善・コスト削減・環境負荷低減の三拍子を同時に達成可能です。CLOにとっては「積載率をどの水準で維持すべきか」を経営課題として設定することが重要です。

▼あわせて読みたい!

積載率向上で運送効率アップ!最新の技術・連携・事例をわかりやすく解説

2. 荷待ち時間

トラックドライバーが工場や倉庫で待機する時間は、労働生産性を直接的に下げる要因です。2024年問題によりドライバーの労働時間規制が強化された今、荷待ち削減は輸送キャパシティ確保の生命線といえます。可視化されたデータをもとに「どの拠点で、どの時間帯に、どれだけ待機が発生しているか」を把握することは、現場改善にとどまらず、取引先との交渉材料にもなります。

▼あわせて読みたい!

物流の効率化を阻む「荷待ち」問題とは?現状と取り組みを考える

3. 荷役時間

荷役時間は積み下ろし作業の効率を示すKPIです。作業に時間がかかれば、その分トラックの回転率が下がり、輸送全体のスループットが低下します。倉庫内の動線設計や設備投資、さらにはデジタルツインを活用したシミュレーションによって改善が可能です。CLOは荷役時間を「ボトルネックの見える化」指標として捉え、全体最適の観点から改善に取り組むべきでしょう。

▼あわせて読みたい!

【2025年最新版】荷役時間短縮の課題と解決策|現場の実態から学ぶ改善ポイント

KPI可視化のメリット

物流現場のKPIを可視化することは、単なる“数字管理”にとどまりません。CLOが全体最適を実現するうえで、次のような具体的な効果を生み出します。

1. 現場の改善ポイントを即時発見

従来は、荷待ちや荷役に関するデータを集計するのに数日かかり、その間に改善機会を逃してしまうケースも少なくありませんでした。可視化されたダッシュボードがあれば、

「どの拠点で積載率が低いのか」

「どの時間帯に荷待ちが発生しているのか」

をリアルタイムで把握可能です。これにより、現場責任者は即座に人員配置を見直し、CLOは経営レベルでのリソース最適化判断を下せます。

2. 荷主と物流事業者間の情報ギャップ解消

荷主と物流事業者の間では、「なぜ遅延が発生したのか」「どのコストが増えているのか」といった点で認識がずれることがあります。KPIを共通指標として可視化することで、“共通言語”に基づいた対話が可能になります。

3. 改善施策の効果検証を迅速化

施策を実行した後の効果検証も、KPIの可視化によって飛躍的にスピードアップします。豊田通商では、トラック予約システム導入後に「待機時間が60分から20分に短縮」したことをデータで即座に確認でき、追加拠点への展開判断が迅速に行われました。

改善活動が“トライ&エラー”ではなく“データドリブンのPDCA”に進化することは、CLOの戦略立案に直結します。

可視化を成功させる3つの条件

KPI可視化の取り組みは、単にダッシュボードを導入すれば成果が出るわけではありません。CLOが全体最適を実現するためには、以下の3つの条件を満たすことが不可欠です。

1. 物流情報標準ガイドラインに準拠したデータ連携

拠点や取引先ごとに異なるフォーマットのデータをつなぎ合わせるのでは、比較や統合ができず、可視化の効果は半減します。国交省が推進する「物流情報標準ガイドライン」に準拠することで、輸送計画・在庫データ・受発注情報を共通ルールで扱えるようになり、荷主と物流事業者の間で一貫したKPI管理が可能になります。実際に、大手メーカーや小売業では標準ガイドラインを踏まえたデータ連携基盤を整備し、共同輸送や在庫一元管理に活用しています。

2. リアルタイム性と自動更新

「昨日のデータ」ではなく「今この瞬間の状況」を捉えられるかが、CLOの意思決定を左右します。IoTやクラウド基盤を活用し、トラックの積載状況や荷待ち時間を自動更新する仕組みが整えば、現場の改善だけでなく、経営層が即時にシナリオを描くことが可能です。

3. 経営層・現場双方が理解できる指標表示

可視化ツールは「誰のためのものか」を意識しなければ形骸化します。経営層には投資対効果やCO₂削減効果を、現場には作業生産性や待機時間といったオペレーションに直結する指標を。それぞれが自分の言葉で理解できる形で表示することが重要です。

AI×可視化でCLOの業務はこう変わる

KPI可視化の次なる進化は、AIとの融合です。AIは膨大なデータをもとにパターンを学習し、従来は人間の経験に依存していた意思決定を「自動化」または「高度化」します。CLOの業務は、AI×可視化によって以下のように変革していきます。

1. 改善シナリオの自動生成

従来の改善活動は、現場の経験や試行錯誤に基づいて行われてきました。AIを活用すれば、「荷待ち時間を30%削減するにはどの施策が有効か」といった改善シナリオを自動で提示できます。例えば、需要予測と出荷調整をAIが自動提案し、輸送コストを削減することが可能になります。

CLOは結果を評価・選択する立場にシフトし、現場のトライ&エラーにかかる時間と負担を大幅に削減できます。

2. 配車・拠点配置の最適化

配車や拠点配置は物流コストとサービスレベルを左右する最重要テーマです。AIはリアルタイムの受注データや交通情報をもとに、最適なルートや拠点間のバランスを導き出します。CLOは、従来の“手作業での最適化”から“AIによる戦略設計の監督”へと役割が進化していきます。

3. CO₂削減効果のシミュレーション

サステナビリティ経営において、CO₂削減は避けて通れません。AIとデジタルツインを連携させれば、「もし共同配送を実施したらCO₂排出量は何%減るのか」といったシミュレーションが可能になります。

CLOは、改善の成果を「環境指標」として定量化し、経営層や投資家に示すことができるようになります。

データから未来を予測するサービス「ADT」で物流自動化を実現!

「ADT」とはアイディオットデジタルツインのことで、物流に関わる在庫管理や配送などのデータをリアルタイムで可視化・分析するシミュレーターです。このツールは、数十種類のデータセットを集約し、物流業務の最適化と効率化を支援します。膨大なデータを用いて行うため、限りなく現実に近いシミュレーションをすることができます。

「ADT」では、可視化、シミュレーション、物理空間の実装が可能です。「ADT」を利用し、物流での自動化をシミュレーションし、車両情報の可視化や人員のシミュレーションなどにより、いきなり行う危険性を減らし、スムーズな物流自動化に踏み出すことができます。

お問い合わせはこちら

まとめ〜見える化はCLOの最強武器〜

物流クライシスが目前に迫るなか、CLOに求められるのは「全体最適を描く力」です。その羅針盤となるのが、物流KPIの見える化です。

積載率、荷待ち時間、荷役時間といった基本KPIを起点に、改善の芽を即座に見つける。荷主と物流事業者の認識ギャップを埋め、共通言語で議論を進める。さらにAIを組み合わせることで、改善シナリオの自動生成やCO₂削減シミュレーションまで可能になる。

可視化は、単なるダッシュボードではありません。CLOが経営と現場をつなぎ、企業の競争力を根底から高めるための“最強武器”です。数字を見て終わるのではなく、数字を未来の戦略に変える。その時、CLOは物流危機を乗り越えるだけでなく、企業の成長をリードする存在となるでしょう。

 

サプライチェーンのDXをAI・デジタルツインなどの新技術で支援。カーボンニュートラルの実現に向けたCO2排出量の可視化・削減シミュレーションにも対応する物流特化のサービス。先ずは無料の資料請求から。
この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

物流・サプライチェーンカテゴリの最新記事