物流効率化のカギ!パレット標準化とは何か?わかりやすく解説

物流効率化のカギ!パレット標準化とは何か?わかりやすく解説

パレット標準化とは?

パレット標準化とは、物流で使用する「パレット(荷物を載せる台)」のサイズや仕様を統一する取り組みのことです。

日本国内では、1100mm×1100mmの「JIS規格パレット」が標準とされており、異なる業種や企業間でのスムーズな荷物の受け渡しや積み替えを可能にします。

現在、多くの現場ではサイズや素材がバラバラなパレットが混在しており、そのたびに積み替えや再配置が必要となるケースも少なくありません。これが作業の手間や時間の増加、輸送効率の低下につながっています。

ですが標準化されたパレットを使えば、トラックや倉庫設備との互換性が高まり、積載効率の向上や作業の省力化が期待できます。

 

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なぜ今「パレット標準化」が注目されているのか?

近年、物流現場では「パレット標準化」の重要性が改めて見直されています。これまでは各社ごとに異なるサイズや素材のパレットが使われており、積み替えや保管の手間、無駄な空間が発生する原因となっていました。下記にて注目されている背景を開設します。

背景1:人手不足・労働環境の改善

トラックドライバーや倉庫作業員の高齢化、若手不足が深刻化するなかで、作業負荷を軽減し省力化を進める手段として、パレットの標準化は有効です。同一規格なら荷役機器との相性も良く、作業時間短縮やミスの防止にもつながります。

背景2:積載効率の向上とコスト削減

規格が統一されていれば、トラックや倉庫内での積載率を最大化できます。荷物の積み直しが減ることで、時間や人件費、燃料の無駄も抑えられ、CO₂排出量の削減といった環境対策にも貢献します。

背景3:共同配送・幹線輸送の最適化ニーズの高まり

人手不足を補うため、企業間の共同配送や積み合わせ輸送が進行中ですが、その際、荷姿やパレットサイズがバラバラだと積載効率が下がってしまいます。標準化されたパレットがなければ、積載率が上がらず共同配送が破綻します。

標準サイズなら「誰の荷物でも同じ条件で積載可能」となり、ネットワーク型物流には不可欠です。

背景4:サプライチェーン全体の最適化

サプライチェーンの多拠点化・共同配送が進むなかで、企業間でのパレット共有が求められる場面が増えています。共通仕様があれば、異なる企業間でもスムーズな受け渡しが可能となり、物流の連携やデジタル化にもつながります。

背景5:政策的な後押し

国土交通省は「物流標準化ガイドライン」を発表し、標準パレットの採用を促進しています。企業の自主的な取り組みを促すだけでなく、補助制度や周知活動を通じて、業界全体の底上げを図っています。

標準化されていないと何が起こる?現場の課題とは?

物流業界では、パレットのサイズや仕様が企業や業界ごとに異なるため、非効率な作業やコスト増加といった問題が生じています。​このセクションでは、標準化されていないことによる具体的な課題と解決法を項目別に解説します。

作業効率の低下

異なるサイズや形状のパレットが混在すると、フォークリフトや倉庫設備との適合性が低下し、荷役作業に時間がかかります。​また、積み替えや仕分けの際に追加の手間が発生し、全体の作業効率が落ちる原因となります。​

積載率の低下と輸送コストの増加

パレットの規格が統一されていない場合、トラックやコンテナへの積載効率が悪化します。​その結果、同じ量の貨物を運ぶためにより多くの車両や便数が必要となり、輸送コストの増加につながります。​

パレット回収・管理の負担増

非標準パレットは共有やレンタルが難しく、自社での回収・管理が必要です。​これにより、回収のための追加の輸送や人手が必要となり、コストや労力が増加します。​

サプライチェーン全体の非効率化

パレットの非標準化は、企業間の物流連携を阻害します。​共同配送や倉庫の共有が難しくなり、サプライチェーン全体の効率性が損なわれます。

<表で確認>

課題 内容
作業効率の低下 異なるサイズや形状が混在し、フォークリフトや倉庫設備との適合性が低下。積み替えや仕分けにも手間がかかる。
積載率の低下と輸送コストの増加 統一されていないことで積載効率が悪化。車両や便数が増え、輸送コストが上昇。
パレット回収・管理の負担増 非標準パレットは共有やレンタルが難しく、自社回収が必要。輸送や人手の負担が増す。
サプライチェーン全体の非効率化 パレットの非統一により、企業間連携が困難に。共同配送や倉庫共有が進みにくい。

パレット標準化がもたらす物流業務のメリット

これまで企業や業種によってバラバラだったパレットの規格。現在、業界全体でその「標準化」が進められています。パレットを統一することで、単なる積み替え作業の効率化にとどまらず、物流のあらゆる工程でメリットが広がっていきます。ここでは、標準化によって得られる主な効果を項目別に整理しました。

積載効率の向上

パレットサイズが統一されていれば、トラックやコンテナへの積み込みが無駄なく行えます。空間のロスが減り、積載率の向上につながるため、輸送回数や台数を減らすことができます。

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荷役作業の時間短縮

フォークリフトや自動搬送機器とサイズの整合性が取れるため、荷物の上げ下ろしや仕分けがスムーズになります。現場での作業時間が短縮され、ヒューマンエラーのリスクも軽減されます。

コストの削減

積載効率や作業効率が高まれば、それに伴って人件費や燃料費といった物流コストも削減できます。さらに、パレット回収や管理の手間も減ることで、間接的なコストにも好影響を与えます。

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企業間連携の促進

共通規格のパレットであれば、異なる企業間でもスムーズな受け渡しが可能になります。共同配送や中継輸送の効率化にも貢献し、サプライチェーン全体の連携が強化されます。

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環境負荷の軽減

効率的な積載や輸送が実現することで、走行距離の削減や燃料使用量の低下につながり、CO₂排出量の削減にも貢献。持続可能な物流の実現に向けた取り組みとしても注目されています。

<表で確認>

メリット 内容
積載効率の向上 パレットを統一することで積載に無駄がなくなり、輸送回数や台数を削減できる。
荷役作業の時間短縮 フォークリフト等と整合性が取れ、荷下ろしや仕分けがスムーズに。作業時間を短縮。
コストの削減 作業効率と積載効率の向上で、人件費や燃料費、回収管理の手間が減る。
企業間連携の促進 共通パレットにより、他社との受け渡しが円滑に。共同配送や中継輸送がしやすくなる。
環境負荷の軽減 輸送効率が上がることで、走行距離や燃料消費が減り、CO₂排出量の削減にも貢献。

導入のハードルとは?パレット標準化の課題と解決策

パレット標準化は、物流業務の効率化やコスト削減を実現する重要な取り組みですが、実際の現場では「わかってはいるけど、なかなか進まない」という声も少なくありません。ここでは、企業が直面する主な課題と、それに対する具体的な解決策をセットで紹介します。

課題①:既存設備との不一致

パレットのサイズを変更すると、フォークリフトや棚の寸法が合わなくなることがあり、倉庫や輸送機器の見直しが必要になる場合があります。

解決策:
まずは一部エリアや一部商品カテゴリーから段階的に標準パレットを導入し、既存設備との影響を検証しながら対応を進める。補助金制度や国の支援策も活用し、設備投資の負担軽減を図ることが有効です。

課題②:複数の取引先との調整が難しい

サプライチェーン全体で規格が統一されていないと、自社だけが標準パレットを導入しても効果が限定されてしまいます。

解決策:
業界団体のガイドラインや国が推進する共通規格(例:JIS規格など)に沿って進めることで、関係企業との共通認識を得やすくなります。また、共同配送や中継拠点など、標準化の利点が高まる場面から調整を始めるとスムーズです。

課題③:コスト負担への懸念

新しいパレットの購入や、既存在庫の置き換えに伴う初期コストが導入の妨げになることがあります。

解決策:
リースやシェアリングサービスを活用することで、初期投資を抑えつつ標準パレットを活用できます。物流企業やパレット管理事業者と連携し、回収・再利用のスキームを構築することで、長期的にはコストメリットが生まれます。

課題④:現場での慣れと運用の違い

現場の作業者にとっては、パレットのサイズや操作感の変化が負担になることもあります。

解決策:
事前に現場の意見を吸い上げ、小規模なトライアル導入を実施。現場のフィードバックを反映させながら、教育・研修を通じて徐々に運用を馴染ませていくことがポイントです。

<表で確認>

課題 内容 解決策
① 既存設備との不一致 パレット変更により、フォークリフトや棚との整合が取れなくなる場合がある。 一部エリアから段階導入し、設備への影響を検証。補助金制度を活用し負担を軽減。
② 取引先との調整が難しい サプライチェーン全体で規格が統一されていないと導入効果が限定的になる。 JIS規格などの共通ルールに沿い、効果が高まる場面から調整をスタート。
③ コスト負担への懸念 初期投資や既存パレットの置き換えが導入の障壁になる。 リースやシェアリングの活用で初期費用を抑え、長期的なコスト削減へつなげる。
④ 現場での慣れと運用の違い 作業者にとって、サイズや操作感の変化が負担となることがある。 小規模なトライアルで現場の声を反映し、研修を通じてスムーズな定着を図る。

官民連携で進むパレット標準化の最新動向

​物流業界では、パレットの規格や運用方法が統一されていないことが、積み替え作業の増加や荷役時間の延長、ドライバーの負担増加といった課題を引き起こしています。​これを受けて、官民が連携してパレット標準化の取り組みを進めています。

パレット標準化推進分科会の設置と活動

​「パレット標準化推進分科会」は、2021年9月に第一回目が行われました。​この分科会は、物流機器の標準化、特にパレットの規格統一と運用方法の標準化を目的としています。

2025年4月21日時点で、分科会は第12回まで開催されており、標準仕様パレットの導入促進や関係者への具体的な取組提案など、物流業界全体の効率化に向けた施策が進められています。

出典)

https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_tk1_000200.html?utm_source=chatgpt.com

標準仕様パレットの導入と普及目標

標準仕様パレットは、サイズ1100mm×1100mm、高さ144~150mm、最大積載質量1トンと定められ、タグやバーコードの装着が可能な設計となっています。​また、レンタル方式の推進や、複数のレンタルパレット事業者の連携による共同配送・管理システムの運営が目指されています。

2030年度までに、パレット生産数量に占める標準仕様パレットの割合を50%以上に、レンタルパレット保有数量を5000万枚以上に増加させることが目標とされています。 ​

出典)

https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001841641.pdf?utm_source=chatgpt.com

法改正による取り組みの強化

2025年4月1日から施行された改正物流効率化法により、荷主や物流事業者に対して、パレットの導入や荷役時間の短縮など、物流効率化のための取り組みが努力義務として課されました。​これにより、パレット標準化の取り組みが法的にも後押しされています。 ​

出典)

https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001869736.pdf?utm_source=chatgpt.com

 

このように、官民が連携してパレット標準化を進めることで、物流の効率化やドライバーの負担軽減、持続可能な物流体制の構築が期待されています。

まとめ

本記事では、物流現場での課題と向き合う中で注目を集めている「パレット標準化」について、その基本的な仕組みから、導入のメリット、現場の課題、官民による最新の取り組みまでを詳しく解説しました。

パレットの規格を統一することは、積載効率や作業スピードの向上だけでなく、コスト削減やサプライチェーン全体の最適化にもつながる重要な施策です。

今後、法改正や官民連携の動きも追い風となり、標準化の流れはますます加速していくと考えられます。持続可能な物流を目指すうえで、パレット標準化は避けて通れない一歩です。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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