物流の新常識!ダブル連結トラックとは?メリットや課題・事例まで徹底解説

物流の新常識!ダブル連結トラックとは?メリットや課題・事例まで徹底解説

ダブル連結トラックとは?

ダブル連結トラックとは、1台のトラックが2つの荷台(トレーラー)を連結して走る大型車両のことです。通常の大型トラックに比べて、1回の輸送で運べる荷物の量が約2倍に増えるのが最大の特長です。

正式には「フルトレーラー方式セミトレーラー連結車」と呼ばれ、全長は最大25メートルにも及びます。見た目のインパクトも大きいですが、単に“大きいトラック”というだけではありません。輸送効率の改善やドライバー不足対策として、今注目されている新たな輸送手段です。

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なぜ今、ダブル連結トラックが注目されているのか?

「ダブル連結トラックの導入促進」は 2023年6月に政府より発表された「物流革新に向けた政策パッケージ」においても物流効率化の具体的な施策の一つとしてあげられ、1 台で大型トラック 2 台分の輸送力を確保できることから、トラックドライバーの人手不足への対策として期待されています。

ドライバー不足への対策として

物流業界では慢性的なドライバー不足が続いており、特に「2024年問題」と呼ばれる労働時間の規制強化によって、1人のドライバーが運べる距離・荷物の量に制限がかかっています。ダブル連結トラックは1人で2台分の荷物を運べるため、輸送効率を上げつつ、ドライバーの負担軽減にもつながります。

CO₂排出量の削減にも貢献

1回の運行でより多くの荷物を運べるということは、それだけトラックの運行回数を減らせるということ。燃料使用量やCO₂排出の削減にもつながるため、企業の環境対応にも貢献します。

長距離輸送ニーズにマッチ

ダブル連結トラックは主に高速道路など整備された長距離ルートでの運行を想定しており、幹線輸送や拠点間輸送といった場面に適しています。特に中継輸送や共同輸送といった取り組みとも相性が良く、今後の物流ネットワーク再編にも影響を与える存在になりつつあります。

ダブル連結トラックと従来型大型トラックの違いを比較

比較項目 ダブル連結トラック(スーパートレーラー) 従来型大型トラック
車両構成 トラクター+2台のトレーラー トラクター+1台のトレーラー、または単車
最大積載量 約40トン前後(2台分積載可能) 約10〜20トン(車両による)
輸送効率 高い(1人のドライバーで2台分を運搬可能) 通常の積載効率
走行エリア 一部の幹線道路・専用区間に限定(許可制) 全国の一般道路で走行可能
運転技術・条件 高度な運転技術が必要/専用免許は不要だが条件あり 通常の大型免許で運転可能
導入コスト 高め(車両価格やインフラ対応など) 比較的安価
環境負荷 削減できる(CO2排出量の低減) 比較的高い
ドライバー不足対策 有効(1人で大量輸送できる) 限界あり
制限 曲がり角や狭い道には不向き 小回りが利く
導入事例 高速道路・幹線物流で一部実証導入中 ほぼ全ての物流領域で利用

ダブル連結トラックは、従来のおよそ2倍の積載量を実現。少ない便数で大量輸送ができるため、幹線輸送や長距離輸送での導入が進んでいます。

ドライバー不足対策や輸送コスト削減の面でもメリットがあり、特に複数拠点をつなぐ幹線輸送での活用に適しています。導入にはインフラ面での整備が求められるため、どこでもすぐ使えるわけではありませんが、国も実証実験やインセンティブを通じて導入を後押ししています。

国土交通省によるダブル連結トラック導入促進のための取り組み

物流の効率化とドライバー不足への対応を目的に、国土交通省はダブル連結トラックの導入拡大に向けた取り組みを進めています。特に注力しているのは、「制度面の整備」と「インフラの拡充」です。

特車許可基準の緩和と制度整備

2019年までは全長21メートルまでとされていた車両長の基準を、最大25メートルまで緩和するなど、ダブル連結トラックの導入を前提とした特例措置を整備。平成31年1月からは、新東名高速道路などを中心に、本格的な運行がスタートしています。

さらに、走行ルートを段階的に拡大。令和元年には北上江釣子IC〜太宰府ICまで、令和4年には全国で約5,140kmにまで通行可能区間が広がっています。

実証実験と効果測定

ヤマト運輸、西濃運輸、日本梱包運輸倉庫、福山通運など複数の大手事業者と連携し、21m〜25m車両による走行実験を実施。その結果、ドライバー数は約5割削減、CO₂排出量は約4割削減という明確な効果が示されました。

インフラ整備:駐車マスと休憩施設

長大車両であるダブル連結トラックが安全かつ効率的に運行できるよう、各地のSA・PAで専用の駐車スペースを整備。2023年6月時点で、全国にわたり駐車可能施設の数も拡大中です。

国土交通省は、ダブル連結トラックを「省人化・脱炭素化・効率化」の3つを兼ね備えた次世代の物流インフラと位置づけ、今後も制度とインフラの両面で支援を続けていくとしています。

このように、国による後押しがあることで、民間企業が安心して導入を進めやすい環境が整ってきています。ドライバー不足や環境対応が課題となっている今、ダブル連結トラックは“新常識”として現実味を帯びつつあります。

出典)

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001620627.pdf

ダブル連結トラックを導入するメリット

物流業界が抱える人手不足や環境対策といった課題に対して、解決の一手として期待されているのが「ダブル連結トラック」です。見た目は少し特殊ですが、実際には実用性の高い輸送手段として、導入を進める企業も増えてきています。ここでは、ダブル連結トラックを導入することで得られる主なメリットを整理します。

輸送効率の大幅な向上

最大の利点は、1人のドライバーで2台分の貨物を一度に運べることです。たとえば、従来なら2台のトラックで運んでいた荷物を1台で済ませられれば、走行距離、運行台数、燃料消費すべてが抑えられます。とくに拠点間の大量輸送では、その効果は数字に表れやすく、運送業務全体の効率化に直結します。

ドライバー不足への対応

2024年問題を背景に、ドライバーの確保が難しくなる中で、限られた人員でより多くの荷物を動かせるという点は非常に大きな魅力です。1人で2台分の荷物を運べるということは、同じ労働時間でより多くの仕事をこなせるということでもあり、人的リソースの有効活用につながります。

脱炭素・環境対策に貢献

運行台数を減らせるということは、CO₂排出量の削減にもつながります。国土交通省の資料によれば、同じ輸送量であればCO₂排出量を約4割削減できるという試算もあり、持続可能な物流の実現に貢献する手段としても注目されています。

輸送コストの削減

燃料代や高速道路の通行料、人件費など、トラック1台あたりにかかるコストは決して小さくありません。ダブル連結トラックは、同じ労力でより多くの荷物を運べることから、コストパフォーマンスの向上にもつながります。中長距離のルートで運用するほど、その差は顕著になります。

ダブル連結トラック普及に向けた課題

ダブル連結トラックは、輸送効率の向上やドライバー不足の対策として期待される一方で、全国的な普及にはいくつかのハードルがあります。制度やインフラ、現場での運用体制など、課題を整理することで導入を前向きに検討する企業も増えるはずです。ここでは、現時点で指摘されている主な課題を見ていきましょう。

対応インフラの不足

ダブル連結トラックは全長が25メートルにも及ぶため、通常のトラック用駐車スペースでは対応できません。とくに高速道路のサービスエリアやパーキングエリアでは、対応マスの整備が進んでいるとはいえ、全国的にはまだ限られています。また、右左折時の回転半径や合流車線の長さなど、道路構造自体に求められる条件も多く、走行できるルートは限定的です。

運行ルールと制度の整備

走行可能なルートや通行許可の取得手続きなど、特車としての運行ルールが煩雑になりやすいのも課題のひとつです。現在は特定区間に限定して運行が認められているため、全国的な普及にはさらなる制度の簡素化や運用の柔軟化が求められます。車両自体が特別仕様となるため、導入には許認可だけでなく社内体制の整備も必要です。

ドライバーへの負担と教育

車両の大きさや連結の特性から、通常の大型トラックとは異なる運転技術や注意が求められます。新たな運転手育成の仕組みや研修、実地訓練の整備が必要です。運転手の心理的な負担を減らすサポート体制づくりも、導入を進めるうえで無視できないポイントです。

導入コスト

車両本体や連結装置の費用はもちろん、運用にあたってのルート選定、駐車場の確保、社内オペレーションの見直しなど、初期投資が大きくなりがちです。長期的なコスト削減にはつながる可能性が高いものの、中小の物流事業者にとっては導入判断のハードルとなる場合があります。

ダブル連結トラックの導入事例

株式会社ニトリホールディングス・株式会社ホームロジスティ クス・福⼭通運株式会社

株式会社ニトリホールディングスとニトリグループの物流部⾨を担う株式会社ホームロジスティ クス、福⼭通運株式会社)は、物流2024年問題におけるドライバーの労働⼒不⾜への対策及び環境負荷軽減、両社の物流効率改善に向けた協業を開始しました。

ホームロジスティクスが運営する物流センター間の輸送に、福⼭通運のダブル連結トラックを導⼊。ダブル連結トラックを活⽤することで、⼤型トラック2台分をドライバー1⼈で搬送することが可能となり、商品配送におけるドライバーの労働⼒不⾜を解消します。また、CO₂排出量の削減による地球温暖化や⼤気汚染などの環境負荷軽減に貢献します。8⽉28⽇より、まずは関⻄から九州への⻑距離輸送において運⾏を開始しました。

ダブル連結トラックは、同じ重量を輸送する場合において、通常の⼤型⾞両に⽐べてCO₂排出量は約40%、燃料消費量も約40%削減されます。

今後はダブル連結トラック導⼊エリアの拡⼤だけでなく、鉄道など⾞輛以外の輸送⼿段を⽤いたモーダルシフトなどに積極的に取り組み、輸送効率の向上を図るとともに、持続可能な社会の発展に貢献していきます、としています。

出典)

https://www.nitorihd.co.jp/news/items/faa1074c2d66b532e709b326fa6ef363.pdf

サントリーホールディングス株式会社・ダイキン工業株式会社・鴻池運輸株式会社・NEXT Logistics Japan株式会社

サントリーグループとダイキン工業株式会社は共同で、鴻池運輸株式会社とNEXT Logistics Japan株式会社が運行するダブル連結トラックを活用した関東圏・関西圏の拠点間往復輸送を2024年7月から開始しております。

サントリーグループとダイキン工業株式会社が業種を越えて連携し、関東圏から関西圏へはサントリーグループの飲料製品を、関西圏から関東圏へはダイキン工業株式会社の空調製品を、一部輸送効率の高いダブル連結トラックに切り替えます。これにより10tトラック2台分の貨物を1人のドライバーで輸送できます。

1人のドライバーが関東圏・関西圏間の全行程を輸送すると1泊2日の拘束となり長時間化しますが、本取り組みでは中継地点を設け、ドライバーを交替することで日帰り運行ができるようになり、労働環境の改善が見込まれます。

また、ダブル連結トラックは10tトラック2台で輸送する際と比べ、CO2の排出量を約35%削減できる見込みです、としています。

出典)

https://www.suntory.co.jp/news/article/14626.html

積水樹脂株式会社

積水樹脂株式会社は、物流の 2024年問題対応策の一つとして、グループの滋賀物流センターから関東エリアへの輸送の一部において ダブル連結トラックを利用しています。

運転時間の減少に伴い、ダブル連結トラック導入前と比較し、CO₂排出量の約 4 割削減する効果が見込まれます。 

当社は今後も持続可能な社会を実現するために、運送事業者と連携し、2024年問題をはじめとする物流に関する課題解決に取り組んでまいります、としています。

出典)

https://www.sekisuijushi.co.jp/news/pdf/%E3%83%80%E3%83%96%E3%83%AB%E9%80%A3%E7%B5%90%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E8%BC%B8%E9%80%81%E9%96%8B%E5%A7%8B.pdf

まとめ

本記事では、ダブル連結トラックの仕組みから、導入によるメリット、普及に向けた課題までを幅広く解説しました。1回の運行でより多くの荷物を運べることで、ドライバー不足や環境負荷の軽減といった現場の課題に応える手段として注目を集めています。

一方で、運行ルートやインフラの整備、制度面での対応といった乗り越えるべき課題もあります。今後、国の支援や技術の進化とともに、物流の新しい選択肢としてますます重要性が高まっていくと考えられます。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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