物流の全貌〜業界の基本構造から仕組み・課題・未来を詳しく解説〜

物流の全貌〜業界の基本構造から仕組み・課題・未来を詳しく解説〜

目次

物流業界の基本構造とは?

物流業界の基本構造は、商品の製造から消費者に届くまでの一連のプロセスを支える様々な要素で成り立っています。物流業界は、サプライチェーン全体の効率的な運営を支えるため、製品やサービスの流れを最適化することを目指しています。以下では、物流業界の基本構造をわかりやすく解説します。

 

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物流の6つの主要な機能

(出典)https://www.suzuyo.co.jp/column/butsuryu.html

①輸送

物流の中でも最も重要な要素の一つは「輸送」です。生産者から消費者に商品を送り届ける機能が、輸送機能です。輸送には、陸上(トラック、鉄道)、海上(船舶)、空中(航空機)などの手段があります。適切な輸送手段を選択し、効率的に商品を目的地に届けることが物流業界の中心的な役割です。

②保管

保管は、製品や商品が需要が発生するまで、あるいは販売されるまで一時的に倉庫に保管されるプロセスです。倉庫や物流センターでは、商品の保管と管理が行われます。

具体的には、商品の数量や品質を管理し、効率的に在庫を保つことが求められるため、過剰在庫や欠品を避けるため、適切なタイミングで在庫補充を行います。また、高温・低温の管理が必要な冷蔵倉庫、または大量の在庫を効率的に保管するための自動化倉庫など、さまざまなタイプの倉庫があります。

③荷役

荷役は、輸送手段と倉庫間で商品を積み込み・取り出しを行う作業です。この作業は、手動や機械を使って行われ、物品の取り扱いや移動を効率的に行うために必要です。

クレーンやフォークリフトなどで、商品をトラックやコンテナに積み込んだり、倉庫からトラックに積み下ろしたりします。荷役作業の効率化は、物流の全体的な時間短縮に直結します。

梱包・包装

梱包・包装は、製品を輸送中のダメージから守るため、または保管時の取り扱いを簡便にするための作業です。また、製品の安全性を確保するとともに、マーケティングや販売促進の役割も担います。商品に必要なラベルやバーコード、説明書きを貼ることも梱包の一部です。

⑤流通加工

流通加工は、製品が消費者や小売店に届く前に行う、商品に関する一連の処理や調整作業で、主に流通業者が担当し、製品が市場に適合するように加工します。

小売店でスムーズに販売できるように、商品にラベルやバーコードを貼ったり、商品を販売に適した形に調整したりします。

情報システム

情報システムは、物流の効率化とトラッキングを支えるための重要な役割を果たします。物流業界では、リアルタイムでのデータ管理や在庫管理、輸送状況の追跡などを行うために高度なITシステムが活用されています。これには、輸送のルートやコストを最適化するための輸送管理システム(TMS)や、倉庫内での商品管理、入出庫管理を効率的に行う倉庫管理システム(WMS)などが使用されます。

物流の基本的なフローとは?

物流業界の基本的なフローは以下の通りです。

①調達(調達物流)

商品や原材料がサプライヤーから購入され、製造拠点や倉庫に配送される段階です。調達物流は、製造業や小売業の基盤となる部分です。

②製造物流

製造プロセスにおいて、原材料や部品が適切なタイミングで供給され、生産ラインに組み込まれる段階です。製造物流は、製造業にとって非常に重要な部分で、効率的な部品供給や在庫管理が求められます。

③流通物流

製品が製造された後、倉庫や流通センターに保管され、店舗や消費者へ配送される段階です。流通物流は、小売業や卸売業に関わり、商品を消費者に届くまでの重要な段階です。

④消費物流(ラストマイル物流)

商品が最終的に消費者に届くための物流です。これは、最寄りの配送センターから顧客宅に届ける「ラストマイル配送」のことを指し、効率的かつ迅速に商品を届けるための重要な段階です。

物流業界の主要なプレイヤーとは?

物流業界は、さまざまなプレイヤーが協力し、製品や商品が消費者に届けられるまでのプロセスを管理しています。以下では、運送業者、倉庫業者、荷主、物流サービスプロバイダー、消費者という物流業界の主要なプレイヤーについて、わかりやすく解説します。

運送業者(トランスポーター)

運送業者は、商品や製品を物理的に輸送する役割を担っています。物流業界の中で、最も重要な役割を果たすプレイヤーであり、製品が製造元から消費者に届くまでに必要な輸送を担当します。

商品や製品をトラック、鉄道、航空機、船舶などで目的地に届けます。その際、配送経路の選定や、配達日時の調整など、効率的な配送のために様々な管理を行います。また、商品の積み込み、積み下ろし作業を行い、安全に移動できるようにしています。

倉庫業者(ウエアハウスオペレーター)

倉庫業者は、在庫を保管し、必要な時にすぐに取り出せるように管理します。商品の数量や状態を管理し、商品の過剰在庫や不足を防ぎ、顧客からの注文に応じて、商品の取り出し(ピッキング)や梱包を行います。

荷主(ノーハウジング)

荷主は、物流の起点となる企業で、製品を生産または仕入れて流通業者や消費者に提供する役割を担います。自社の商品が最適に流通するよう、運送業者や倉庫業者に物流業務を委託し、商品の需要予測に基づき、在庫の補充や調整を行います。

物流サービスプロバイダー(3PL、4PL)

物流サービスプロバイダー(LSP)は、物流業務全般を外部に委託する企業や事業者で、企業の物流を代行します。効率的な物流プロセスを設計・実行し、企業の物流戦略をサポートし、業務の効率化とコスト削減を図ることができます。

消費者(エンドユーザー)

消費者は、最終的に商品を受け取る側で、物流の最終目的地です。消費者は商品を購入し、その商品が配送される過程を体験します。

これらのプレイヤーが連携することで、物流プロセスは効率的に運営され、商品が迅速かつ安全に消費者に届くことができます。

物流業界の主要な輸送モード

物流業界では、商品を目的地に届けるためにさまざまな輸送モードが使用されます。これらの輸送モードは、目的地や商品の種類、コスト、納期などに応じて選ばれます。主要な輸送モードには、陸上輸送、海上輸送、航空輸送、鉄道輸送があり、それぞれに特徴があります。以下では、これらの輸送モードについてわかりやすく解説します。

陸上輸送

陸上輸送は、最も一般的で広く使用されている輸送手段で、主にトラック輸送や鉄道輸送が含まれます。

トラック輸送は、直通で目的地まで運べるため、非常に柔軟で、都市間や地方、ラストマイル配送(最終地点への配送)に適していますが、長距離輸送ではコストがかかり、交通渋滞や道路の混雑が配送の遅延を引き起こす可能性があります。

鉄道輸送は、鉄道網を利用して貨物を運ぶ手段です。長距離輸送や大量輸送に適しており、エネルギー効率が高い上、比較的天候に左右されにくい輸送手段ですが、鉄道網が整備されていない地域では利用できないため、他の輸送手段との組み合わせが必要です。

海上輸送

海上輸送は、国際貿易において最も重要な輸送モードの一つで、特に大量の貨物を低コストで運ぶ際に使用されます。主にコンテナ船やタンカーなどが利用されます。

大量の貨物を一度に運べるため、単位あたりのコストが安く、コスト効率に優れており、環境負荷も相対的に低いです。しかし、輸送時間が長く、天候や海の状態に左右されやすく、また、港までのアクセスや通関手続きなどに時間を要することがあります。

航空輸送

航空輸送は、主に急速に届けたい商品や高価な商品、または遠隔地への輸送に使用されます。航空機を利用した輸送手段で、比較的速い時間で目的地に到達します。最速の輸送手段であり、遠距離間でも迅速に商品を届けることができます。また、天候による影響が少なく、信頼性が高い一方で、輸送コストが高く、大型商品や大量貨物を運ぶには不向きです。また、貨物量が制限されるため、規模の経済が得にくいです。

企業や物流業者は、商品や配送のニーズに応じて最適な輸送モードを選ぶことが、効率的でコスト効果の高い物流を実現するための鍵となります。

物流業界が抱える主要な課題

近年、私たちの生活に欠かせない物流業界は、深刻な構造的課題に直面しています。以下に代表的な課題を5つ紹介します。

1.ドライバー不足・高齢化

若手のなり手が少なく、高齢ドライバーに依存しており、労働時間が長く、給与が見合わないとされ、離職率も高いのが現状です。

2.2024年問題による輸送力の低下

働き方改革関連法により、ドライバーの労働時間に制限(年960時間の上限)されていることで、輸送できる荷物の量が減少し、「荷物はあるのに運べない」事態が拡大しています。

3.物流コストの増加

燃料費・人件費の上昇に加え、EC(ネット通販)拡大による小口配送の増加で効率が低下しています。

4.積載率の低下

トラックの空きスペースが多く、非効率な運行が目立ち、「片道だけ荷物がある」などの無駄が多いのが現状です。

5.環境への配慮(カーボンニュートラル)

CO₂排出削減など、脱炭素対応が求められているが対応が遅れている事業者も多くいます。

物流の効率化に向けた最新の取り組み

上記のような課題に対応するため、行政・企業・業界全体が連携し、様々な効率化施策が進められています。

共同配送・荷主連携

異なる企業の荷物を1台のトラックで一括配送することで、積載率を高め、配送台数や人件費を削減しています。

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モーダルシフトの推進

長距離輸送をトラックから「鉄道・船舶」へ切り替え、CO₂排出量を削減し、大量輸送を効率的に実現しています。

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デジタル化(DX)・AI活用

AIによる配送ルートの最適化、需要予測したり、IoTでトラックの位置や温度をリアルタイム管理したり、WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸送管理システム)の導入で在庫・配送を一元管理することができます。

自動化・ロボティクスの導入

倉庫内のピッキング作業をロボットが実施。自動仕分けシステムでミス削減とスピード向上しています。また、自動搬送ロボット(AGV)で倉庫作業の省人化も進んでいます。

EV・低炭素車両の導入

電気トラック・ハイブリッド車の活用で燃料費と排出ガスを削減しています。このようなサステナブル物流の構築が企業評価にも直結しています。

積載率“見える化”と配車の最適化

積み荷や空きスペースを可視化し、AIが最適な積み方やルートを提案します。また、配車の属人性を排除し、効率化とトラック台数削減を実現します。

物流業界の未来展望と求められる変革

物流業界は、これまで「裏方」の役割を担ってきましたが、今では社会インフラの中心として、今後ますますその重要性が高まっていきます。

未来のキーワードは「スマート」「サステナブル」「シームレス」です。

スマート物流:AI・IoT・ロボットを活用した自動化・最適化

サステナブル物流:環境負荷を減らすCO₂削減や脱炭素の実現

シームレス物流:すべてがデータでつながり、リアルタイムに可視化・最適化される

AI・デジタル技術による業務の自動化・最適化

配送ルートの自動最適化や、倉庫内での自動ピッキングやロボット仕分け、在庫のAI予測・自動発注による欠品ゼロ化により、人手不足の解消、業務の効率化、属人化の解消が期待されます。

ラストワンマイル配送の進化

ドローンや無人配送ロボットの実用化や、小口配送への対応と非対面・非接触配送の普及により、EC需要の急増に対応する“柔軟な配達網”の構築が期待されます。

グリーン物流・カーボンニュートラルの推進

EVトラック・水素トラックの導入や、モーダルシフト、環境に優しい包装・梱包資材の使用により、環境規制への対応、ESG経営・脱炭素社会の実現が期待されます。

共同物流・業界連携による積載率の向上

異業種間・競合間での「共同配送」や、物流ネットワークや拠点の統合によるスリム化により、ドライバー不足・空車問題・CO₂削減の同時解決が期待されます。

データ連携によるリアルタイム可視化と意思決定

サプライチェーン全体の「見える化」や、荷物の状態や位置を常に監視するIoT、仮想空間での物流シミュレーションするデジタルツインの活用で、迅速で柔軟な意思決定が可能になり、災害時や緊急時の対応力強化にもつながるでしょう。

物流DXのカギ!デジタルツインで実現する効率化とコスト削減の方法とは?

まとめ

本記事では、物流業界の基本構造から主要プレイヤー、輸送モード、そして現在進行中の効率化への取り組みまで、物流の全貌を体系的に解説しました。物流は、単なる「モノを運ぶ」だけの仕組みではなく、生産から消費に至るまでのあらゆるプロセスを支える社会インフラです。

多重下請け構造や人手不足といった業界特有の課題が顕在化する中、デジタル技術の導入やモーダルシフト、サプライチェーン全体の最適化といった最新の取り組みが進んでいます。そして今、物流業界は“変革の時”を迎えています。

これからの時代、持続可能性と効率性を両立するためには、業界全体の連携と、企業ごとの変革への意思が求められます。本記事を通じて、物流の現状と未来を理解し、次の一手を考える一助となれば幸いです。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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