物流業界の未来を変える!カーボンニュートラル実現に向けた最新の取り組み

物流業界の未来を変える!カーボンニュートラル実現に向けた最新の取り組み

物流業界におけるカーボンニュートラルの重要性

物流業界は、輸送手段の燃料消費や倉庫運営におけるエネルギー使用など、多くのCO₂を排出する産業の一つです。特に、トラックや船舶、航空機を活用する輸送分野は、全体のCO₂排出量の大きな割合を占めており、カーボンニュートラルに取り組む必要性があります。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質ゼロにすることを指します。

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環境負荷を抑えながら持続可能な物流を実現するため、企業には再生可能エネルギーの活用、モーダルシフト(鉄道・船舶輸送の活用)、EVトラックや水素燃料車の導入など、多角的なアプローチが求められています。また、CO₂排出量の可視化や、サプライチェーン全体の最適化による削減施策も重要なポイントです。

本記事では、カーボンニュートラル実現に向けた最新の取り組みをご紹介いたします。

 

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カーボンニュートラル実現に向けた具体的な取り組み

物流業界は、CO₂排出量の削減を目指し、さまざまな技術革新と環境対応策を進めています。カーボンニュートラルを実現するためには、輸送手段の見直しエネルギーの転換が不可欠です。

モーダルシフトの推進

モーダルシフトとは、トラック輸送の負担を減らし、鉄道・船舶などCO₂排出の少ない輸送手段を活用することを指します。

・鉄道輸送の拡大

トラックに比べCO₂排出量が約7分の1である、貨物列車の利用促進

・内航海運の活用

船舶輸送でのカーボンニュートラル燃料導入

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積載率向上・ルート最適化

・共同配送・積載率の向上

企業間の共同配送を実施し、積載率を向上させることで輸送回数を削減し、CO₂排出削減に貢献します。

・AI・IoTを活用したルート最適化

AIが最適な配送ルートを計算し、無駄な移動を削減します。「デジタルツイン技術」を活用も有効です。

電動車両とバッテリー技術

物流の脱炭素化に向け、EV(電気トラック)や燃料電池車(FCV)の導入が進んでいます。特に都市部の配送では、小型EVトラックの活用が増加しており、従来のディーゼル車と比べてCO₂排出量を大幅に削減できます。

EVの性能を大きく左右するのがバッテリー技術です。近年、より高性能なバッテリー開発が進んでいます。

① リチウムイオン電池(現在の主流)

特徴

・高エネルギー密度で長距離走行が可能

・充電サイクル寿命が比較的長い

・コストが低下しつつある

② 全固体電池(次世代の主力候補)

特徴

・電解液を固体にした次世代バッテリー

・発火リスクがほぼゼロ

・充電時間が短い

③ LFP電池(リン酸鉄リチウム電池)

・特徴

・レアメタルを使用しないためコストが低い

・安全性が高く、長寿命

・耐衝撃性が高い

④ ナトリウムイオン電池(次世代候補)

特徴

・リチウムではなくナトリウムを使用し、コストが安い

・低温環境に強い

急速充電が可能

再生可能エネルギーの活用

物流センターや倉庫の運営において、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が加速しています。

施設の屋根にソーラーパネルを設置し、自社で発電した電力を使用することで、CO₂排出を抑えたり、蓄電池システムと組み合わせることで、夜間や悪天候時でも安定したエネルギー供給が可能になり、エネルギーの自給自足を目指す企業も増えています。

代替燃料の使用

長距離輸送においては、電動トラックの普及がまだ課題となっているため、バイオマス燃料や水素燃料、合成燃料、SAFなどの活用が進んでいます。

種類 特徴 メリット 課題
バイオマス燃料 植物・廃油を活用 カーボンニュートラル、既存の設備で使用可能 供給量が限られる、食糧供給との競合
水素燃料 CO₂排出ゼロ クリーンなエネルギー源 インフラ整備が課題、高コスト
合成燃料(e-Fuel) 再エネ由来の電力で合成 既存のガソリン車や航空機に使用可能 製造コストが高い、技術開発が必要
SAF(持続可能な航空燃料) バイオマス・合成燃料由来 航空業界の脱炭素に有効 価格が高い、供給量が不足

物流効率化とエコドライブ技術の導入

物流業界では、CO₂排出量削減と効率的な輸送を両立させるために、最新のテクノロジーを活用した「物流効率化」と「エコドライブ技術」の導入が進んでいます。これにより、燃料消費の抑制や運送業務の最適化が実現し、環境負荷の低減につながります。ここでは、具体的な取り組みについて解説します。

最適化された配送ルート

物流の効率化には、無駄のない配送ルートの設定が不可欠です。AIやビッグデータを活用することで、最短距離かつ渋滞を避けた最適ルートを算出し、トラックの走行距離と燃料消費を削減することができます。

複数の荷主が共同配送を行うことで、1台のトラックで複数の荷物を効率よく運搬し、積載率の向上を図る取り組みも進んでおりトラックの走行回数を減らし、CO₂排出量を抑えることが可能になります。

エコドライブと運転支援技術

トラックの燃費向上と安全運転の促進のために、エコドライブ技術の導入が進められています。具体的には、急加速や急ブレーキを防ぐ運転支援システムや、速度の最適化をサポートする機能を搭載した車両が増えています。

リアルタイムでドライバーの運転データを分析し、エコドライブを促進するシステムも導入されており、これにより燃料消費を削減しながら、安全な輸送を実現できます。

物流の効率化とエコドライブ技術の活用は、企業のコスト削減だけでなく、持続可能な物流の実現にも貢献します。

カーボンオフセットとサステナブルな物流ネットワークの構築

カーボンニュートラルの実現に向けて、物流業界では排出されるCO₂を削減するだけでなく、排出した分を補填する「カーボンオフセット」や、物流の効率化を図る「共同配送・ロジスティクスの集約」が注目されています。

カーボンオフセット

カーボンオフセットとは、物流などの事業活動によって排出されたCO₂を、植林や再生可能エネルギーへの投資などで相殺する仕組みです。企業や個人が排出したCO₂の量を金銭的に換算し、その分を削減プロジェクトに資金提供することで、排出量のバランスを取ります。

例: 航空会社が飛行機の燃料使用によるCO₂排出を相殺するために、乗客がカーボンクレジットを購入できる仕組みを導入するなどの事例があります。

共同配送とロジスティクスの集約

カーボンニュートラルを推進するには、物流の無駄を省き、輸送効率を最大化することが重要です。

そのために、複数の企業が協力し、一つの配送ネットワークを共有する「共同配送」が広がっています。トラックの積載率が向上し、走行距離の削減やCO₂排出量の削減が可能になります。

また、物流拠点の統合による「ロジスティクスの集約」も進められており、倉庫の効率的な活用や、拠点間の無駄な輸送を減らす取り組みが加速しています。

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これらの施策を組み合わせることで、物流業界は環境負荷を低減しつつ、より効率的で持続可能なネットワークを構築することが求められています。

物流業界のカーボンニュートラル実現に向けた成功事例

武田薬品工業株式会社×三菱倉庫株式会社×日本貨物鉄道株式会社 連携モーダルシフト

上記の三社はCO₂排出削減を目的に、医療用医薬品の輸送をトラックから鉄道へ切り替えるモーダルシフトを開始しました。

取り組みのポイント

・温度管理可能な鉄道コンテナを活用し、医薬品の適正流通ガイドライン(GDP)に準拠した輸送を実現。

・東京から北東北地区への幹線輸送を鉄道に切り替え、前後の輸送のみをトラックで対応。

・CO₂排出量を約60%削減し、トラックドライバーの労働負担を軽減。

・データプラットフォーム「ML Chain」を活用し、温度・位置情報を可視化してシームレスな品質管理を実施。

この取り組みは、物流の2024年問題への対応と環境負荷低減を両立するものであり、今後も対象エリアを拡大し、持続可能なサプライチェーンの構築に貢献していく予定です。

出典)

https://www.takeda.com/ja-jp/announcements/2023/modal-shift-in-transportation_jp/

ヤマト運輸株式会社

ヤマト運輸株式会社は2025年1月31日、2022年に続き2023年度の「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」について、国際規格ISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティ宣言を行いました。

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2023年度のカーボンニュートラリティ達成について

EVや太陽光発電設備の導入によるGHG排出量削減に加え、未削減分(233万t-CO2e)をカーボンクレジットでオフセットし、国際規格ISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティを達成しました。クレジットは、第三者認証機関が認めた再生可能エネルギー関連の24の排出削減プロジェクトから選定されています。

今後もBSIジャパン検証のもと、長期目標である2050年度までカーボンニュートラリティを維持することを宣言しています。

出典)

https://www.yamato-hd.co.jp/news/2024/newsrelease_20250131_1.html

DHL

DHLは、2050年までにグループとしてロジスティクス関連の二酸化炭素排出量をネットゼロにする「ミッション2050」の目標を掲げています。目標達成に向けて2030年までにラストマイル配送車両の60%を電気自動車(EV)に置き換える考えで、70億ユーロの投資を発表しています。また、GoGreen Plusプログラムでは、持続可能な航空燃料(SAF)の利用を推進し、物流全体でのCO₂削減を進めています​。

また、DHLジャパン株式会社は、2025年1月28日、コスモ石油マーケティング株式会社と持続可能な航空燃料(SAF)の調達契約を締結しました。 ​この契約により、DHLは2025年4月から年間720万リットルの国産SAFを調達し、定期航空貨物便に活用します。

​これは、国際エクスプレス業界において、アジア初のSAFを利用した定期貨物サービスとなります。​

SAFは、コスモエネルギーホールディングス株式会社の関連会社である合同会社SAFFAIRE SKY ENERGYが製造し、コスモ石油株式会社の堺製油所から供給される予定です。

(参照)

https://www.kakoki.co.jp/news/2024/06/dhl-expressgogreen-plus.html

https://www.dhl.com/jp-ja/home/press/press-archive/2023/06272023.html

https://www.dhl.com/jp-ja/home/press/press-archive/2025/01282025-3.html

今後の技術革新と可能性

物流業界では、カーボンニュートラルの実現に向けて技術革新が加速しています。特に、自動運転技術やドローン配送、IoTを活用した効率化は、環境負荷を低減しながら物流の最適化を推進する鍵となります。これらの技術の最新動向と今後の可能性を紹介します。

自動運転による省エネ輸送の実現

自動運転トラックは、燃料消費を抑えながら効率的な配送を実現する技術として注目されています。特に、高速道路での隊列走行技術や、長距離輸送の自動化により、ドライバー不足の解消とCO₂排出削減が期待されています。夜間輸送の最適化や渋滞回避などにも貢献し、物流の安定性が向上します。

ドローン配送による都市部・過疎地の物流改革

ドローン配送は、小型荷物のラストワンマイル配送に革命をもたらします。特に、交通渋滞が発生しやすい都市部や、物流網が整っていない過疎地での活用が進んでいます。ドローンはCO₂排出量がほぼゼロなので、迅速かつ環境に優しい物流の実現が期待されています。

 IoTによるリアルタイム物流の最適化

IoTを活用した物流管理は、輸送効率の向上に大きく貢献しています。例えば、センサーを搭載したスマートパレットや倉庫の自動管理システムにより、荷物の位置や温度をリアルタイムで監視し、最適なルートで配送することが可能になるため無駄な輸送を削減し、サプライチェーン全体の脱炭素化が進みます。

これらの技術の導入が進むことで、物流業界の効率化とカーボンニュートラルの実現が加速していくでしょう。

まとめ

本記事では、物流業界におけるカーボンニュートラルの重要性や、具体的な取り組み、技術革新の可能性について解説しました。

現在、電動車両の導入や再生可能エネルギーの活用、モーダルシフトの推進など、多くの企業がCO₂排出削減に向けた取り組みを強化しています。また、自動運転技術やドローン配送、IoTを活用した最適化が進み、物流業界の構造が大きく変わりつつあります。

今後、業界全体の連携や新技術の導入がさらに進むことで、持続可能な物流ネットワークの構築が求められます。

カーボンニュートラルの実現には、企業の努力だけでなく、消費者や社会全体の意識改革も欠かせません。環境負荷の少ない物流の未来に向けて、私たち一人ひとりができることを考え、行動していくことが重要です。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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