カーボンニュートラルとは
参考: 環境省、グリーンイノベーション基金事業
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくすることです。
温室効果ガス排出量の約9割を二酸化炭素が占めており、カーボンニュートラル実現のためには二酸化炭素の排出量を抑える必要があります。しかし、二酸化炭素の排出量をゼロにすることは現実的に困難なため、森林の光合成などを利用して排出した二酸化炭素を吸収します。
二酸化炭素の排出量と吸収量が均衡した場合、二酸化炭素の排出量は実質ゼロになります。世界各国でカーボンニュートラル実現に向けて取り組みが拡大しています。
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カーボンニュートラルが求められる背景
カーボンニュートラルの求められる背景には、以下のような理由があります。
気候変動の問題
地球温暖化による気候変動が進行しており、これは世界中の人々に大きな脅威をもたらしています。温暖化によって氷河や氷床が融解し、海面が上昇することで、気象災害や洪水の被害が拡大するなど、環境・社会的な影響が深刻化しています。
気候変動防止の取り組み
国連の気候変動枠組条約に基づく気候変動防止の取り組みが世界中で進められており、各国が温室効果ガスの排出削減に向けた目標を設定しています。カーボンニュートラルは、この目標を達成するために必要な手段の一つとして注目されています。
エネルギー転換の促進
カーボンニュートラルに向けた取り組みは、再生可能エネルギーへの移行やエネルギー効率の改善など、エネルギー転換の促進にもつながります。これによって、エネルギーの供給源が多様化され、エネルギーの使用量やコストの削減にもつながると考えられています。
市場競争力の向上
カーボンニュートラルに向けた取り組みは、企業や産業界においても重要な課題となっています。温室効果ガスの排出削減によって、企業の社会的責任や環境配慮の取り組みが評価され、市場競争力の向上につながると考えられています。
以上のように、気候変動の問題や取り組み、エネルギー転換の促進、市場競争力の向上などが背景として挙げられます。
カーボンニュートラルの取り組み
参考: 環境省
カーボンニュートラルの実現には、二酸化炭素の排出量を抑えることが大切です。
省エネ
カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの一つとして、省エネルギーの促進が挙げられます。
省エネルギーとは、同じ機能を持つ製品やサービスを提供するために必要なエネルギーを減らすことを指します。例えば、家庭やオフィスでのLED照明やエアコンの省エネ設備の導入や、車の燃費の向上による省燃費などが、省エネの代表的な取り組みです。
省エネの実施により、使用するエネルギー量が削減され、その結果、温室効果ガスの排出量が削減されます。また、省エネの取り組みはコスト削減にも繋がるため、企業の業績向上や家計の節約にもつながります。
再生可能エネルギー
再生可能エネルギーの利用も、カーボンニュートラルの実現に向けた重要な取り組みの一つです。
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの自然エネルギーを指します。再生可能エネルギーは、燃料の燃焼によるCO2の排出がほとんどないため、温室効果ガスの排出削減に効果的です。
再生可能エネルギーの導入には、設備の導入費用や設置場所の確保などの課題がありますが、政府や企業が積極的に取り組んでいることもあり、近年、再生可能エネルギーの導入量は増加しています。再生可能エネルギーの利用が増えることで、化石燃料の使用量が減り、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが進むことになります。
カーボンニュートラルのメリット
地球温暖化問題の抑制
カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量を削減し、地球温暖化問題を抑制することができます。地球温暖化により、極地の氷が溶けたり、異常気象が起こったりすることで、生態系や人間の生活に深刻な影響が及ぶため、カーボンニュートラルの実現は非常に重要です。
企業のイメージ向上
カーボンニュートラルの取り組みを行うことで、企業の社会的責任や環境保護に対する意識が高いことをアピールすることができ、企業のイメージ向上につながることがあります。また、消費者からの支持を得ることができ、市場競争力の強化にも繋がります。
コスト削減
カーボンニュートラルの取り組みにより、エネルギー効率が上がったり、再生可能エネルギーを導入したりすることで、コストを削減することができます。省エネルギーや再生可能エネルギーの導入には初期費用が必要ですが、長期的にはエネルギー使用量が削減されるため、コスト削減につながります。また、省エネや再生可能エネルギーを導入することで、エネルギーの価格変動や供給不安からのリスク回避にもつながります。
カーボンニュートラルのデメリット
カーボンニュートラルのデメリットには以下のようなものがあります。
初期費用が高い
カーボンニュートラルを実現するためには、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入などの大規模な投資が必要です。このため、初期費用が非常に高くなることがあります。特に、既存の施設や設備に対する改修や改良が必要な場合は、費用がかさむことがあります。
検証が難しい
カーボンニュートラルを実現するためには、温室効果ガスの排出量を正確に計測することが重要ですが、その検証が難しいことがあります。特に、サプライチェーンなどで排出量を追跡することが困難な場合は、正確な検証が難しくなります。また、温室効果ガスの削減に対する報酬や手法についての国際的な合意が未だに形成されていないため、認証や認定制度が未発達であることも検証の難しさにつながっています。
カーボンニュートラル企業例
日本では、すでにカーボンニュートラルに取り組んでいる企業があり、二酸化炭素の削減を実現しています。その企業を3つご紹介します。
三菱重工エンジニアリング株式会社
三菱重工エンジニアリングは、カーボンニュートラルを目指して、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入などに取り組んでいます。例えば、自社の工場において、省エネ対策としてLED照明の導入や空調システムの改善などを行っています。また、太陽光発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギーの導入も進めており、2021年には、三菱重工エンジニアリングの本社ビルで使用する電力の100%を再生可能エネルギーに切り替えることを発表しました。
参照:https://www.mhi.com/jp/group/mhieng/company/decarbonization
東急不動産
東急不動産は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みとして、カーボンニュートラルを目指しています。具体的には、自社の建物において省エネルギー対策を進めたり、再生可能エネルギーの導入を進めたりしています。また、カーボンニュートラルに向けた取り組みを評価する国際的な認証制度である「CASBEE」の取得にも取り組んでいます。
参照:https://www.tokyu-land.co.jp/company/challenge/vol31.html
阪急電鉄
阪急電鉄は、カーボンニュートラルを目指す取り組みとして、鉄道車両の省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入などを進めています。また、鉄道車両の運行において、エネルギー消費量を減らすために、ブレーキエネルギー回生装置を採用したり、運転手のエコドライブ教育を行うなどの取り組みを行っています。これらの取り組みにより、阪急電鉄は、2021年にカーボンニュートラルを達成しました。
参照:https://www.hankyu.co.jp/approach/environment/
まとめ
カーボンニュートラルについて、取り組むメリットやデメリットを一緒にご紹介しました。 カーボンニュートラルを実現させるには、企業の努力が不可欠です。様々な問題があり決して簡単なことではありませんが、地球の環境を守るために各企業がカーボンニュートラルと向き合い、検討し、実現させていく必要があります。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。