カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくすることです。
温室効果ガス排出量の約9割を二酸化炭素が占めており、カーボンニュートラル実現のためには二酸化炭素の排出量を抑える必要があります。しかし、二酸化炭素の排出量をゼロにすることは現実的に困難なため、森林の光合成などを利用して排出した二酸化炭素を吸収します。
二酸化炭素の排出量と吸収量が均衡した場合、二酸化炭素の排出量は実質ゼロになります。世界各国でカーボンニュートラル実現に向けて取り組みが拡大しています。
カーボンニュートラルが求められる背景
カーボンニュートラルが求められる背景には、地球の温暖化があります。有史以降、地球の平均気温はすでに約1℃上昇しました。わずか1℃の上昇であっても実際に海面上昇を引き起こし、昨今の日本の異常気象の原因であると考えられます。
現在のペースで温暖化が進行すると、2100年には最大で4.8℃上昇すると予測され、その場合の海面の上昇は最大で82cm。更に大規模な異常気象が発生すると考えられ、温暖化は人類存続の危機といえます。
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球の温度上昇を1.5度以内に抑えるために2050年近辺までのカーボンニュートラルが必要と報告しています。
このような背景から、2050年までにカーボンニュートラルを目指す動きが拡大しており、世界各国で取り組んでいます。
カーボンニュートラルの取り組み
カーボンニュートラルの実現には、二酸化炭素の排出量を抑えることが大切です。
様々な場面で排出される二酸化炭素。そのなかでも「エネルギーの使用」によって排出される二酸化炭素が多くなっています。エネルギーの使用については、省エネや再生可能エネルギーで対策をとり、二酸化炭素の排出量を削減することができます。
省エネ
省エネは、限りあるエネルギーを効率よく使うことで、電気の使用による二酸化炭素の排出量の削減に貢献できます。カーボンニュートラル実現に向けて、省エネは欠かすことができない取り組みです。
原子力発電を稼働できない昨今の主力を担う火力発電。しかし、火力発電には大量の二酸化炭素を放出してしまうデメリットがあります。省エネで使用電力を抑えると、火力発電の稼働も少なくすることができるため、二酸化炭素排出量の削減につながります。
また、多くの企業や家庭では照明や空調の消費電力が大部分を占めており、省エネが求められます。
例えば、照明をLED電球に変更すると、従来の蛍光灯と比較して二酸化炭素の排出量を約7割削減することができます。空調は最新のものほどエネルギー効率が向上した省電力設計になっており、フィルターの掃除や設定温度を適切にすることによっても消費電力を抑えることができます。
再生可能エネルギー
発電においては再生可能エネルギーの利用が注目を集めています。太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスなどの再生可能エネルギーは、自然の力を活用し永続的に使うことができるエネルギー源です。温室効果ガスを排出せずに発電することができます。
近年は、新たな再生可能エネルギーとして水素や洋上風力の開発がすすめられており、カーボンニュートラル実現のために期待されるエネルギー源です。
カーボンニュートラルのメリット
わたしたちがカーボンニュートラルに取り組むことによるメリットを3つにまとめて挙げていきます。
地球温暖化問題の抑制
国や企業、家庭がカーボンニュートラルに取り組むことにより、直接的に地球温暖化の抑制につながります。近年、夏の最高気温は過去の記録をどんどん更新するようになりました。そのため、空調を使う機会が以前よりも増えており、電力を使用するために二酸化炭素の排出量も増えてしまう悪循環になります。
カーボンニュートラルに取り組み夏の気温上昇を抑えることができると、空調の使用を減らし、二酸化炭素の排出量削減にもつながります。
企業のイメージ向上
企業が地球環境に配慮した取り組みは、社会に大きく貢献し、企業のイメージの向上につながります。社会的な評判が向上すれば、消費者、取引先からの信頼される企業になり、経営の安定化にもつながります。
コスト削減
カーボンニュートラルに向けて省エネと再生可能エネルギーを導入することにより、光熱費の削減が可能です。例えば、省電力設計となった機器の更新は省エネにつながり、自家発電に太陽光などの再生可能エネルギーを利用することで、結果的に光熱費のコスト削減が期待できます。
今後は電気料金価格の変動が考えられるため、そのリスクを抑えることも可能です。

カーボンニュートラルのデメリット
カーボンニュートラルに取り組むうえではデメリットもあり、対策を立てて実現を目指していく必要があります。ここでは2つのデメリットについてご紹介します。
初期費用が高い
省エネや再生可能エネルギーの設備を導入する高額な初期費用、メンテナンスなどの維持費もかかるため、費用を工面する必要があります。例えば、太陽光発電や風力発電の初期費用は諸外国の1.5~2倍程度とされており、導入しやすい環境が期待されます。
検証が難しい
本当にカーボンニュートラルが実現できているか、検証するのは難しいと言われています。二酸化炭素の排出量と吸収量を測定するには、細かいデータが必要であり、正確な統計を得て数値化するには時間がかかります。
さらに、現在の二酸化炭素排出量の計算は、「生産量」で行われていることも検証を難しくしています。
例えば、先進国が安い人件費を求めて途上国での生産を行っているケースは多いですが、その場合は途上国が二酸化炭素を排出したことになります。消費した先進国の排出量は減少したというデータになり、先進国ではカーボンニュートラルが達成されたと認識されてしまう可能性があります。
カーボンニュートラル企業例
日本では、すでにカーボンニュートラルに取り組んでいる企業があり、二酸化炭素の削減を実現しています。その企業を3つご紹介します。
三菱重工エンジニアリング株式会社
三菱重工エンジニアリングは、二酸化炭素を回収し排出率を削減する装置の開発に力を入れています。独自の回収技術や、高効率の吸収ができるアミン吸収液などを開発し、さらなる改良を続けています。
これまでも同社の二酸化炭素の回収装置は火力発電所などで稼働しており、全世界トップクラスの導入実績があります。なかでもアメリカでは世界最大規模の二酸化炭素の処理能力を持つ回収プラントを完成させました。さらに様々な発電所や工場から二酸化炭素の回収が期待されており、社会的需要が高まっています。
東急不動産
東急不動産は、当社の再生可能エネルギー事業を拡大させるため、株式会社リエネを設立しました。
リエネは脱炭素化社会の実現、日本のエネルギー自給率の向上を目的にしています。再生可能エネルギーを利用した発電所の開発に強みをもち、全国に50カ所以上の太陽光や風力による発電事業を展開しています。
東急不動産ホールディングスでは、保有する施設で使用する全電力を再生可能エネルギー由来のものに切り替えることを推進しています。気候変動対策、SDGsの達成などの社会問題と向き合い、持続可能な社会をつくることを事業の柱とし、今後は更なる再エネ事業を拡大していくことを目指しています。
阪急電鉄
駅から排出される二酸化炭素を実質ゼロにする「カーボンニュートラル・ステーション」を、阪急電鉄が国内ではじめて実現し、2010年に摂津市駅を開業しました。
例えば、駅から排出される二酸化炭素は、照明やエレベーターなどの電力使用が由来です。使用電力を削減するために、LED照明や太陽光発電を導入することで、消費する電力をできるだけ削減しました。削減できなかったものは、環境価値を購入することにより、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることに成功しています。
まとめ
カーボンニュートラルについて、取り組むメリットやデメリットを一緒にご紹介しました。
カーボンニュートラルを実現させるには、企業の努力が不可欠です。様々な問題があり決して簡単なことではありませんが、地球の環境を守るために各企業がカーボンニュートラルと向き合い、検討し、実現させていく必要があります。
温暖化により地球環境の問題が深刻化しており、カーボンニュートラルに取り組むことは企業にとって大切なことです。

この記事の執筆・監修者

「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。