物流コストを見直して効率化!概要から具体策まで完全ガイド

物流コストを見直して効率化!概要から具体策まで完全ガイド

物流コストとは?知っておきたい基本

物流コストの概要

物流コストとは、製品や商品を生産地から消費者の手元まで届けるためにかかる費用の総称です。物流は単なる輸送だけでなく、倉庫での保管や流通加工、荷役、梱包、管理業務など多岐にわたります。これらのコストを適切に管理し、最適化することが企業の競争力向上につながります。

物流コストには、倉庫や設備費などの固定費と、輸送費や人件費などの変動費が混在しており、物流業務を3PLなどに委託するか、自社で管理するかによってコストが異なります。また、燃料費の高騰や人手不足などの要因でコストが変動するのが特徴です。

物流コストの内訳

物流コストは大きく分けて以下のような要素で構成されます。

1.輸送費
商品の移動にかかる費用で、トラック・鉄道・航空・海上輸送などの手段によって変動します。運賃や燃料費、高速道路料金、ドライバーの人件費もここに含まれます。燃料費や人件費の影響を受けやすく、コストの大部分を占めることが多いです。

2.保管費
倉庫や物流センターでの保管にかかる費用。スペースの賃料、光熱費、管理システムの運用費などが含まれます。長期保管が必要な場合、コストが増加します。

3.荷役費
倉庫内での積み下ろし、ピッキング、仕分けなどにかかる費用で、フォークリフト・自動搬送ロボットの運用費や、作業員の人件費もここに含まれます。自動仕分けシステム導入やフォークリフトの自動化により削減できる可能性があります。

4.梱包、包装費

梱包費は、商品を安全に配送するためのパッケージングにかかる費用で、ダンボール・緩衝材の購入費や、大量の商品を効率的に輸送・保管するためのパレット費用、包装作業の人件費が含まれます。

5.流通加工費

流通加工とは、商品を消費者向けにカスタマイズする作業で発生する費用で、ラベル貼り・値札付け、商品の組み立てやギフト包装、出荷前の検品作業などが含まれます。

6.情報システム費
物流システムの運用や、在庫管理にかかる人件費やITシステムの費用が含まれます。倉庫管理システム(WMS)や、輸送管理システム(TMS)EDI(電子データ交換)などがあります。

物流コストを正しく把握し、最適化することで、企業はコスト削減だけでなく、サービス品質の向上や環境負荷の低減にもつなげることができます。

 

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物流コストが増大する原因

近年、物流コストの増大が企業経営において大きな課題となっています。特にEC市場の拡大や人手不足の深刻化により、配送コストや管理費の負担が増加しています。ここでは、物流コストが増える主な原因について解説します。

1. 人手不足によるコスト増

物流業界では、ドライバーや倉庫作業員の不足が続いています。人手不足により労働単価が上昇し、人件費の増加が物流コストを押し上げる要因となっていて、労働時間の短縮に伴う配送回数の増加や、効率的な人員配置の難しさも課題となっています。

2. 燃料費・輸送費の高騰

原油価格の変動や燃料費の高騰は、輸送コストの増大に直結します。特に長距離輸送ではコスト負担が大きく、運賃の値上げにより物流コスト全体が上昇する傾向にあり、高速道路料金の増加や規制の影響も、輸送費を押し上げる要因となっています。

3. 配送の非効率化

少量多頻度の配送が増えたことで、積載率の低下や配送ルートの非効率化が課題となっています。特に、EC市場の成長により小口配送が増えたことで、トラックの積載効率が低下し、輸送コストが上がる原因となっています。

4. 在庫管理コストの増加

市場の変化に対応するために、多品種少量在庫を抱える企業が増えています。しかし、過剰在庫は倉庫の保管コストや管理コストを増やし、物流コスト全体に負担をかけます。適正在庫の維持が求められます。

5. 返品・再配送の増加

ECの普及により返品率が高まり、再配送の回数が増えています。これにより、配送費・人件費・管理費がかさみ、物流全体のコストが上昇する要因になっています。

物流コストを抑えるためには、輸送の効率化、ITの活用、在庫の適正管理など、抜本的な見直しが必要となっています。

物流コスト削減のための具体的な方法

物流コストの削減は、企業の利益向上だけでなく、業務の効率化や環境負荷の低減にもつながります。輸送費・人件費・保管費・包装費など、物流コストを抑えるためには、さまざまな手法を組み合わせることが重要です。

ここでは、物流コスト削減のための具体的な方法をわかりやすく解説します。

輸送費の削減

・共同配送の活用
同じ地域や業界の企業と連携し、複数の荷物を一括で配送する共同配送を導入すると、積載率の向上と輸送コストの削減が期待できます。また、配送回数の削減によってドライバー不足の解消にも寄与します。

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・モーダルシフトの推進
長距離輸送において、トラックから鉄道や船舶へ切り替えるモーダルシフトを導入することで、輸送コストを抑えられます。特に大量輸送が必要な場合には、環境負荷の低減にもつながる効果的な手段です。

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・配送ルートの最適化
無駄な走行距離を削減するため、AIやGPSを活用した配送ルートの最適化が有効です。リアルタイムで交通状況を分析し、最短かつ効率的なルートを選定することで、燃料費や人件費の削減につながります。

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・積載率の向上

トラックやコンテナの空きスペースを最小限にすることで、1回の配送でより多くの荷物を運べるため、輸送コストを削減できます。パレットを最適に配置し、積載量を最大化したり、荷物を小さく梱包し、無駄なスペースを削減するなどの実例があります。

保管費の削減

・在庫管理の見直し
適正在庫を維持することで、過剰在庫による保管コストや欠品による機会損失を防げます。WMS(倉庫管理システム)を導入し、リアルタイムで在庫状況を把握することで、物流の無駄を削減できます。

・クロスドッキングの導入

倉庫での長期保管を減らし、入荷後すぐに出荷する仕組みで、保管コストを削減し、物流スピードが向上します。

荷役・梱包費の削減

・自動仕分けシステムの導入

ロボットやAIを活用し、荷物の仕分けを自動化することで、人件費を削減し、仕分けミスを防止します。

・簡易包装、リサイクル梱包の活用

過剰な包装を減らし、材料費削減、環境負荷低減のメリットがあります。

人件費の削減

・DX(デジタル・トランスフォーメーション)の導入
IoTやAIを活用した物流システムの導入により、業務の自動化やデータ活用が進みます。例えば、AIによる需要予測や自動倉庫の活用で作業効率を向上させ、コスト削減を実現できます。

環境負荷を減らしながらコスト削減

・EVトラック・ハイブリッド車の活用

燃費の良い車両に切り替え、燃料費を削減することで、環境負荷の低減や長期的なコスト削減に繋がります。

物流コストを削減するには、輸送、保管、荷役、梱包、人件費など、あらゆるプロセスでの効率化が必要です。これらの方法を組み合わせ、持続可能な物流コスト削減を目指しましょう。

成功事例から学ぶ、物流コスト削減のポイント

日本通運株式会社

日本通運は、日本各地で商品カテゴリ別や配達先別に荷物をまとめて一括配送する共同配送サービスを提供しています。​これにより、配送効率の向上とコスト削減を実現しています。​さらに、共同配送センターに定番商品のバッファ倉庫を併設することで、緊急時の対応力も強化しています。

北海道エリアでは食品共同配送システムを活用し、他社の食品や飲料と混載輸送することで、低コスト化と効率化を実現しました。札幌拠点倉庫から北海道内の主要都市へ毎日運行するトラックネットワークを活用し、多頻度・少量輸送にも対応。さらに、ハンドリングや中継回数を削減することで、貨物事故の軽減にも貢献しています。加えて、配送車両の集約により、交通渋滞の緩和やCO₂排出削減も実現し、環境負荷の低減にも寄与しています。

出典)

https://www.nittsu.co.jp/casestudy/domestic/kyohai/

https://www.nittsu.co.jp/casestudy/domestic/kyohai/hokkaido.html

日本製紙株式会社・大王製紙株式会社

日本製紙株式会社と大王製紙株式会社は、首都圏・関西エリア間の海上共同輸送を2023年8月2日から開始しました。この取り組みでは、日本製紙の勿来工場(福島県)で生産された製品を千葉中央港までトラック輸送し、同港で大王製紙のRORO船に積み替えて、堺泉北港(大阪府)まで海上輸送することで、モーダルシフトを実現します。

取り組みの背景には、下記の理由があります。

・物流の2024年問題への対応として、長距離トラック輸送の負担軽減を目的とする。

・CO₂排出量削減と輸送手段の多様化を図る。

・製紙業界初の同業社間の定期的なラウンド輸送であり、安定的な輸送体制を構築する。

得られた効果

・CO₂排出量を年間46.7%削減

・トラックドライバーの総走行時間を78.8%削減

・安定した関西向け輸送の確保

・物流の効率化と環境負荷低減に貢献

この取り組みは、国土交通省の物流総合効率化計画の認定を受けており、今後もRORO船を活用したさらなるモーダルシフトの拡大を目指します。

出典)

https://www.nipponpapergroup.com/news/year/2023/news230808005513.html

SBSロジコム株式会社

SBSロジコムは、企業の物流業務を効率化し、コスト削減を実現するために、共同配送やアウトソーシングサービスを提供しています。特に、物流の省力化や最適化を目指す企業向けに、多様なソリューションを展開しています。

主なサービス内容

共同配送

・複数の企業の荷物を統合し、効率的な配送を実現。

・トラックの積載率を向上させ、配送コストを削減。

・CO₂排出量の削減にも貢献。

物流アウトソーシング

・企業の物流業務を一括で請け負うことで、業務負担を軽減。

・倉庫管理・輸配送・流通加工などの機能を最適化。

拠点の集約と最適化

・複数の拠点を統合・再配置し、物流の効率を向上。

・無駄なコストを削減し、配送リードタイムを短縮。

導入のメリット

・物流コストの削減(トラック台数・燃料費の削減)

・業務効率の向上(物流管理の最適化)

・環境負荷の軽減(共同配送によるCO₂排出削減)

SBSロジコムの共同配送・アウトソーシングは、物流業務の最適化を実現し、企業の競争力強化に貢献するサービスです。

出典)

https://www.sbs-logicom.co.jp/sbslgcm/solution/needs-out/

物流コストを削減することで企業が得られるメリットとは?

物流コストの削減は、単なるコストカットにとどまらず、企業の競争力強化、利益率向上、環境負荷の軽減、顧客満足度向上など、さまざまなメリットをもたらします。以下に、物流コスト削減によって得られる主なメリットを解説します。

企業の収益向上と利益率の改善

物流コストは、企業の総コストの20~40%を占めると言われており、コスト削減の影響は非常に大きいです。不要なコストを削減することで、利益率が向上し、収益が増加します。

物流コストを下げることで、価格競争力を強化できるため、商品価格を抑えることが可能になり、他社との差別化が可能になります。

業務効率の向上

物流コストを削減することで、業務プロセスの効率化が進み、企業全体の生産性が向上します。

AIやIoTを活用した配送ルートの最適化で、燃料費削減と配送時間短縮を両立でき、再配達の削減により、配送効率が向上します。適正在庫を維持し、倉庫の無駄なコストを削減でき、需要予測AIを活用し、過剰在庫・欠品を防ぎます。

環境負荷の軽減

物流コストの削減は、CO2排出削減にも貢献し、企業の環境対応力を強化できます。

モーダルシフト(鉄道・船舶輸送の活用)やEVトラックの導入により、CO2排出量を削減できます。また、カーボンニュートラル対応を進めることで、企業のブランド価値が向上し、CO2排出量削減が求められるESG経営への対応が可能になります。

顧客満足度の向上

物流の効率化は、結果として顧客体験の向上につながります。配送のスピードアップにより、顧客満足度が向上します。また、再配達の削減により、消費者のストレスを軽減します。

まとめ

物流コストの削減は、単なる経費削減ではなく、企業の競争力向上や持続可能な成長に直結する重要な取り組みです。本記事では、物流コストの基本構造や増大の要因を明らかにし、具体的な削減策や成功事例を通じて、効率的な物流戦略の実現方法を紹介しました。

物流コストの増加要因として、人手不足や燃料費の高騰、配送の非効率化、在庫管理の課題などが挙げられましたが、これらに対する効果的な対策として、共同配送の活用、モーダルシフト、AIを活用した配送ルート最適化、倉庫管理のデジタル化などを紹介しました。

物流コストの見直しは、一度の取り組みではなく、継続的な最適化と改善が求められます。IT技術やDXを積極的に活用し、持続可能な物流戦略を構築することで、コスト削減だけでなく、企業全体の競争力を向上させることが可能です。今後の物流改革に向けて、本記事で紹介した手法を活用し、戦略的な物流コスト削減に取り組みましょう。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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