ホワイト物流とは?持続可能な物流を目指す取り組みと課題を徹底解説

ホワイト物流とは?持続可能な物流を目指す取り組みと課題を徹底解説

ホワイト物流とは?

ホワイト物流 とは、物流業界の深刻な人手不足や輸送効率の低下を改善するため、企業・物流業者・政府が連携して持続可能な物流環境を構築する取り組みのことを指します。

2019年に日本政府が主導し、「ホワイト物流推進運動」としてスタートしました。特にトラックドライバーの労働環境改善や、物流の生産性向上が主な目的とされています。

 

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「ホワイト物流」推進運動の概要

「ホワイト物流」推進運動とは、物流業界の労働環境改善と持続可能な輸送体制の確立を目指し、国土交通省・経済産業省・農林水産省が共同で進める取り組みです。トラックドライバーの長時間労働や人手不足といった課題に対応するため、荷主企業や物流事業者に対し、効率的な物流の実現と働きやすい環境づくりを促しています。

この運動の主な目的は、

物流の効率化(積載率向上・共同配送・モーダルシフト推進)

労働環境の改善(荷待ち時間の短縮・労働時間管理の適正化)

持続可能な物流の実現(環境負荷の低減・輸送の安定化)

です。企業は自主的に「ホワイト物流」推進運動に賛同し、具体的なアクションを実行することが求められます。

この取り組みが広がることで、物流業界全体の健全化が進み、安定した物流ネットワークの維持につながると期待されています。

ホワイト物流の具体的な取り組みと施策

「ホワイト物流」推進運動では、物流の効率化や労働環境の改善を図り、持続可能な物流の実現を目指しています。ここでは、その具体的な施策を3つの視点から詳しく解説します。

① 物流効率化を実現する取り組み

物流の効率化は、トラック輸送の負担を軽減し、ドライバーの労働時間短縮にもつながります。特に注目されるのが 共同配送モーダルシフトです。

・共同配送の推進

複数の企業が物流網を共有し、荷物をまとめて配送することで、積載効率を向上させる仕組みです。これにより、トラックの空車回送を減らし、物流コストの削減やCO2排出量の抑制が可能になります。特に食品や日用品など、同じ配送ルートで取り扱われる商品の共同配送が進んでいます。

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・モーダルシフトの推進

トラック輸送に頼らず、鉄道や船舶などを活用することで、大量輸送の効率化を図ります。例えば、長距離輸送を鉄道コンテナに切り替えることで、ドライバーの負担軽減と環境負荷の低減が可能になります。最近では、鉄道貨物とトラック輸送を組み合わせた「インターモーダル輸送」の導入が進められています。

② IT・デジタル技術の活用

デジタル技術の進化は、物流の効率化や安全性向上に大きく貢献しています。特に AI・IoT・自動運転技術 の導入が注目されています。

・AIを活用した需要予測・配送ルート最適化

AIを活用することで、物流の需要を予測し、配送ルートを最適化することが可能になります。これにより、余分なトラック運行を削減し、燃料費やCO2排出量の低減が実現できます。

・IoTによるリアルタイム物流管理

車両や倉庫内の貨物にIoTセンサーを設置し、リアルタイムで位置情報や温度管理を行うことで、より効率的な物流を実現できます。これにより、トラックの待機時間短縮や、貨物の品質管理の向上が期待されています。

・自動運転トラックの活用

人手不足解消の切り札として、自動運転トラックの導入も進められています。すでに一部の幹線輸送では、「隊列走行」(複数のトラックが自動追従する技術)の実証実験が進められています。今後は、完全無人の自動運転技術の実用化が期待されています。

③ 物流業界における働き方改革

トラックドライバーの長時間労働は、物流業界の最大の課題のひとつです。「ホワイト物流」では、労働環境の改善 に向けた取り組みも進められています。

・荷待ち・荷役時間の短縮

トラックドライバーの拘束時間の多くは、荷待ち(積み降ろしの順番待ち)や荷役作業(荷物の積み降ろし)に費やされています。荷待ち時間を短縮するために、 バース予約システムの導入 や、倉庫の作業効率向上が求められています。

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・労働時間管理の適正化

労働基準法の改正により、2024年4月からトラックドライバーの年間時間外労働時間が960時間に制限されました(2024年問題)。これに対応するため、運行計画の見直しや、ドライバーの負担軽減策が急務となっています。

・待遇改善による人材確保
ドライバーの待遇改善も重要な課題です。賃金引き上げや福利厚生の充実を進めることで、若手ドライバーの確保や、物流業界の人材定着を促進する動きが進んでいます。

ホワイト物流によるメリットと期待される効果

ホワイト物流推進運動は、持続可能な物流を実現するための取り組みであり、企業やドライバー、消費者にもさまざまなメリットをもたらします。ここでは、その具体的な効果を解説します。

物流事業者へのメリット

・物流の効率化とコスト削減

共同配送やモーダルシフトの活用により、トラックの積載率が向上し、輸送の無駄を削減できます。AIを活用した配送ルートの最適化により、燃料費や人件費の削減も期待されます。

・労働環境の改善

バース予約システムの導入や荷待ち時間の短縮により、トラックドライバーの負担が軽減されます。さらに、労働時間の適正管理が進むことで、長時間労働の抑制と働きやすい環境づくりが促進されます。

・人手不足の解消

働きやすい職場になり、新規ドライバーの確保がしやすくなります。自動運転技術やAIなどのDXを活用し、省人化を推進します。

荷主企業へのメリット

・安定した物流網の確保

人手不足や2024年問題の影響を受けにくい仕組みを構築することで、物流の安定供給が可能になります。特に、災害時の緊急輸送や医薬品・食品の安定供給が期待されます。

・物流コストの低減

トラックの積載効率向上により、輸送費を削減します。鉄道・船舶利用したモーダルシフトでコストダウンが期待できます。

社会全体へのメリット

・環境負荷の低減

トラック輸送の効率化や鉄道・船舶輸送への切り替えにより、CO2排出量が削減されます。また、エコドライブの導入やEVトラックの活用など、環境に配慮した取り組みも加速しています。

・物流の安定化

長期的に持続可能な物流網の構築され、緊急時の共同配送活用などにより災害時の物流の柔軟性が向上します。

 

ホワイト物流の推進により、物流事業者・荷主・社会全体にメリットがもたらされます。
特に、ドライバーの働き方改革・物流の効率化・環境負荷の低減は、今後の物流業界において欠かせない要素です。

企業がホワイト物流の取り組みを進めることで、持続可能な物流ネットワークを構築し、競争力を高めることができるでしょう。

ホワイト物流の導入事例

厚生労働省と国土交通省は、各都道府県に設置した「トラック輸送 における取引環境・労働時間改善協議会」を通じて、平成28〜29年度に荷主企業とトラック運送事業者が連携し、ドライバーの長時間労働改善を目的とした「パイロット事業」を実施しました。

事例集の中からいくつかご紹介いたします。

①物流の改善提案と協力

関係者一同が意見交換会を行い、各社が有している情報・技術・能力を共有し協力の下で改善を実施しました。

結果:保管スペースを約100坪削減し、品揃えや荷捌きスペースに転用することで作業効率を向上させ、トラックの荷待ち・荷役時間を短縮しました。

②予約受付システムの導入

試験導入中の受付予約システムを実験期間中に開放し、1時間単位の着床時間予約を設定して運行しました。

結果:

・ドライバーの拘束時間が5時間30分短縮され、フォーク荷役により疲労が軽減。予約システム導入で運行計画の精度向上と業務の自由度が拡大。

・納品時のパレット積み替えが不要となり、メーカー側の商品事故リスクが低減。

・流通センターのバース回転率が向上し、荷下ろし後すぐに自動倉庫への格納が可能に。

③パレット等の活用

荷役作業の短時間化・省力化を目的に、パレットを利用したトライアル輸送、また、パレットを活用した輸送の本格導入に向けて関係者間で議論・検討を実施しました。

パレット活用: 従来の手作業では積み込みに2時間13分、拘束時間は14時間07分だったが、パレットを活用することで積み込み時間を34分削減、拘束時間も1時間12分削減し荷役作業の効率化とドライバーの疲労を軽減することができました。

積み先見直し: 複数の積み先での積み込みによる拘束時間は平均13時間47分だったが、積み先を削減することで1時間7分短縮でき作業の効率化とドライバーの負担が軽減されました。

④発荷主からの入出荷情報等の事前提供

出荷データを1日前倒しで受け取ることで、朝から積込み作業が可能となり、発荷側での手待ち時間がほぼゼロになりました。

⑤幹線輸送部分と集荷配送部分の分離

1人のドライバーが複数集荷・長距離輸送・配達を兼任し、拘束時間が長時間化していましたが、集荷と長距離幹線輸送・配達を分業することで、ドライバー1人あたりの拘束時間を大幅に短縮しました。

荷役作業の短時間化・省力化を目的に、パレットを利用したトライアル輸送を実施。また、パレットを活用した輸送の本格導入に向けて関係者間で議論・検討を進める。

出典)
https://white-logistics-movement.jp/wp-content/themes/white-logistics/docs/01_torikumi.pdf

ホワイト物流推進の課題

ホワイト物流は、持続可能な物流を目指す重要な取り組みですが、その実現にはさまざまな課題が存在します。ここでは、ホワイト物流の推進を阻む主な課題を項目別に解説します。

1.企業間の連携不足

ホワイト物流の成功には、荷主企業と物流事業者、さらには異業種間の連携が欠かせませんが、実際には情報共有や調整が不十分なケースが多く、効率的な物流ネットワークの構築が難航しています。

時間指定の緩和や、夜間・休日納品の導入など納品時間の柔軟化や、予約制の導入・物流センターのオペレーション改善など荷待ち時間の削減が必要です。

2.ドライバー不足の深刻化

2024年問題の影響もあり、長時間労働が是正される一方で、ドライバーの収入減少や人材不足が懸念されています。また、物流業界は高齢化が進んでおり、新規の若手人材が参入しにくい現状も課題です。

休日の確保、労働時間の適正化、給与の適正な引き上げなどの待遇改善や、働きやすい環境づくり、自動運転・ドローン配送などの省人化技術を活用し、人手不足を補う必要があります。

3.ドライバーの労働環境改善によるコスト増

長時間労働の是正や労働環境改善には、人件費の増加や設備投資が必要になります。また、荷主側が運賃アップに消極的なケースも多く、適正な運賃の設定が進まないことが課題となります。

適正な運賃の設定や、共同配送・モーダルシフトなど物流の効率化、AI・IoTなどのDX導入で無駄を削減し、コスト負担を軽減する必要があります。

4.共同配送・モーダルシフトの普及の遅れ

複数の企業が協力して配送する「共同配送」や、トラック輸送から鉄道・船舶へ切り替える「モーダルシフト」は、ホワイト物流の重要な取り組みですが、実施のハードルが高く、普及が進んでいません。共同配送では、異なる企業同士の荷物をまとめて配送する必要があるため、調整が難しく、モーダルシフト(トラック→鉄道・船舶)では、インフラの整備や運行スケジュールの調整が必要です。

業界団体や政府の主導による共同配送の推進や、荷主・物流事業者が連携し、モーダルシフトを積極的に活用する必要があります。

5.デジタル技術の導入遅れ

AIやIoTを活用した物流DXが注目されていますが、特に中小の物流企業では導入が進んでいません。紙ベースの管理やアナログな業務フローが根強く残っており、業務の効率化が遅れています。

国や自治体の補助金・助成金を活用したり、低コストで運用可能なクラウド型の物流管理システムの導入の検討、荷主と物流事業者のデータ連携を強化したDX化を加速させる必要があります。

ホワイト物流で目指す未来

ホワイト物流は、単なる業務効率化にとどまらず、物流業界全体の構造改革を目指す重要な取り組みです。近年の人手不足や長時間労働の課題を解決し、より持続可能な物流体制を築くために、業界を超えた連携と新たな施策の導入が求められています。

特に、IT技術の活用や自動化の推進によって、物流の効率向上が進んでいます。データを活用した配送計画の最適化AIによる需要予測により、無駄な輸送を削減し、トラックの稼働率を向上させることが可能になります。

また、企業間の協力による物流資源のシェアリングが進めば、より少ない車両で効率的に輸送を行うことができ、環境負荷の軽減にもつながります。

ホワイト物流の実現には、企業の積極的な取り組みと行政の支援が不可欠です。今後、物流の持続可能性を高めるためにも、新たな技術の導入や業界の枠を超えた協力体制の構築が求められています。

まとめ

ホワイト物流は、物流業界が直面する人手不足や労働環境の改善、さらには環境負荷の軽減を目指した重要な取り組みです。「ホワイト物流」推進運動のもと、納品時間の柔軟化や予約受付システムの導入、DX化を活用した効率化など、さまざまな施策が進められています。

この取り組みによって、ドライバーの労働環境の向上、物流の効率化、CO₂排出削減など、業界全体に多くのメリットが期待されています。 実際に、すでに多くの企業がホワイト物流を推進し、共同配送や自動運転技術の導入などを実践しています。

一方で、商習慣の見直しや適正な運賃設定、物流DXの導入など、克服すべき課題も多く残されています。今後、企業間の連携や業界全体の意識改革が求められる中で、ホワイト物流の推進は持続可能な物流の実現に向けた大きな鍵となるでしょう。

ホワイト物流の取り組みを広げ、より効率的で持続可能な物流システムを構築することが、これからの物流業界に求められています。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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