企業DXのためのAI導入・活用方法をチェック
今求められているDXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、テクノロジーを活用して企業の業務プロセス、企業文化、顧客エンゲージメントを根本から変革することを指します。
経済産業省では「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を公表し、このなかでDXを以下のように定義しました。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
医薬品業界に取り入れることにより、データ分析や患者にパーソナライズされた医療の提供が期待できます。
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医薬品業においてDXが求められる理由
医薬品業界におけるデジタル化は、創薬や業務の効率化などに影響を与えます。ここでは、DXが求められる主な理由を見ていきましょう。
運用コストの削減
近年の日系製薬企業では、薬剤費抑制、創薬手法の遅れ、小規模な投資、後発医薬品の推進などの理由により、創薬のハードルが高くなり、新薬を創出し続けることや新薬に関する事業を維持し続けることが難しくなっています。
このことから、創薬にかかるコストを抑えることが求められています。
新薬の開発は時間とコストがかかるため、こうした創薬の課題に対するDXとして、AIの導入が進んでいます。AIを用いてビッグデータを分析し、効果的な候補化合物を迅速に特定し、臨床試験への道を短縮できるなど、AIの活用は創薬手法の変革につながります。
業務や知識の属人化
製薬業界の業務や知識は、属人化しやすい傾向があります。一般的に属人化は、業務効率の悪化や業務品質の不安定化など、生産性を低下させるリスクを高めます。
医薬品の開発には長い期間を要するものなので、それにより資料が膨大になることから、属人化しやすくなる傾向にあります。このような膨大な情報をデジタル化して管理することで、業務や知識の標準化を進めるといった取り組みが行われています。
感染症対策
2020年から広まった新型コロナ感染症は、世界各地に甚大な影響を与えました。
感染症対策として、医薬品業界でもMR活動のデジタル化など、非接触の取り組みが広がっています。
消費者側からの視点では、オンライン処方や薬の宅配など、さまざまな場面でオンライン化が進んでいます。
医薬品業がDXを取り入れるべき分野
研究開発
新薬の研究開発では、資金面のコスト以外にも人的コスト・期間など、多大なコストがかかり、問題視されています。そこでDXを取り入れれば、コスト削減できる可能性があります。
具体的なDXとして、データサイエンスの導入、臨床試験プロセスのリモート化、医薬品の管理業務で盗難や改ざんを防止するなどがあります。研究開発にDXを取り入れることで、コスト削減につながり医薬品業界に大きなメリットをもたらします。
在庫管理
薬局の現場では、未だにアナログ運用が続いているところが多いのが現状です。
薬局での医薬品の在庫管理業務にDXを取り入れることで、従来人が管理していたことを、デジタルで管理できるようになり、人材不足解消にもつながります。
MR(営業活動)
MRは、自社の薬製品の販売普及活動や医薬品の適正使用のために、医薬品情報を医療従事者に提供しています。新型コロナ感染症の拡大によって、MR活動ができなくなるという重大な影響が出ました。
そこで病院や医師に対する製品の情報提供をオンライン化するなど、DX取り組みが進むことで、通勤費や紙資料のコスト削減にもつながります。
医薬品業におけるDXのメリット
研究開発の加速
DXは、データ分析と機械学習を活用して薬の研究開発プロセスを加速させます。
これにより、新薬候補のスクリーニング時間が短縮され、より効果的な治療法が早期に発見される可能性が高まります。
データ駆動型のアプローチは、より精確で予測可能な研究結果をもたらし、臨床試験の成功率を向上させることができます。
患者の利便性向上
Web問診やオンライン診療などのサービスは、問診票の記載などを簡素化させ、通院の手間を省くことができるなど患者さんの利便性を大きく向上させました。
また、医療情報が各機関で共有されることでこれまで受けてきた健診や予防接種、診療、投薬の情報などを患者さん自身が説明したり、必要書類を提出したりする必要がなくなります。
コスト削減
医療や介護に必要な情報を一元化し、管理&いつでも共有することができるようになると、これまで必要だった診療情報提供書のやり取りなどが不要になります。
その結果、人件費などのコストを削減することができ、医療機関や介護事業者の経営状況の改善につながります。
医薬品業におけるDXの事例
塩野義製薬株式会社
「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2024 」における「DX注目企業2024」に選定され「DX注目企業」への選定は2年連続となりました。
デジタル技術を活用したバリューチェーン全体の生産性向上
コロナ治療薬のプロジェクトに代表されるように、ITやAI、データの活用により、研究開発の創薬領域に加え、上市後の育薬領域も含めたバリューチェーン全体のスピードと生産性を向上させました。
HaaS(Healthcare as a Service)ビジネスモデル
高度化・多様化しているヘルスケア領域のニーズに応えるため、デジタル技術の適用と社外リソースとの協創連携(エコシステム)。
参照:https://www.shionogi.com/jp/ja/news/2024/05/20240528_1.html
中外製薬株式会社
「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2023」において「DXプラチナ企業2023-2025」に選定されました。
デジタルプラント
このプロジェクトでは、デジタル技術を活用して生産業務を変革し、生産性を高めることを目指しています。
具体的には、生産ラインの各ステージで収集されるデータをリアルタイムで分析sる生産プロセスの最適化や、製造プロセスにおける手作業を減らし自動化技術を導入するなど製品の供給能力を向上させるとともに、コスト効率を改善しています。
参照:https://www.chugai-pharm.co.jp/profile/media/conference/files/230306_IBM_Chugai_DX.pdf
AIを活用した新薬創出
中外製薬が強みとする疾患領域でのターゲット探索と、技術的な知見が豊富な各種モダリティでの分子設計のそれぞれにAIを活用。中外製薬が独自に保有する大量のデータ解析に基づき、革新的な新薬創出を目指します。AI技術は自社でも独自に開発しつつ、Preferred Networksをはじめとするパートナー企業と連携し、機械学習・ディープラーニング活用を推進しています。
参照:https://www.chugai-pharm.co.jp/profile/digital/ai_technology.html
第一三共株式会社
データ基盤Integrated Data Analytics Platform(IDAP)を構築
IDAPは社内外の異なる目的や領域で収集されたデータを一元化し、用途に応じてデータを加工し、解析システムを用いてアウトプットを創出する仕組みです。
データ基盤の整備と同時に『グローバルデータガバナンスポリシー』を制定し、規制やコンプライアンスに準拠し安全かつ信頼できるデータ資産を構築しています。
Healthcare as a Service
健康・医療領域の企業・団体やデータプロバイダー・IT企業などと協業し、健康促進〜予防〜治療〜予後ケアに亘るトータルケアエコシステム構築。
患者一人一人に寄り添った最適なサービスを提供しています。
参照:https://www.daiichisankyo.co.jp/about_us/dx/
アイディオットでできるDXコンサルとは
アイディオットでは医薬品業におけるDXのコンサルティングを提供しております。
具体的には、データ統合し一元管理するシステムの開発、デジタルマーケティング、サプライチェーン管理システムなど多岐に渡ります。
アイディオットのコンサルタントがお客様の現状や、具体的な課題に合わせたカスタマイズされた解決策をご提供いたします。
まとめ
医薬品業界におけるDXは、新薬開発の加速、生産効率の向上、患者とのコミュニケーション強化、さらにはコスト削減に貢献しています。
AIの利用やビッグデータの活用が、研究開発から臨床試験、市場分析に至るまでの各段階で効率を革新しクラウド技術の導入がデータのアクセス性とセキュリティを同時に向上させており、グローバルな規模での連携が容易になっています。
これらの技術革新は、医薬品業界における持続可能な成長を支え、患者へのより良い治療方法を提供することが期待できるでしょう。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。