企業DXのためのAI導入・活用方法をチェック
今求められているDXとは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、テクノロジーを活用して企業の業務プロセス、企業文化、顧客エンゲージメントを根本から変革することを指します。
経済産業省では「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を公表し、このなかでDXを以下のように定義しました。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
不動産業では、このアプローチが特に重要であり、物件のデジタル化、VR活用、AI導入を進めることで顧客満足度を向上できると期待されています。
特にオンラインでの完結型サービスの提供は、新型コロナウイルスの影響で非接触のニーズが高まる中、不動産業界における競争力を保つための重要な要素となっています。
この記事では、大手企業の事例を通じて、実際の成功事例から見るアプローチ方法を紹介します。
【大手企業の事例に学ぶシリーズ第1弾】製造業における物流DXとは?
【大手企業の事例に学ぶシリーズ第2弾】陸運・海運・空運業における物流DXとは?
【大手企業の事例に学ぶシリーズ第4弾】小売業における物流DXとは?
不動産業におけるDXとは
不動産業界におけるDXは、オンラインプラットフォームを利用した物件情報のデジタル化、VRによる物件内覧、AIによる顧客ニーズの解析といった技術が導入されています。
これらの技術により、顧客はいつ、どこからでも物件情報を見ることができ、気軽に内覧や問い合わせをすることが可能になります。
また、データ分析を通じて市場動向を即座に把握し、より効果的なマーケティング戦略を立てることが可能です。これらの技術革新により、不動産業界は顧客サービスの向上と業務の効率化を実現しています。
不動産業においてDXが求められる理由
業界特有のアナログ作業の常態化
2019年時点の不動産業のテレワーク導入状況は、情報通信業や金融・保険業と比べて半分程度の低水準に位置しています。
不動産業界ではいまだに書類作成が手書きで行われていたり、来客対応や内見対応は対面式がメインであったり、顧客管理も古いシステムを使用しているなど、さまざまな業務をマンパワーに頼らざるを得ない状況が続いているのが現状です。
不動産業界特有の慣習やアナログ作業による業務プロセスが定着し、依然として古い体質を脱却できない状況が続いています。
人手不足の顕在化
前述の通り、不動産業界特有の慣習やアナログ作業による業務プロセスが定着し、それにともない、長時間労働による人手不足も深刻な問題として挙げられます。
また、不動産業界は他の業界に比べサービス残業が多く、その結果、業界全体の離職率も高く、慢性的な人手不足が問題となっています。
顧客ニーズの多様化
近年では、不動産を選ぶ方法も、インターネットやスマートフォンを活用して物件情報を取得することが当たり前となっています。
また、新築の不動産だけではなく、中古物件やリノベーションの有無など、働き方やライフスタイルの変化にともない、顧客の求める要望やニーズの多様化・複雑化が進んでいます。
不動産業におけるDXのメリット
上記のような不動産業界の課題は、DXによって解決する可能性があります。
不動産業におけるDX活用のメリットをいくつか見ていきましょう。
業務効率化による生産性向上
DXの活用によって、従来のアナログな業務スタイルからデジタルシフトすることで、業務効率化による生産性向上につなげることができます。
業務のデジタル化を通じ、業務全体を最適化することで、これまでマンパワーに頼っていたアナログ業務の自動化や、プロセス自体の可視化や分析も可能なため、人件費削減などのコスト抑制にも繋がります。
業務プロセスの見直しや棚卸しを行い、業務の自動化や無駄な作業を削減することで、生産性が大きく向上し、人手不足の解消も期待できるでしょう。
取引プロセスの透明性の確保
ブロックチェーン技術の導入により、不動産取引の透明性が高まります。契約のデジタル化は、書類の偽造や改ざんのリスクを軽減し、すべての関係者にとって安全で信頼性の高い取引環境を提供します。
顧客満足度向上
オンライン上で接客や契約が締結できるシステムを導入することによって、わざわざ店舗に出向く手間を省くことができます。これにより、顧客側や取引先の利便性が高まり、顧客満足度向上につながります。
顧客側の利便性を高める具体的なDX例として、IT重説やVR内見が挙げられます。
IT重説とは、オンラインで重要事項説明を行うことです。
VR内見や電子契約と共に用いることで不動産会社は遠方の顧客でも、実際に足を運んでもらうことなく契約できるようになります。
顧客側も不動産会社の店舗まで出向かずに物件探しや契約ができるため、顧客満足度の向上も期待できます。
不動産業におけるDXのデメリット
メリットがある一方で、DX導入にはデメリットもあるということを考慮しなければなりません。ここでは不動産業だけでなく、DX導入における一般的なデメリットを解説します。
初期費用がかかる
DX推進は、実現までに長い期間や初期費用を要するケースが多くあります。
新たな技術やシステムの導入にはしばしば高額な初期投資が必要となります。
スキルギャップ
システム導入後はこれまでの業務環境が変化し、新しい作業を覚えるための時間と労力が発生するため、従業員に負担がかかります。
効果的なDXを実施するためには研修や新たな人材の採用が必要な場合もあります。
セキュリティリスク
システムがデジタル化されることで、サイバー攻撃などのセキュリティリスクが増加する可能性があります。
継続的なメンテナンスと更新の必要性
導入されたテクノロジーは常に最新の状態を保つ必要がありますが、これには継続的なコストと労力が伴います。
不動産業におけるDXの事例
東急不動産ホールディングス株式会社
東急不動産ホールディングスは、DXによる既存ビジネスの深化と
新規ビジネスモデルの創出の事例が評価され、「DX銘柄 2023」に選定されました。
DX銘柄 2023
・既存ビジネスモデルの深化として、東急不動産の新築分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」のデジタルツインを活用した販売顧客接点におけるCX向上を図りました。
・新規ビジネスモデルの創出として、ニセコのスキー場におけるパウダースノーを滑る権利・体験そのものを「NISEKO Powder Token」というNFTで販売しました。
参照:「デジタルトランスフォーメーション銘柄 2023」に選定
AI査定
不動産仲介事業におけるAI査定の導入を行いました。このシステムでは、実際の査定データとデータサイエンスを組み合わせることで、誤差率を大幅に低減し、査定作業の効率化を実現しています。これにより、査定にかかる時間が約15,000時間削減され、その時間をより質の高い顧客対応に充てることが見込まれています。
再生可能エネルギー施設
東急スポーツオアシスの営業管理システムを活用し、データの統合及び可視化を行うBIツールを開発。
これにより、従来は多くの手間と時間を要していたデータ集計作業を効率化し、その他の業務へリソースを再配分することが可能になりました。
参照:https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/ir/library/slide/20212/html/42.html
三菱地所株式会社
三菱地所株式会社は、経済産業省と東京証券取引所が選定する「DX注目企業2023」に選ばれました。
ロボット連携次世代サービス
スマートシティの実現に向けて、オンライン・オフラインでもロボットが活躍できる「ロボットフレンドリー」な環境づくりを推進しています。
これには、ロボットが施設内でスムーズに動作できるように、エレベーターやセキュリティドアとの連携も含まれています。行政やテナント企業、ロボットメーカー、警備会社、清掃会社など、ステークホルダー間の連携のハブも三菱地所株式会社が担っています。
顔認証サービス「Machi Pass FACE」
顔認証を用いたセキュリティシステムを導入し、複数の場所で異なるサービスにシームレスにアクセス可能にする一元化プラットフォームを開発しました。これにより、利用者は登録した顔画像一つで様々な場所へのアクセスが容易になります。
HEMS対応スマートホームサービス「HOMETACT」
エネルギーマネジメントでCO2削減への寄与を目指す総合スマートホームサービスです。
スマートロックや顔認証システムとの連携により、無人内覧や置き配などの不動産管理DXを推進する機能を強化しています。
また家庭のエネルギー使用量を生活者が直感的に理解できるインターフェースを開発することで、利用者の節電意識を高め、エココンシャスな生活を支援します。
長谷工コーポレーション
マンションFitの開発
このアプリは、検討初期段階の人に向けて、自分に合った新築マンション探しをサポートするサービスです。
顧客データを活用してユーザーに最適なマンションを推薦します。
使い方は簡単で「マンションFit」のLINE公式アカウントを友だちに追加し、5つの項目(①家族構成、②年齢、③自宅・勤務先の最寄り駅、④世帯年収、⑤現在の居住形態)を入力すると、3件のおすすめのマンションが紹介されます。見学もLINE上から予約が可能です。
BIM (Building Information Modeling)の導入
コンピューター上に3次元化した建物モデルを構築する先進の設計手法。
建物の形状や空間構成に加え、部材の数量・材質・仕様などの属性データも含まれており、それらを立体的に確認することができます。
これまでの設計・施工ノウハウも活用しています。
参照:長谷工版BIM
アイディオットでできるDXコンサルとは
アイディオットでは不動産業におけるDXのコンサルティングを提供しております。
具体的には、データ駆動型アプローチの導入で不動産関連の大量データを収集・分析し、顧客の購入行動や市場動向を正確に把握するための戦略を支援、契約プロセスのデジタル化や、AIによる顧客管理システムの導入を通じて、時間がかかる作業を自動化、コスト削減、そして市場ニーズに迅速に対応する能力の向上を目指します。
アイディオットのコンサルタントが各企業の現場を深く理解し、具体的な課題に合わせたカスタマイズされた解決策を提供します。
まとめ
不動産業におけるDXは、顧客体験の向上、市場の変動性への対応、コスト削減などの向上に必要不可欠です。
大手企業の事例から、テクノロジーを積極的に取り入れることで市場の変化に迅速に対応し、競争優位を確立できることが明らかになります。
AI、自動化技術の導入などは急速に進んでおり、大手企業は特にその先駆けとなっています。
これらの動向を見ると、DXの導入、進展は止まることがなく考え続けることが大切でしょう。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。