【大手企業の事例に学ぶシリーズ第2弾】陸運・海運・空運業における物流DXとは?

  • 2024.06.21
  • DX
【大手企業の事例に学ぶシリーズ第2弾】陸運・海運・空運業における物流DXとは?

 

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今求められているDXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、テクノロジーを活用して企業の業務プロセス、企業文化、顧客エンゲージメントを根本から変革することを指します。

経済産業省では「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を公表し、このなかでDXを以下のように定義しました。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

陸運・海運・空運業では、このアプローチが特に重要であり、AI導入、自動化、リアルタイムデータの活用、を進めることで、効率的な生産体制を築きます。

DXを進めることにより、陸運・海運・空運業は市場の変化に迅速に対応し、生産性を向上させることが可能です。

この記事では、大手企業の事例を通じて、実際の成功事例から見るアプローチ方法を紹介します。

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陸運・海運・空運業における物流DXとは

 

陸運・海運・空運業界におけるDXは、物流効率の向上、コスト削減、顧客サービスの質の向上させる取り組みです。

具体的には、AIや自動化技術の導入により配送効率の向上、GPS追跡システムを利用することで、リアルタイムでの配送状況が把握可能となり、配送効率が飛躍的に向上、作業員の負担軽減と作業時間の短縮などが実現されています。

 

これらの技術革新により、業界全体のサービス品質が向上し、経済的な利益も増大しているのです。

 

陸運・海運・空運業において物流DXが求められる理由

 

国土交通省は「物流DX」について、「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」資料において次のように述べています。

「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること。」

 

・既存のオペレーション改善・働き方改革を実現
・物流システムの規格化などを通じ物流産業のビジネスモデルそのものを革新

物流は、物流業だけでなく多くの企業にとっても重要な経営戦略のひとつとして位置付けられていますが、以下のような課題を抱えており、早急な物流DXが求められています。

深刻な労働力不足

物流業界では以前からドライバーの高齢化問題が指摘されていました。後述する、EC利用の急拡大が人手不足にさらに拍車をかけることになりました。

道路貨物運送業の従事者の年齢構成は、全産業平均より若年層の割合が低く、高齢層の割合が高いことも指摘されています。

 

EC市場の成長に伴う小口配送の急増

コロナ禍の外出自粛などの影響で、EC市場が急成長したことで個人宅への小口配送が急増しました。

経済産業省が公表している「電子商取引に関する市場調査の結果」によれば、物販系分野のBtoC-EC市場規模は、2019年、10兆515億円から2022年、13兆9,997億円と市場規模が拡大しています。

 

小口配送の急増はトラック積載率の低下や、倉庫内での在庫管理の複雑化などを招き、結果として業務全体の効率悪化に繋がってしまいます。

 

トラックの積載効率の低下

小口宅配便の荷物の種類が多くなり、小ロットが増えていくと、トラック積載効率が低下することが懸念されます。トラックによる積載効率が年々低下し、積載可能な容量の6割が使われずに無駄になっているのが現状です。

 

過酷な労働環境

 

「深刻な労働力不足」「EC市場の成長に伴う小口配送の急増」の影響により、物流業界では以前にも増して長時間労働が常態化しています。

 

トラック運送業は全職業の平均よりも労働時間が約2割長く、年間賃金は約1~2割ほど低いというデータも示されており、また、燃料コストの高騰や各社の価格競争などが原因で賃金を上昇させることができず、物流業界の従業員は過酷な環境での労働を強いられています。

2024年問題

2024年4月からドライバーの労働時間に上限が設けられることに伴って生じる問題のことで、これに対応するために、業務効率化や人材獲得・定着の促進、そして労働環境の改善などの取り組みが必要となってきています。

 

陸運・海運・空運業におけ物流DXのメリット

 

サプライチェーン全体の透明性向上

IoTデバイスやブロックチェーン技術を導入することで、リアルタイムでの貨物追跡が可能になり、現場の状況を即座に把握し、サプライチェーン全体の透明性向上が望めます。

これにより、遅延のリスクを最小限に抑えつつ、顧客への情報提供がスムーズに行えます。

 

効率化とコスト削減

デジタル技術を活用することで、配送ルートの最適化、在庫管理の自動化、作業プロセスの効率化が可能となり、時間とコストの大幅な削減が実現します。

たとえば、AIを用いた需要予測システムは、需要の変動に基づいてリソースを自動調整し、過剰在庫や人員の過不足を防ぎます。また、ドキュメントのデジタル化は、紙ベースの作業を減らし、データ入力やアップデートの時間を短縮します。

 

顧客満足度の向上

デジタルツールの導入により、顧客はオンラインで簡単に配送状況を追跡できるようになります。

透明性の高いサービス提供が可能となることで、顧客信頼と満足度が向上します。

 

サステナビリティの実現

環境への配慮は避けられない課題です。DXは、運輸業界におけるCO2排出削減に寄与します。エンジン性能の最適化、燃料効率の向上、電動トラックへの移行支援など、持続可能な運輸手段の開発に役立てることが可能です。

 

陸運・海運・空運業におけるDXの事例

 

ヤマトホールディングス株式会社

「デジタルトランスフォーメーション銘柄2024」の「DX注目企業2024」に選定されました。

グループ経営基盤の強化の一つとして「デジタル戦略」を掲げており、あらゆる情報をリアルタイムに把握し、社内外のシステムと連携できるデジタル情報基盤を活用し、輸配送・作業の効率化、温室効果ガス排出量の可視化、社員・パートナーの働きやすさの向上など、経済価値・環境価値・社会価値の創出に取り組んでいます。

 

日本郵船株式会社(NYK Line)

日本郵船株式会社は、MarCoPayの実用化や船舶データレイクの整備など取り組みが評価され、DX注目企業2022に選定されました。

船舶のIoT化を進め、ビッグデータを活用して船舶運航の効率化を図っています。船舶の各種センサーから収集されるデータを解析し、最適な航路決定や燃料消費の削減、メンテナンスの最適化を行うことで、運航コストの削減と環境負荷の低減を実現しています。

 

MarCoPayは、船上で電子通貨による給与受け取りや送金、決済のキャッシュレス化などを実現した、船員向け金融プラットフォームです。船舶データレイクは、無人運航船の実証実験を支えるもので、本来のフォーマットのままビックデータを格納できる管理システムです。

また、日本郵船は、グループ全体のデジタル人材の育成を強化するとともに、AIなどの新技術の活用を進めています。

 

株式会社日立物流

株式会社日立物流は、優れたDXを展開している企業を選定する「DX銘柄2022」に選定されています。

日立物流は、物流センターの運用にデジタルツイン技術を導入し、リアルタイムでの情報共有と運用の最適化を行っています。

 

物理的な倉庫とそのデジタル複製(ツイン)を連動させることで、在庫の可視化、スペースの有効活用、作業効率の向上を図っています。

また、未来の需給予測に基づいた在庫管理や、ロボティクスとの連携によるピッキング作業の自動化も進めています。

 

日本航空株式会社

 

日本航空株式会社は、優れたDXを展開している企業を選定する「DX銘柄2021」に選定されています。

DXを加速させるために、様々な部門の社内人財と社外パートナーシップが集まり、全社で推進できる体制を構築したり、JALならではのノウハウと先進テクノロジーにより、空飛ぶクルマやドローンを活用し、身近で手軽な空の移動手段を目指すエアモビリティ事業に取り組んでいます。

 

アイディオットでできるDXコンサルとは

アイディオットは製造業に特化したDXコンサルティングを提供しており、企業のデジタル変革をトータルで支援します。

具体的には、最新のテクノロジーを活用した生産効率の最適化、コスト削減、そして市場ニーズに迅速に対応する能力の向上を目指します。

 

また、IoT、AI、ロボティクスなどの技術を組み合わせることで、データ駆動型の意思決定を実現し、製品の品質向上やサプライチェーンの透明性を高める戦略を提案。アイディオットのコンサルタントが各企業の現場を深く理解し、具体的な課題に合わせたカスタマイズされた解決策を提供します。

 

まとめ

陸運・海運・空運業界におけるDXは、業務効率の向上、コスト削減、サービス品質の向上に必要不可欠です。

大手企業の事例から、テクノロジーを積極的に取り入れることで市場の変化に迅速に対応し、競争優位を確立できることが明らかになります。

 

AIによる最適化、IoTでのリアルタイム追跡、自動化技術の導入などは急速に進んでおり、大手企業は特にその先駆けとなっています。

これらの動向を見ると、DXの導入、進展は止まることがなく考え続けることが大切でしょう。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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