マルチクラウドの活用事例・メリット・注意点を紹介

  • 2022.07.15
  • DX
マルチクラウドの活用事例・メリット・注意点を紹介

スピーディーに業務ができるクラウド化はビジネスにおいて必要不可欠です。

またSNSやリモートワークなど日常生活でもクラウドで提供されていることがたくさんあります。もはやなくてはならない存在といえるでしょう。中でも複数のクラウドサービスを組み合わせるマルチクラウドは、それぞれの良いところを利用できる便利なサービスです。

本記事では多くのビジネスで活用されているマルチクラウドの具体的な活用事例を紹介していきます。またメリット・デメリットに加えて、導入するときの注意点もあわせて解説しているので、導入を検討している人は参考にしてください。

マルチクラウドとは?

マルチクラウドは複数のクラウドサービスを使い分けて利用する手法です。

複数のクラウドシステムを導入することによって、用途に応じて組み合わせられます。
例えば、社内用のシステムと顧客システムとで異なっている場合、マルチクラウドならそれぞれに最適なクラウドサービスを併用できます。

クラウドサービスで優れている部分を利用できるため、良いとこ取りのサービスといえるでしょう。

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違い

複数のクラウドサービスを使い分けるマルチクラウドと比べて、ハイブリッドクラウドはクラウドサービスとオンプレミスを組み合わせる手法です。

どちらもクラウドサービスを利用しますが、大きな違いはすべてクラウド化するわけではないということ。
クラウド化することで業務を効率化するのはもちろん、同時に自社の独自システムを一緒に使えるため、最適な環境を構築できます。
社内システムによってはどうしてもクラウド化できなかったり、独自システムを使い続けたかったりする場合があるでしょう。

ハイブリッドクラウドなら用途や負荷の分散など、目的別にクラウドとオンプレミスを使い分けることができて非常に便利です。

マルチクラウドのメリット

複数のクラウドから良いとこ取りができるマルチクラウド。それぞれの得意とする部分だけを利用できるのが最大のメリットです。

では、ほかにどのようなメリットがあるのかを具体的に解説していきます。

事業者に依存しない

マルチクラウドは複数のクラウドサービスを利用するため、1社のみに依存することがありません。これはベンダーロックインタ対策にもなります。

ベンダーロックインは、あるクラウドサービスだけに依存することで起こり得る問題のことです。例えば、システムの乗り換えが困難になり不満があっても切り替えられなかったり、ずっと同じシステムを使い続けることになったりしてしまいます。

その点、複数のクラウドサービスを使うマルチクラウドならそういった問題を抱えることはないでしょう。

カスタマイズ性

クラウド化することでカスタマイズの範囲に限界が起きることはよくあります。しかしマルチクラウドはクラウドサービスを併用しているため、それぞれの仕様や機能を自社に合わせて組み合わせることが可能です。
まさに良いとこ取りとはこのことで、ニーズに合わせた提案ができることによってさらに最適化が望めます。

リスクの分散

1社のみに依存していないことによって、システム障害が起こったときのリスクを分散させられます。

特定のサービスに頼っていては、万が一そのクラウドに問題が生じて復旧に時間がかかると、その間は業務ができません。最悪の場合、データを紛失してしまう恐れだってあるのです。
マルチクラウドなら1つのサービスの復旧を待ちながら、別のクラウドにデータをバックアップしながら運用を続けられます。
また、通信量も分散されるのでアクセスが集中せず、快適に作業できるでしょう。

マルチクラウドのデメリット

多くのメリットがある便利なマルチクラウドですが、複数のサービスを併用するからこそ引き起こされる課題もあります。

ここからはどのようなデメリットがあるのかを3つまとめました。

運用コスト

複数のクラウドサービスを利用するため、運用コストがかかるのは避けられません。

1社に限定するよりも、良いとこ取りをしながらそれぞれのクラウドサービスを使うことでどうしても費用が大きくなってしまいます。
しかしクラウド化においてコスト削減は重要な部分です。業務の効率化が進んでも運用コストが多くなってしまうのは気になるところでしょう。

それぞれのクラウド事業所で手頃な価格のオプションを見つけたり、場合によってはクラウドからクラウドへの移行を考えたりする必要があります。

運用が煩雑化する

クラウドサービスを併用するということは、それぞれを運用・管理していかなければならいため、手間がかかります。サービスによってはシステム運用者の負荷になることもあるでしょう。

せっかくクラウド化することで管理者の負担が軽減できるはずなのに、一層手間がかかってしまっては元も子もありません。
利用するサーバーごとに管理者を決めたり、複数のクラウド環境を一括して管理できる体制を整えたりといった工夫が大切です。

セキュリティリスク

マルチクラウドはセキュリティ管理を統一できません。利用する複数のクラウドサービスによってセキュリティ基準はそれぞれです。そのため強度にも差が生じてしまいます。

また、すべてのサービスにおいてIDやパスワードを統一させるとセキュリティリスクがさらに上がるでしょう。
クラウドサービスを併用する場合は、自社でどこまでセキュリティ対策をするのかしっかり検討しておかなければいけません。

マルチクラウドの活用事例

すでに多くの企業でマルチクラウド化が進む中、具体的にどのような活用事例があるのでしょうか。

ここでは3つの職種に分けて紹介していきます。

製造業

自動車の安全性に関する製品や産業機械の高度情報化に対応する製品などを製造していうるT社の活用事例をみてみましょう。

自動車や輸送業界においては運行システムの制御、業務の多様化などニーズが高まっています。そのためシステムを安定的に稼働しながらも、コストを削減することが課題です。
T社でも運行システムは24時間365日止められないので、トラブルが起きたときの迅速な対応や原因の特定ができるマルチクラウドを活用しました。
システムを安定して稼働させることはもちろん、多様化する顧客ニーズに合わせたサービスを拡大しています。

販売業

販売業からは某スキンケアブランドの活用事例をみてみます。

こちらは自社の複雑なビジネスモデルに加えて、迅速なバックオフィス運営が課題でした。
コストを削減しつつ、ビジネスを継続して向上させていくことを考えてマルチクラウドを導入。結果としてパフォーマンスの向上に成功しています。

建築業

T建築会社では組織が分かれていたために、システムを個別に運用していました。そのため個々に手間や負担がかかるのが課題となっています。

そのため社内すべてのITシステムを構築し、統合をはかるためにマルチクラウドを導入。
目的や用途に合わせてクラウドサービスを組み合わせられるので、最適な環境を作り出すことに成功しました。
同時にオンプレミスではシステム開発に多大な時間と作業がかかっていたのも削減され、業務の効率化につながっています。

マルチクラウド導入時の注意点

便利だからと無計画のまま導入してしまっては、あとから問題が生じる可能性があります。

マルチクラウドを上手く活用していくためにも、これから紹介する3つの注意点を頭に入れておきましょう。

問題点の洗い出し

まずは自社が抱えている問題点をできるだけ多く洗い出しておきます。課題を明確にしておいた方が、どのクラウドサービスを導入するか選びやすくなりでしょう。
クラウドサービスにも種類がいろいろあるので、どれが自社に最適なのかを考えて導入することで、今後のパフォーマンス向上にもつながります。

移行時の負担を検討

データをクラウドに移行するときには、時間や管理者の業務に負担がかかります。その負荷が大きければ大きいほど管理者の業務はもちろん、移行にかかる時間も増える一方です。
できるだけ元のシステムより複雑ではなく、扱いやすいシステムの導入を検討しましょう。

移行計画の立案

スムーズにクラウドへ移行させるためには、計画を立てることが必要不可欠です。社内でまとまらないまま導入を始めてしまうと、社員に定着されなかったり混乱を招いたりする場合があります。
どこまでクラウド化させるのか、オンプレミスにするシステムはあるかを話し合ってから導入を始めましょう。

まとめ

今後のビジネスにおいてマルチクラウドは重要なサービスです。

業務の効率化はもちろん、カスタマイズ性やリスク分散にも優れていて、最適な環境を作り出せます。
しかしコスト面や運用管理など、1社のみのクラウドサービスを利用するときよりも注意しておきたい点があるのも事実です。

どういった課題を解決するために導入を考えているのかを明確にしてから、マルチクラウド化を計画しましょう。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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