重要な社会基盤となっている物流業界では、様々な課題に直面しています。業界を取り巻く環境は年々苦しくなっており、今後は大幅な改革が必要になるでしょう。そのような状況の中、物流業界の課題解決策として注目を集めているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。
物流における多数の課題を一挙解決できると期待されており、大手を中心に導入や取り組みが始まっています。
物流DXとは？なぜ今求められているの?
物流DXは様々なデータやテクノロジーを駆使し、物流業界の在り方を変える取り組み全般を言います。AIやロボット、インターネット通信技術などを組み合わせ、物流業界が抱える問題解決に繋がることが期待されています。
物流DXは国土交通省が提唱しており、オペレーション改善や働き方の改革、ビジネスモデル自体の革新を目標に掲げています。現在の物流業界は大きな課題に直面していますが、国も物流DXがそれらを解決する手段と捉えているのです。
物流DXが今求められている主な理由として、深刻な労働力不足、低賃金・長時間労働によるドライバーの負担急増、小口配送に伴う出荷量の増加が挙げられます。
深刻な労働力不足
深刻な労働力不足が物流業界で問題となっています。日本では人口減少によって労働力不足が顕著になり、物流業界も例外ではありません。このような状況下で、物流DXによって効率化や自動化を進めることで、人手不足に対応することができます。
低賃金・長時間労働によるドライバーの負担急増
また、低賃金・長時間労働によるドライバーの負担が急増していることも、物流DXが求められる理由の1つです。物流DXによって、人手不足を補うことで、ドライバーの負担を軽減することができます。
小口配送に伴う出荷量の増加
さらに、小口配送に伴う出荷量の増加も、物流DXが求められる理由の1つとなっています。小口配送は個人向けの通販や飲食店などからの需要が増加しているため、一度に配送する商品の種類が増えています。物流DXによって、効率的かつ正確な配送を実現することができます。
出典：『最近の物流政策について』国土交通省 2021年1月22日
物流DX、具体的に何をやっているの？
現在様々な業界でデジタル化が進んでいますが、物流業界については遅れていると言わざるをえません。物流業界に革新を起こす可能性を秘めた物流DXですが、具体的な取り組みが浮かばない方も多いと思います。
確かに言葉が先行している現状は否めませんが、取り組み次第では業務フローを大きく変革することもあるのです。そこで、物流DXの具体的な取り組み・施策について解説します。
AI活用による配送ルートの最適化
物流DXにおいては、AI技術を活用して配送ルートを最適化することができます。AIによって配送先の位置や交通状況、天候などを分析し、最短かつ最適なルートを導き出すことができます。これによって、車両の移動距離を減らし、燃料コストを削減することができます。
各種手続きのオンライン化
物流DXでは、配送に関わる各種手続きをオンライン化することで、作業の効率化を図ることができます。具体的には、荷物の受注や発注、輸送指示書の作成などをオンラインで行うことで、作業時間の削減や正確性の向上が期待できます。
ドローンによる配送
物流DXでは、ドローンによる配送が注目されています。ドローンを活用することで、配送先までの時間を短縮することができ、小口配送などの荷物を効率的に配送することができます。また、交通渋滞のない場所や災害時など、人が入りにくい場所でも配送を行うことができます。
以上のように、物流DXでは、AI技術やオンライン化、ドローンによる配送などを活用して、よりスマートで迅速な物流業務を実現することが求められています。
物流DXで解決できる課題。事例のご紹介！
物流DXは物流業界を変える可能性を秘めており、一部企業は積極的に取り組みを進めています。ここでは、物流DXに取り組んでいる企業の事例をいくつか紹介します。
どのような取り組みが必要か迷った時の参考になるかと思います。
SGホーディングス（佐川急便）
SGホールディングス（佐川急便）は、物流DXを活用して配送ルートの最適化や手続きのオンライン化などを進めています。具体的には、AIによる最適ルート探索システムの導入や、荷受け時の顔認証による手続きのスムーズ化、ドローンによる宅配サービスの実証実験などを行っています。これにより、配送効率の向上やドライバーの負担軽減、荷主企業とのコミュニケーションの改善など、様々な課題を解決しています。
例：佐川急便 DX戦略
日本通運株式会社
日本通運株式会社は、物流DXを活用して輸送管理の効率化やオペレーションの見える化、ドライバーの負担軽減などを目指しています。具体的には、IoT技術を活用したトラックの走行データの収集や、ドライバーの疲労度や体調管理などに関するデータの分析、オンライン配送プラットフォームの構築などを進めています。これにより、輸送効率の向上やドライバーの負担軽減、より精度の高い配送予測など、様々な課題を解決しています。
例：ソフトバンクと日本通運、物流DXを支援する新会社を設立
JR東日本
JR東日本は、物流DXを活用して鉄道輸送の効率化や省エネルギー化、車両の安全性向上などを目指しています。具体的には、輸送データの分析による効率的な列車運行や、AIによる運転士の運転行動の分析、ドローンやロボットによる荷物の配送実証実験などを進めています。これにより、鉄道輸送の効率化や省エネルギー化、より安全な運行など、様々な課題を解決しています。
例：ジェイアール東日本物流、物流ネットワークの再構築でビジネス支出管理基盤を採用
物流DXを推進する際の注意点
物流DXは多数の企業が取り組んでおり、今後も普及が進むと予想されます。しかし、安易に取り組むと業務効率が下がるばかりか、コストの増大を招きかねません。これから物流DXに取り組むのであれば、明確なビジョンを描きゴールを定めることが重要です。
目標設定から進捗管理の至る所に落とし穴が
物流DXでは、各過程において多くの落とし穴が存在します。例えば目標設定の過程では、よく理解せずにトレンドの技術を採用するケースがあります。ただ現在のトレンドの技術が将来も通用するとは限らず、数年後に廃れてしまうかもしれません。技術の導入には慎重な判断が求められます。
進捗管理においては、スピーディな改革を進めるケースも目立ちます。ところが急速な変化は従業員の困惑を招き、負担の増加に繋がる恐れがあります。物流DXに取り組むなら、いくつかの段階を決めて現場に無理が生じないように進めていきましょう。
戦略立案から実行支援まで可能なAidiotが支援
物流DXは、慎重な戦略が求められますが、迷った時はAidiotをおすすめします。戦略の立案はもちろん、実行支援までワンストップでサポートを受けることが可能です。大手を始め多数の実績もありますので、信頼性を重視したい方は検討してみましょう。
まとめ
物流業界は課題が山積みですが、物流DXが変化をもたらす可能性があります。すでに取り組み始めている企業も多く、従業員の負担軽減や作業効率化を実現したケースも少なくありません。デジタルに対する抵抗もあると思いますが、自社の問題を解決する手段として物流DXを検討してはいかがでしょうか。
この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。
