IoTでデータを取得してみたもののどのようにビジネスに活用していくか、具体的なイメージがわかないことはありませんか。ビジネスの現場で正しくIoTを活用することで、新たな価値創造や、業務効率化につながります。本記事では、IoTデータを活用する3つの要素と活用事例をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
IOTとは?
「IoT」とは「Internet of Things」の略で、日本では「モノのインターネット」と訳されます。IoTはモノ同士が自動で通信を行う仕組みと考えるとわかりやすいです。ウェアラブルデバイスやスマートロック、スマートスピーカーなどもIoTが使われており、ここ数年でより身近になったのではないでしょうか。
IoTでは身の回りにあるデバイスにセンサーを搭載。デバイスがこれまで感知できなかった情報をデータとして蓄積し、インターネットを介して情報をやり取りします。集まったデータを活用していくことで、既存業務の効率化やイノベーションにつながります。
IDC Japanでは、日本国内のIoT市場は2021年~2026年にかけて年9.1%で成長し、2026年には9兆1,181億円に達する見込みと推定。製造業や公共分野などのインダストリー分野でIoTが広がっています。
IOTを構成する3つの要素
IoTをビジネス現場で使用していく上で、3つの要素が大事です。ここでは、それぞれを解説していきます。
データを取得する
デバイスが情報の変化を感知し、データとして収集を行います。デバイスには、「音センサー」「光センサー」「温度センサー」「加速度センサー」など目的に応じて様々なセンサーを搭載可能です。これらのセンサーが環境の状況を定期的に検知し、データとして蓄積します。
Apple watchなどのスマートウォッチで脈拍や歩数が測れるのも、センサーが体に密着し情報を検知しているからです。センサーの小型化やコストの低下を受け、様々なデバイスにセンサーを搭載できるようになりました。
データを集約する
センサーで集めたデータはデバイスに置いたままではなく、どこか一ヶ所で保管する必要があります。その役割がデータベースです。デバイスに蓄積したデータはデータベースに集約し、保管・管理します。またクラウド型のデータベースが登場し、場所や機器を選ばずに利用でき、データ収集がいつでもどこでも可能になりました。
デバイスにあるデータをデータベースに保管する際には、インターネット接続が必要です。その際、「Wifi」「3G/LTE」など無線通信が使用されます。近年は「Bluetooth Low Energy」や「NB-IoT」など省電力の通信規格が登場したことも、IoTの普及が進む一つの要因です。
集約したデータを解析する
データベースに集まったデータを解析し、新たな価値提供や業務効率の検討を行います。大量に集まったデータ群である「ビックデータ」。ビックデータは集めて終わりではなく、解析することで初めて価値を生みます。
そのため、分析技術やデータを扱うノウハウが注目されています。アルゴリズムや統計、AIなどを活用してデータを分析、活用できるデータサイエンティストがIoTには欠かせません。
正しくデータを分析し活用することで、生産プロセスの向上、品質管理、リソースの最適化、エネルギーコストの削減、故障予知、社会インフラ老朽化対策、交通システム管理など様々な場面での活用が期待されています。
IOTの活用事例
ここではインダストリー分野の中でも3つに絞り、具体的な活用事例を見ていきましょう。
製造分野での設備稼働の可視化
製造分野でIoTを活用することで、設備稼働を可視化し、生産性向上や故障予知を実現することができます。
工場の製造ラインにセンサーを設置し、ラインの稼働状況を可視化。1日単位での比較が可能で課題が明確になり、生産性向上できる点が特徴です。
Docomoでは「IoT製造ライン分析」という法人向けのサービスを打ち出しています。既存設備にセンサーを外付けし、ラインの稼働データを取得。製造ラインの可視化や分析を行うことが可能です。”2年で100ラインによる平均43%の生産性向上、3億円の経費削減”を達成した事例もあります。
大興電子通信では生産設備における故障・異常の監視に、IoTを用いたソリューションを展開しています。工場にとって、生産設備の故障は致命的です。センサーを生産設備に取り付け、故障や異常を事前に検知することで計画的な保守対応や生産対応が可能になります。
医療分野でのデータ共有
次は医療分野でのデータ共有の事例を紹介します。IoTデバイスが取得した健康医療情報を、医療機関や企業の活動に生かす取り組みです。
KDDI総合研究所(埼玉県ふじみ野市)と埼玉医科大にて、医療分野でのデータ共有の実証実験を進めています。IoT医療機器や医療機関などから得る健康医療情報を、本人の選択で別の医療機関や企業に情報提供することが可能になる仕組みです。医師が診療の参考にしたり、企業が新しい薬や医療機器やサービスの開発にしたりすることができます。
海外と比べ、日本では医療関連データの利活用が進んでおらず、今後の普及が期待されています。
交通分野でのモニタリング
最後に交通分野での事例です。IoTを用いることで運送の効率化や事故予防につなげることができます。
富士通が提供する「商用車プローブデータサービス」では、2012年から日本全国を走る事業用トラックの詳細な走行データをリアルタイムで収集。商用車23万台(2020年11月)の走行履歴や運転挙動を分析し、渋滞や通行止めなどを事前に把握することで効率的な運送を行うことができます。
損保ジャパンが提供する「スマイリングロード」は、法人向けの事故防止サービスです。通信を搭載したドライブレコーダーが走行データを記録。通信で送られた走行データを分析し、ドライバーへフィードバックします。ドライバーの運転状況などを可視化し、未然に事故を防ぐことに役立ちます。
まとめ
oTでデータを活用する3つの要素と、活用事例をご紹介しました。IoTを用いることで、新たな価値創造や業務効率化につなげることができます。生産プロセスの向上、リソースの最適化、交通の効率化や安全など、様々な場面での活用が期待でき、今後も成長していく分野の一つです。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。