ID統合とは?できること・種類・事例を紹介

ID統合とは?できること・種類・事例を紹介

ID統合は、販売チャネルの多様化や人口減少などの時代背景によって、必要性が高まっており、様々な成功事例も報じられている仕組みです。この記事では、ID統合に関する基礎知識や、種類、具体的な事例を説明します。

最後まで読んでいただき、ID統合の導入準備を整えましょう。

ID統合とは

ID統合とは、企業内で顧客のデータを一元化することで、チャネルによらず顧客情報を収集・活用できるようにする仕組みのことを言います。

チャネルとは、顧客と企業とを結びつける媒体のことをいい、オンラインでの接点とオフラインでの接点が混在している近年の状況を「オムニチャネル化」と表現します。ID統合は、オムニチャネル化の加速と、人口減少によってより注目されるようになってきています。

ID統合によってできること

ID統合することにより、複数のサービスやブランドをもつ企業では、自社サービス全体でユーザーの購買パターンを分析し、プロモーションなどに活用することができるようになります。また、複数サービスで互換性のあるポイントサービスの導入などにより、クロスセルやアップセルを促進できるようになります。

背景1:販売チャネルの多様化

ID統合の必要性が高まった背景には、チャネルの多様化があります。現代ではスマートフォンが普及し、電車待ちの時間や移動中など、スマホが手放せなくなっていますよね。今や国民はいつでもスマホ、いつでもオンライン接続されている状態にあるといえます。

ネットショッピングやSNSだけでなく、店舗に行ってもアプリで会員カードを提示し、さらに席からアプリで注文するという光景も見るようになってきました。企業側も、webサイトやアプリなど、チャネルごとにサイドやブランドを立ち上げ、あらゆる手段で顧客との接点を持とうとします。

ただし、ユーザーからすると、その都度IDを登録しなければならず、ログイン情報を忘れてしまうリスクも発生します。

さらに、同じお店のはずなのに、こちらのサイトでは登録されていて、他のサイトでは登録されていないといったことがあると、それまでの関係性や情報が引き継げず、十分な対応ができずに顧客満足度を低下させてしまうことにもつながってしまいます。

こうした中で、ユーザー側の手間を減らし、サービス向上もねらえるID統合が注目されています。

背景2:人口減少に伴う顧客離れ

さらに、国内では人口減少が進んでおり、企業からすれば「たくさんのユーザーに買ってもらう」という発想から、「決まったユーザーに継続して買ってもらう」という、いわゆる”囲い込み”の戦略にシフトしつつあります。

こうした中では、企業グループやブランド内で顧客情報をまとめて扱い、クロスセルをねらったり、タイミングに合わせて最適化された商品やサービスを使ったアプローチを使った方が効果的なセールス戦略になります。こうしたことも、ID統合が注目されるようになった背景にあります。

ID統合の種類

ID統合には、企業側がID統合を行うものと、ユーザーがID統合を行うものの2種類があります。それぞれのメリット・デメリットについて説明します。

企業によるID統合

企業がID統合を行う方法は2種類あり、一つは「決定的論マッチング」と呼ばれるものです。

これは、顧客IDの中から氏名やメールアドレス、電話番号などのうちから一致する顧客を判別して統合する方法です。もうひとつの方法は、AIを利用する「確率的マッチング」という方法です。この方法では、同一顧客の可能性があるデータを照合することで、IDの統合処理を行います。

企業がD統合を統合する場合、自社内のデータだけで取りかかれることや、多くの顧客データを一気に移行できるなどのメリットがあります。

一方、複数のサービスにおいて顧客情報の管理方法がバラバラだと、それらの情報を統合するのにコストや手間がかかってしまいます。ユーザー側も、登録時の情報を微妙に変えてしまっていたりするため、それらの情報から個人を特定するのに苦労することもあります。

顧客によるID統合

ユーザーによるID統合では、新規顧客としてID登録をしてもらい、既存のユーザーは既存のIDを新しいIDに移行して紐つけをすることで実行します。

ユーザーがID統合を行うケースでは、企業側は作業が必要なく、顧客が新しいID登録することによってデータ移行できることがメリットになります。ただし、統合後には顧客数が減少する可能性が高く、十分なデータ移行までに期間がかかってしまうことがデメリットになります。

ID統合の事例

これまで説明したように、ID統合は近年必要になってきており、徐々に導入する企業が増えてきています。では、実際にどのような業界で、どのような効果が現れているのでしょうか?ここでは、実際にID統合を導入している事例を業界ごとに説明します。

Panasonic:クラブパナソニック

国内の家電業界は、モノ売りからソフトウェア販売への移行が加速しています。背景にはアジア諸国の生産力向上や価格競争による国内生産の撤退などがあります。そうした中で、放送業界などではサブスクリプションサービスを急速に進めており、そうした流れがテレビメーカーなどにも波及しています。

テレビ自体の販売に合わせて、独自のコンテンツを提供するためにID統合を活用し、顧客の囲い込みを目指しています。今後少子高齢化が進む中で、家電業界の売上はさらに伸び悩み、販売形態をどんどん変えていくことで売上を確保するようになっていくとされています。

パナソニックは、会員サービスである「クラブパナソニック」を展開しており、自社製品のアフターサポートサービスを提供しています。

JR東日本グループ:JREポイント

電鉄グループでは、グループ内の共通ポイントを発行し、レジャーやインフラ(電気・通信)などのグループサービス全体で利用できるようにしています。中には、ステージによるランクづけを行い、利用額に応じた特典を受けられるような制度を設けているものもあります。

JR東日本では「JREポイント」と呼ばれるポイントサービスを活用して顧客IDの統一を行なっています。これによって、顧客手動でID統合が行われており、徐々にJR東日本フループ内でIDの統合が進められています。

スターバックス:StarbucksRewards

スターバックスでは、「StarbucksRewards」と呼ばれるロイヤル顧客向けのプログラムを実施しており、購入金額50円ごとにもらえる「Star」とよばれるポイントをためて特典をもらえるプログラムを実施しています。

この結果、モバイルアプリのダウンロード数が2018年には300万を達成し、全体の22%を会員が占めるようになりました。この顧客情報をもとに、購買パターン・エリア・時間・天気などの情報を掛け合わせてデータ分析を行い、個別の会員に対するアプローチを構想しています。

ガリバー:2ndParty

ガリバーはクレジットカード会社のデータを、自社の顧客情報と掛け合わせて顧客のローン情報を把握し、ローン残高に応じたDMやプロモーションを行い、反応率4.85倍、費用対効果(ROI)1.8倍という成功を納めました。

まとめ

ID統合は、企業にとってはこれからの時代を生き抜くために必要な戦略であり、ユーザーにとってもデータ入力の手間を省略する便利な手段です。正しく理解して、ビジネスに取り入れていきましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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