膨大で多種多様なデータを取り扱う「データ集計」と「データ分析」。どちらもビジネスでの目標達成や課題解決には必要な作業です。しかし、「データ集計」と「データ分析」の違いを明確に区別して作業している方は少ないのではないでしょうか。
ビジネスにおいて、両者の違いを知るのはとても重要です。なぜなら、分析のつもりが単なる集計だったとしたら、必要としている結果は決して得られないからです。
そこで今回は、「データ集計とデータ分析の違い」について解説します。また、データ分析の3つの原則と5つの手法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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データ集計とデータ分析の違いとは?
データを扱う作業において、データ集計とデータ分析は混同されがちです。分析しているつもりが、実は集計だったということは多々あります。
ここでは「データ集計」と「データ分析」の違いについて、詳しく見ていきます。
データ集計とは?
データ集計とは、企業の基幹システムによってデータを収集し、基本統計量や分布を得ることです。企業が指標としている現状を正確に把握することを目的としています。「顧客の月別の購買件数の変化」や「商品を購入した顧客の年齢層」などがわかりやすい例でしょう。
データ集計は、現状を客観的に捉えるための「現状把握」には役立ちますが、成果を出すための行動にはつながりにくい側面があります。
データ分析とは?
データ分析とは、企業の基幹システムから得たデータを要素ごとに分け、データの因果関係を探ることです。これは、「雨が降ると来店する客が減る傾向にある」などを考えるとわかりやすいでしょう。この場合は、「雨がふる状況」と「来店する客の数」の間に因果関係を見つけています。
データ分析の目的は、「現状把握」と「未来予測」です。集計されたデータを分析して確率の高い予測をたて、分析者の経験と知恵によって目的の達成や課題の解決につなげていきます。
データ分析における3つの原則
データ分析は、自社が今どのような状況にあるかを客観的にとらえ、業務改善を効率的に進めるために必要な作業です。3つの原則は、より確率が高く効果的なデータ分析を可能にします。
そこでここからは、データ分析における3つの原則、「比較」「時系列」「要因理解」を簡単に解説します。
比較
集計データを比較することで、データのもつ意味を評価・判断するための原則です。例えば、「前年対比」や「部門対比」、「地域対比」などを考えると理解しやすいでしょう。「分析項目」や「集計値」などのように、比較する「軸」を変えることで数値の意味するものが変わります。
時系列
「時間」を軸にして集計データの推移に注目し、数値のもつ「傾向」から未来の姿を予測するための原則です。将来起こり得る課題を予測して対策を立てる場合などに有効です。時系列の場合、グラフやチャートのように視覚化することでデータがより扱いやすくなります。
要因理解
集計されたデータから得られた傾向や課題を探り、原因を特定するための原則です。データの粒度が大きいと原因を掘り下げるのが困難になるため、詳細なデータを必要とします。月ごとのデータよりも日ごとのデータの方が原因を特定しやすくなるわけです。
データ分析に役立つ5つの手法をご紹介!
有益な分析結果を得るには、得たい結果を見越して最適な手法を選択することが必要です。そこでここからは、データ分析に役立つ5つの手法を紹介します。
クロス集計
収集したデータを属性別に分類する手法であり、データ分析の基本です。集計ソフトや表計算ソフトの多くに標準で搭載されています。
手法の目的
さまざまな属性で分析者の仮説を検証し、データの特性や傾向を明確にすることが目的です。
使用例
主にアンケート集計や世論調査、仕入れ計画や販売予測などに使用されています。
メリットと注意点
分析経験が少ない分析者でもデータを扱いやすいのがメリットです。
しかし集計結果が膨大になりがちで、分析に手間と時間がかかる場合があります。
ロジスティック回帰分析
収集されたデータを2値化して分析し、事象の発生確率を予測する分析手法であり、多変量解析の1つです。多変量解析とは、分析者の仮説に基づいて複数データの関連性を分析する統計的方法です。
手法の目的
「YesとNo」「合格と不合格」など、どちらを選択するのが目的達成に最適なのかを明確にすることを目的としています。
使用例
病気の発生率や商品の購入率、受験の合格率の予測などに多く使用されています。
メリットと注意点
短期的な結果からでも分析可能なため、早期に状況を改善していけるというメリットがあります。
しかし分析したい対象が限定されてしまうため、1度にいくつもの選択肢は分析できません。
アソシエーション分析
多種多様で膨大なデータから、パターンや相関関係を分析する手法です。以下の3つの指標から成り立ちます。
指示度(Support): 全体における事象の割合
確信度(Confidence):事象の関連度
リフト値(Lift):関連性を表すための数値
手法の目的
分析したデータから法則性や関連性を見つけ出して、可視化することが目的です。
使用例
主に同時に購入されやすい商品の特定、顧客の購買行動の予測などに使われています。
メリットと注意点
ほかの手法では見つけられない法則性の発見や、リアルタイムでのニーズの変化に対応できるのが大きなメリットです。しかし、精度の高い分析には膨大なデータが必要になること、また関連商品のおすすめ(レコメンデーション)には「方向性」があることに注意してください。
「方向性」とは、小説の上巻を買う人は下巻を買う可能性が高いが、その逆の可能性は低いことなどを考えるとわかりやすいでしょう。
クラスター分析
さまざまな性質が混在するデータを類似性で分類し、属性を分析する手法です。「階層クラスター分析」と「非階層クラスター分析」の2種類があります。
階層クラスター分析
最も近いデータ同士を順にまとめていき、クラスター数を徐々に少なくしていく分析方法であり、分析の経緯を理解しやすいのが特徴。「ウォード法」「最長距離法」「最短距離法」がある。
非階層クラスター分析
最終的なクラスター数を決めてから、自動でグループ化を行う分析法であり、階層構造に分類できない複雑なデータ群の分析に適している。「K-means法」「超体積法」がある
手法の目的
主に新たな観点からビジネスアイデアを得ることを目的としています。
使用例
市場やマーケティングの調査、ブランドや商品イメージのカテゴリー分類などに多く使われています。
メリットと注意点
意識や価値観、イメージのように明確な形のないものを分析できるのが大きなメリットです。しかし、分析の段階で分析者の主観が入る可能性があるため、客観的データとして提示するには向いていません。
決定木分析
把握したい1つの結果(目的変数)に、結果を変化させ得るいくつもの要因(説明変数)を組み合わせ、仮説を樹木状(ツリー)に展開させていく手法です。
手法の目的
複雑で多種多様な要因がからむ事象を分析し、予測や判別、分類を得ることが目的です。
メリットと注意点
ツリーの深度を分析者が任意で指定できるため、結果を把握する際の判断材料や優先順位づけに有効に利用できるメリットがあります。しかし、ツリーの深度を深くしすぎると解釈が難しくなり、悪いモデルになりがちなので注意が必要です。
まとめ
今回は、データ集計とデータ分析の違いと、データ分析のかなめとなる3つの原則と5つの手法を紹介しました。データ分析は企業の目的達成や課題解決に有効な手段であり、未来予測の基盤となる点で現代のビジネスには必須であるといえるでしょう。
とはいえ、データ分析には多くの複雑な工程と手法の理解が必要です。有益な分析をするには、専門のスキルをもつ分析者が欠かせませんが、自前で用意するにはコストがかなりかかります。
株式会社アイディオットは「データで社会課題を解決する」をスローガンに多くの実績と信頼のおけるノウハウでデータを分析し、さまざまな課題の解決を強力にサポートします。
興味のある方は、ぜひご利用を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。