カーボンニュートラル実現に求められるシナリオ分析とは?手順と事例を解説

カーボンニュートラル実現に求められるシナリオ分析とは?手順と事例を解説

2050年カーボンニュートラル宣言とは

2050年カーボンニュートラル宣言とは2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすると時の首相が宣言したことを指します。カーボンニュートラルは二酸化炭素の排出量をなくすことを目標としていますが、日本では温室効果ガスを実質ゼロにすることを目標としていることから、二酸化炭素以外にもメタン・一酸化二窒素・フロンガスなどを含めて温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることが目標です。

温室効果ガスにおける二酸化炭素の割合は高いことから、二酸化炭素の排出量を抑えることは変わらず非常に重要です。

カーボンニュートラルにおける実質ゼロにするといった目標に関しては、温室効果ガスの排出量を完全になくすことは正直難しいので、排出量に対しての温室効果ガスの吸収量と除去量が上回っている状態のことを実質ゼロといいます。

しかし、カーボンニュートラルを実現するためにはさまざまな新しい取り組みをする必要があることから、当然リスクも高まってくるでしょう。カーボンニュートラルのリスクを少しでも低くするためにも、シナリオ分析は非常に重要な役割を担っています。カーボンニュートラル実現に求められるシナリオ分析などについて紹介していきます。

 

シナリオ分析の特徴

シナリオ分析とは新しい取り組みをする際の不確定要素などに対応でいるようにさまざまな条件下での分析をおこなう方法です。実際に新しい取り組みをした際にポジティブ方向に振れ幅が出たパターンとネガティブ方向に振れ幅が出たパターンそれぞれでどのような数値ができるかについて、分析することでなにか問題が発生しても対応ができるように準備することができます。

当初に計画した通りに物事が進行していくことはほとんどないので、万が一に備えて準備をしておくことは企業経営などにおいても有効です。

 

シナリオ分析が求められる背景

カーボンニュートラル実現においてシナリオ分析が求められる背景に地球環境の変化などがあります。カーボンニュートラルはそもそも地球環境が地球温暖化などによって、バランスが崩れているのを防ぐために世界中で取り組まれています。

気候変動リスクは将来的には他の経済活動などにも大きく影響を与えていくことが予測されているので、積極的にシナリオ分析をおこなうことでこれからのリスクなどを把握することができるでしょう。

シナリオ分析はサンプルになるデータが多ければ多いほど分析精度は高まってきますが、現在の気候変動リスクに関してはサンプルになるデータが少ないことなどがこれからの課題点としては挙げられます。

 

シナリオ分析手順

シナリオ分析をするためにはシナリオ分析手順に基づいて行動をすることが必要ですが、シナリオ分析手順を単純に守れば分析ができるわけではなく、それぞれの手順の目的や効果などについても把握しておくことが大切です。

シナリオ分析手順について解説していきます。

ガバナンスの整備

シナリオ分析をおこなうためには最初に準備が必要であり、この準備のことをガバナンスの整備と呼びます。つまり、どのようにして管理体制を整えながらシナリオ分析をおこなっていくかについて各所から了承を得て、要所ごとに協力を仰ぎながら進めていくことが重要です。

シナリオ分析を継続的におこなう予定であるなら、毎回のシナリオ分析結果を報告しながら改善点などについても詳細に説明することが求められます。

リスクの重要度評価

リスクの重要度評価とは気候変動などの影響で企業全体にリスクが発生するかについてリスクごとに項目化することが大切です。リスクについて項目化した後にはリスクが現実のものとなった時、企業に与える影響が大きいものと小さいものについて分けてリスクの重要度評価をおこないます。

具体的にリスクなどを管理するためには部署ごとに詳しい話を聞く、外部の専門家などの意見も取り入れながら進めることがおすすめです。

シナリオ群の定義

シナリオ分析をする際には複数のシナリオを準備することになるので、どのシナリオが企業などの組織に対して適切であり、どのシナリオを参考にしながら進めていくべきかを定義することが必要です。

シナリオ分析のノウハウを持っていない場合には外部で作成されたシナリオなども参考にしながら、複数のシナリオを選択して組織内で合意して行動することが求められます。

事業インパクト評価

事業インパクト評価ではシナリオ群で定義したシナリオが組織などの戦略や財務にどのような影響を与えるかについて評価していきます。事業インパクト評価をおこなうにあたって、重要なリスクが発生した場合と現状ではどれくらいの相違があるかについてはあらかじめ把握しておくことが大切です。

対応策

これまでのシナリオ分析でわかったリスクなどに対しての対応策を考えておくことが必要ですが、対応策に関してはあくまで現実的に実現できる可能性が高いものを選択してください。対応策が非現実的だとリスクが現実になっても対応が難しくなるので、企業などの組織内で実現できる範囲での対応策にしておくことが重要です。

文書化と情報開示

シナリオ分析が完了した後には誰が読んでもわかりやすいように文書化することと情報開示をするようにしましょう。情報開示をすることで、企業全体の取り組みを他の企業や消費者などにも理解してもらえることから企業価値の向上などのメリットがあります。

 

シナリオ分析の企業事例

シナリオ分析の企業事例は日本国内でも多数ありますが、どのようにしてシナリオ分析をするかについて理解しておくことでシナリオ分析を実際にする時にも役立つでしょう。

シナリオ分析の企業事例について紹介していきます。

キリンホールディングス

キリンホールディングスではシナリオ分析の結果を受けて、長期戦略としてシナリオ分析を経営目標に組み込んで企業経営をおこなっています。シナリオ分析によって得られた結果を活かして、大麦に依存しない醸造技術を持っていることからリスク管理なども積極的におこなって顧客満足度を向上させることに成功しているといえるでしょう。

味の素

味の素では過去にタイで発生した大洪水によって、現地の製造工場などが使用不可能になったことから自社生産が難しくなる事態になったことがあります。この経験から味の素では主原料などが入手できていなかった場合などに、どのようなリスクが起こるかについてシナリオ分析をするなどして対策をしています。

商船三井

商船三井では運送リスクでもある異常気象や台風を回避するために運行ルートを変更する必要があることもあるので、シナリオ分析を先にしておくことで対処方法などについてもあらかじめ準備することが可能です。

 

まとめ

カーボンニュートラル実現のためにはシナリオ分析をさまざまな企業や組織などが実行することで、これからどのようなリスクが発生するかについてあらかじめ把握することで、対応策などを練ることができます。

カーボンニュートラル実現のためには現状まだまだ課題が多く残っているだけでなく、実際に移行した際にどのような影響が発生するかについてはまだわかっていない部分もあるので、各企業などが防衛策としてシナリオ分析をしておく必要があるともいえます。

先にリスクについては理解して企業などの組織内でも意思統一ができていれば、いち早い対応が可能です。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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