カーボンリサイクルについて
地球温暖化の主原因なのでマイナスにとらえられることが多いCO2ですが、CO2を資源にしてリサイクルする考え方が広がり始めています。この考え方はカーボンリサイクルと呼ばれ、いくつかの企業が積極的に取り組んでいる状況です。カーボンリサイクルについて紹介します。
カーボンリサイクルとは
カーボンリサイクルとは、人の活動によって排出されたCO2を資源に、新たな商品・製品へとリサイクルすることです。CO2が地球に蔓延しないように効率的に利用するのが主な目的です。CO2問題に効果的なので、カーボンニュートラルの実現に必要な取り組みだといえるでしょう。
カーボンリサイクルのロードマップ
今後どのようにカーボンリサイクルを社会に普及させていくのか、10年ごとに区切った2050年までのロードマップを紹介します。段階的に普及させていく見込みなので、ロードマップを改めて確認しておきましょう。
2030年まで
2030年頃からの普及を目途に、現在から2030年まではカーボンリサイクルの研究・開発・実証実験を進めます。もしも研究が進んで高付加価値製品を製造できるようになれば、リサイクル製品が売れやすくなります。カーボンリサイクルはまだ発展途上の段階なので、まずは研究・テクノロジー開発・実証実験に注力する必要があります。
2040年まで
2030年までにある程度の技術水準を満たしたら、次は技術の低コスト化に取り組みます。カーボンリサイクルを広く普及させるには、低コスト化が欠かせません。特に需要が高いポピュラーな商品・製品の低コスト化が最優先です。
2050年まで
商品・製品の消費拡大に対応するために、2050年までにさらなる低コスト化を実現します。2040年頃からは、カーボンリサイクルの商品・製品を目にする機会が多くなるでしょう。現在の25%以下までコストを削減できれば、急速な普及も夢ではありません。
カーボンリサイクルに取り組む企業の事例
カーボンリサイクルは遠い未来の話ではありません。その証拠にすでにいくつかの企業が、カーボンリサイクルに取り組んでいます。そこで、大成建設・三菱重工・ユーグレナの事例について紹介します。
大成建設
大成建設は建築工事・地域開発・土壌浄化・不動産売買など、多岐に渡って事業を展開する企業です。カーボンリサイクルを含む環境に十分配慮したコンクリートのT-eConcrete®を開発しました。資源を無駄にすることなく有効活用し、脱炭素化に貢献しています。
T-eConcrete®のカーボンリサイクルは、セメントをまったく使いません。炭酸カルシウムをはじめとしたカーボンリサイクル製品を使い、コンクリートの中にCO2を固めてしまいます。CO2排出量のマイナスを実現する画期的な製品です。
三菱重工
三菱重工はエナジー・物流・機械・宇宙などを幅広く手がける企業です。カーボンリサイクル燃料のエレクトロフューエルを日本の市場に広めるため、積極的に検討を進めています。アメリカのカリフォルニア州に本社を置くインフィニウム社と覚書を締結し、市場への普及に努めています。
エレクトロフューエルは、CO2および再エネから生成可能な次世代の燃料です。普及が進めば、荷物を輸送する際のCO2を直接削減できます。物流の脱炭素化に役立つのは間違いありません。
ユーグレナ
ユーグレナはミドリムシ関連事業を中心に、ヘルスケア・環境・エネルギー事業にも注力している先進的な企業です。サステナブルなバイオ燃料のサステオを開発し、徐々に供給を拡大させています。
従来は化石燃料を使っていましたが、サステオはCO2をあらかじめ取り込んでいる動植物を燃料に製造されています。もともと大気中にあったCO2を戻しているだけのカーボンリサイクル燃料なので排出量は増加しません。カーボンニュートラルな燃料なので、非常にサステナブルだといえるでしょう。
広島県のカーボン・サーキュラー・エコノミー構想
数ある自治体の中でも広島県は環境に対する意識が特に高く、カーボン・サーキュラー・エコノミー構想を策定しています。この構想がどんな内容なのか、カーボンリサイクルを踏まえつつ解説します。
構想に至った理由
広島県がカーボン・サーキュラー・エコノミー構想に至った理由は、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが世界的な流れとなったからです。特にカーボンリサイクルはさらなる市場規模拡大が見込まれるため、県内の実証研究拠点の整備が進んでいます。サステナブルに循環する社会経済を目指し、広島県は構想の実現に取り組んでいます。
動向の考察
まず構想の第一段階で広島県がおこなうのは、国内外を問わない動向の考察からです。世界中の国々が温室効果ガスの削減目標をどのように設定しているのか確認し、エネルギー転換を想定しながら県内産業との関連性を見極めます。カーボンニュートラルを実現するには、まず現状の確認が大切です。
広島県の魅力
実証研究拠点や研究者・企業が有する技術を取りまとめることで、カーボンリサイクルに向けた技術開発を促進させられます。取り組むのはもちろんカーボンニュートラルだけではありません。CO2排出削減技術についても広島県は幅広くサポートしていく姿勢を見せていますので、これからさらに活発化していく見込みです。
取り組み内容
カーボンリサイクルを定着化させるため、研究開発・起業・企業間連携・ビジネス化・情報発信・研究者育成などに広島県は取り組んでいきます。全面的にバックアップすることで、カーボンリサイクルの底上げを図ることが目的です。
CO2を豊かな資源と認識し、さまざまな商品・製品へと形を変えるのがカーボン・サーキュラー・エコノミー構想の概念です。カーボンリサイクルが定着すればCO2 排出量が実質ゼロになり、カーボンニュートラルを実現できます。人の営みと自然界の調和を目指し、広島県は全力で取り組んでいます。
カーボンリサイクルの課題とは
カーボンリサイクルは良い面ばかりがクローズアップされがちですが、その一方で課題も抱えています。その課題とは、コストと技術のイノベーションに他なりません。どのような課題なのかを掘り下げていきましょう。
コストがかさむ
カーボンリサイクルの普及がなかなか進まないのは、コストがかさんでしまうからです。CO2はかなり安定した元素なので、多くのエネルギーを投入しないと他のものに変換できません。
また、普及には価格が安くてなおかつCO2フリーの水素が大量に必要ですが、その水素を生成するためにCO2を排出していては本末転倒です。コストがかさめば企業も手を出しにくいですし、現段階ではまだリスクが大きいといわざるをえません。カーボンリサイクルのロードマップで低コスト化を目標に掲げているのは、コスト面に大きな課題を抱えているからです。
技術のイノベーションが必要
カーボンリサイクルのコスト面の課題を解消するためには、技術のイノベーションが必要不可欠です。ただし、新しい技術を実用化するのは決して簡単ではありません。手間もかかれば時間もかかりますし、技術開発にも当然コストがかかります。開発した技術が利益を生むまでには短くないタイムラグが生じるため、前項で紹介した広島県のような全面的なバックアップがないとなかなか実用化に至りません。
カーボンリサイクルやカーボンニュートラルにどこまで本腰を入れられるかが、今後の鍵を握ります。技術のイノベーションが起これば、カーボンリサイクルは普及していくでしょう。
まとめ
カーボンニュートラル実現のカギになるといわれている、カーボンリサイクルのロードマップ・事例・課題を紹介しました。CO2を資源に新たな商品・製品を生み出すカーボンリサイクルは、画期的な考え方として注目されています。CO2を実質ゼロにできるので、企業や自治体が意欲的に取り組んでいます。記事では大成建設・三菱重工・ユーグレナ・広島県の事例に着目しました。
ただ、コストや技術のイノベーションといった課題も抱えているため、まだそれほど普及していません。これらの課題を少しでも早く解決することが、カーボンリサイクル普及のポイントです。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。