カーボンニュートラルポート（CNP）とは
現在の日本では湾岸部に発電・鉄鋼・化学工業などが拠点にしていることから、湾岸部での消費エネルギー量は国内でも特に多い地域です。湾岸部で使用されているエネルギーのほとんどが化石燃料を燃焼させて生産したエネルギーであることから、エネルギー生産時には大量の二酸化炭素を排出しています。
将来的には火力発電で燃焼させる物質を化石燃料ではなく、燃焼させても二酸化炭素が発生しない水素やアンモニアを使用するために研究がおこなわれています。しかし、水素やアンモニアを保管するための場所や設備が整備されていないため、諸外国化ら水素やアンモニアを輸入していきも保管することが難しいです。
そこで、国土交通省では、我が国の港湾や産業の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するため、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素・アンモニア等の受入環境の整備等を図るカーボンニュートラルポート（CNP）の形成を推進しています。
カーボンニュートラルポートは、港湾でのCO2排出を最小限に抑え、最終的にはゼロにすることを目指しており、水素エネルギーはその取り組みにおいて重要な役割を果たしています。
水素エネルギーとそのメリット
水素エネルギーを活用することできるようになれば、現在では二酸化炭素を伴ってエネルギー生産をおこなっている火力発電などでクリーンエネルギーを生産することが可能です。水素エネルギーはエネルギー生産以外にも鉄鋼分野などでも貢献が期待されていることから、水素エネルギーの技術の確立は重要な要素です。水素エネルギーのメリットについて紹介していきます。
CO2を排出しない
水素エネルギーはCO2を排出しないのでクリーンなエネルギーであり、脱炭素社会を実現するためには必要不可欠です。これまでの火力発電の施設を再利用してエネルギー生産ができることから、新しく施設を建築する必要もないので、建築時の二酸化炭素の排出も発生しません。
注意点としては水素エネルギーを製造する過程で二酸化炭素を発生する行動を起こしてしまえば、クリーンエネルギーではなくなってしまう点です。水素エネルギーを燃焼させる技術は早い段階で確立することで、日本だけでなく世界中で脱炭素化の実現に貢献します。
省エネルギー
水素エネルギーはさまざまな資源から生成することができるので、無限に生成することができるエネルギーとも呼ばれています。水素を取り出す方法の代表は水を電気分解させる方法ですが、日本のように国土の周りが海に囲まれている場合には有効です。
水を電気分解するだけで簡単に生成が可能なため、設備さえ整っていれば個人でも生成ができ、災害時などには水素エネルギーを活用して各家庭でエネルギー生産をおこなえるでしょう。
持ち運びが可能
水を電気分解して生成した水素エネルギーは保存・運搬などもできるので、災害時などには非常に役立ちます。また、日本では地震や台風など世界的に見ても災害が発生しやすい国の1つであり、災害時のことを考えて行動することは大切です。
エネルギーを有効活用
水素エネルギーは既に日常生活や企業活動において有効活用されていて、改定用燃料電池や水素自動車などが水素エネルギーの有効活用に当たります。特に水素自動車が各家庭や企業で標準的に導入されるようになれば、走行時に発生するのは水蒸気だけなので、現状のガソリン車のように有害ガスなどが発生しなくなります。
自動車だけでなく航空機も将来的には水素だけで運用することを実現しようと研究がおこなわれており、実現すれば化石燃料の使用を大きく抑えることに繋がるでしょう。
水素エネルギーのデメリット
水素エネルギーにはメリットも多いですが、その反面デメリットもいくつか存在しており、各家庭や企業で水素エネルギーを問題なく活用できるようにするにはまだまだ課題点が多いです。
水素エネルギーのデメリットについて紹介していきます。
開発に時間がかかる
水素エネルギーを日常的に活用することができれば脱炭素社会の実現が現実的になりますが、水素エネルギーを安全安心に運用するためにはまだまだ時間がかかります。開発に時間がかかることから現実的にメインで運用することは難しく、開発の課題が解決するまではあくまでもサブ的な扱いです。
コストが高い
水素エネルギーでエネルギー生産をすること自体は省エネに繋がりますが、水素を生成するための設備や水素運搬のための環境などがまだまだ整っていません。環境整備のためには莫大な資金が必要になることから、水素エネルギーを積極的にかつようすることはコストが高いといえます。
また、実際に環境整備を始めてどれくらいの時間が必要かによって、環境整備に伴って発生する二酸化炭素についても考なければいけません。
技術が必要
水素エネルギーを活用するためには高い水準の技術が求められて、将来的には各家庭や企業などでも手軽に活用できるようにするのが最終的な目標ですが、実現するためには技術開発は必要不可欠です。
現在の技術では十分に水素エネルギーを活かすことができないといわれており、燃焼させるにしても高効率の燃焼技術なども開発することが求められています。
水素は適切に取り扱わなければ爆発を引き起こす可能性もある他にも、水を電気分解しても保管をおこなうことができなければ、空気中に水素は逃げていくでしょう。
水素エネルギーの役割
水素エネルギーは、カーボンニュートラルポートの実現において、特に重要な役割を担っています。水素は、燃焼時にCO2を排出せず、水だけを生成するクリーンエネルギーです。この特性を活かし、港湾でのさまざまなエネルギー需要に対応することが可能です。
水素燃料電池の活用
港湾で使用するクレーンやフォークリフト、さらには港湾内で使用される車両に水素燃料電池を搭載することで、ゼロエミッションの実現が図られます。水素燃料電池は、燃料電池の化学反応により電気を生み出し、これを動力源として使用します。
水素供給インフラの整備
カーボンニュートラルポートの実現に向けて、港湾内および周辺地域に水素ステーションや水素供給パイプラインの整備が進められています。これにより、効率的かつ安定した水素供給が可能となり、広範な水素エネルギーの利用が実現します。
水素の製造と利用
港湾地域では、再生可能エネルギーを利用した水素製造（グリーン水素）が進められています。水の電気分解によって水素を生成し、これを港湾内のエネルギー供給に利用することで、完全なカーボンニュートラルが目指されます。
カーボンニュートラルポート具体例
カーボンニュートラルポートは国内だけでも積極的に取り組んでいくことが計画されており、国土交通省と中心に着々と準備が進められています。カーボンニュートラルポートは水素エネルギーを実現するためには重要な設備となることから、安全で高い性能を持ったカーボンニュートラルポートの構築が急がれます。カーボンニュートラルポートの設備具体例についていくつか紹介していきます。
横浜港
横浜市臨海部から排出されるCO2は横浜市域全体の約４割を占めることから、臨海部の脱炭素化が横浜市のカーボンニュートラル実現に多くの役割を果たします。そのため、国や民間企業、近隣自治体と連携してCNP形成に向けた取組を進めています。
水素ステーションの設置
横浜港では、水素ステーションの整備が進められています。これにより、港湾内で使用される車両や設備の水素化が推進され、CO2排出を削減します。
電動化推進
港湾内で使用するクレーンやフォークリフトなどの荷役機器の電動化を進めることで、CO2排出量を削減しています。
再生可能エネルギーの導入
港湾内の施設で使用されるエネルギーの一部を、太陽光発電などの再生可能エネルギーで賄う取り組みも行われています。
神戸港
神戸港も、カーボンニュートラルを目指す主要な港湾の一つで、さまざまな技術とインフラの導入が進んでいます。
LNG燃料の普及
神戸港では、従来の船舶燃料に代わるLNG（液化天然ガス）燃料の普及が進められており、港内でのCO2排出を大幅に削減することを目指しています。
スマートポート化
デジタル技術を活用して港湾運営を効率化し、エネルギー消費の削減を図っています。これには、IoTやAIを活用した最適化技術が含まれます。
北九州港
北九州港は、環境に配慮した「グリーンポート」としての取り組みを積極的に行っており、カーボンニュートラルポートを目指すプロジェクトの一環としてさまざまな対策が講じられています。
再生可能エネルギーの活用
北九州港では、港湾施設において再生可能エネルギーの利用を推進しており、特に太陽光発電の導入が進められています。
ゼロエミッションビークルの導入
港湾内での運搬車両やフォークリフトにゼロエミッション車両を導入し、CO2排出を削減しています。
日本のカーボンニュートラルポートは、地域ごとに異なる戦略と技術を組み合わせて実現が進められています。横浜港、神戸港、北九州港の事例は、特に再生可能エネルギーの導入や電動化、デジタル技術の活用など、多岐にわたるアプローチを通じて、持続可能な港湾運営を目指しています。今後、これらの取り組みがさらに進展し、他の港湾にも広がることで、全国的な脱炭素化の推進に貢献することが期待されています。
まとめ
水素エネルギーは次世代のクリーンエネルギーとして大きな期待が寄せられており、脱炭素社会を実現するためには水素エネルギーの活用は必要不可欠です。しかし、水素エネルギーの能力を十分に引き出すためには技術開発だけでなく、水素の保管場所の確保や安全な運搬なども重要です。
これらの課題を解決するためにはカーボンニュートラルポートの環境を整備することが必要であり、日本国内でもカーボンニュートラルポートの計画は進められています。水素エネルギーとカーボンニュートラルポートはセットで考えることが大切であり、片一方が欠けてしまうと十分な能力を引き出すことができなくなるので注意してください。
Aidiot編集部「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。
