カーボンニュートラルを実現するためにCO2削減の計算方法やメリットなどを解説

カーボンニュートラルを実現するためにCO2削減の計算方法やメリットなどを解説

なぜカーボンニュートラルを2050年までに?

今後人が安全な生活を送るためには、地球の平均気温上昇を1.5℃前後まで抑えなければいけません。その目標を達成するためには、遅くても2050年までにカーボンニュートラルを実現させる必要があります。つまり、カーボンニュートラルの達成期限を2050年に設定しているのは、それまでに達成しないと気温上昇を1.5℃前後に抑えられないからです。

カーボンニュートラルの目標は、パリ協定によって締結されています。パリ協定は京都議定書の後継となる協定で、2021年には約190もの国や地域が同意しています。これは温室効果ガスの排出量に換算すると85%以上です。もし、同意したすべての国や地域がカーボンニュートラルを実現させれば、世界全体の温室効果ガス排出量は大幅に減少するでしょう。

日本は2030年までに今よりも約25%削減する中間目標を立てていますし諸外国も同様です。2050年までにカーボンニュートラルを実現させるため、世界中が動き始めています。

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CO2とカーボンニュートラル

エネルギーが起源のCO2排出量について検討する際は、エネルギー消費量とCO2排出係数を指標にします。エネルギー消費量とは、燃料や電力などの消費量のことです。CO2排出係数とは、一定量のエネルギーを消費した際に排出されるCO2の指標のことです。この2つの指標を用いることで、エネルギー起源CO2排出量を算出できます。計算方法は以下の通りです。

エネルギー起源CO2排出量=CO2排出係数×エネルギー消費量

この計算方法によって算出されたエネルギー起源CO2排出量をグラフにしてその面積を見た場合、省エネや電化などに取り組むほど全体の面積が小さくなります。エネルギー消費量を抑えてゼロにすれば、カーボンニュートラルの達成です。

 

CO2排出量削減の取り組み

カーボンニュートラルの達成を目指し、さまざまな企業がCO2排出量削減に取り組んでいます。主要な取り組みとその事例について紹介いたします。

Apple

多くの企業は、再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力など)を使用することで、化石燃料に依存しないクリーンなエネルギー供給を実現しています。

Appleは、すべての施設で100%再生可能エネルギーを使用しています。また、サプライヤーにも再生可能エネルギーの使用を促進しています。

Google

Googleは、データセンターのエネルギー効率を高めるために、AIを使用して冷却システムを最適化しています。この取り組みにより、エネルギー消費を約30%削減しました。

Microsoft

Microsoftは、2030年までにカーボンネガティブになることを目指しており、カーボンオフセットの購入や炭素吸収技術への投資を進めています。

IKEA

IKEAは、サプライチェーン全体でのCO2排出量を削減するために、持続可能な材料の使用を増やし、輸送効率を高める取り組みを行っています。

丸井グループ

丸井グループはCO2排出量の約85%が電力要因であることに着目し、省エネと再生可能エネルギーの導入に力を入れています。2030年までには、すべての電力を再生可能エネルギーに切り替える方針です。また、バリューチェーンの全体的なCO2排出量削減に向け、グリーンビジネスの拡大をおこなっています。

佐川急便

運輸業界大手の佐川急便は、前年比1%削減のCO2排出削減目標を掲げています。そのために環境対応車の導入、モーダルシフトへの切り替え、倉庫や集配の効率化、カーボン・ニュートラル宅配便などに取り組んでいます。その結果2017年度は前年比約5%減を達成しています。

コニカミノルタ

コニカミノルタも、カーボンニュートラルに取り組んでいる企業です。まずエコビジョン2050を策定し、2050年までに2005年比でCO2排出量8割削減を掲げました。環境負荷軽減とコスト削減を目指すグリーンファクトリー活動、各サプライヤーにも呼びかけるグリーンサプライヤー活動を実施しています。さらに、節電・節水・ゴミ削減など、どの企業もすぐに取り組めるエコオフィスの推進もしています。積極的に取り組む姿勢が、周囲から高く評価されています。

 

これらの取り組みを通じて、企業はCO2排出量の削減に貢献し、持続可能な未来を実現するための重要な役割を果たしています。各企業の具体的な事例は、持続可能なビジネスモデルの構築に向けた参考となるでしょう。

 

 

CO2排出量削減のメリット

企業がCO2排出量を削減することには、さまざまなメリットがあります。それは光熱費・知名度・モチベーション・資金調達に関するメリットです。どのようなメリットなのかを具体的に解説します。

光熱費の削減

CO2排出量を削減するためには、まずエネルギーの無駄遣いをやめなければいけません。たとえばオフィスで誰も使っていない場所の照明はこまめに消すべきですし、長時間使う予定がないパソコンの電源は落とすべきでしょう。エネルギーを必要な分だけ使うように企業全体で取り組めば、自ずと光熱費を削減できます。CO2排出量の削減は経費削減にも効果的です。

知名度の向上

CO2排出量の削減に積極的に取り組む企業は、メディアから取材を申し込まれる場合があります。取材を受けてメディアに取り上げられれば、企業の名前が広く知れ渡って知名度が向上します。知名度が向上することで、まだ取引をしていない段階からある程度信頼してもらえます。知名度の向上によってビジネスチャンスが拡大することは間違いありません。また、環境対策に積極的に取り組んでいることが消費者にも自然と伝わりますし、知名度向上のメリットはかなり大きいといえるでしょう。

従業員のモチベーション向上

企業がCO2排出量の削減に前向きな姿勢を示すことで、従業員のモチベーション向上に期待できます。CO2排出量の削減は地球の未来を切り開く取り組みなので、特に若い従業員からの支持を得やすいです。勤める企業がCO2排出量の削減に前向きだったら、従業員はモチベーションが向上します。モチベーションが向上すれば、仕事で良いパフォーマンスを発揮しやすくなります。

資金調達

CO2排出量の削減に取り組むことは、資金調達で有利になるメリットがあります。なぜなら取引先の銀行から融資を受けやすくなったり、投資家に投資してもらいやすくなるからです。

環境問題に取り組んでいる企業は、取り組んでいない企業と比べて市場で高く評価される傾向があります。それはビジネスが成功する要因の1つなので、資金調達を希望した場合に支持されやすくなります。

 

CO2排出量の計算方法

CO2排出量は計算方法が定められています。そこで、CO2排出量の計算方法や、サプライチェーン排出量の計算方法についてそれぞれ解説します。

計算方法について

CO2排出量を削減するにあたり、まずは計算方法を正しく理解しておく必要があります。計算方法は以下の通りです。

CO2排出量=活動量×CO2排出係数

活動量とは、生産・使用・焼却などの総計です。ガソリン・ガス・電気などが該当しています。一方のCO2排出係数とは、電力会社が電力を作った際に排出されるCO2の数値です。本来は全体的なものですが、一般的には電力を指す場合が多いです。排出係数の計算方法は以下の通りです。

排出係数=CO2排出量÷販売電力量

排出係数は、電力会社の取り組み次第で抑制が可能です。たとえば再生可能エネルギーの導入や、設備の高効率化・省エネ化などです。

このような形式でCO2排出量を計算できます。

サプライチェーン排出量の計算方法

企業単体が排出するCO2の計算方法以外に、サプライチェーン排出量の計算方法もあります。サプライチェーンとは、商品の原料調達から廃棄までの全体を指します。先に説明した企業単体が排出するCO2を、直接排出のScope1と間接排出のScope2とし、それ以外のサプライチェーン排出量はScope3に位置付けられます。

直接排出のScope1とは燃料の燃焼などによるCO2排出で、間接排出のScope2とは他企業から供給された電気などを使うことによるCO2排出です。そして、Scope3は環境省によって15のジャンルに分類されています。

サプライチェーン排出量の計算方法は簡単で、Scope1・Scope2・Scope3を足すだけです。ただし、Scope3を出す場合は、15のジャンルごとに計算しないといけません。各ジャンルの計算は以下の通りです。

Scope3排出量=活動量×排出原単位

排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量のことです。たとえば電気なら1kWhあたりのCO2排出量を指しますし、廃棄物を焼却する場合は1トンあたりのCO2排出量を指します。計算方法自体は決して難しくありませんが、Scope3は項目が多いので大変に感じるかもしれません。ただ、今はScope3を簡単に算出できる便利なツールも開発されていますし、サプライチェーン排出量を把握しやすくなっています。

 

まとめ

カーボンニュートラルを実現するために欠かせない、CO2排出量の削減と計算方法について解説しました。CO2排出量削減に向け、世界的な有名企業をはじめ、丸井グループ・佐川急便・コニカミノルタなどでも率先して取り組んでいます。

また、まず現状を知るためには、企業のCO2排出量とサプライチェーン排出量を正確に把握する必要があります。それぞれの計算方法を簡単に紹介しましたので、カーボンニュートラルに取り組む際の参考にしてみてください。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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