農業にもAI!?具体的事例から学ぶAI導入のメリット・デメリット

農業にもAI!?具体的事例から学ぶAI導入のメリット・デメリット

AIが切り開くスマート農業の新時代

AI技術の進化により、農業分野でも革新的な変化が起こっています。特に「スマート農業」と呼ばれるこの動きは、作物の成長状態をリアルタイムで把握し、最適な水や肥料の供給を自動化することで、収穫量の増加と質の向上が期待されています。

 

また、AIは天候や病害虫のリスク管理にも役立ち、予測困難だった要素への迅速な対応を可能にします。これにより、農業従事者は労力を大幅に削減しつつ、より持続可能な農業経営が実現可能となります。

 

AI導入のノウハウ・活用方法をチェック

 

農業に革命を!AIを利用した作物管理の最前線

AIの導入により農業分野は大きな革命を遂げています。特に、作物管理においてAIは天候予測、土壌分析、病害虫識別などを自動で行い、最適な農薬の散布や水やりタイミングの調整を可能にしています。

これにより、収穫量の向上だけでなく、農作業の効率化が図れるため、コスト削減にも繋がります。しかし、これらの技術を導入するには高額なコストがかかるため、小規模農家にとっては大きな負担になることも。技術へのアクセス向上が今後の課題となっています。

 

AIによる病害虫予測:次世代の農業防衛戦略

次世代の農業防衛戦略である、AIによる病害虫予測技術は、農業分野での実例としていくつか注目されています。ここでは、具体的な実例を紹介いたします。

IBMのWatson Decision Platform for Agriculture

気象データや植物生理学のデータを活用して、病害虫の発生リスクを予測します。このプラットフォームは、大規模な農場でのデータ駆動型意思決定を支援し、農薬の使用を最適化することで環境への影響を減らすことを目指しています。

Blue River TechnologyのSee & Spray

カメラと機械学習を使って畑をスキャンし、病害虫や雑草を識別します。その後、必要な場所にのみ農薬を精密に散布することで、農薬の使用量を大幅に削減します。これにより、病害虫の管理がより効率的で環境に優しいものになります。

Plantix

スマートフォンアプリを通じて、写真から病気や害虫の種類を特定し、治療方法を提案します。このアプリはAIを利用して画像を分析し、農家が病害虫の問題に迅速に対応できるよう支援しています。

 

これらのシステムを使用することで作物の損失を最小限に抑え、農業の持続可能性を向上させることが期待されています。

 

精密農業とAI〜収穫量を最大化する新技術〜

精密農業でも、AIを使用して収穫量を飛躍的に増やしています。どのようにAIが農業を効率化し、収穫量の増加に寄与しているのか、具体的な事例を通じて紹介いたします。

自動運転トラクターと収穫機

アメリカの農機具メーカーであるジョンディア社は、6対のステレオカメラとGPSとAIを組み合わせた自動運転トラクタ【8R】を開発しました。これにより、正確な位置情報を基に最適な耕作が可能となり、作業の精度が格段に向上しています。AIは土壌の種類や水分量を分析し、それに最適な作業計画を立案します。

屋内農法の環境制御

 Bowery Farmingは、屋内での野菜栽培にAIを利用しています。照明、温度、湿度などの環境要因をAIがコントロールし、一年中安定した野菜生産を実現しています。これにより、外部環境に左右されず、一定品質の野菜を供給することが可能です。

植物の健康管理

AeroFarmsは、植物の画像をAIで分析し、成長状態や栄養不足を検知します。AIはリアルタイムでデータを分析し、必要な栄養素や水の量を調節して供給します。この技術により、植物が常に最適な状態で育つことが保証され、収穫量が増加します。

これらの技術により、精密農業は今後もさらなる進化が期待されており、持続可能で効率的な農業へとシフトしています。AIの導入によって、農業が直面する多くの課題が解決されつつあることがこれらの事例からも明らかです。

 

農業におけるAIの役割

AI技術が農業にもたらす役割の具体的な例を以下で紹介いたします。

作物監視と健康管理

先ほども紹介したBlue River Technologyは、AIを活用した「See & Spray」技術を開発しました。この技術は、カメラで作物をリアルタイムに監視し、AIが健康状態や成長段階を分析します。

これにより、病気や害虫の初期段階での発見が可能となり、必要な部分にのみ農薬を適用することで、農薬使用量を大幅に削減し、コストを抑えます。

灌漑システムの最適化

アグリテック企業のCropXは、土壌の湿度センサーからのデータをAIにより分析し、灌漑の最適化を実現しています。水の使用を最小限に抑えながら、作物が必要とする水分を正確に供給することで、水資源の節約と作物の生産効率向上が図られています。

収穫予測の精度向上

The Climate Corporationは、AIを活用して気候データや土壌情報、作物の生理情報から収穫量を予測します。より正確な収穫予測を行うことで、市場への供給計画が最適化され、過剰な生産や不足による損失を減少させることができます。

 

これらの事例から、AIが農業に導入されることで、従来の方法では達成困難だった高い精度の管理と効率的な運用が可能になり、それによりコスト削減に繋がっています。AIの活用は、持続可能な農業実践への一歩と言えるでしょう。

 

【農業×AI】活用事例7選

①株式会社オプティム

「OPTiM スマート農業ソリューション」というプログラムを通じて、AI、IoT、ビッグデータを農業に積極的に活用しています。

この取り組みには、圃場情報管理サービス「Agri Field Manager」やハウス情報管理サービス「Agri House Manager」が含まれます。

これらのサービスは、ドローンやAIを利用して作物の生育管理や病害虫の監視を行い、農業の効率化を図ることができます。また、「OPTiM Hawk」、「OPTiM Agri Drone」、「OPTiM Crawler」といったロボティクス技術を利用し、精密な農業操作を支援しています​。

参照:https://www.optim.co.jp/news-detail/24220

②デンソー

DENSOは、製造技術を農業に応用することで、精密農業の分野で革新を推進しています。特に、環境制御システム「Profarm Controller」を開発し、温室内の環境を自動調整することで、作業の負担を軽減しています。

また、作業の自動化をサポートするロボット技術も導入しており、収穫作業やその他の重労働をロボットが支援することで、労働者の負担を減らし、作業効率を向上させています​。

 

これらの技術により、DENSOは農業がさらにアクセスしやすいキャリアとなり、多くの人々にとって持続可能な選択肢となることを目指しています。農業の生産性向上だけでなく、労働条件の改善にも寄与しており、より多くの人が農業に従事しやすい環境を作り出しているのです。

参照:https://www.denso.com/global/en/news/newsroom/2021/20210201-g01/

③AGRIST株式会社

AGRIST株式会社は、AIを活用して農業の効率化を図るために自動収穫ロボットの開発に注力しています。このロボットは、特にピーマンやキュウリの収穫に使用され、農場の労働力不足や収穫作業の遅延に対応するために設計されています。

ロボットはワイヤーに沿って動き、落ち葉や泥などの障害物を避けながら作業を行うことができます。AI技術を用いて作物を識別し、収穫します。この技術により、人手を超える効率で作業が行え、収穫漏れを減らし、植物の健康を維持することで収穫量を向上させます​。

このスタートアップは、農業用ロボットを一般的な農具として認知されるような未来を目指しており、農業の次世代モデルを実現するために、ロボットを含む全体的な農業システムの最適化に取り組んでいます。

参照:https://agrist.com/about-agrist-english

④クボタ

AIと農業の融合に力を入れており、特にスマート農業の実現を目指しています。その具体的な事例としては、AIを活用した病害虫の発見や成長状態のモニタリングがあります。

これにより、農家は作物の健康状態をリアルタイムで把握し、必要な措置を迅速に取ることが可能になります。また、AIを使った精密農業では、土壌の状態や気象条件に基づいて最適な種まき時期や水やりスケジュールを自動で計画する技術が開発されています。

これにより、作業効率が向上し、収穫量の増加や品質の均一化が期待されています。さらに、クボタは自動運転トラクターや収穫ロボットの開発にも注力しており、これらの技術が農業のさらなる効率化とコスト削減を実現する鍵となっています。

参照:https://www.kubota.co.jp/innovation/smartagri/index.html

⑤クレバアグリ

IoT+AIによる農業の専門家のための農業クラウドサービスを行っています。

この技術を活用して、農業データを集約し、機械学習を用いてAIエンジンを構築。これにより、生育シナリオの最適化や品質の向上が可能となります。さらに、農業経営においては、作業スケジュールの最適化やリソース管理を効率化し、生産性の向上を図ります。

作業記録はクラウドで管理され、認証取得の支援も行います。また、経営データを利用してリスク評価や資金調達のサポートを提供しクラウドファンディングやインターネットを活用した新しい販売戦略も推進しています。

参照:https://clevagri.com/

⑥株式会社池田

「いろは」という葉色解析クラウドサービスがあります。このサービスでは、ドローンを用いて農地を上空から撮影し、得られた画像データを基にAIが葉色を解析します。

この技術は、農地の生育ムラの確認や植物の健康状態を把握するために利用され、農業の効率化と科学的な管理を可能にするものです。またデータ化された農地には、いつでも、どこからでもアクセスすることができるのもこのサービスのメリットです。

参照:https://agri.ikeyaku.co.jp/green/smart/

⑦サグリ

農業委員会向けの農地パトロールアプリ「アクタバ」というサービスがあります。このサービスでは、衛星データをもとに耕作放棄地率を判定し、地図上に表示します。これにより、耕作放棄地がひと目でわかるため、目視確認の工数を大幅に削減できます。

今まで目視で行っていたパトロールをアプリを通すことで、調査工程を9割削減、調査を前の地図作成の工程も省くことができ、タブレット一つで調査が可能です。

紙で記録した後に手作業でしていたデータ入力も、データをまとめて出力し台帳システムへの登録が30分で完了します。

参照:https://sagri.tokyo/actaba-2

 

まとめ

DXは、農業において重要な役割を果たしています。コスト削減、作業効率化、収穫量の最大化など、DXにより農業が良い方向に発展し続けています。

農業においてDXを推進することは、今後の農業人口を増やすことにも結びつくでしょう。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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