Googleの検索エンジン精度向上や高度な翻訳ツールの登場により、最近注目の集まっている「自然言語処理」ですが、その仕組みや学習方法についても知りたい方が増えています。この記事では、自然言語処理の仕組みやおすすめの学習方法を紹介します。
自然言語処理とは
自然言語処理は、人が話したり書いたりする時に使う言語(自然言語)の内容を解析する処理技術のことを言います。従来の「書き言葉」だけでなく、音声認識技術の進化によって「話し言葉」までの言葉の持つ意味を様々な方法で解析でき、課題解決に役立てられるため、近年注目の集まっている技術です。
自然言語処理の仕組み
ここでは、自然言語処理の仕組みを4つの工程(「形態素解析」、「構文解析」、「意味解析」、「文脈解析」)に分けて説明します。
前準備:機械可読目録とコーパス
自然言語処理を行う前準備として、「機械可読目録」と「コーパス」の構築が必要です。機械可読目録とは、図書館・資料館に貯蔵されている情報を自然言語処理するために設計された「データフォーマット(通信規格)」のことを言います。日本の大学などで使用されている「OPAC」などが有名です。次に、コーパスとは、文章構造をコンピュータで分析するための「データベース」のことを言います。また、自然言語処理において、機械可読目録は「辞書」として定義され、コーパスは「言語全集」と言われています。
形態素解析
形態素解析は、文章をそれぞれの意味を持つ最小の単位(形態素)に分割し、それぞれに品詞などの各種情報を振り分ける作業のことを言います。形態素は文章や単語よりも細かな情報で、これらの意味を抽出する必要があります。
また、形態素解析はツールを使って行うこともでき、無料のものと有料のものがあります。無料で使えるものとして有名なものには「MeCab」・「ChaSen」・ 「KyTea」などがあり、有料で使えるものとしては「Rosette」・「 IBM Watson」・「 MARIMO」などがあります。
構文解析
構文解析は、形態素解析で分割された単語同士の関連性を解析し、分節間などの係り受け構造を検出して図式化する作業のことを言います。これによって機械が単語同士の関係性を理解し、文脈を判断する準備ができます。構文解析を行う代表的な手法としては「依存構造解析」と「句構造解析」があります。
依存構造解析
依存構造解析は、文章中の単語同士の係り受け関係を解析し、どの単語とどの単語が係るかなど、構造的な依存度を構文的に解析するものです。日本語に対応している構文解析器(パーサー)としては「CaboCha」・「KNP」などがあります。
句構造解析
句構造解析は、どこの文からどこの文までが部分構造を成すか、すなわち「句」となるのかを推測する解析方法です。
意味解析
意味解析とは、文章の意味を正しく解析する作業のことを言います。意味解析の代表的な手法には「グラウンディング」や「アノテーション」などがあります。
グラウンディング
グラウンディングとは、自然言語で表された文章の概念を、自然言語以外の情報と結びつける作業のことを言い、この作業によって、より正しい解釈に解析することができます。
アノテーション
アノテーションは、AIモデルを訓練するための教師データを作成する作業のことを言い、アノテーションによって学習させたAIを使用して文章の意味を解析します。さらにアノテーションには、単語の意味に対してタグ付けする「意味的アノテーション」と文章の内容に対してタグ付けする「言語的アノテーション」があります。
文脈解析
文脈解析とは、形態素解析と意味解析を複数の文章に対して行い、文と文のつながり(=文脈)を考える工程です。これを行うには、単語同士の関係だけでなく、文章と文章の間に隠された複雑な情報が必要になることもあるため、意味解析よりもさらに難しく、なかなか実用的なツールが存在しないといわれています。しかし、近年「機械学習」や「ニューラルネットワーク」の技術進歩によって、着々と実用化に向けて研究が進められている分野でもあります。
自然言語処理の学習におすすめの本5選
これまで、自然言語処理に関する概要を説明しましたが、もっと具体的に、もっと深く知りたいと思った方におすすめの学習本を紹介します。
コピペで簡単実行! キテレツおもしろ自然言語処理 PythonとColaboratoryで身につく基礎の基礎
プログラミング言語「Python」による自然言語処理について、面白く、ユニークなサンプルプログラムで学べる書籍で、Pythonによる自然言語処理を学びたい初心者などにおすすめの一冊です。(「Amazon.co.jp」より引用)
現場で使える! Python自然言語処理入門 (AI & TECHNOLOGY)
Pythonを利用した自然言語の分析手法を解説した書籍で、自然言語処理を学びたい理工学生・エンジニアにおすすめの一冊です。(「Amazon.co.jp」より引用)
Pythonで動かして学ぶ 自然言語処理入門
各種オープンソースソフトウェアやライブラリを利用して、自然言語処理を行うWebアプリケーションを作って動かし、自然言語処理の体験をするための書籍で、Pythonでプログラミングをした経験のある方におすすめの一冊です。(「Amazon.co.jp」より引用)
Python自然言語処理101本ノック:: ~基礎からBERTまで~ (神草出版)
実際にPythonでプログラムを書きながら問題演習を行っていき、「自然言語処理」と「深層学習」の相乗効果により驚くような成果を生み出すソフトウェアをPythonでゼロから作る力を養うことを目的とした書籍で、Python初学者におすすめの一冊です。(「Amazon.co.jp」より引用)
入門 自然言語処理
自然言語処理に関するリファレンス的な位置付けとなる数少ない書籍で、Python初学者や自然言語処理をこれから学習しようと考えている方にぜひ読んでいただきたい一冊です。(「Amazon.co.jp」より引用)
自然言語処理の学習におすすめな動画教材3選
ここでは、自然言語処理を学びたいけど、本を読んでいる時間がない方や、本が苦手な方におすすめの動画教材を紹介します。
自然言語処理とチャットボット
日本語の自然言語解析技術を学び、それを「深層学習(Deep Learning)」に適用する手法が学べる動画教材です。自然言語処理を利用したAIチャットボットの開発も体験できます。
BERTによる自然言語処理を学ぼう!-Attention、TransformerからBERTへとつながるNLP技術-
最近話題の、日本語処理にも対応した「BERT」の仕組み・実装方法の解説が豊富な、数少ない動画教材です。BERTとTransformerと呼ばれるモデルを利用し、文脈理解を目的とした処理技術も学べます。
今からでも基礎から学べるPythonによる自然言語処理(NLP)
Python文法基礎や深層学習開発の基礎も学習できる動画教材で、自然言語処理の基礎を徹底的に理解したい方におすすめです。
まとめ
最近注目の集まっている自然言語処理ですが、仕組みやおすすめの学習本・動画教材を理解し、課題解決・システム開発などに役立ててみましょう。
この記事の執筆・監修者
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。