自然言語処理(NLP)とAIチャットボットの関係性・活用事例を紹介

自然言語処理(NLP)とAIチャットボットの関係性・活用事例を紹介

「AI」や「機械学習」、「ニューラルネットワーク」をはじめとする技術進歩によって、今後さらなる活躍が期待できる「自然言語処理」ですが、その仕組みや活用事例を理解している方は少ないんじゃないでしょうか?また、webサイトのお問い合わせページなどで馴染み深くなってきた「チャットボット」などの、自然言語処理を利用した技術は、ビジネスシーンにおいても様々な分野で活躍するようになり、今後さらなる発展が期待されています。この記事では、自然言語処理に関する基礎知識や分析方法などの仕組み、チャットボットでの活用事例などを紹介します。

 

自然言語処理とは

自然言語処理は、人が話したり書いたりする時に使う言語(自然言語)の内容を解析する処理技術のことを言います。従来の「書き言葉」だけでなく、音声認識技術の進化によって「話し言葉」までの言葉の持つ意味を様々な方法で解析でき、課題解決に役立てられるため、近年注目の集まっている技術です。

 

自然言語処理の仕組み

ここでは、自然言語処理の仕組みを4つの工程(「形態素解析」、「構文解析」、「意味解析」、「文脈解析」)に分けて説明します。

前準備:機械可読目録とコーパス

自然言語処理を行う前準備として、「機械可読目録」と「コーパス」の構築が必要です。機械可読目録とは、図書館・資料館に貯蔵されている情報を自然言語処理するために設計された「データフォーマット(通信規格)」のことを言います。日本の大学などで使用されている「OPAC」などが有名です。次に、コーパスとは、文章構造をコンピュータで分析するための「データベース」のことを言います。また、自然言語処理において、機械可読目録は「辞書」として定義され、コーパスは「言語全集」と言われています。

形態素解析

形態素解析は、文章をそれぞれの意味を持つ最小の単位(形態素)に分割し、それぞれに品詞などの各種情報を振り分ける作業のことを言います。形態素は文章や単語よりも細かな情報で、これらの意味を抽出する必要があります。

また、形態素解析はツールを使って行うこともでき、無料のものと有料のものがあります。無料で使えるものとして有名なものには「MeCab」・「ChaSen」・ 「KyTea」などがあり、有料で使えるものとしては「Rosette」・「 IBM Watson」・「 MARIMO」などがあります。

構文解析

構文解析は、形態素解析で分割された単語同士の関連性を解析し、分節間などの係り受け構造を検出して図式化する作業のことを言います。これによって機械が単語同士の関係性を理解し、文脈を判断する準備ができます。構文解析を行う代表的な手法としては「依存構造解析」と「句構造解析」があります。

依存構造解析

依存構造解析は、文章中の単語同士の係り受け関係を解析し、どの単語とどの単語が係るかなど、構造的な依存度を構文的に解析するものです。日本語に対応している構文解析器(パーサー)としては「CaboCha」・「KNP」などがあります。

句構造解析

句構造解析は、どこの文からどこの文までが部分構造を成すか、すなわち「句」となるのかを推測する解析方法です。

意味解析

意味解析とは、文章の意味を正しく解析する作業のことを言います。意味解析の代表的な手法には「グラウンディング」や「アノテーション」などがあります。

グラウンディング

グラウンディングとは、自然言語で表された文章の概念を、自然言語以外の情報と結びつける作業のことを言い、この作業によって、より正しい解釈に解析することができます。

アノテーション

アノテーションは、AIモデルを訓練するための教師データを作成する作業のことを言い、アノテーションによって学習させたAIを使用して文章の意味を解析します。さらにアノテーションには、単語の意味に対してタグ付けする「意味的アノテーション」と文章の内容に対してタグ付けする「言語的アノテーション」があります。

文脈解析

文脈解析とは、形態素解析と意味解析を複数の文章に対して行い、文と文のつながり(=文脈)を考える工程です。これを行うには、単語同士の関係だけでなく、文章と文章の間に隠された複雑な情報が必要になることもあるため、意味解析よりもさらに難しく、なかなか実用的なツールが存在しないといわれています。しかし、近年「機械学習」や「ニューラルネットワーク」の技術進歩によって、着々と実用化に向けて研究が進められている分野でもあります。

 

チャットボットとは

チャットボットとは、自動的に会話を行うサービスやそのプログラムのことです。webサービスなどで「お問い合わせ」ページにて、チャットで自動的に”コンシェルジュ”なるものと会話をしたことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
最近では、AIと組み合わせた自然言語処理技術の進歩により、様々なチャットボットが登場し、サービスとして活用されています。

チャットボットの歴史

チャットボットが初めて登場したと言われているのが、1960年代に開発された対話システム「ELIZA」です。ELIZAは、事前に登録しておいたキーワードと会話パターンのデータベースから、返答用テンプレートに当てはめる形で応答するようなアルゴリズムでした。運が良ければ自然な会話にもなるので、たまに的外れな回答をすることを差し置いても、当時は「機械と会話できるようになった!」と信じた人も多かったと思います。当時は画期的だったELIZAかと思いますが、その後は飛躍的に精度の上がったサービスが提供されることになります。

AI技術が進化し続け、2011年にはApple社からSiriが登場しました。その後はマイクロソフトやGoogle、Amazonなどが続き、チャットボットの仕組みを応用したAIスピーカーのようなツールも続々と登場しています。

 

チャットボットの活用事例

近年では、ビジネスの様々なシーンにおいてもチャットボットが活躍しています。ここでは、具体的なチャットボットの活用事例を紹介します。

社内ヘルプデスク

ある企業では、お客様向けの専用ヘルプデスクサービスにおいて、お客様のお問い合わせに回答する「オペレータ支援」を行うためにチャットボットを活用しています。これによって、ナレッジの集約が実現し、慣れていない人でもスキルの高い人と同じくらいの時間で質の高いサービスを提供できるほどになりました。結果的に、属人化の解消や教育時間短縮に役立つなど、多くのビジネスメリットを感じられるようになりました。

オペレーター支援

ここでいう「オペレータ支援」とは、従来はオペレータに寄せられた問い合わせに対して、過去の資料や調査ツールを使って解決策の調査・提案を行なっていたものを、AIにそのまま質問を入力することで回答させ、さらに入力情報を学習させることによって徐々に回答精度を上げていくといったサービスのことを言います。

 

まとめ

自然言語処理は、今後のAI技術の進歩に合わせてさらなる高機能化が期待できる技術です。チャットボットをはじめとして、様々なサービスにも応用されることが予想されるので、この記事を通して自然言語処理やサービスへの活用方法を理解し、課題解決に役立てられるといいですね。

 

この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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