電気で走るEVトラック、普及に向けた課題とは?
運輸部門のカーボンニュートラルに向けた取り組みとして、トラックの電動(EV)化に関心が高まっています。しかし、EVトラックには、航続距離のほかにもいろいろな課題があるとされ、普及に向けてはこれらの課題をひとつずつクリアしてくことが求められます。
この記事では、EVトラックが抱える課題や導入の拡大に向けた動きについて紹介します。
EVトラックが注目される背景
カーボンニュートラルの達成を目指す中で、運輸部門においても二酸化炭素(CO2)の排出量削減が大きな課題であると考えられています。
というのも、2019年度のCO2排出量(間接排出量)を部門別にみると、産業部門に続いて運輸部門の排出割合が多く、大幅な削減が求められているからです。(参考『物流のCO2排出量を削減する新たな取り組み「グリーン物流」に注目集まる』)
出典)温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより
そこで、よりCO2排出量の少ない電気自動車(EV)トラックに関心が集まっています。EVトラックとは、ガソリンを使わず電気をエネルギーとし、電動モーターで走行するトラックのことです。
課題は航続距離のほかにも
しかし、EVトラックの普及に向けては、数多くの課題が残されています。経済産業省は、2021年に「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」を開いて、トラックを含む自動車のEV化について検討しました。
そこで検討された内容によると、まず課題として挙げられたのは、EVトラックを導入することによるコストアップでした。例えば、通常のトラックは約15年間使い続けることができるとされていますが、EV車は6年間ほどでリース期間が満了することが多いと言います。契約更新にはコストがかかり、このコストアップが課題だとされています。
また、車両そのものの価格や充電設備にも投資が必要となり、コストアップを運賃に反映すると競争力が削がれることから、EV化のコストが大きな課題だと考えられているのです。
一方で、1日あたり平均500キロ走行するような長距離輸送には向かないものの、1日の走行距離が50〜100キロほどの近距離輸送においては、EV化を計画している事業者も登場しているとのことでした。
「ラストワンマイル」での活用に期待
さて、物流において、最終の配送拠点からエンドユーザーまでの配送のことを「ラストワンマイル」や「ラストマイル」と呼びます。
ラストワンマイルは、1日の輸送距離が数十〜50キロであることもあり、EVトラックによる輸送が実現できるとされています。実際に、AmazonはRivianというEVメーカーの新興企業(スタートアップ)を買収し、輸送のEV化に取り組んでいるところです。すでに、10万台のEVをRivianに発注したと報じられています。
国産EVトラックの現状は?
一方で、日本では、三菱ふそうトラック・バス株式会社が「eCanter」という電気小型トラックを販売しています。eCanterは、1回の充電で約100キロ走行することができ、ラストワンマイルなどの小口輸送での活躍が期待されています。
欧米などで先行して販売され、日本では、2022年1月に北海道で配送業務の初めての実証がスタートしました。
今後も残された多くの課題を乗り越えながら、運輸部門のEV化が活性化していくと予想されます。