【2025年版】深刻化する物流業界の人材不足 AI・自動化技術の導入対策とは?

【2025年版】深刻化する物流業界の人材不足 AI・自動化技術の導入対策とは?

物流業界で人手不足が深刻化している背景とは

近年、物流業界では人手不足が一段と深刻化しています。その背景にはいくつかの要因が重なっています。まず大きいのが、ドライバーの高齢化若年層の就業者減少です。長時間労働や休日の少なさなど、厳しい労働環境が敬遠され、担い手の確保が難しくなっています。

加えて、2024年4月に施行された「働き方改革関連法」により、トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられたことで、これまでのような輸送量を維持できない企業が増えつつあります。さらに、EC市場の拡大により荷物の量は年々増加し、需要と供給のバランスが崩れているのが現状です。こうした構造的な課題が、物流の現場を支える人材不足を深刻な社会問題へと押し上げています。

 

物流のDX支援についてはコチラから物流のDX支援についてはコチラ

人手不足がもたらす影響

物流業界における人材不足は、現場の疲弊だけでなく、企業のサービス品質やコスト構造にも直結する深刻な課題です。ここでは、現場で実際に起きている代表的な影響を3つに分けて整理します。

・納期遅延

最も顕著に表れるのが、荷物の配送遅れです。ドライバーや仕分け作業員が足りないことで、従来の配送スケジュールが守れず、納期が後ろ倒しになるケースが増加。とくにBtoB取引では、企業間の信用に関わる問題となり、受発注全体の遅延につながる可能性があります。

・品質低下

人手不足の中で無理な作業を続けると、ミスの発生率も上がります。仕分けミスや破損、誤配送といったトラブルが増え、最終的に顧客満足度の低下を招きます。品質管理にかける時間や体制が十分に取れなくなることで、現場のモラルや士気にも影響が出かねません。

・コスト増

慢性的な人手不足により、労働力確保のための人件費や外注費が高騰しています。さらに、非効率な運行や作業時間の延長による燃料費・光熱費の増加など、見えにくいコストも膨らみやすく、企業の利益を圧迫しています。中小の物流事業者にとっては、経営そのものを揺るがす課題です。

導入が進む主なAI・自動化技術とその活用例

人手不足が慢性化する物流業界では、AIやロボティクス、自動運転といった技術の導入が急速に進んでいます。現場の生産性を高め、人的リソースに頼らない持続可能な物流体制を構築することが、企業の競争力に直結する時代となりました。ここでは、今まさに導入が進んでいる主要な技術と、実際の企業の活用事例を整理します。

自動倉庫・ロボティクス技術

倉庫内作業の自動化は、最も導入が進んでいる領域のひとつです。ピッキングや仕分け、搬送といった反復作業を自律走行ロボットや自動ラックが代行し、省人化と効率化を同時に実現します。

ラピュタロボティクス株式会社

ラピュタロボティクス株式会社は、「ロボットをもっと身近に」というビジョンのもと、物流倉庫向けの自動化ソリューションを展開する企業です。自社開発のロボティクス技術とクラウドプラットフォームを組み合わせ、省人化・省力化を実現する製品を提供しています。

主な製品には以下の3つがあります。

・ラピュタPA-AMR
物流倉庫におけるピッキング作業をサポートする協働型ロボット。作業スタッフと連携して動き、AIが最適なピッキングルートを提案し、スタッフの歩行距離を削減しながら、荷物の搬送を代行します。「ヒトとロボのチームワーク」に重点を置いて設計されており、既存倉庫への導入が容易で、柔軟な現場対応が可能です。

・ラピュタAFL
倉庫向け自動フォークリフトです。自社のロボティクスプラットフォーム「rapyuta.io」とAI技術を活用し、複雑な倉庫作業に柔軟に対応。高精度な自己位置推定により、反射板や磁石などのインフラ工事が不要で、既存倉庫への導入が容易です。

・ラピュタASRS
物流や製造現場の人手不足・作業負担軽減に対応する
カスタマイズ可能な自動倉庫システムです。独自のブロック構造により、倉庫の形状や用途に応じて柔軟に設計でき、既存の倉庫・工場にも稼働を止めずに導入可能です。

出典)

https://www.rapyuta-robotics.com/ja/

https://www.rapyuta-robotics.com/ja/solutions-pa-amr/

https://www.rapyuta-robotics.com/ja/solutions-afl/

https://www.rapyuta-robotics.com/ja/solutions-asrs/

AIによる需要予測・在庫最適化

過去の販売データや天候、イベント、SNSのトレンドなどを学習し、AIが需要を予測します。適正な在庫量を算出することで、欠品や過剰在庫を防ぎます。特に小売・食品分野では賞味期限の管理や発注の自動化にも活用されており、現場の判断に頼っていた在庫管理がより正確かつ効率的に行えるようになっています。

株式会社True Data

株式会社True DataはニールセンIQと提携し、AIで高精度な需要予測と在庫最適化を行う小売業向けソリューション「SDR-IO(エス ディー アール・アイ オー)」の国内提供を開始しました。

300以上の要素をもとにAIが最適な予測を行い、過剰在庫や欠品を防ぎつつ発注業務を効率化、販促やカニバリゼーションの影響も加味し、財務視点で在庫コストや機会損失を可視化できるほか、オムニチャネル対応でオンラインと店舗の在庫管理も支援します。GMSやスーパー、ドラッグストアなど幅広い業態に対応し、欧米で40社以上が導入、既存システムと接続して導入できるため現場負担も少なく、導入効果も高いソリューションです。

出典)

https://www.truedata.co.jp/release20210909/

配送ルートの最適化(AI × TMS)

トラック運行管理システム(TMS)にAIを組み合わせることで、交通状況や積載効率、納品時間などを加味した最適な配送ルートの自動提案が可能になります。リアルタイムでの再計算にも対応し、ドライバーの負担軽減や燃料コストの削減につながります。

NECソリューションイノベータ株式会社

NECソリューションイノベータ株式会社が提供する「ULTRAFIXシリーズ」は、輸配送管理(TMS)や倉庫管理(WMS)を含む総合物流ソリューションです。企業の物流効率化やコスト削減を支援するため、複数のシステムやサービスを組み合わせて導入できます。

主な製品と特長

・輸配送管理システム(ULTRAFIX/TMS)
高性能なアルゴリズムにより、各種制約条件を順守しながら最適な配車計画を立案。ドライバーの勤怠状況を考慮した配車計画や、左回り優先、左折入庫優先、大型規制や渋滞情報などを考慮した配車を提示することが可能です。

・倉庫管理システム(ULTRAFIX/WMS)
一般的な倉庫内業務のほか、入出荷実績取り消しといったイレギュラー業務にも対応可能な倉庫管理システム。シンプルな作りで、環境・規模・状況に合わせた柔軟なシステム構築が可能です。

・物流コンサルティングサービス
TMSに加え、WMS領域もカバー。物流オペレーションの効率化とローコスト化をトータルに支援します。

出典)

https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/uf/index.html

自動運転技術の研究・実証

2025年現在、自動運転トラックの公道走行実験や実証運用が進められています。高速道路の自動運転や中継輸送の実用化が視野に入り、夜間の長距離輸送やドライバー2名体制の負担軽減といった効果が期待されています。完全自動化にはまだ時間がかかるものの、特定区間や構内走行など限定的な領域では実用段階に入っています。

江崎グリコ株式会社・キユーピー株式会社・株式会社キユーソー流通システム・株式会社T2

江崎グリコ株式会社とキユーピー株式会社と株式会社キユーソー流通システムと株式会社T2は、2025年7月から、T2が開発した自動運転トラックを用いた幹線輸送の実証実験を、関東・関西間の高速道路一部区間で実施します。本実証は、将来に向けレベル4自動運転トラックを活用する上で最も効果的な輸送オペレーションの構築を検討することを目的としており、レベル2自動運転トラックを使用します。

東京に本社があるキユーピーと大阪に本社があるGlicoとが両社得意とするドレッシング類と、菓子類を関東・関西間で協力して自動運転トラックの実証を行うことにより、効率的な長距離間の自動運転トラックの検証、運行が可能となります。

更にGlico、キユーピー両社の連携は、集荷までの待機時間や運行スケジュール調整の削減等にもつながり、このような企業間連携の取り組みを社会に広く周知することは、「2024年問題」として知られる物流危機の解決に貢献すると考えています、としています。

出典)

https://www.kewpie.com/newsrelease/items/2025/items/pdf/2025/newsrelease_20250220.pdf

導入により期待できる効果

物流業界ではAIや自動化技術の導入をすることで現場の効率化、サービス品質の安定、コスト構造の見直しなど、多角的な効果が期待されています。ここでは、導入によって実際に得られる代表的な効果を整理してご紹介します。

作業効率の向上

ピッキングや搬送、検品など、繰り返し発生する作業をロボットが担うことで、作業時間の短縮と人員配置の最適化が可能になり、同じ業務量でも少人数で対応できる体制が構築できます。

人的ミスの削減

AIや自動化システムは、マニュアルに沿った作業を高い精度で継続的に実行できます。バーコードの読み取りや数量の検品など、ヒューマンエラーが起こりやすい工程でのミスを減らすことができ、品質の安定につながります。

コストの最適化

初期投資はあるものの、長期的には人件費や教育コストの削減が見込めます。さらに、無駄な動線や作業の重複を減らすことで、全体の物流コストを抑える効果も期待できます。

現場の安全性向上

重労働や危険作業をロボットに任せることで、労働災害のリスクを軽減できます。特に夜間や寒暖差の大きい倉庫環境においては、作業者の負担軽減にもつながり、離職防止にも効果があります。

データ活用による継続的改善

AIが収集・分析したデータをもとに、作業工程や在庫配置の見直しを図ることができます。現場の見える化が進み、PDCAサイクルが回しやすくなることで、継続的な業務改善にもつながります。

今後の展望と企業が取るべきアクション

今後の展開としては、省人化の枠を超え、業務の見直しやビジネスモデルそのものの再構築につながる動きが広がっていくと考えられます。変化が加速する中で、企業は何を見据え、どのように備えるべきか。そのヒントとなる視点を以下に整理します。

AIと自動化技術は“部分導入”から“全体最適”へ

これまではピッキングや配車など、個別工程の自動化が中心でしたが、今後は複数の工程を一体で最適化する取り組みが本格化します。TMSやWMS、ロボット、AIを連携させた「統合型物流管理」の重要性が高まり、点ではなく線・面での効率化が求められます。

・サプライチェーン全体での再設計が必要に

人手不足に対応するだけでなく、将来的な需要変動や災害リスクにも備える必要があります。そのためには、拠点配置の見直しや中継拠点の整備、輸送手段の多様化など、サプライチェーン全体を見渡した戦略が欠かせません。

・担い手の“多様化”も視野に入れる

完全自動化が難しい領域も多いため、高齢者や外国人労働者、副業人材など多様な人材の活用も現実的な選択肢です。テクノロジーと人との役割分担を明確にしながら、柔軟な働き方を支える仕組みづくりが求められます。

企業が今取るべきアクション

・自社の業務を“見える化”し、課題を洗い出す

TMS(輸配送管理システム)、WMS(倉庫管理システム)、データ可視化ダッシュボード(BIツール)などを活用し、荷待ち時間、積載率、ピッキング時間、稼働率などの物流KPIを可視化したり、各拠点やルートごとの非効率ポイントを特定したりするなど課題を洗い出すことが重要です。

・荷主やパートナー企業との連携を強化する

物流は単独企業で完結するものではありません。共同配送混載便の受け入れや、荷待ち時間や納品条件の改善についての荷主との交渉、配送・保管業務を地域内でシェア化する仕組みづくりなど、共に設計・実行していく体制を整えることが、成功のカギとなります。

・人手不足でも回る仕組みの構築

単純作業は、ロボットやAIに代替、判断やイレギュラー対応は人材が担うなど、人とAI/機械の役割を再設計し、TMS/WMSなどの基幹システムの統合や、在庫・配送・販売を横断的に可視化し、業務の一元化を推進するなど、システム連携を強化します。

まとめ

本記事では、深刻化する物流業界の人材不足を背景に、課題の現状とそれがもたらす影響、そしてAIや自動化技術による解決策について解説しました。

納期の遅延や品質低下、コスト増といった問題は、すでに多くの現場で顕在化しています。これに対し、自動倉庫やピッキングロボット、AIによる需要予測や配送最適化、自動運転技術などの活用が現実的な選択肢として広がっています。

生産性と持続性を両立させるためには、テクノロジーを現場にどう適応させるかが鍵です。今こそ、物流の未来を見据えた一歩を踏み出すタイミングです。

 

サプライチェーンのDXをAI・デジタルツインなどの新技術で支援。カーボンニュートラルの実現に向けたCO2排出量の可視化・削減シミュレーションにも対応する物流特化のサービス。先ずは無料の資料請求から。
この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

物流・サプライチェーンカテゴリの最新記事