共同配送とは?
共同配送とは、複数の企業が協力して配送ルートや車両を共有し、商品を一括で運ぶ配送形態のことです。各企業が別々に配送するのではなく、1台のトラックに複数の企業の商品を積み合わせ、効率的に配送を行うことで、コスト削減や環境負荷の軽減を目指します。競合他社同士はもちろん、業種の違う企業同士でも共同配送は可能です。
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共同配送の主要な方式とは?
共同配送の配送方法には 「配送センター集約方式」 と 「ミルクラン方式」 という2つの代表的な方法があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
配送センター集約方式
複数の荷主企業の商品を一つの配送センターに集約し、そこから共同配送する方式です。
各企業が物流拠点に商品を集約し、配送センターで荷物を仕分け後、配送エリアごとに荷物を積み合わせ、共同配送を実施します。
メリット
・物流コストの削減:配送効率が向上し、トラック台数や輸送コストを削減
・積載率の向上:異なる企業の荷物を組み合わせて運ぶことで空きスペースを減らす
・環境負荷の低減:配送ルートの最適化により、CO₂排出量を削減
デメリット
・配送スピードが落ちる可能性:集約・仕分け作業があるため、即時配送には不向き
・在庫管理が複雑になる:企業ごとの商品管理が必要
各メーカーの商品を集約し、店舗単位で配送するコンビニやスーパーの共同配送や、メーカー・問屋・小売業者が連携し、一括配送する日用品・雑貨の共同物流センターなどに活用されています。
ミルクラン方式
各荷主の拠点を巡回しながら荷物を集荷し、そのまま配送する方式です。「巡回集荷」とも言います。
トラックが複数の企業を巡回し、荷物をピックアップし、そのまま配送先へ直送、または拠点で仕分けして配送します。「ミルクラン」という名称は、牛乳メーカーが生乳を集めるために各牧場を巡回していた方法が由来になります。集荷ルートは固定化されており、決まった順序で集荷を行います。
メリット
・リードタイムの短縮:集約センターを経由しないため、納品までの時間が短い
・在庫削減が可能:企業ごとに適量の荷物をピックアップし、ジャストインタイム配送が可能
・無駄な輸送の削減:配送トラックが効率的に回ることで、空荷・待機時間を減らせる
デメリット
・ルート設計が難しい:効率的なルートを設定しないとコストがかかる
・小口配送に向かない:ある程度の荷量がないと、トラックの積載効率が悪化してしまう
サプライヤーから工場へ直接配送する自動車業界の部品供給や、各メーカーの工場から複数の小売店へ配送飲料・食品メーカーの納品などに活用されています。
共同配送が必要とされる背景とは?
2024年問題による物流の制約
2024年4月から、働き方改革関連法の適用によりトラックドライバーの労働時間が制限される「2024年問題」が本格化しました。これにより、
・長時間労働の抑制 → 運べる荷物量が減少
・ドライバーの不足 → 配送コストの増加
といった影響が出るため、配送の効率化が急務となっています。
CO₂排出削減・環境負荷の低減
カーボンニュートラルの推進により、物流業界もCO₂排出削減を求められています。しかし、現状では…
・トラックの積載率が低い(空荷・半分しか荷物が積まれていないことが多い)
・二酸化炭素(CO₂)の排出量が多い
といった問題があります。
共同配送を活用すれば、トラックの積載率を向上させ、走行台数を削減できるため、環境負荷の低減につながります。
EC市場の拡大による宅配件数の増加
オンラインショッピングの普及により、個別配送の需要が急増しています。
・ EC市場の拡大 → 配送回数が増加
・配送効率が低下 → 物流コストが上昇
こうした状況の中で、共同配送を導入することで、ラストワンマイルの負担を軽減し、効率的な配送網を構築できます。
地方の過疎地域の物流課題
地方では、
・人口減少により配送需要が減少
・個別配送のコスト負担が大きい
という課題があります。
共同配送を導入することで、複数の配送会社が協力して配送ルートを最適化し、コストを抑えながらサービスを維持することが可能になります。
共同配送は、物流業界が直面するドライバー不足・CO₂削減・EC需要増加・地方の物流課題といった問題の解決策として注目されています。
各企業が連携し、効率的な配送システムを構築することで、持続可能な物流の実現につながると期待されています。
国内の共同配送の最新事例
花王株式会社とキリンビバレッジ株式会社、拠点間輸送の協業を開始
花王株式会社は、キリンビバレッジ株式会社と、2025年2月より、両社の物流拠点間の往復輸送の協業を開始。従来の輸送ルートをつなげ、空車となっていた戻り便のトラックを活用することで、輸送効率化と、CO2排出量削減に貢献します。
花王グループは、国内に10カ所ある生産工場から物流拠点への輸送、さらには小売店への配送を自社で担い、最適な輸送手段の設計により、安定的でスピーディーな物流を実現しています。今回のキリンビバレッジとの協業は、①荷主として輸送実績データを保有し、利活用できること②戻り便で積載できる物量が確保できること③つなげられる輸送区間が存在すること、といった条件が合致し実現に至りました。各社の片道輸送をつなげることで、輸送トラック台数(年間延べ300台以上)および、CO2排出量の削減(該当区間において約15%減)に貢献し、さらに共同輸送区間の拡充も検討していきます。
出典)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000465.000070897.html
センコー株式会社・旭化成ホームズ株式会社・積水化学工業株式会社・積水ハウス株式会社 住宅物流で協業
物流会社のセンコー株式会社と住宅メーカーの旭化成ホームズ株式会社、積水化学工業株式会社 住宅カンパニー、積水ハウス株式会社は2024年12月から住宅物流での協業を開始。物流業界では、2024年4月に施行された働き方改革関連法においてトラックドライバーの時間外労働の上限規制(約2割減の960時間/年)が適用される「2024年問題」を受け、ドライバーの労働力不足へ対応しながら輸送能力の安定的な確保が求められています。また、環境省による地球温暖化対策計画は、2030年度において二酸化炭素排出量を2013年度比で35%削減の目標としています。
これらの課題に対応するため、センコーと住宅メーカー3社は「住宅物流4社協議会」を発足させ、物流効率化と脱炭素社会への貢献を目指します。4つの協業施策を実施することにより、2025年までにドライバーの運転時間を約1万7,000時間(トラック 2,160台分)削減し、輸送CO2排出量を約500t-CO2(スギの木 約35,800本分※)削減することを目指します。
【協業施策4点】
① 物流拠点・車両の共同利用
全国に7エリア29拠点ある各社の輸送拠点を共同利用して効率的な物流体制を構築
② 部材メーカーからの購入・輸送を共同で実施
部材の共同購買・共同輸送で、積載効率を上げて輸送力を強化するとともにトラック台数を削減
③ 車両大型化+各社拠点の中継輸送で配送効率向上
ダブル連結トラックと中継拠点を活用した共同輸送でドライバーの労働時間を削減
④ 環境にやさしい配送で輸送CO2排出量を削減へ
出典)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000157.000073738.html
コカ・コーラ ボトラーズジャパン、湖池屋と関西から九州への共同幹線輸送を開始
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社は、株式会社湖池屋と関西から九州に向けた製品輸送において、共同幹線輸送を2024年10月より開始。
本取り組みは、重量貨物である飲料製品と軽量貨物である菓子製品を混載し、トラックの荷台に生じた空きスペースを有効活用することで、積載率を向上させ、両社の物流効率を推進するもので、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社の物流パートナー社が、当社倉庫で飲料製品を積載した後、近接する株式会社湖池屋の委託先の倉庫に立ち寄り、荷台の空きスペースに菓子製品を積載し、関西から九州に向けて混載輸送を行います。共同輸送を行うことにより、容積・重量とも積載率を100%に近づけることを可能にし、各社が関西から九州に輸送手配を行う場合と比べ、トラックの使用台数は33%の削減につながる見込みです。
出典)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000222.000053655.html
サントリーグループは、サッポログループと共同で、岡山県・群馬県間の長距離往復輸送の取り組み
サントリーグループは、サッポログループと共同で、岡山県・群馬県間の長距離往復輸送の取り組みを2024年11月から開始。サントリーグループとサッポログループが連携し、岡山県から群馬県へはサントリーグループの飲料製品などを、群馬県から岡山県へはサッポログループの飲料製品などを輸送します。なおトレーラーの輸送においては、3カ所の中継地点を設け、4人のトラックドライバーがリレー形式で輸送(スイッチ輸送)することで、長距離輸送におけるドライバー1人あたりの労働負荷を低減します。また、今回の取り組みでは従来の積載量より多いトレーラーを使用することで、運行するトラックを両社で年間約150台減らせるほか、CO2の排出量を約45トン削減します。
サントリーグループはこれまでも「スマートロジスティクス」の取り組みを進め、先端技術の活用や各企業・自治体との連携による、安全・安心で持続可能な物流の実現を目指してきました。今後も持続可能な物流の実現に向けて、物流企業やドライバーにとってより働きやすい環境をつくるとともに、自然環境に配慮した物流を推進します。
出典)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001184.000042435.html
共同配送が脱炭素社会に貢献する理由
共同配送は、物流の効率を向上させるだけでなく、CO₂排出量を削減し、持続可能な社会の実現に貢献します。その理由を詳しく見ていきましょう。
車両台数の削減によるCO₂排出量の低減
単独配送では、トラック1台あたりの積載量が少なく、効率が悪いことが多いですが、共同配送によって積載率を向上させることで、使用するトラックの台数を削減できます。トラックの台数が減ることで、燃料消費量やCO₂排出量が減少し、環境負荷を軽減できます。
輸送距離の短縮による燃料消費の抑制
共同配送では、複数の企業の配送ルートを統合するため、無駄な走行距離が削減されます。また、ルート最適化により、最短距離・最小燃料での輸送が可能になります。
モーダルシフトとの連携でCO₂排出量を大幅削減
共同配送の取り組みと同時に、トラック輸送から鉄道輸送や船舶輸送(モーダルシフト) に切り替えることで、さらに環境負荷を軽減できます。トラック1台あたりのCO₂排出量は 鉄道の約7倍、船舶の約3倍とされており、より環境に優しい輸送手段を活用することが重要です。
低炭素車両(EV・FCV)の導入促進
共同配送の仕組みを活用することで、EV(電動トラック)を共同利用し、都市部でのゼロエミッション配送を実施したり、水素ステーションの共同利用により、FCV(水素燃料電池トラック)の普及を促進するなど、低炭素車両の導入がしやすくなります。企業単体ではEVトラックの導入コストが高くても、共同配送で車両をシェアすることで負担を軽減でき、カーボンニュートラルを目指す企業の取り組みとしても、有効な手段となります。
物流DXと組み合わせた最適化
共同配送に AIやIoT技術を活用することで、さらなるCO₂削減が可能になります。AIを活用した配送ルートの自動最適化や、荷物の積載率向上、リアルタイム配送管理により、最小限のエネルギーで最大効率の輸送を実現します。
共同配送は 物流の効率化だけでなく、脱炭素社会の実現に向けた重要な取り組みです。輸送距離やトラック台数の削減、EV・FCVの活用、モーダルシフトとの連携などにより、大幅なCO₂排出量削減が可能となります。
今後、さらに物流DXの活用や企業間の連携強化により、環境負荷の少ない持続可能な物流ネットワークが広がっていくことが期待されています。
共同配送のメリット
共同配送は、脱炭素社会への貢献が注目されていますが、それ以外にも コスト削減、配送品質の向上、物流リスクの低減など、多くのメリットがあります。
輸送コストや人件費などコスト削減
トラックの積載率を向上させることで 1台あたりの輸送効率が向上し、コストを削減できます。トラックドライバー不足が深刻な中、1回の配送で多くの荷物を運べるため 配送回数が減り、ドライバーの負担軽減につながるため、ドライバーの雇用コスト、労働時間の削減が可能になります。
また、共同配送を活用することで、自社でトラックを新規購入・維持する必要が減り、さらに配送センターの共用も進めば、倉庫や拠点の固定費削減にもつながることとなります。
配送品質の向上
他社との協力により、配送キャパシティの確保が容易になるため、繁忙期や急な需要増にも対応しやすくなり、トラックの不足やドライバー不足で配送遅延が発生するリスクを低減でき、配送が安定します。
また、AIやIoTを活用し、ルート最適化・配送管理の精度が向上するので、納品時間の精度も向上し、共同配送のスケジュール化により、納品時間のバラツキを抑制します。
物流リスクの低減
2024年問題(労働時間の規制強化) により、ドライバー不足が深刻化する中、共同配送でトラック稼働の最適化が可能になり、長距離輸送を分担することで、1人あたりの負担を軽減し、ドライバーの確保がしやすくなります。
また、共同配送ネットワークがあれば、災害時や物流混乱時に、代替ルートや拠点の活用が可能になり、緊急物資の配送をスムーズに実施することができます。東日本大震災後、共同配送を活用して医薬品や食料品を安定供給した事例もあります。
脱炭素社会実現に向けた共同配送の未来展望
今後、共同配送はさらに進化し、より持続可能な物流へと発展していくことが期待されます。
物流DXとフィジカルインターネットの融合
共同配送は、フィジカルインターネットと連携することで、より広範囲な輸送最適化が可能になります。リアルタイムで車両の位置や積載状況を把握し、最適な配送ネットワークを形成することで、無駄のない物流を実現できます。
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地域ごとの共同配送ネットワーク構築
自治体や地域ごとの物流事業者が連携し、地域単位で共同配送の仕組みを整える動きが加速すると予想されます。特に、過疎地域では配送の効率化が課題となっており、共同配送を活用することで持続可能な物流を維持できます。
企業間連携の深化
今後は、異業種間の共同配送がさらに進むことが期待されます。例えば、EC事業者と食品メーカーが協力して配送ネットワークを共有することで、環境負荷を抑えながらコスト削減を実現することが可能になります。
政策による支援
政府は、共同配送の促進に向けた補助金制度や規制緩和を進めています。今後も共同配送を推進するためのインセンティブが増え、企業の取り組みが活発化することが予想されます。
まとめ
共同配送は、脱炭素社会の実現に向けた有効な手段の一つとして、今後ますます重要な役割を果たしていきます。トラックの積載効率向上や台数削減によりCO₂排出量を削減し、環境負荷の低減に貢献するだけでなく、企業のコスト削減や物流の安定化にも寄与します。
また、AIやデジタルツインなどの最新技術と組み合わせることで、より高度な物流最適化が可能になり、フィジカルインターネットの実現へとつながっていきます。共同配送のさらなる発展には、企業間の連携強化や政策支援が不可欠であり、持続可能な物流ネットワークの構築が求められています。
今後の物流業界において、共同配送は環境負荷を抑えながら効率的な輸送を実現する鍵となり、脱炭素社会の実現に向けた重要な取り組みとなるでしょう。
この記事の執筆・監修者

「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。