物流の効率化を阻む「荷待ち」問題とは?現状と取り組みを考える

物流の効率化を阻む「荷待ち」問題とは?現状と取り組みを考える

物流の効率化を阻む「荷待ち」問題とは?現状と取り組みを考える

荷待ちとは?物流業界における意味

荷待ちとは、ドライバーがトラックから荷物の積み降ろしの順番を待つ時間のことを指します。

物流業界では、この荷待ち時間が長くなることで、輸送効率の低下ドライバーの労働環境の悪化が深刻な問題となっています。特に、繁忙期や荷受け先の作業遅延が発生した際には、数時間にわたる待機が発生することも珍しくありません。

 

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なぜ荷待ちが発生するのか?背景とその現状

物流業界における「荷待ち」問題は、トラックが荷物の積み降ろしを待つ時間が長時間化することで、輸送の効率を大きく阻害する要因となっています。

なぜ荷待ち問題が発生するのか

特定時間帯への配送集中

多くの企業が、荷受けの時間を午前中や特定の時間帯に設定しているため、物流センターには特定の時間にトラックが集中します。これにより、荷役作業が追いつかず、長時間の待機が発生してしまいます。特に、繁忙期(年末、セール時期など)に出荷が増加し、待機時間が長くなる傾向にあります。

予約・管理システムの未整備

荷役作業の事前予約システムが整っていない現場では、到着した順番で作業が進められることが多く、非効率な運用が課題となっています。また、ドライバーが到着時間を厳格に管理できないケースもあり、予定外の混雑を招くことがあります。

倉庫や荷役作業の人手不足

物流センターや倉庫では、作業スタッフの人手不足が慢性化しています。少人数で荷役作業を行うため、積み降ろしに時間がかかり、結果としてトラックの回転率が低下してしまいます。

荷姿のバラつきと作業の非効率性

荷物の形状やサイズがバラバラだと、フォークリフトや人手による荷役作業に手間がかかります。積載効率が低下し、1台あたりの作業時間が長くなることで、次のトラックの作業開始が遅れる要因となります。

現状と問題点

配送スケジュールの乱れ

荷待ち時間が発生すると、予定していた配送スケジュールが大幅に遅れます。次の配送先への到着が遅れるだけでなく、ドライバーの拘束時間が長くなり、1日の輸送回数を減らさざるを得ない状況が生じます。消費者への納品遅延や在庫不足のリスクも発生します。

ドライバーの負担増加

荷待ちは、トラック運転手にとって大きなストレスとなります。長時間の待機によって休息時間が削られ、疲労の蓄積やモチベーション低下につながります。また、「2024年問題」 により、労働時間の上限規制が厳しくなるため、荷待ち時間が多いと運行できる距離が短くなり、収入減につながる場合もあるでしょう。

物流コストの上昇

荷待ち時間が増えると、無駄な人件費や燃料費が発生します。トラックのアイドリングによる燃料消費が増え、CO₂排出量の増加にもつながるため、環境負荷の観点からも大きな課題です。さらに、荷待ちの影響で人手不足が加速し、ドライバーの確保がより困難になっています。

荷待ち問題を解消!解決策とは?

荷待ち時間の短縮は、物流業界における大きな課題であり、ドライバーの労働環境改善やコスト削減、さらにはサプライチェーン全体の最適化につながります。

ここでは、予約システムの導入やデジタル技術の活用など、具体的な解決策を詳しく解説します。

予約システムの導入(トラックバース予約・受付のデジタル化)

課題

・トラックが一斉に到着し、荷待ち時間が発生。

・受け入れ側の倉庫・工場がトラックの到着予定を把握できず、対応が後手に回る。

解決策

・「トラックバース予約システム」 を導入し、事前に納品時間を指定 。

・受付・入庫のデジタル化 により、到着から荷役作業までをスムーズに。

物流DXの活用

課題

・物流現場での手作業が多く、情報共有がリアルタイムで行えない。

・ドライバー・倉庫作業員間の連携が不十分 で、荷役の順番がスムーズに決まらない。

解決策

・AIとIoTを活用 し、リアルタイムで荷役状況やトラックの到着予定を管理。

・AIによる荷役スケジュールの最適化 で、トラックごとの作業時間を短縮。

荷役作業の自動化・標準化

課題

・倉庫や工場での手作業が多く、積み込み・荷下ろしの時間が長い。

・パレット・コンテナの規格が統一されておらず、作業がスムーズに進まない。

解決策

・AGV(無人搬送ロボット)やAMR(自律走行搬送ロボット)を導入し、荷役作業を自動化。

・パレット・コンテナの統一規格化により、積み替え作業の時間短縮。

トラックの分散運行・納品時間の調整

課題

・特定の時間帯にトラックが集中し、バース(荷積み・荷卸しなどを行うためにトラックを停車させる場所)が混雑 。

・早朝や夕方のピーク時間帯には、待機時間が長くなりがち。

解決策

・納品時間を3つの時間帯に分ける(時間帯別納品) 。

・事前予約制を導入し、トラックの到着時間を調整。

共同配送・幹線輸送の最適化

課題

・1社ごとに配送しているため、トラックの積載率が低い。

・小規模配送が増え、物流拠点での作業負荷が上昇。

解決策

・複数の企業が配送ルートを共有する「共同配送」 の活用。

・幹線輸送を効率化し、拠点間のトラック運行を削減 。

 

▶️共同配送についてはこちらの記事も参照!

知りたい!共同配送のメリット・デメリット〜企業の事例も紹介〜

▶️幹線輸送についてはこちらの記事も参照!

物流の効率化!新たな輸送モデル、自動運転トラックを用いた幹線輸送とは?

サプライチェーン全体での業務改善

課題

・荷主企業と物流会社の連携が不十分。

・倉庫や配送センターの在庫管理が適切でなく、出荷作業が遅れる。

解決策

・サプライチェーン全体での情報共有を強化し、物流の効率化を図る。

・EDI(電子データ交換)やERP(統合基幹システム)を導入し、出荷作業の迅速化。

CO₂削減の観点から荷待ち問題を解決

課題

・荷待ち時間が長くなると、アイドリングによるCO₂排出が増加。

・環境負荷を減らしながら、物流効率を向上させる必要がある。

解決策

・アイドリングストップの徹底と、EV(電動トラック)の導入。

・エコドライブ支援システムの活用で、待機時間中の燃料消費を最小限に。

 

荷待ち時間の短縮には、デジタル技術の活用、業務プロセスの最適化、物流の効率化が不可欠です。具体的な対策としては、予約システムの導入、AI・IoTの活用、共同配送の推進などがあります。また、サプライチェーン全体での連携強化や CO₂排出削減の取り組みも重要です。

今後、「2024年問題」や「脱炭素社会の実現」に向けて、物流業界全体での荷待ち削減の取り組みが加速することが求められます。

荷待ち解消に向けた具体的な取り組みと最新技術

「荷待ち」問題の解消に向け、さまざまな具体的な取り組みや最新技術の導入が進められています。これらの施策は、物流の効率化とドライバーの労働環境改善に寄与しています。

大和ハウス工業株式会社とキヤノンマーケティングジャパン株式会社

大和ハウス工業株式会社とキヤノンマーケティングジャパン株式会社は、物流施設におけるトラックドライバーの荷待ち・荷役時間を可視化し、改善を支援するシステムを開発。2024年11月より、大和ハウス工業株式会社が開発した複数の企業テナントが入居できる物流施設「DPL平塚」において、効果を検証するための実証実験を開始し、2025年4月以降、大和ハウス工業が展開する物流施設「DPL(ディーピーエル)」への本格導入を目指します。

このシステムでは、カメラが撮影する映像から物流事業者ごとにトラックを自動検知し、物流施設入場からバースへの移動、バースでの荷役作業、物流施設退場までの記録を自動で把握、蓄積します。

また、映像をキヤノンMJグループ独自の作業解析技術を用いることで、映像からドライバーの行動をAIが分析し、荷待ちや荷役の時間を計測します。これらのデータに基づき、トラックドライバーの時間を要した点について、動作分析により課題を把握することで、荷主事業者やテナント企業の物流効率化に向けた改善を支援します。

出典)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001159.000013943.html

福岡運輸株式会社「バース予約・受付システムの導入」

福岡運輸株式会社はバース予約・受付システムを自社開発し2019年1月から導入しました。

携帯電話と連動させ、接車の順番が近づいた乗務員に連絡する仕組みで乗務員の待機時間の低減と物流効率の向上に繋げています。

受付状況やバース状況を可視化することで、情報の共有化と車両誘導を行い、バース運営の効率化を図ります。

機能は「バース予約」「受付システム」「バース自動割当」「乗務員連絡 バース誘導」の4つがあり、組み合わせは自由です。

システムは、携帯電話からの予約・受付を起点に、SMSやメールで待機車両をバースへ誘導。その後、作業進捗やバース稼働状況をリアルタイムで確認し、効率的な運営を実現。これを繰り返すことで、スムーズな荷役作業を支援します。

車両と倉庫の運用効率が向上し、待機時間の削減による渋滞緩和と環境保全に貢献。この取り組みが評価され、2020年に九州運輸局の環境保全部門で表彰されました。

出典)

https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf?utm_source=chatgpt.com

株式会社シーエックスカーゴ「epal(イーパル)」

株式会社シーエックスカーゴは、クラウド型物流容器在庫管理システム「epal」を導入し、複数拠点に分散する異なる種類のパレットを一元管理をできるようにしました。

epalは、日本パレットレンタル社のクラウド型物流容器在庫管理システムで、レンタルパレットや自社所有の物流容器を一元管理が可能です。

WEB上で出荷・入荷情報の照合が可能で、導入が容易。開発・保守費用が不要で、バージョンアップの負担もない。さらに、伝票電子化機能(epalDD)と連携し、入力作業の削減や紙管理の負担軽減、リアルタイムでの入出荷情報の確定ができます。

管理システムを1つにまとめることにより、パレットの利用拡大や効率化が実現し、パレットの在庫管理の負荷が低減しました。

出典)

https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf?utm_source=chatgpt.com

ダイキン工業株式会社 西日本パーツセンター

ハンドリフト牽引型の自動搬送装置(AGV)の導入で、物流倉庫で作業負担が大きい中物部品の入出庫搬送を自動化して生産性が向上したことでタブレット端末による簡単な行先指示により運用もスムーズになりました。

AGV(無人搬送車)は、人に代わって荷物を運ぶ装置で、コンベアやカゴ車搬送ユニットを搭載し、多様な荷物の搬送が可能です。シャープ製AGVは磁気テープに沿って走行し、制御カードの指示を読み取って動作します。タブレット端末を使用することで、簡単に走行指示ができ、コース作成から運用までの自動化が可能です。ダイキン工業株式会社では、ハンドリフト牽引型AGV(最大500kg搬送)を導入し、バッテリーを外付けの交換式にすることで、長時間の連続稼働を実現しています。

出典)

https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf?utm_source=chatgpt.com

荷待ち解消による物流業界の未来像

荷待ち問題が解消されることで、物流業界は大きく変化します。

ドライバーの負担軽減

ドライバーの負担が軽減され、長時間労働の改善が期待できます。荷待ちがなければ、配送スケジュールの乱れも減り、効率的な運行が可能になり、運送業界の働き方改革が進み、人手不足の解消にもつながるでしょう。

物流コストの削減

物流コストの削減も大きなメリットです。待機時間がなくなれば、トラックの稼働率が向上し、燃料の無駄遣いも抑えられます。倉庫の荷役作業もスムーズになり、在庫管理の最適化が進むことで、企業全体のコスト削減に貢献します。

環境負荷の軽減

環境負荷の軽減も期待されます。アイドリング時間が短縮されることで、CO₂排出量が削減され、持続可能な物流の実現に一歩近づきます。

デジタル化の促進

デジタル化も加速し、バース予約システムやリアルタイム物流管理システムの導入が拡大すれば、物流のスマート化が進み、より効率的な供給網が構築されるでしょう。

まとめ

物流業界における「荷待ち」問題 は、ドライバーの労働環境の悪化や輸送の非効率化を招く大きな課題となっています。特に2024年問題により労働時間の規制が厳しくなる中で、荷待ち時間の削減は避けて通れないテーマとなっています。

本記事では、荷待ちが発生する背景を探り、その解決に向けた具体的な取り組みや最新技術を紹介しました。バース予約システムの導入共同配送の活用物流DXの促進など、さまざまな施策が進められており、着実に改善の兆しが見えています。

荷待ち問題が解消されることで、物流の効率化輸送コスト削減だけでなく、環境負荷の軽減ドライバーの働き方改革へとつながります。今後も、業界全体での協力と技術革新を推進し、持続可能な物流の実現を目指すことが求められています。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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