物流の最終段階「ラストワンマイル問題」とは?その課題と解決策について徹底解説!

物流の最終段階「ラストワンマイル問題」とは?その課題と解決策について徹底解説!

物流の最終段階である「ラストワンマイル」。顧客の手元に商品を届けるこの工程は、一見シンプルに見えますが、実は物流全体の中でもっともコストがかかり、非効率になりやすい部分です。

本記事では、なぜラストワンマイルが課題となるのか、そしてその解決策にはどのような手段があるのかを詳しく解説します。

ラストワンマイル問題とは

「ラストワンマイル」とは、商品が配送センターや倉庫から顧客の手元に届くまでの最終区間を指します。この区間は、物流プロセスの最後のステップであり、顧客体験に直結する重要な部分になります。具体的には、最寄りの配達所からエンドユーザーの自宅や、受け取り場所の店舗までの区間などが挙げられます。

ラストワンマイル問題が発生する背景として、以下が挙げられます。

ECの普及

ネット通販が急速に普及し、配送量が増加している上、即日配送や翌日配送など、顧客のニーズが多様化している。

配送エリアの多様化

都市部では交通渋滞や配送先の密集による効率が低下していており、過疎地域では配送先が広範囲に分散し、コストが高騰している。

配送員の負担増

小口配送や個別配送が主流となり、1件あたりの荷物量が減少しており、かつドライバー不足が深刻化し、負担が増加している。

顧客の利便性要求

顧客の配達時間の指定や再配達の要望が増加している。また、不在時の対応が配送効率を下げる要因の一つになっている。

ラストワンマイルで直面する主な課題

配送コストと再配達の増加

ラストワンマイルでは、一つ一つの荷物を個別の顧客に配送するため、効率が悪く、全体の配送コストの約50%を占めることもあります。

都市部では駐車場不足や交通渋滞がコストを押し上げ、地方では配送エリアが広大なため燃料コストが増加します。

また、配送時に顧客が不在の場合、荷物を再度配送する必要があり、効率が大幅に低下します。日本では再配達率が20〜30%に達することもあり、配送会社にとって大きな負担になっています。再配達が増えると、配送員の労働時間や燃料消費が増え、コストがさらに増加します。

配送員不足

労働人口の減少や物流業務の過酷さから、配送員の確保が難しくなっており、配送需要が増加している一方で、人的リソースが不足していることが深刻化しています。特に年末やセール時などの繁忙期には、配送員が不足し、遅延や品質低下の原因となります。

ドライバーの待遇改善に取り組んでいる企業が増えているものの、長時間労働に加えて宅配物の管理をドライバーに任せるなどの負担増大が起こるケースもあるなど、改善までの道筋がなかなか見えないのが現状といえます

顧客ニーズと配送エリアの多様化

顧客は即日配送や時間指定配送など、高度な利便性を求めるようになっており、これに対応するための柔軟な配送計画が必要ですが、効率が低下する要因にもなります。

また、都市部では配送先が集中しているため交通渋滞や駐車問題が発生し、効率が低下している一方で、地方部では配送先が分散しているため、一件あたりの配送時間とコストが増加します。具体的には、都心部ではマンション内の宅配ボックスを探す手間がかかったり、過疎地では1件の配送に長時間かかり、非効率となっています。

テクノロジー導入の遅れ

中小の物流事業者では、AIやIoTなどの技術を導入するコストやノウハウが不足しており、従来のアナログな運用が効率化を妨げています。手作業で配送計画を立てるため、非効率なルートが採用されていることもあります。

環境負荷の増大

個別配送の増加により、燃料消費やCO2排出量が増加しています。特に、都市部では配送車が交通渋滞を引き起こし、大気汚染や住環境の悪化を招くこともあります。配送トラックが複数のルートで同じエリアを回ることで、無駄な燃料消費が発生してしまっています。

 

ラストワンマイル問題は、物流全体の効率性や顧客満足度、そして環境への影響に直結するため、これらの課題を解決することが物流業界全体の重要なテーマとなっています。

ラストワンマイルの解決策とは?

ラストワンマイルの解決策は、物流の最終段階で発生する、高コスト、非効率性、環境負荷などの課題を克服し、配送の効率化と持続可能性を実現するための方法です。以下に具体的な解決策をわかりやすく解説します。

配送効率を高めるテクノロジーの活用

AIがリアルタイムで交通状況や配送先の位置を分析し、最短かつ効率的なルートを提案することで、配送時間の短縮と燃料コスト削減を実現できます。

自動運転車やドローンを利用して、人手不足やコスト増を解消し、労働力の節約と再配達の減少させることができます。

再配達を防ぐ仕組みの構築

不在時でも荷物を受け取れる宅配ボックスやコンビニの受取ロッカーを活用し、再配達の削減によるコストと労力の節約ができます。顧客が希望する時間帯を指定できるサービスを強化することで、配送効率の向上と顧客満足度の向上に繋がります。

配送エリアごとの柔軟な対応

都市部では、複数企業が同一エリアを共同で配送する、「集約配送」を採用することで、配送回数の削減と効率向上に繋がります。

地方では、地方自治体と物流企業が協力して実施する配送モデルを採用し、配送コストの分散化と効率的な運用を実現します。

データ活用とサプライチェーンの連携

デジタルツインを導入し、サプライチェーン全体をデジタルで仮想再現し、配送計画を最適化することで、リアルタイムで物流の状況を把握し、効率的な配送が可能になります。

配送トラックにIoTセンサーを搭載するなど、IoTデバイスで荷物や車両の位置、状態を追跡し、配送状況の可視化とリスク管理を実現します。

労働力不足への対応

Uber Eatsのようなオンデマンド配送モデルなど、地域の個人事業主やフリーランスを配送員として活用し、労働力不足の緩和と雇用の創出が可能になります。

倉庫内での仕分けやピッキングをロボットが担当することで、配送プロセス全体の効率化が実現し、労働力解消にも繋がります。

環境に配慮した配送

電動トラックや電動自転車を導入してCO2排出量を削減し、環境負荷の軽減とエコフレンドリーなイメージの強化に繋がります。

カーボンニュートラル配送で、配送プロセス全体のCO2排出量を測定し、排出量をオフセットすることで、持続可能な物流が実現します。

成功事例に学ぶラストワンマイルの改善策

ヤマト運輸株式会社

不在時の再配達を減らすために、駅や商業施設に「PUDOステーション」を設置。PUDOは、駅、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、駐車場、公共施設などあらゆるお客さまにとって便利な場所に設置しているので、お客様の都合の良いタイミングで宅急便の「受け取る」「送る」を便利にご利用いただくことができ、再配達率を減少させ、配送効率の向上を目指しています。

また、京セラコミュニケーションシステム株式会社とヤマト運輸株式会社とPackcity Japan株式会社は、車道を走行する中速・中型無人自動配送ロボットにオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」を搭載した移動型宅配サービスの実証実験を、北海道石狩市緑苑台東地区の一部エリアで2024年9月11日(水)から開始しました。3社は、本実証実験を通じて、EC市場などの拡大に伴い多様化するライフスタイルに対応するとともに、地域特性に適した無人自動配送ロボットの社会実装に向け、新たな配送サービスの実現を目指します。また、無人自動配送ロボットを活用した地域物流支援サービスの実用化に向けた実証実験を継続し、地域協調を基本とした持続可能な未来のまちづくりに貢献してまいりますとしています。

参照)

https://www.yamato-hd.co.jp/news/2024/newsrelease_20240911_1.html

Amazon

Amazonは「Prime Air」というドローン配送サービスを開発。軽量な荷物を対象に迅速かつ効率的な配送を目指しています。ドローン配送により、ラストワンマイルでの人的リソース削減と配送時間の短縮実現を目指します。

参照)

https://www.aboutamazon.jp/news/delivery-and-logistics/amazon-is-launching-ultra-fast-drone-deliveries-in-italy-the-uk-and-a-third-location-in-the-u-s

物流イノベーション〜AI・IoTが変えるラストワンマイルの未来〜

AI・IoTが変えるラストワンマイルの未来では、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といった最新技術が、ラストワンマイルにおける課題をどのように解決し、物流全体を進化させるかについて注目されています。以下に具体例を交えながら、わかりやすく解説します。

AI(人工知能)が変えるラストワンマイル

・配送ルートの最適化

AIがリアルタイムで交通データや天候、配送先の地理情報を分析し、最短ルートを計算します。

効果:配送時間の短縮、燃料消費の削減、再配達の減少による効率向上。

・需要予測と配送計画

AIが過去のデータを基に、需要を予測して効率的な配送計画を立案。

効果:繁忙期の需要変動にも対応、過剰な在庫や不足を防止。

・自動化された配達管理

AIが顧客の指定時間や場所を分析し、最適な配送スケジュールを調整。

効果:配達の柔軟性向上、顧客満足度の向上。

 

 IoT(モノのインターネット)が変えるラストワンマイル

・リアルタイムの荷物追跡

IoTセンサーを使い、荷物の位置や状態(温度、振動など)をリアルタイムで監視。

効果:配送の透明性向上、特に医薬品や食品など品質管理が重要な商品の安心感を向上。

・スマート宅配ボックスの普及

IoTを活用した宅配ボックスが、荷物の受け取りと不在時の再配達を簡略化。

効果:再配達率を削減、顧客の利便性向上。

・配送車両の管理と効率化

IoTで車両の位置、走行距離、燃料消費をモニタリングし、配送効率を最大化。

効果:配送ルートの最適化、燃料コストの削減。

 

AIとIoTの連携による未来の配送モデル

・自動運転車とドローンの活用

AIとIoTを組み合わせ、自動運転車やドローンがラストワンマイル配送を担当。

効果:配送員不足を補完、配送時間を大幅に短縮。

デジタルツインによる物流シミュレーション

ラストワンマイルの物流ネットワークを仮想空間に再現し、配送ルートや倉庫配置を最適化。

効果:計画精度の向上、配送効率の向上とリスクの軽減。

コネクテッドホームへの配送

IoT対応のスマートドアや冷蔵庫に直接商品を届ける仕組み。

効果:顧客の受け取り時間の制約を解消、食品や生鮮品の品質保持。

物流業界のラストワンマイルにおけるAIとIoTの導入は、効率化だけでなく、環境負荷の軽減や顧客体験の向上にも大きく寄与しています。この未来型の物流モデルは、持続可能な物流の実現に向けた重要なステップとなるでしょう。

 

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この記事の執筆・監修者
Aidiot編集部
「BtoB領域の脳と心臓になる」をビジョンに、データを活用したアルゴリズムやソフトウェアの提供を行う株式会社アイディオットの編集部。AI・データを扱うエンジニアや日本を代表する大手企業担当者をカウンターパートにするビジネスサイドのスタッフが記事を執筆・監修。近年、活用が進んでいるAIやDX、カーボンニュートラルなどのトピックを分かりやすく解説します。

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